『わたくしが樹木であれば』(岡崎裕美子/青磁社)


『わたくしが樹木であれば』(岡崎裕美子/青磁社)


「待望の第二歌集」と帯にあるのが誇張なしの一冊。待望されまくってたでしょう。


  したあとの朝日はだるい自転車に撤去予告の赤紙は揺れ 『発芽』


この歌がとても有名で、即物的でそっけなく、すごい色気纏った歌をよむ人。
私が最初に知ったのもたぶんこの歌だったし、若くて才気あってこわい、って
思ってました。実際お目にかかれば人当りもよく怖くないんだけど、でも、
こわいなあってずっと思ってます。歌をよめてしまう人なんだよなあ。

この第二歌集はブルー。でもその奥に鮮やかなピンクが見えて、表紙を脱がせて
みればそれはあまりにも鮮やかな目に痛いほどのピンクで、こういう本なのかと
納得させられてしまう。

一冊を読んで感じるのはもう若いばかりではない大人の女性の姿。父を亡くす時、
母とのしずかな対峙、対峙というか、複雑な向き合い。仕事との距離。子どもを
産んでないこと、夫や恋人がいて、かといって満たされるのはほんのひと時、
という感じ。
読みながら自分自身を思って物凄くぐっさりもくるし、まるで夢物語、ドラマの
ようでひきこまれもする。とにかく読んでいて揺さぶられる感情が物凄くて、
何回もページを閉じて今日はここまで……と一旦この歌集の中から離れなくては
いけなかった。
一冊になる迫力って凄いな。

付箋をつけていくとすごく数が多くて困る。一首一首読みあいながら、うん、
わかる、いや、そんな、無理、とかうわごといいたい感じです。うわごとしか
言えない感じ。
そして愛の歌は勝手に推しにあてはめてもえる、とか読み換えてまた悶える。

好きな歌いくつか。


  いま産めば父を産むかも ひそやかに検査薬浸す六月の朝 (p51)


  誰の子を産んでも吾の子であれば雨はするどく降り続けたり  (p52)


  誰の猫でもない猫を遊びたり帰り道わからなくなるまで  (p53)


  鋭さにまかせて今日はひたすらに振り落とすのみ私のナイフ  (p54)


  手渡せぬ命を我は持つゆえにただ茫々と花を浴びたり  (p68)


  やるならば俺の知らない奴にしてと言われるふいに布団の中で  (p79)


  触りたい?と手を差し出せば触りたい、と手を伸ばしくる朝の部屋でも  (p91)


  ほんとうに出て行くときもこのようにただ背を向けて寝ているか夫よ  (p125)


  横にいるあなたの点滅たしかめるさっき魚を殺めた指で  (p157)


  おばさんでごめんねというほんとうはごめんとかないむしろ敬え  (p189)


  太腿も腕も絡めて眠りたり目覚めたら楡になりますように  (p192)


いくらでも物語を語り続けられそうで延々なんだかんだ言いたいような、でも
もうこれらの一首で全てじゃん無理、って言葉を失う。凄くて読むの、大変です。
  


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『人はなぜ物語を求めるのか』(千野帽子/ちくまプリマ―新書)


『人はなぜ物語を求めるのか』(千野帽子/ちくまプリマ―新書)

2017年3月刊

もとはwebちくまに18回連載した「人生につける薬 人間は物語る動物である」
で、加筆修正したものだそうです。
連載は読んでなかったけれど、なるほど、このすごく優しく語りかけるような
スタイルって、広く一般へ、みたいなことなのでしょうか。中学生や高校生へ
向けての語り下ろしみたいな感じかなあと読みながら思ったのだけれども。
なんだろうこの、優し気な感じが居心地悪い感じ、と、思う、私のよろしくない
心根って感じなんだろうか。

物凄い読書ガイドって感じでもあるので、これ高校生くらいで読んで、よーし
あれもこれも読んでみるか、ってガツガツいけるといいなって思う。この頃
全然まともに本を読んでない自分を反省。。。いやでもここにあるようなのを
こんなには読めないな、若かったとしても。

人間は物語る動物である、ということらしい。物語を求める。因果関係を求める。
物語化して「わかる」「わかった」と思いたがるものなのだ。それは感情だ。
わかる、納得する、というのは快感。わからないことは不安。
変えられるのは自分の側のことだけだ。

そんなこんなをいろんな文献や時事ネタ盛り込みながら解いている。表現は
優しく時に皮肉めいた一言を入れたりもして。
すごく、わかりやすく優し気であるがゆえに、ええと~、つまりこれに納得しちゃ
駄目だろ、って不安になる。
最初の連載のタイトルに「人生につける薬」って、ちょっと説教臭さがある通り、
なるほどそうかそうなのですねと教わる気持ちになりながらも、そう、そうですか、
でもそれでうんうんってなっちゃダメなんでしょ???って、でもそう思うのも、
どうなの??? って、なるねー。
人はなぜ物語を求めるかという答えは、いろんなことストーリー化して
わかるって快感を得る動物だからということなのか。
何の答えでもないような。

