『シスターズ・ブラザーズ』 (パトリック・デウィット/創元推理文庫)

*ネタバレしています。


『シスターズ・ブラザーズ』 (パトリック・デウィット/創元推理文庫)


 舞台は1851年、アメリカ。西海岸へ向かって。
 シスターズ・ブラザーズというタイトル自体がなんか面白いことになってるけど、シスターズというのは苗字ってことで。チャーリー(兄)とイーライ(弟)のシスターズ兄弟が主人公。二人は殺し屋として名をはせていて、提督という男の仕事を請け負っている。
 今回指示されたのは、オレゴンからカリフォルニアまで出張し、ハーマン・カーミット・ウォームという山師を消すこと。
 前回の仕事でしくじりがあって、チャーリーが指揮官ということになり、馬も駄馬しかなくて気乗りしないイーライ。イーライ視点の語りで話は進む。

 兄がキレやすく酒飲みでひどい。が、弟もカッとなると見境なくなってしまう質らしい。
 ゴールドラッシュに沸く中、夢破れてボロボロな人たち、という中、旅していく兄弟。半分くらいは、目的地へ向かう旅で、なんだかたいへんな道のりだなあと思いながら読み進む。私にはちょっとのりきれない感じがして、半分くらいはつまんないなあと思ってた。旅の途中出会う泣いてばかりいる男とか、娼婦とか家族に取り残された男の子とか、なんか、こう、どうなの? 何か深いものを読み取らなくちゃいけないの? 私が読み切れなくてごめん。

 イーライが、タブというちょっととろくさい馬に乗って、そいつにだんだん愛着もってくるのはよかった。私も好きになってくる。けれど、途中で目にけがをして、ダメになった目を抉り出す、その目の穴にアルコールじゃばじゃば注ぐとかいう荒っぽすぎる治療。あげく、タブは崖から落ちて死んじゃう、と。つ、つらい……。けれど、その昔の西部って、そんなもんなのかなあ。生きるのに、動物はもちろん人間にも過酷……。

 マッツの映画「悪党に粛清を」の時にも、西部で生きるのって、あまりにも無秩序つか法なんてあってなきがごとし。力で解決、ガンガン殺されれる、みたいなんだよなー。生き続けるだけで偉業……。

 そして、殺しの標的ウォームは、山師というか科学者みたいなものらしく。水に流せば底に沈む黄金が光輝いて見えるようになるという薬を開発していたのだ。
 ちょっと魔法めいた、西部劇っつーか謎のミステリっつーかファンタジーめいたというか、何その魔法の薬? と思うんだけど、一応、科学って感じ。
 カリフォルニアで先にウォームを見つけて兄弟を案内する係だったモリスという男が、ウォームの口車に乗せられて、提督を裏切ってウォームとともに川へ行き、黄金を手に入れようとしている、とわかる。
 旅の間に、もう殺し屋をやめたくなってしまったイーライは、川で本当に黄金を手に入れている二人を見つけると、一緒に組もう、ってことになる。
 薬品が劇薬で、それを流した水につかったら皮膚がただれてひどいことになり。

 そんなこんなで二人は殺すまでもなく死んじゃうし。ええ~~。あっけない。ウォームの半生のおしゃべりとか面白かった。
 死んだ彼らを生真面目に葬ってやるとか、片手をなくす羽目になるチャーリーが弱気になっていくのも、兄弟の変化が面白かった。
 せっかく手に入れた黄金はインディアンにとられちゃうし。
 途中で隠しておいたカネは火事でなくなっちゃってたし。

 結局、兄弟は母の家へ帰る。イーライが提督をひそかに始末し、殺し屋はやめると決めて。結構お母さんが真面目に優しくて、ほっとした。もう、生きて帰っただけで、すごいよ。

 後半はすごく面白く読んだ。ウォームたちに出会ってからはぐいぐい読めた。だからなんかあっさり死んでしまうことになって残念。というか、ほんと、容赦ないというか、西部劇、過酷……。

 これ、映画になると知って読んでみたのでした。邦題は「ゴールデン・リバー」。映画はだいぶアレンジしてるのかな? そもそも兄と弟が逆になってるみたい。ジェイク・ギレンホールとリズ・アーメットが出てて、リズくんがウォーム役らしく、それはすごくイメージ合うな~と思った。7月に日本公開らしい。すごく見たい。楽しみだ。

