映画 「どん底作家の人生に幸あれ!」


 *ネタバレします。

映画 「どん底作家の人生に幸あれ!」


 デヴィッドが産まれるところから語り始められる物語。19世紀イギリス。父は既に亡くなっていて、「カラスの家」といううちに産まれた男の子。
 母の再婚によって新しい父ができたものの、うとまれてロンドンへ追いやられる。
 瓶詰工場で働きながら大きくなって。貧しくこき使われるばかりの人生を変えるべく、叔母を頼っていく。
 

 なんかヘンな邦題つけられちゃって~、ですが楽しみにまってました。
 原題は「The Personal History of David Copperfield」。デヴィッド・コッパーフィーフルドって。ディケンズの半自伝的小説、だとか。
 私はディケンズ読んでないですー。おはずかしい。けどまあ、オリバー・ツイストとか? クリスマス・キャロルもか。有名作家ですね。と、その程度しか知らないなりも面白く見ました。

 登場人物がめっちゃキャラ濃い~。うるさいわ。ドタバタコメディみたいなんだけど、がっつり貧しい階級社会ですよ。辛い……。
 
 お話ふむふむと見ていたら、ぎゅるっと場面転換になって、おっ、とびっくりしたシーンが何度かあった。空想のお話が入り混じったりしているのか。
 見せ方が凝ってるな~と、そんなこんなも面白かった。作家として成功、めでたしめでたし、ですね。

 ベン・ウィショーくんが目当てと思って見に行った。悪人役だった~。ヘンな髪型。ヘンなキャラ。のし上がっていきたい、人を騙してのっとってでも、というユライア・ヒープ。ティルダ様が演じる叔母さんとビンタの応酬してて凄かった。さすが~。
うまいな。ヘンだけど素敵でした。好き。

 デヴィッドが学校行って知り合った、貴族階級らしい友人、スティアフォースくん。彼はゲイだったんじゃないかなあ。はっきりとはわからないけど、なんか、苦悩して迷走してた感じがなんとなく。どうなのかはわからないけど。でもなんか、そう思えて気になっちゃった。それぞれの人生……。

 キャスト豪華だしみんなうまいし、とにかく濃いし、でも軽やかですごいバランスだった。見にいけてよかったー。

 

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映画 「さんかく窓の外側は夜」


*ネタバレします。


映画 「さんかく窓の外側は夜」


 三角(みかど)には霊が見える。子どものころからで、大人になった今も見える。ある日、勤務している書店で男に声をかけられる。見えていることを見抜かれ、きみがいるとよく見える、と、勝手に除霊の手伝いをさせられた。
 男は冷川。助手になってくれ、時給は倍出す、と誘われた。「ぼくといると怖くなくなりますよ」、と言われて三角は、冷川を手伝うようになる。


 原作のコミック、面白いって評判は知ってたものの、読んだことはなかった。
 岡田将生と志尊淳のW主演ってことで、楽しみにしてたー! キャストのビジュアルは最高! みんな綺麗だ~。

 お話としては、見える、側の三角くんや冷川、人を呪い殺せる魔女っぽいヒウラエリカたちの抱える過去とか明かしつつ、呪いの因縁解き明かしていく、みたいな感じ、かなあ。
 多分、なんか、こう、ワタシは好きそうな感じがするのに、どーーーーにも話がつまらない。何が悪いんだ。なんか、なにかにつけて、下手くそか????? という気持ちがする。

 テンポがゆるっゆるだなあと思う。ゆっくりした間をとる。けど、なんかやたら情感こめようとしているけれど、なんも響いてこない。全部がゆるゆるすぎるのかなあ。緩急つけてくれ。

 冷川さんの過去とか激重いのに、あんま悲劇っぽさが伝わってこない。冷川さんもエリカも親に捨てられた子ども、って感じだけど。だから今から取り戻す、の、かなあ。でもなー。
 