ほんと優しく読める、し、ここからもっと追及していける読書ガイドでもある
と思ったので、読んでみたのはよかった。


 目次

 はじめに
 第1章 あなたはだれ? そして、僕はだれ?
 第2章 どこまでも、わけが知りたい
 第3章 作り話がほんとうらしいってどういうこと?
 第4章 「~すべき」は「動物としての人間」の特徴である
 第5章 僕たちは「自分がなにを知らないか」を知らない
 あとがき

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『ぬばたまおろち、しらたまおろち』(白鷺あおい/創元推理文庫)


*ネタバレ、結末まで触れています。


『ぬばたまおろち、しらたまおろち』(白鷺あおい/創元推理文庫)


創元ファンタジィ新人賞優秀賞受賞作品。
帯には「横溝正史?×ハリーポッター!」と書かれている。殺人事件と魔法か?
って思ったけれども、殺人事件は起こりません。ファンタジィだよね。

始まりは、小さな子どもがいつもよりちょっと遠くへ遊びに行った、洞穴の奥から、
白い小さな蛇を見つけた所。蛇は「やあ」と人の言葉を喋った。

主人公は深瀬綾乃。14歳。事故で両親を亡くして叔父さんのうちで暮らしている。
自分も怪我を負ったが後遺症は少しだけ脚を引きずってしまうこと。
舞台は岡山の山間の小さな町。図書館へ通い、両親を亡くした淋しさを隠し、
いい子にしている綾乃。秘密の友達、子どもの頃に見つけた白い蛇、アロウと
いう蛇がいるから大丈夫、って思っている。
そこへ、古いお話を集めているという、叔父さんの息子さんの大学での知り合い
という先生がやってくる。綺麗な大人の女性、大原由希恵さんが泊まりにきて、
村を案内して。
東京、いいなあ。この村の中で一生を終わってしまうのは嫌だ、って思ったり
する綾乃。
村のお祭りで、舞姫を務めることになった綾乃は、その時思いがけない騒動に
巻き込まれることになる。

っていう、この導入あたりが横溝正史っぽいというのかな。蛇がいきなり普通に
喋るしいちゃつくし、これは、異類婚な和風ファンタジィだろうか。
って思ってると、首長竜がやってきてたり、狙われた綾乃の危機を救って
くれたのは箒にのった大原先生で、魔女で、銃ぶっぱなして首長竜を追っ払って
綾乃は箒の後ろにのせられて、魔女の学校へおいで、と誘われる。
って、ここからはハリー・ポッター風ですね~。魔女としての知識、一般的な
教育、飛行術をディアーヌ学園の仲間たちと学んでいく。

で、終盤にはタイムトラベルもありました。
首長竜とは過去からの因縁があったのね。というか、過去の因縁ができたから
現在の綾乃に危機がきて、過去に戻ってまた解決して、って、いうか。
こういうタイムパラドックス的なのは、わかったような気になるけど突き詰めて
考えようとするとわからない。でも読んだ感じではなんか、なるほど、って
思ったし、大原くんのとーちゃん神様が絡んでるとなると、なんかもう神様なら
なんでもありでいいや、と、私が考えるのを放棄した(^^;

魔女の学校には、人間もいるけど日本古来の、というか、ローカルな?妖怪も
いる。雪女とかのっぺらぼうとか。妖魅と呼んでいる。
田舎の少女の憂鬱や初恋、それから学園での友情やぶつかりあいや胸きゅんや、
そしてスペクタルなアクションやタイムスリップまで。
すっごい盛り沢山にどんどん話が展開していって、ぐいぐい読まされた~。
正直私が好んで手に取るタイプの本ではないんだけれども、飽きなかった~。

なるほど、新人賞の正賞とこれと、まあ候補の中ではこの二つだろう、という
審査員さんたちのお話に納得。
作者の方、山吹明日香さんと短歌で繋がりがあって、受賞式、受賞記念トーク
みたいなのに行ってきたのでした。
また続編書くとのことで、凄い、いいと思う。いろんなキャラそれぞれが
魅力あったし、主人公たちも、スピンオフみたいなことも、どんどん世界が
広がりそう。アニメ化とかすればいいのに!
結構胸キュンがなかなかに色気があって、き、きみたち中学生でしょーって
いいたい。けれども中学生くらいだからこそ、こんなだったりするのか。きゃ。
って、ほんとこのお話の中に引きこまれてドキドキハラハラして読めて楽しかった。