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『虚実妖怪百物語 序/破/急』 (京極夏彦/角川文庫)

*ネタバレしてます。


『虚実妖怪百物語 序/破/急』 (京極夏彦/角川文庫)

 去年末に分厚~い、合巻という文庫を買いました。製本の限界を試しているのか……。
 「京極史上最長の超大作が一冊に!」という。タイトル、ついきょじつ、と読んじゃうけど「うそ まこと」とルビあり。序、破、急それぞれの1冊の3巻本もあるね。せっかくだから分厚いのにしましょう京極本だし。と思ったけど読んでる最中には、やはりこれ分冊にすればよかったかな……と思いました。けどまあ、終盤にくると一気読み。この、こ、この、あまりにも、馬鹿が馬鹿で話の腰を折りまくり引き回されるのについていくのがタイヘンだけど本半ばをすぎればこちらも慣れた。

 2016年11月の単行本の文庫化ですね。2018年平成30年12月25日初版。

 「虚構VS現実!」という帯文句があって、読み終わってみればそういう話であった。あまりどういう話か知らず、しかし京極が「不思議とはそういうことだよ」とか榎木津平太郎というキャラがいるんだな? 榎木津?? と、まんまとつられました。

 砂塵の中の遺跡。そこに現れた黒い影。加藤保憲、なのか。

 と、おお? ってそそられて読めば、虚構のキャラクターが、現実に、いる? いるのか?? 現実、どうなってる? メタフィクション? この小説の中に、実在する人物そっくり、というか、モデルというかそのものなのかどうかは私は知らないけれども、まあ、「怪」だとか雑誌の編集者とか作家とか漫画家とか、京極夏彦も荒俣宏も水木しげる大先生も出てくる。獏さんなかなか出ないなと思ったら終盤のほうにでてくる。妖怪好きとかオカルトミステリいろいろ、それぞれ厳密には違うのだ、といいながらどんどんじゃらじゃらみんな出てくる。
 私はこの頃はすっかり日本の小説を読んでいなくて、たぶん若手? たぶん今人気の作家、みたいなのがわからないのだけれども。この作中で大物っぽい人たちのはかなり読んでいる。妖怪馬鹿な人たちの側に自分自身も結構近い。多分、まあまあ、近い。
 延々ぐねぐねどんどん世界が歪んでいくのについていきながら、まあまあ言ってることや出てくる名前、ネタ、が、そこそこにはわかる。でもあんまりわかんない。
 
 そしてなんだか延々と妖怪馬鹿が馬鹿の力で馬鹿ばっかりやってるみたいな、馬鹿、馬鹿がしつこいぞ……って思いながら読むのだけれども、かなりリアルというかシリアスというか、現代日本を憂いている社会派小説だなあって思う。

 世の中にあそび、余裕がどんどんなくなって、だれもかれもがギスギスとして疑心暗鬼を抱いている。妖怪が湧いてくるのは、失われた余裕を求めるあがき、みたいな感じ。

 余裕、大事だよねえ。正論やふりかざす正義ばっかりになるとむしろ世界が滅ぶ。
 その感じはとてもわかる。
 妖怪馬鹿、というゆるみで息をしやすくなるといいのにな~という感じ。

 そして最後まで読み切った時には、ああ、水木しげる大先生が、妖怪の世界へ行ったという、そういう始末がさりげなく、でも巨大な愛を感じられて、不覚にもほろりとしてしまった。妖怪絵巻の中に納まる水木しげる。誰もが納得してしまうじゃないか。
 水木しげる2015年11月没、なんですねえ。

 で、まあ、読み終わった時にはすごくほっとした。よくもこんなぐったぐたに広げまくってかき乱した風呂敷をまとめてたたんで一段落つけたなあ~。さすがすぎる。こわい。と、感心しまくり。
 すべては虚構なのだ。
 虚構VS現実、と、そう思いながら読んだよ。けれど、現実もなにも、私はこの本を読んでいるんだもの。と、読み終わって分厚い分厚い文庫本を持ってめくって眺めて、ああ面白かったなと思い。けれども社会派だったなと思い。
 しかし榎木津の名前でつるのはずるいなあ。