最後には、叔父さんたちに実は生きてますよってちゃんと知らせたのもよかった。
叔父さんたち、別に悪い人たちじゃないもんねえ。勢いとはいえ行方不明って
どさくさで家を出てきていいの?????って結構心配しちゃった。
ファンタジィとはいえ、大人がね、ちゃんとそれなりに大人らしくしてくれないと
やっぱり不安で大丈夫か、って思っちゃうからなー。
読み終わってすごく満足感ありました。おめでとうございます!これからも
ますますのご活躍を! ほんとに次回作楽しみです^^

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『混沌の叫び3 人という怪物』下 (パトリック・ネス/東京創元社)


*ネタバレ、結末まで触れています。


『混沌の叫び3 人という怪物』下 (パトリック・ネス/東京創元社)


スパクルと和平を結ぶ話し合いの場に、首長やミストレル・コイルを行かせる
わけにはいかない。と、代表していくのはヴァイオラと、ブラッドリーになった。
それぞれの思惑が入り乱れ、単純にはいかない和平の話し合い。

プレンティスのノイズを操り探る力は増大し、トッドもまたその力を得ていく。
ヴァイオラを思いながらも、改心した、というプレンティスの言葉も信用して
いいように思い始めていた。

和平の手柄をプレンティスに奪われ、ミストレル・コイルはプレンティス諸共
自爆しようとした。間一髪の所、トッドはプレンティスを助けてしまう。
自分でも戸惑うトッド。感染症に苦しみながらも、ヴァイオラはトッドを信じ、
平和の道を探る。

スパクルに助けられていたベンがついにトッドと再会する。一気にベンのもとへ
駆けていくトッドの姿に、トッドを息子と思い自分の良心とも思っていた
プレンティスは、父として息子を奪われたと感じてしまう。
プレンティスの暴走。スパクルへ一人攻撃をしかけるプレンティスは、それでも
トッドとの最後の対決の時には、トッドに殺人を犯させることなく自ら海の怪物に
喰われることを選んだ。

やっと、終わった、と思った瞬間、スパクルの新たなスカイとなっていたリターンの
誤解によって、トッドは撃たれてしまう。
トッドを殺されたと思ったヴァイオラは銃をとるが、ベンの説得に応じてついに
銃を捨てた。そして、死んだと思っていたトッドには僅かに命の兆候があった。
やがて新しい入植者がやってくる。ヴァイオラはトッドが目覚めるのを待っていた。

付記として、ヴァイオラがニューワールドに不時着してくるまでの短いお話が
あった。あんまり気のりしない感じで両親の都合でやってくることになって
しまったんだねーヴァイオラ。希望を託されまくって。

三部作完結。
希望。
希望。
どんな困難にも諦めずに希望を、よりよい世界を求めること。
そういうテーマのお話だったなあ。
しかしその世界の希望を、15歳くらいの子どもに背負わせてんじゃねーよ、と、
結構辛い。
ほんと最初のころはヤングアダルト小説~で、男の子と女の子ががんばって生きる
のね、って思ってたけど、二部、三部とくるともう完全に政治、戦争の世界を
ヴァイオラとトッドの二人だけが希望ってことで描いてて、ほんと辛い。過酷。
まあな~~~。主人公になっちゃうとそうなのかなあ。そうなんだけどさあ。

トッドの母の日記は全部読めはしなくて、プレンティスが言ってたことが本当
ってことでいいのかなあ。ミストレル・コイルとの対立みたいなことがやっぱり
あって、どっちも引かずであの村からは女がいなくなったのか。

ノイズをいずれ誰もが操り、スパクルとも共有して相互理解ができるように
なっていく、という、希望のある終りだった。トッドもきっともうすぐ目覚める。
トッドとヴァイオラは、トッドが望んだように二人で静かに暮らしていけるの
だろうか。やっぱり英雄として担がれてしまうんじゃないだろうか。
まあ新たな入植者はこういうのお話としてしか知らずにやってくる圧倒的多数、
ってことで、伝説の二人も案外あっさり自由になれるのかな。
でも新たな人の中にも、プレンティスみたいにノイズのカオスに飲まれて
暴走しちゃったりしないんだろうか。
平和って、難しい。

三部は上下巻ともにけっこう分厚い感じだけども、もうすっかり慣れてて
さくさく読んだ。それに気になりすぎて、ホントだったらもう全部一気読みしたい
作品でした。一部を乗り越えると面白かったなあ。

プレンティスが~やっぱかっこいいですし。こんなにも酷い男でありながら
トッドを大事に思う気持ちは本物だったのか、という感じが、まあ歪んだ愛情
つーかまあやっぱサイコパスみたっぷりなんだけれども、もえるわ~。
もう私の脳内キャストマッツでずっと読んだから。たまんないね。
映画化はとりあえず第一部?
でも是非とも二部三部もやってほしい。だって一部だけだったらプレンティスの
出番ほとんどないよねー?せっかくマッツをキャスティングしてるのに、
勿体なさすぎるよねー? トムホくんとあんなこんなに絡んでくれなきゃやだ~。
映画でどんな風に描かれるのか。実際公開されるような頃には私は多分いい塩梅に
話も忘れてるだろうから(^^; とても楽しみです。