 正直いって、私は、こういう、なんだろう、私が最初見たのはミステリかな、『ウロボロスの偽書』か、竹元健治の。作家が実名で出てきて、みたいなのを読んだことがあって、そーゆーノリっつーかどうにも内輪ネタとしか、いやちゃんと小説で面白いのかもしれないんだけれども、私には、なんか、無理、な、ノリ、と思ったりしてたのを思い出した。なまじ中途半端に実名で出てくる人物を実在の人、って思っちゃうのが、自分の中でうまく収められなくて、私にはなんかヤダという気持ちになっちゃうんだなー。別に登場人物ってことで実名だか実在だか気にしなければいいと思うんだけど。そもそも実名ってわかる人物にしたって本当に実際の人として知り合いとかいうわけじゃなのなー。作家の本読んだりインタビューだとかなんとかで知ってる気になってたとしても、知らないんだし。
 でもなんか、そういうのに私がついていけないのだった。あと下品なのな~。
 久しぶりになんかこういうの読んだなあという感慨。ともかくもこの分厚いの読みましたよということで、満足はしました。読み終えた時の気持ちは、よかったです。

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『風のあこがれ』 (大谷真紀子/北冬舎)

 『風のあこがれ』 (大谷真紀子/北冬舎)


 2018年5月刊。第三歌集だそうです。
 2001年から2017年までという長い期間にわたる歌を477首収めたもの。家族の歌やあちこちへの旅行詠のような歌など、折々の変化を思う。時に挽歌も。歌ですべてがわかるものではないが、その背後に広がる深い思いを十分に感じることができて、自然に歌に、作者に、寄り添う気持ちになりながら読んだ。長く歌を続けるというのはこういうことなんだなと思う。単なる思い出話より優しく深く情景が一行に結晶しているようだった。私はあんまりちゃんと読んで受け取れない読者だと思うけど、あたたかい一冊を手にした気がする。


 いくつか、好きな歌。


  ありったけの力をこめてようやくにこじ開けにけり魔女の抽斗 (p24)

 なんだか固くなっちゃって開けられない抽斗だったんだなあ。それを魔女の抽斗、と表現しているのが面白くて印象に残る。そこにはどんな秘密がしまわれているんだろうか。抽斗がなかなか開けられなかったよ、ということが別世界へ通じるような出来事になる感覚が素敵です。


  この国を出でしことなき私にフランスの香りふり撒きに来よ (p37)

 近藤芳美のこと? 違うかな。遠く憧れの存在、というものがすごく素敵に華やかにあって、あ~なんだかそういう感じ!っていうのがすごくわかる気がする。ちょっとした鬱屈と、でもすなおな憧れの気持ち。フランスって響きはやっぱりいつも夢みたいな感じがするよなあ。


  家猫に留守居をさせてふらふらと梅雨の晴れ間を何処ともなし (p96)

 「夢見る猫」というタイトルがあり。猫かわいいよね猫。猫を飼っていて、猫に留守番をさせて、といっても猫は人間がいないならいないで、ただ気ままに寝たり遊んだりしてるだけだろうなと思うんだけど。梅雨の晴れ間、気持ちよくってあてのないお散歩をして。うちには猫がいる。最高だな~!


  古椅子に言葉のように置かれいし綿毛タンポポ恥ずかしげなり (p114)

 言葉のように、と例えているのが素敵だ。綿毛のたんぽぽを古い椅子にそっと置いた人がいるんだな。置いた人も見つけた作者もちょっとふふって微笑んでる感じがして読んだ私もふふってなりました。


  向日葵のぱんと咲きたる笑い声ふとく捩じれて天にも届け (p130)

 ぱん!って咲いてるという鮮やかさが夏の空の色、向日葵の黄色とくっきり見えてくるような歌で印象的。強くてさわやかな歌でいいなあと思った。


  カップ持つしばしをちょいと一字あけ のような倉敷天領の町 (p159)

 カップっていうのはコーヒーカップマグカップのようなことでしょうか。この歌の調子だとお酒、って思うのは私が酒好きだからでしょうか。ともあれ、ちょっと一息、が「一字あけ」って感じなの、わかる~と思います。「倉敷天領の町」というきっぱりした結句で、倉敷、いいところだろうなあって思えます。
 確かな重みのある歌集読めて面白かった^^


  

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『炎の色』 (ピエール・ルメートル/早川書房)

*ネタバレしてます。


『炎の色』 (ピエール・ルメートル/早川書房)


 『天国でまた会おう』に続く第二部。三部作構想だそうで、次のはまだ出てない、かな。この本は2018年11月刊行。

 舞台は1927-1929年、1933年の二部構成。天国の後7年ほどすぎて、エドゥアールのあの父の葬儀のシーンから。姉、マドレーヌの息子、ポールが7歳になっている。マルセル・ペルクールの柩が屋敷を出てゆく、その時に、ポールは3階の窓から身を投げた。

 前作から時間過ぎているし、エドゥアールのこととかは本当に一瞬名前が出る程度。主役はマドレーヌ。強い意志を持つ大金持ちのお嬢様であった彼女が、大事な息子が車椅子生活になる苦しみを抱え泣き続け、信頼を裏切られ、庶民の暮らしに身を落とし、陥れた奴らに復讐していくという物語だった。
 前半ではただただ翻弄されるマドレーヌという感じだったのが、後半には時に悩み迷いつつも復讐計画を練り上げてやり遂げていく根性に感動する。戯画的ではあるけど、登場人物みんな生々しくて、あ~も~~~お前ら~~~ってハラハラわくわくしながた読んで、そこそこ分厚い一冊だけど一気読みしてしまった。

 厳格パパがさあ、娘を心配してこの男なら年上だけど実直さの面で安心だろうと再婚話をもちかけた銀行の管理職のギュスターヴ・ジュベールが、一度マドレーヌと共に銀行を手に入れられるかも、って思ったあとに破談にされてじわじわと裏切っていくの、そんなの酷い!と思うけど、うーん。マドレーヌのほうも結構酷い、って感じもあって、なかなかすごいうまい複雑さ。侍女のレオンス、美人でしたたかで、一瞬、マドレーヌとラブに? と思わせておいて違ったーとかも、まさに作者の思うつぼにはまってしまって読み進めるのほんと面白かった。

 ポールくんが何故飛び降りちゃったのか。なかなかわからなかったのだけれども、家庭教師でジャーナリスト志望のマドレーヌのツバメだった男が、実はショタコンでポールを密かに襲ってたのね……。酷い。アンドレ、お前、マドレーヌとか他の女とかともたっぷりやってたじゃん!! 自分の本当の欲望を隠して隠してそんな酷い事して。痛快な皮肉正論みたいなコラムを書いて人気ものになっていって。お前こそ死ね、と思いながら読んだ。復讐されてよかった。

 ポールが、心塞ぎ、苦しんでいたのを救ったのは、看護に雇われた、フランス語わかんないままどんどん世界を明るくしちゃうヴラディ。オペラのレコード。
 イタリアのオペラ歌手、ソランジュ・ガリナート。彼女の歌に魅せられたポールはオペラに夢中になり、生きる希望を得た。その歌、音楽の美しさが、小説だから当然言葉だけで描写されていくわけだけども、なんかすっごくよくって、うつくしくてわくわくできて、音楽をこんなに言葉だけで表現できるのかあ、と読んでてうっとりした。素敵だ。彼女の歌を聴きたいってすっごく思う。ナチス台頭してきている頃のドイツでひらくコンサート、その駆け引きと迫力。すごいかっこよかった。
 
 ポールが段々成長してきて、性の目覚め? と、マドレーヌが母としてどうすべきか悩んだりしていると、実は広告戦略に興味があるんだ、って、なんか美容クリームみたいなのを作って売って儲けるぞ、って商売始めたりするのすごい展開だし。なんだそれ。
 でもちゃんとなんとかうまいこと、マドレーヌに協力しているデュプレさんがおぜん立てしてくれるのねー。

 デュプレさん。前作ではプラデル中尉の部下としてなんかいいように使われてた人か、と、私はあんまりちゃんと覚えてないけど、その彼が今度は主要人物になってる、控え目な、善人ではなく悪人でもなく、という複雑さがよかったなあ。マドレーヌとの付き合い、生涯ともにすることになって、でも、ずっとお互いをさん付けで呼び合いました、っていうその感じ、すごくよかった。

 マドレーヌの復讐は、銀行屋実業家や政治家相手だったりするので、経済問題とか政治情勢みたいな、当時のフランスの歴史背景みたいなこと、実際の事件のモデルがあったりするようで、フランスのこともっと知っていたらもっと深く、うんうんわかる、あれね、みたいに楽しみ倍増したりするのかもしれない。わからなくても十分面白いけど。