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『うた合わせ 北村薫の百人一首』(新潮社/北村薫)

『うた合わせ 北村薫の百人一首』(新潮社/北村薫)

2016年4月刊。

始まりに2首、作者の違う歌をならべ、そのテーマ、読みを綴っていくスタイル。
うた合わせとはいえ、その優劣を決めるものではなく、北村薫の中で響き合う
歌を取り合わせて楽しむ、という感じ。

北村薫の小説は少しは読んだことがある。けれど、あんまり大好きな作家!と
いうわけではもないかなーというところ。詩歌の本もあるみたいとは思ってた
けれども、手に取ってみたことはなかった。
今回読んでみて、取り上げている歌の幅広さとか、読みながらのエッセイという
広がりがすごく面白くて、びっくり。私が無知なんだけども、こんなにも短歌に
ついていろいろたっぷり楽しそうに書いてみせてくれる人なのかあと、初めて
知りました。凄い。

ミステリ関連の興味からの紹介とか、古典的なことも含め、短歌そのものばかり
ではなくて、北村薫の盛り沢山な知識の中から紹介されてる歌たち。
この歌人ならこの歌だろう、ってな定番なところではない歌を出してきてたり、
ほんっとこの人、本、文学、詩歌、大好きなんですね、いやもちろん凄い人だと
わかってたはずだけど、それにしても、すごいな北村薫。。。と、改めて
畏れ入りました。

つくづく、沢山知ることって、沢山楽しめることなんだよなと思う。
私はほんと短歌について圧倒的に知らない。読んでない。それでも紹介されてる
歌人の、名前程度は知ってるとか、ああ~と思えたりすることはあるけど、
でもなー。ほんと私、短歌知らないよなあ。。。
まあ、世の中の本全部読むとかできるわけないんだけれども、もっと沢山、
いっぱい、もっともっと本読んでもっといっぱい楽しみたい~。

短歌もね。。。ほんともうちょっとは勉強して、もっと沢山読んでいかないと。
全然足りてないのに、ぐずぐずしちゃって。。。

言い訳すると、短歌に興味持った最初の頃に、

  男の子なるやさしさは紛れなくかしてごらんぼくが殺してあげる 平井弘

にうたれて、最高に好きで大好きで、ああ、私この歌に出会うために短歌に
興味持ったのかな。私の人生にこの一首だけあればもうそれだけで幸せすぎる。
って思ったんだよね。
その後まあぼちぼち短歌読んでもいるけど、やっぱり、ん~、この一首だけで
いい、って思っちゃってるところある。
私にとってこれ以上の歌はないなあ。でももっともっとせっかくなので楽しめる
ように、やっぱり、もうちょっとは勉強しなくちゃな。。。

後ろに「歌人と語る「うた合わせ」 北村薫・藤原龍一郎・穂村弘 対談」
があって、これもすごく面白かった!
この本について実作する歌人が語るってことで。
仙波龍英と藤原龍一郎の出会いを書いてる所があるのを穂村さんが語ってて、
「<双龍の出会い>! 双龍って、二匹の龍。もう完全に神話的BLの世界(笑)」
(p233)ってねー。
藤原さん本人がもう物語の中の人になってる(笑
この対談もみんなが楽しそうで、いいな~と思いました。
「藤原 これは北村薫っていう人の目で短歌を読みこんだもので、単なる現代
短歌の鑑賞の本ではないですよね」(p243)
とのこと。
ほんと、短歌読んでくの面白いなって思わせてくれる。
読まず嫌いせずに読んでみてよかった。いろいろ反省した(^^;

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『混沌の叫び3 人という怪物』上(パトリック・ネス/東京創元社)

*ネタバレ注意


『混沌の叫び3 人という怪物』上(パトリック・ネス/東京創元社)


三部作、最終。まずは上巻。

スパクルの大軍が攻めてきた。プレンティスを捕らえていたものの、突然の事態
にどうしていいのかわからず、「戦争」を経験し、勝った男であるプレンティスに
指揮を任せるしかなかった。

自軍を操りスパクルをなんとか食い止めようとする人。戦争の混乱、惨劇に
愕然となるトッド。馬のアングラハットはすっかり怯えてしまう。
トッドの側、ヴァイオラの側からも描かれていて、スパクルの側からも描かれて
いて、なんにせよどこも地獄だよ。辛い。
偵察機のブラッドリーとシモーヌは、ヴァイオラの味方だけれども、この星の
争いに巻き込まれるわけにはいかない、と、中立でいようとする。