 そして時代は第二次世界大戦へ、というエピローグ。ポールも戦争へ行き、みたいなことらしく、そういうその後が本当に少しだけあっさりさらっと書かれているのも余韻が深い。大河ドラマみたいにたっぷりのボリューム読んで大満足って感じ。面白かった。

 次作は1940年代らしい。エドゥアールたちを手伝ってた小さな女の子ルイーズが主人公になるらしいとのことで、読みたいな~待ち遠しい。楽しみ。

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『Perfect Quartz (完璧なる水晶) 葉山編』 (五條瑛)

*ネタバレしてます。

『Perfect Quartz (完璧なる水晶) 葉山編』 (五條瑛)


 韓国で重要な地位を得ている財閥のトップから、米国軍部へ亡命話が持ち込まれた。ヨハン、北の指導者の息子である。弟が権力の座をつぎ、海外で教育を受け育ったヨハンはどこからも厄介者扱いされる存在となっていた。
 彼を受け入れることができれば、北に隠されている何か、かつてない中核部分の情報が手に入るかもしれない。横田ではエディ自らが動き出し、葉山もそのお供をすることになった。

 かつてスパイ活動のみならず大金を稼ぎだしていたカタツムリ。国外で力を伸ばす誰も正体をしらない完璧なスパイ、「石英」。過去の秘密を追う葉山。ヨハンの亡命話は順調に進み、本人との条件の話までつめていたが、ヨハンは空港で暗殺されてしまう。
 カタツムリと石英はつまり一人の人間なのでは。本当に裏で糸をひいていたのは、引退して息子を隠れ蓑に、生贄にした京星グループの、社長。エディと葉山が詰め寄ってもその男の信念はみじんもゆるがないのだった。


 2018年10月刊行、でいいのかな。アマゾン電子書籍での個人出版。私はオンデマンド印刷の本で買いました。
 『スパイは楽園に戯れる』というのが2016年に出てるね? 雑誌連載時は「パーフェクト・クォーツ」というタイトルだったらしい。んで、本は読んでる、けど、あんまりちゃんと覚えてないな~私~。ヨハンの亡命話、この本は楽園とはまた全然違う感じ、か。こんながっつりと新作書き下ろし? お話としてはスリー・アゲーツだっけ、なんかそれから直後っぽい気がするけど。スリー・アゲーツももうかなり昔だよね? 読んだ、のは覚えてるけど内容をきちんとは覚えてない。うう。全部読み直して読みふける一ヵ月とか作りたい……。

 それはともかくも。韓国での大統領の不正で政治的大問題だとか、金、なんとか、あの、彼が空港で暗殺だかなんだかされた、あの事件、が、織り込まれていて、さっすがハードでリアルな問題の裏の裏の裏では何かが、みたいなのすっごく読み応えあって面白かった。さすが。ほんと。これ個人出版しなくちゃダメなの? 通らないの? 私はまあ何にもわからないんだけど。ともあれ、なんであれ、読めてよかったー!すごい面白い。


 んで。話が面白いのは勿論ですが。キャラもえもしまくってしまうので、今回、エディが葉山くんと一緒にお仕事~! わ~! とか思ってたら、すごい想像以上に、一緒に、い、い、一緒に、すごい、一緒にいて、エディ優しい……。葉山くんは相変わらずこの上司最悪って感じでいるけれどもっ。でもなにこの、二人のらぶらぶ……同人かな? 夢か……あ~~~。

 一緒に高級ホテルにお泊りで、お食事で、プールで。葉山くんてば溺れかけて助けられてその時思わず噛みつくとかなにそれ!えっろ~~~~(*ノωノ) まあお出かけもお食事も仕事絡みですが。あまりにも、妄想的シュチュエーション~~~。
 そしてヨハン暗殺の報道にショックでエディのマンション行っちゃう葉山くんな。雪が降ってきてもう遅いから泊まっていけ、ってな!!!!! な、な、なにこの、ゆ、夢……妄想が公式様からご褒美で降ってきた……(*ノωノ)
 そしておまけショートは髭剃り~~~~~~~っっっ!!!!! めっちゃ大好きなやつさいこうえろす。命あずけちゃうやつやんけーーーっああああああ~~~。
 はあ。
 めちゃめちゃかっこいい。凄い。すごい、ご馳走さまでした……。

 この本が出てくれてよかった。読めてよかった。しあわせ。ありがとうございます。次~続き~もっと~~~読みたいですっ。あるんですよね「半島の猫目石」!? 読みたい~~。待ってます……。

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『Blue Paradise in YOKOSUKA』 (五條瑛)

*ネタバレしています。


『Blue Paradise in YOKOSUKA』 (五條瑛)

 2018年10月、初版、っていうのかな。アマゾンで個人出版? 電子書籍をオンデマンド出版? っていうのかな、えーと。とりあえず私はキンドル? 使ったことなくよくわからないので、紙の本で買いました。

Fuyuki Sakashita of NCIS
 とのことで、坂下冬樹視点でのお話。海軍の脱走兵が自殺したとみられる事を発端に、軍で薬の密輸が行われているのではないか。しかも訓練中に、という疑いを追う話。葉山隆も首をつっこんできて、それは単なる自殺ではない、という直感を追っていく。

 事件そのもの追っていくのも面白かった。けど、なんだかんだ葉山くんが愛されてるねえという感じがまたすごい可愛くてよかった~。
 危ないかもしれないから銃を持たせようかと言うと、エディが射撃練習してやろう、って、まさに手取り足取りって感じで、後ろから抱きながら言い聞かせてるシーンがあり、悶絶。えろすぎる。いや、まあ、射撃のコツを教えてあげてるだけなんですけど。けどーっ。

 銃に弾が入ってようがなかろうが、絶対に仲間に銃口を向けるな、と言い聞かせる。危なかっしい葉山隆。エディが大事に抱え込む末端アナリスト。
 しかしこの話の前に、私はパーフェクトクォーツを読むべきだったのかな? なんかあった?? とちょっと疑問。というか鉱物シリーズ全部読み返したくなるよ。もえる。

 事件は、やはり密輸に絡むチームがあり、それを突き止めて解決。艦隊で一日だけのおたのしみ水泳大会? ってので、悩み込みがちな葉山くんを泳がせてやろーぜ! って海に飛び込むシーンで終り。
 飛び込むのに躊躇する葉山を坂下が抱えちゃってさー。びっくりさせるために、「エディが結婚する」って言う。えっ。 単にびっくりさせるための方便なのか、もしかしてほんと? ええ~~どういうこと~っと気になったよー。どーなの~。
 ともあれ、今作もめっちゃめちゃ面白かったです。好きだ~。

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『星条旗の憂鬱』 (五條瑛/文芸社文庫)

*ネタバレしています。


 『星条旗の憂鬱』 (五條瑛/文芸社文庫)

 情報分析官・葉山隆

 2018年12月刊。
 2018年4月から5月、電子書籍での個人出版「Analyst in the Box 1」を改題したものを文庫化しました、というもの。書下ろし掌編つき。

 電子で、葉山隆の短編が出てる??? と去年知って、ええ~どうしようと思ってた所、オンデマンド出版もありになったので、紙で買ってました。けどまだ読んでなかったの。そして文庫で本屋で売ってる新刊? 新刊?? あ、電子のが文庫化したのかあと、文庫も買いましたね。掌編ついてたし。葉山くんと坂下くんのご飯シーンでした。
 ちょっと、この位置づけを把握できてない。どの辺の時系列なんだろうか。革命シリーズ後の世界? 短編集の6話目には亮司もサーシャも登場してて、(たぶん迎えにきた運転手はキラ? わからん)うわ~豪華~~っともえころげました……。

 葉山くんが坂下くんと仲良くちょっとした事件解決、みたいな感じ。6話入ってて、特に関連があるようなわけでもない。日常系スパイミステリみたいに言えばいいのか。エディの無茶ぶりをがんばってこなす葉山くん。けど、隆の方も謎を投げかけられたらぐいぐいいってしまう性質なので、結局仲良くお仕事できてよかったねって感じ。不穏な気配はありつつも、短編で解決のネタなので、なんだか茶番だ、みたいなのもあったりしてさくさく読んでしまった。もったいない。もっとゆっくり噛みしめたい。けど面白くてすいすいいってしまう。好き。