この世界で秘密兵器のように登場したのは大砲で、プレンティス首長が密かに
作らせていたようなんだけども、最初こそスパクルたちを蹴散らすことができた
ものの、スパクルたちがゲリラ戦に出てくるとどうしようもなく。

偵察機が持つ武器、ミサイルとかがこの世界では最強かなあ。
中立でいようとしたものの、トッドの危機の瞬間、ヴァイオラは武器を使って
しまう。
結局、こういう辛い目にあうのがヴァイオラなのがなあ。アーロンを殺したのも
彼女の方だったし。人を殺せないことこそがトッドの特別さ、汚れなき強さ、
みたいになってて、まあ、それはそれで、うーん。いいんだけど。マンチーを
見殺しにしてしまったり、偶然出会ったスパクルを結果的に殺してしまったけれど
人は殺してない、というスペシャルさ。でもヴァイオラにはそうさせてるんだよ
ねえ。辛い。
この世界の特別さではあるんだけど、女と男の対立で、まあわりとどっちも
どっちに酷いんだけれども。トッドが救世主になるのかなあ。ヴァイオラという
運命の女神を得て、って感じになるのかなあ。どーなんだろう。

上巻では、アスク部隊、ミストレル・コイルとプレンティスがスパクルに
対抗すべく一旦手を組もう、という風に少し落ち着く。
スパクルによって水を断たれてどうしようもなく。

しかしスパクルの情報源として、死んだと思われていたベンが、トッドの父
がわりだったベンが、スパクルに助けられていた、と。あんま意識ないみたい
だけれども。今後トッドへの取引材料になるのか、スパクルのリターンの怒り
恨みのとばっちりで殺されちゃうのか。ああ~。
と、すごく気になるところで続く。
下巻は帰省後じゃないと無理だ。早く読みたい。どーなるんだ。どう決着する
んだろう。あまりに状況は過酷じゃないか。
ヴァイオラの感染症からの病も重くなるばかりだし。
トッドはプレンティスにだんだん感化されてくし。人を操る能力まで持ちつつ
ある。ヴァイオラといつまでもほんとに心通じ合うことができるの?
思春期ならではっつーか、恋心、エロさの芽生えみたいなのもくすぐったいし、
トッド~お前しっかりしろよ~~と言いたくなる。うーん。

ここで行われていることはかつてプレンティスタウンであったことの反復なのか
どうか。こんな風に男女の対立から一方を皆殺しみたいなことになったのか、
違うのか。母の日記を読める時は、きっと終わるまでにはあると思うけど、
日記に真実が書かれているのかどーなのか。
プレンティス首長が、トッドをかなり本気で可愛がってるのも気になる所だし。
個人的にはプレンティスに思い入れ持って読んじゃうからな~。どうなるんだろう。
楽しみ。


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『混沌の叫び2 問う者、答える者』上下(パトリック・ネス/東京創元社)

*ネタバレ、結末まで触れています。

『混沌の叫び2 問う者、答える者』上下(パトリック・ネス/東京創元社)


三部作の二作目。

ヘイヴンを支配し始めるプレンティス首長。
傷を負ったヴァイオラと引き離されたトッドは首長の元で与えられた仕事につく
しかなかった。
ヴァイオラは治療院で回復したものの、やはり自由はなく、トッドに会えない
日々が続く。
一見平和的に新たな統治者となろうとしているプレンティス。だが、男と女を
引き離し、女たちは自由を奪われたことに抵抗しようとしていた。


一部の終りでどうなるんだーっと思った所で、今度は二人が引き離された中で、
互いを本当に信じあえるか、という試練になるのねえ。
プレンティス首長が一見穏やかで、でもがっつり抑圧的で酷い。

ヘイヴンはニュー・プレンティスタウンと名前を変えられる。ここにはノイズを
抑制?除去?できる薬が開発されてあったんだけど、その薬を取り上げて管理
することで男たちへの支配を強め、そもそも薬関係ない女たちは隔離していって。
スパクルが奴隷として、でもまあそこそこ友好的に?奴隷として町にいたよう
なんだけど、スパクルも隔離して酷い環境で肉体労働させたりして。
その管理をトッドと、首長の息子であるデイヴィとにやらせて。
いろいろと試すんだよなー。
出来の悪い息子より、トッドのほうに素質があるとみて、首長はトッドを自分に
取り込もうとする。

二部ではヴァイオラは離れてるので、トッドの一人称だけじゃなくてヴァイオラ
視点の話も交互に描かれる。
酷い目に合わされている女たちの中、ヴァイオラは、なんとか入植を待っている
はずの宇宙船へ通信を送りたい。トッドに会いたい。