 サーシャに誘惑されそうで心配されてるんだなあ葉山くん。無自覚な危うさが今作でも大変でとてもよかった。
 喪服きてエディの代理で葬儀に行け、とかで、喪服美人~ってなってたり、ステキなレストランでエディとお食事だったり、スイートルームでサーシャにカサブランカの花束もらったり。あああ~相変わらず、素晴らしいシーンの数々でときめきまくってしまう。好き~。
 
 しかしこれ、前から全シリーズ読み直したくなるけど。うーん。なかなか。ともあれ、キャラ萌えをたっぷり堪能させてもらいました。勿論スパイミステリ的な感じでお話も面白かった。もっと永遠に読んでいたい。素敵です。

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『焦土の鷲』 (五條瑛/徳間文庫)

*ネタバレしています。


 『焦土の鷲』 (五條瑛/徳間文庫)


 2018年12月刊。文庫書下ろし。

 敗戦時の日本。敗戦濃厚な中、密かに命じられた書類を届ける男。元は歌舞伎役者だった彼がようやく引き上げて帰国すると、歌舞伎座が空襲に焼け落ちていた。だが、一座に復帰し、にいさんにいさんと慕う香也と共に、GHQの曖昧な規制をなんとかくぐり抜け、芝居を続けなくてはならない思いはゆるぎなかった。
 戦犯として捕らえられている者へ、ひっそり面会し、秘密任務を与える日系アメリカ人のリオン。GHQとて日本を根こそぎひっくり返したいわけではない。日本が上手く復興するほうが利益になる。日本社会の混乱や、共産化を防ぐ任務をやり遂げる有能で強い意志のある日本人が必要だった。

 てことで、日本国内におけるアメリカの命をうけつつ日本を守る極秘スパイみたいな所の物語。そこに戦後期の歌舞伎とか芝居、映画って文化面絡んでの物語。ソ連からの共産化の動きを密かに阻止、みたいなスパイ合戦的な所と、軍人だったものの歌舞伎役者として生きる辰三郎と香也ら一般人の生きざまみたいな所とが描かれている。
 天皇体勢を守らねば。という歴史的な所はわかってる。んでも知識人とか演劇界隈の共産主義傾向みたいなのもあるよなあって思う。思想、主義的なものと、でも結局末端の庶民は苦しいみたいなのと、原爆被害にもあった、そういうのがエンタメ作品として描かれていて、さすがうまい。面白かった。

 個人的好みとしては、もっと~ねちねちじっくり描いて欲しいと思うど、文庫本一冊、ってことだとこのくらいの塩梅にしないとって感じかなあ。死を運命づけられた香也くんがあまりにも天使で、わかってたけど最後、まさに天使のように宮本の告解受けてく感じとかちょっとうるっとくる。
 けど、単に天使じゃなくて、今後の禍根をたつかのように、宮本に死が降りかかる感じ、さすが~。残酷な天使って感じ、よかった。

 本筋としては、歌舞伎を守るとか天皇制維持のためにとかのスパイ合戦。んでも最初と最後の、敗戦ぎりぎりの辰三郎が行った極秘任務、関東軍の隠し金を隠し通す、みたいなのって、これは~、革命シリーズの方で、なんかそういう感じじゃなかったっけ、と思う。アジアの虎とかなんかそういう、えっと。もう記憶曖昧だけど。ちょっと、そうだっけかな~と思ってときめいた。ま、そこはなんかともかく、ひっそり謎の任務があったりしたんだなくらいでいいか。でもまた革命シリーズ読み直したくなるよねえ。

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『短歌こぼれ話』 (大島史洋/ながらみ書房)

 『短歌こぼれ話』 (大島史洋/ながらみ書房)


 2017年10月15日刊。
 「短歌往来」の2008年1月号から2016年12月号まで9年間の連載の「落書帖」から95話を選んで収めたものだそうです。


 雑誌連載ってことで一つ一つ、本だと見開き2ページ余りの短い読み物。大島さんの声が聞こえてくるような文章で軽妙っていうのか、切れ味がお見事で、リズムよく読める。いろんな知らないこと、大島さんが読んだこととか思い出話を教えてくれるという感じですごく面白かった。