女たちはテロを起こして、プレンティス首長たちの軍隊へダメージを与え、
囚われている女たちを救い、街を自分たちで取り戻そうとする。

この、平和的にただただしたがってなんとかやり過ごしたい、という住民たちと、
そんな支配下の平和は平和じゃない、って自由を求めてテロを繰り返すアスク隊と。
何が正義か。何が正解か、ものすごい、わからない。

トッドとヴァイオラも、離れて別の立場に身を置いて。互いを信じるのか、
信じていいのか、何故、って苦しむことになる。
過酷。。。

スパクルの大量虐殺でトッドは心閉ざしてしまうんだけれども、でもこれは
多分首長の仕業、なん、だよな?? ちょっと私はっきりしない。
ヴァイオラをも利用するアスク隊のやり方はキツイなと思うけど、かといって
首長のいいなりになってていいわけないし。

物凄く大変だったけどヘイヴンという希望目指してトッドとヴァイオラ、二人で
逃げてくだけだった一部がまだ平和だったな、って思っちゃう。政治というか
支配と自由というか、なんかもう、ほんと、正解が単純に出る話じゃない。
でもとにかく、トッドとヴァイオラは二人で戦うぞ、プレンティス首長とも
アスク隊とも妥協しない、って感じか。

空から入植者がくる、というタイムリミットみたいなのがありながらの緊迫感も
あって、二部はぐっと面白く読んだ。
で、ついに首長を追いつめた、って所で新たな脅威がやってくる。
人間とは距離をおいていたはずのスパクルの大軍が攻めてくる。
それに勝てるのはプレンティス首長しかない。って感じで、「戦争だ」
って所で終わる。

ええーっ。どうなるのーっ。と、ここでもひっぱられて、三部をすぐに読まねば、
ってなるよねー。

プレンティス首長の出番がいっぱいで、すごい悪の魅力って感じでいい~。
ノイズを武器のように操れる、とか、外連味もたっぷり。でも主人公たちには
負けるか~って所で、いやまだだ、って感じで、三部ではどうなんだろうって
すっごく気になる。
面白い。
三部はまだ順番待ち。

映画化だと、どうなるのかなあ。三部作まとめて一本の映画?一部だけ??
でもそれだけだとちょっとつまんなくないかなあ?ノイズとかどうするんだろう。
映画出来たらぜひ見たい。


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『混沌の叫び1 心のナイフ』上下(パトリック・ネス/東京創元社)

*ネタバレ、結末まで触れています。

『混沌の叫び1 心のナイフ』上下(パトリック・ネス/東京創元社)


混沌の叫びは3部作だそうで、その1。
映画化されるようで、気になって読んでみることにした。

トッド・ヒューイット。プレンティスタウンに住む少年。もうすぐ大人になる。
大人になるのは13歳。ぼくはこの町の最後の子ども。あと30日で大人になれば
この町に子どもはいなくなる。


SFというか、異世界ものっていうか。ヤングアダルトにあたる小説ですね。
基本的にトッドの一人称。
ニューワールド新世界では一年は13カ月。新天地を求めて植民してきた人々。
でもこの星には先住民スパクルがいて、戦争が起きて、今はスパクルはいない。
この星独特の細菌があって、それに感染して、男たちは心の中、声がノイズと
して隠せなくなり、女たちはみんな死んでしまった。
男だけの世界。
心の声が全部きこえる。
なんか萩尾望都の「マージナル」みたいな感じ? と読む前は思ってたけど違う。

沼地で謎のノイズの穴を知ってしまった時からトッドの運命が変わる。
それまで育ててくれていたベンとキリアンが、今すぐこの町から逃げろ、と言う。
この日がくるのをわかって怖れていたようで、すぐに旅立つ荷物を渡されて、
でも何にも説明してくれないまま、町の人に追われてトッドは犬のマンチーと
一緒に逃げ出す。

謎のノイズの穴というのが、実は女の子だった。女の子の心の声は聞こえない。
見えない。ノイズだらけのこの世界で、無音であるのは女の子だけ。
成り行き上一緒に逃げ始める二人。
世界はプレンティスタウンだけ、女は全員死んだ、と聞かされて育ってきたのに、
別の町がある、プレンティスタウンの外では女が生きている。
出会った女の子はでも、別の入植者の偵察の一員だった、とか。
トッドが町を出ると次々にいろんなことがわかってくる。

人の心の声のノイズだらけの世界、ってことで、普通の本文のページの活字が
いろんな書体になってたり、がーーっとでっかい落書きみたいな文字いっぱいの
ページがあったりして、へーがんばって表現しているなあと感心する。
でもまあとにかく、トッドは何にもわからない中逃げる、女の子も最初は全然
喋ってくれなくて何にもわからなくて。
イライラしたりもどかしかったりで、最初はなかなか読みづらかった。
別の町に到着して、逃げる二人以外の人物が出てくるようになると、ちょっと
面白くなったかなあ。
犬のマンチーも心の声喋れるので、といってもわんちゃんなので単純で可愛くて
でも困ったちゃんだったりもして、あ~マンチーが癒しだわあ。って読んでると、
終盤、引き離された女の子、ヴァイオラを助けに行って、マンチーを見殺しに
せざるをえないことになって。あああああーーーっ、と、愕然。