 大島さん、ほんっといろんな本読んでるんだなあ。古い本も今の本も。そして、お、これ面白いってことを書いてくれてるから、面白いの間違いない。そして、お、これなんだ? と思ったことを調べてみた、って書いてくれてるから、へ~って思う事いっぱい。よくこんなに知ってるなあとか、知らないからって調べてみるもんなんだなあとか、思考の断片を読ませてくれるから、すごい一緒になってその本を読んだり調べてみたりする気持ちになる。気持ちになるだけで、大島さんがすべて教えてくれてるわけですが。博識とか教養とか、大島さんならではの交友とか長い時を持ってる思い出とか、すごいよねえ。

 子規とか茂吉とか、土屋文明、近藤芳美という有名どころのお話。もっとマイナーというか、すみません私が全然知らないだけでほんとは有名なのかもしれない歌人のエピソードいっぱい。こんなに毎月よくネタがあるなあって感動する。

 若い頃の思い出話で、近藤さんちから原稿諸々預かって帰る途中、電車に忘れたのを、近藤夫人からの電話で知らされた話とか。若き大島史洋さん、どんなに可愛かったでしょうね、と勝手な想像をしてふふってなったりした。しかし、想像するだに恐ろしいわ~~未来のあの原稿歌稿を置き忘れるとか。今、私も未来の割付のお手伝いしてるので。人の原稿の重みとか、思うと、いや~~~っ……こわい。

 大島さんの文章は本当に喋ってる感じがすごくする。私は未来のあれこれの選考会でテープ起こしをさせてもらっていて、その時にも思うのだけど、ちゃんと文章で喋れるんだよねえ。すごい。この本読みながらも、大島さんの声や喋る感じがすごく聞こえる気がして楽しかった。なんでしょうね。文章のリズム感みたいなの鍛えまくってて洗練されまくってるんだろうなあ。多分大島さんを知らなくてもこれは軽やかに読める文だろうなと思う。内容も、知らない人にでも優しくて、教えてくれてるけど全然エラソウじゃなくて、楽しそうにしてる感じがわかるので、読みやすい。
 これはぱらぱらひとつひとつ、ゆっくりと読みました。表紙のフクロウも可愛くてよくって、すごくいい本だった。


 てことで、今月個人的に短歌関係読書強化月間達成しました。……本をためるのはやめようと、反省。

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『めくるめく短歌たち』 (錦見映理子/書肆侃侃房)

 『めくるめく短歌たち』 (錦見映理子/書肆侃侃房)


 2018年12月21日刊。
 NHK短歌に連載していた「えりこ日記」と、他と、穂村弘との特別対談つき。

 雑誌連載の時にちょこっと立ち読み(ごめんなさい)したことはあった。短いエッセイ集でとっても読みやすくて、紹介されている短歌や歌人友達とか、恋の話もみんな優しく思えました。
 好きな短歌とか好きな友達とか、好きな人、好きな事、好きだったあれこれ、作者の大事なことを、素敵なお茶とか飲みながらお喋りして教えてくれているみたいな読み物だと思う。

 昨日未来の新年会がありまして。楽しかったけど疲れたってのもあって、ベッドに籠って読んじゃった。そんな無気力ゴロゴロ状態な私にも読んで優しくされた気がする、って思わせてくれて、いい本だな~。

 基本的には短歌にまつわる思い出話。歌人の友達。こんなに素敵な友達とのたくさんの思い出がとってもいいなあ羨ましいなあと思う。それは作者が出かけていったり会いにいったり、率直に話をしたりしていくからこその瞬間瞬間で、そういう出来事をおすそ分けみたいに見せてもらえた気持ちになる。そして、短歌っていいなあ。短歌やってるっていいなあと思った。
 自分も短歌やってるじゃん、と思うのだった。昨日もいっぱい歌人にあって、おお~なんか感動、という感じがあったりした。けど、あれ、なんか、自分、全然ちゃんとできてないと反省したり。

 勿論ね、とてもうまく素敵に読ませるように描いて見せてくれているのだ。誠実な筆致に惹かれました。穂村さんとの対談も面白かった。小説書くのと短歌とで苦しかったりもしたのかあと知って、でもちゃんとそれがすごくいいものとして世界に届けられて素晴らしいって思う。
 ほんの少しですが私も知っている方のエピソードもあって、読みながらすごく声が聞こえてくる感じで面白かった。

 紹介されてる歌もたくさん、どれも魅力的。この日記に引用はしない。エッセイと一緒に読んでますます素敵だから。それぞれに歌集を読んだりして好きになるとのはまたちょっと違う、丸ごとを読めて、よかったです。

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