これはかなり容赦ないんだな、って、ヤングアダルトだからって話じゃないと、
ぐっときた。
でもさあ。マンチー。マンチーにはなんとか助かって欲しかったよぉ。。。

最初は数人に追われてるだけだったのに、いつの間にかトッドたちを追ってくる
のは軍隊、って規模になり。
プレンティスタウンは何故隔絶されているのか。何故女がいないのか。
いろいろと謎がわかりかけると、深刻にキツイ感じになってくる。
プテンティスタウンの歴史。トッドが信じてきていた歴史は嘘なのか。

心の声が聞こえない女とノイズだだ漏れの男との対立。戦争。プレンティスタウン
の女は皆殺しにされた、のか。

トッドは学校教育とかなかったようで、文字が読めない。ベンたちが教えて
くれたこともあったみたいだけど、ちゃんと読めるようにはなるほど学んで
なかった。
トッドの母が残してくれた日記をベンに託されたけれども、自分じゃ読めなくて。
そういうのも切なくて、でも重要なポイントにもなってて。

ヘイヴンという大きな町へ行けば、助かるはずだ、と信じて、トッドとヴァイオラ
は逃げ続ける。ついに辿り着いたヘイヴン。撃たれて重傷を負っているヴァイオラ。
静かに敵に備えているかのように見えた希望の町で、でもトッドたちを迎えた
のは、必死で逃げてきたプレンティスタウンの首長だった。

ええーっ。どうなるのーっ。
って所でおしまい。2部へ続く、っと。

二人で逃げる。最初の最悪の出会いから互いにかけがえのない相手となる。
大人になる直前。ナイフを持っていても人を殺せない少年。偵察機の墜落で
両親を亡くしたけれど、生きる強さを持っている少女。
基本的にはボーイミーツガールで、成長物語であって、でも追い込まれる状況が
思ってたよりずっと過酷で大変だった。大人たちよ、もうちょっと説明して
やってから旅立たせてやってくれ。まあそうはいかなかったんだけれども。

別世界のお話とはいえ、植民地時代って感じで差別や偏見の物語なのは現実世界
を引き写してる所多々って感じですかっと楽しいわけじゃないねえ。

最初の読みづらさを乗り越えてからはかなり引き込まれて、すぐに第二部
読み始めました。

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『スパイは楽園に戯れる』(五條瑛/双葉社)

*ネタバレ、結末まで触れています。

『スパイは楽園に戯れる』(五條瑛/双葉社)


プロローグ、少年の日。父と母に連れられて港へ来ていた。わけはわからないが
特別に学校も休んで、姉や弟とではなく、一人だけ連れられて。
そこで出会った大人の男の人。将来の夢は、と問われる。これといって答えの
ない少年に、男は言った。誰かの役に立つ人になりなさい。誰にでもじゃない、
誰かの役にたつ。国の役に立つ人間ということだ。少年の心にその言葉はずっと
響き続けた。

葉山隆はマカオのカジノでかつて羽振りの良かったヨハンという人物に関する
情報収集にあたっていた。どうやら北の重要人物の息子、らしい。亡命させる
ことができれば、いい情報源になる可能性が、あるかもしれない。
曖昧であまり重要度の高くない情報の確認作業を回される米国の情報部員の下っ端、
である隆は、そんな作業の中から気になることを見つけだす。
そして、まるで無関係なはずの小さな頼み事や人間関係が繋がって、当初思って
いたよりずっと、大きな過去の物語が広がっていた。


雑誌連載時は「パーフェクト・クォーツ」というタイトルだったそうです。
2016年6月刊行。わ~~!!新刊出た!買って眺めてたもの。読み終わるのが
惜しいような気がして。久しぶりにエディとタカシを眺められる~。

ヨハンは、北の後継者、にはならない息子の一人ってことらしく。
モデルの人、でも、この前謎の死を遂げたよねえ。そのうちそんな話も五條さん
書いてくれるだろうか。ドキドキ。

そして湧井というステキな政治家。スパイ防止法を成立させるべく努力している
人気政治家。しかし、彼が実は、本人が意図せぬうちに、スパイのバックアップを
受けて、夢物語の期待をかけられていて。
って、この辺の感じは革命シリーズでもあったな。密かに日本の一般家庭の
養子となった、大陸の血を持つ子ども。
火蛇、サラマンダーって、ええ~と~~革命シリーズにも出てきてたんだっけ。
ちょっと、記憶がない。。。うーん。なんか、あったっけ、って気がしつつ
覚えてないな。
でもサーシャの知り合い的な感じなので、うーん。もう記憶力駄目駄目だ。

そう。サーシャの名前がほんと一瞬出てくすぐられる~~~。
でもこの話は時間軸どーなんだろ。革命シリーズの終わった後のことなのか
どーなのか、ん~~。わかんないけど。

日本の現状とか、なんかこううっすらとこわい感じになっていて、そういう背景
を感じながら、こういう小説を読むリアルタイムな感じ贅沢だ。でも、こんな
楽しんで読んじゃっていいのか、って、すごく考えてしまうことにもなって、
結構辛い。

革命シリーズの方では、自分たちのルーツを知ったかつての子どもたちは
革命に向かって動いたけれども、湧井は自殺という道を選んでしまった。
スパイとは。
大陸をもし断ち切ったとしても、米国のほうも手を伸ばそうとしていたし、
それは知らなかったとしても、自分の理想に影がある、あった、これからも
付き纏うことを、断ち切るためには、自分を終りにするしかない、という、
真っ直ぐさが、魅力であり弱さだよなあ。難しい。


今回も、エディに屈折しまくりながら褒めてもらいたいタカシが~も~~っ。
可愛い。しっかり有能。エディ相変わらずかっこいい。楽しい。妄想広がる~。
最高大好き。また読みたいすぐ読みたいもっと読みたいよ~~。
堪能しました。

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『弟の夫』1~4巻(田亀源五郎/双葉社 アクションコミックス)

*ネタバレ、かな?


『弟の夫』1~4巻(田亀源五郎/双葉社 アクションコミックス)

いろいろ評判いいのは見てて気になってて、4巻で完結とのことで、1~4電書
でまとめ買いしてみた。

両親を事故でなくしているヤイチ。双子の弟がいたけれど、弟はアメリカに
渡って10年。その弟が亡くなり、弟と結婚していた「夫」、マイクが日本にきた。
離婚して小学生の娘の夏菜と二人で暮らしている家に、マイクがしばらく滞在
することになる。

ってことで、多分ごく普通の男としてのヤイチが、「弟の夫」とどう接していい
のか、どう認識を改めていくのか、が、とてもとても丁寧に、一つ一つの疑問に
立ち止まり考えていくお話。
最初は、おかしいだろ、変だろ、いや別に差別とかじゃないけどなんか違うだろ、
みたいな所にいたヤイチが、無自覚だった差別意識に気が付いていく。

全体通して、本当に丁寧に描かれていて、どうして、何が、おかしいと思うのか、
それは本当に自分の考えなのか、ただなんとなく世間みたいな曖昧なものの
思い込みなんじゃないのか、無理な押しつけではなく静かに問いかける感じ。

人が出会って一緒にいたくて結婚して家族になっていく。
そこに性別へのこだわりは本当に必要ですか。人と人との関わりに性別という
要素についてことさらに不必要に過剰反応しなくてもいいんじゃないの。

実はゲイかもと思って悩んでる子とか、ずっとカミングアウトはせずに隠してる
人とか、子どもを心配するという中で悪影響とか悪気ないつもりで言っちゃう人
とか。いろいろな要素が描かれながらも、ちゃんとわかりあっていける人達が
いるという、希望と願いの漫画だと思う。

個人的には、夏菜ちゃんとか~別れた元妻とか~、お話に都合いい無邪気なフラット
な存在、疑問を呈する人とか理想の理解者って役割キャラという気がしたけどなあ。
子供らしさの概念って気が。
でもまあ私も実際リアルに子どもを知ってるかというと、まあ知らないし
わかんないんだけどね。

Twitterでの感想リツイとか眺めていると、教科書にして読ませたい
みたいなのもあったと思うけど、ほんと、そう。そういう理想的なところが
あって、でもそれが必要っていう気がするなあ。
無自覚だったり自分のこととは思わなかったり、というのが日本の社会、という、
イメージ。うーん。どうなのかな。あんまり、わかんないけど。。。

田亀源五郎さんの漫画とかわりとがっつりハード目な方、って思ってたけど
たぶんだいぶマイルドにしてるのかな。それでもちゃんとしっかり筋肉~だし
毛ももじゃもじゃもあるよ、ってのが素敵でした^^

LGBTブームみたいなことじゃなくて、こういう静かな丁寧な漫画があって、
たぶん評判も良くて、って、いいなと思う。私もすごく、なんかいろいろ無自覚で
駄目なことが、ほんと気づかずにあるんだろうし気づいていきたいと思った。

好きで一緒にいる、家族になる、ってことを、誰でもが、他人に強制されるとか
禁じられるとか、逆に奨励されるとかではなくて、自由でいられるようになると
いいのにね。


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