 最初敵対してたエリカと、三角くんたちが、共闘みたいにして大きな呪いを解く、みたいなラストだけど、なんか、ん~~。何やってんのかいまいちよくわからないまま。
 いやまあ、バトル漫画じゃないだろうから、あれはああいうもの、と、いうことでいいのか。んん~~。

 警察の半澤さん。滝藤賢一さんがやってて。大河ドラマ麒麟がくるにドハマリしてる私は、お~公方様~なんて思ったり。けど勿論全然違ってて、半澤さんだけが地に足がついてる、ナチュラルな人間ぽさがあって、すっごくよかった。あ~普通の人間側の人だ。
 対比的に、三角くんとかたちが浮いてるのはまあ、そういう人物像として納得。

 でもこれで、呪いの貯金箱みたいなのが壊せてよかったね、ってめでたしめでたしでもないようなラストで、エリカにはまだ呪いがつきまとってるのかなあ。

 というかこれ、やっぱりどうしてもこんなにつまらないのが腑に落ちないと思った。

 で、見終わってから、うーん~とちょっと悩んで、漫画買っちゃった。電子で。5巻までお得なセットがあったし。とりあえず読んでみる。
 今は2巻まで読み終わって、すごく面白いわ。やはり……。映画化が、うーん。ビジュアルはともかく、話まとめられなくてダメだったのかなあ。
 9巻まで出てるみたいなので、多分、これ、読んでいくかな。まあ、漫画に手を出すきっかけになってくれてありがとうかもしれない、かなあ……。

 
 横浜でロケしてるな? と、私でもわかるような場所が出てきて、お、あれは!? なんて気になったりもして。
 それにやっぱり、今、呪術廻戦にドハマリ中なので、呪いを祓う~みたいなのは、五条先生呼んできて~とか、霊が見えてつらいみたいなのは、高専においでよ三角くんっ、て思ったり、ほんと余計なこと考えて連想してて、自分がダメだった。
 いやー。うーん。まあ。漫画読も。

 

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映画 「キング・オブ・シーヴズ」


 20日(水曜日)に見に行ったのでした。

*ネタバレしてます。


映画 「キング・オブ・シーヴズ」


 ブライアンは愛する妻と静かに暮らしていた。だが妻を亡くした後、彼女に秘密にしていた昔の稼業に誘われて、行動することにしてしまった。ロンドン随一の宝石店の集まる場所の、貸金庫。そこに眠る宝石をなんとか奪えないか、計画を進め、仲間を集めていく。セキュリティやシステム破り担当のバジル以外は、みんな高齢者の、金庫破りチーム結成だ。


 て、2015年に実際あった事件ベースだそうで。世界中を驚かせた事件、って、でも、私はちょっとピンとこないけど、でも、まー映画化されちゃうね、こんな事件。
 なんとなく、愉快なじーさんたちの泥棒コメディかな~って思っていて見に行きました。でも、そ、それほど愉快な泥棒じーさん、って感じではなかった。悪いジジイたちだった。まあ、ほんと、わりと最近の事件で、当事者生きてたりだし、そうそう美化というか、泥棒たちいい感じにはできないかな。うん。

 じーさんあるあるみたいな小ネタでちょいちょい笑ったりはした。でもじーさんチーム、仲悪かったりして、険悪ムード。孫がいても、昔ワルだったジジイたちはやっぱ悪で、じーさんたちだからって人間できてるわけじゃないよなあと当たり前なことを改めて思いました。ジジイ、反省しなさいよ……。

 とはいえやはり映画ですから。マイケル・ケイン主演で。すっごい素敵。さっすがの上品さ。さっすがの色気! かっこいいじーさんすぎる。んで、あーこの人、性根が悪~というムードも出してきますから。ああ~。こわい。ひどい。妻がずっといてくれたらよかったのに。
 
 金庫破りそのものは、トラブルありつつも無事成功。人殺すわけでもなく綺麗な仕事だったかなあ。けれど、その後の分け前でもめたりして、最初に話もちかけた若造くん、システム担当のバジルくんを追っ払うみたいにしたりして、ジジイたち強欲~。でもバジルくんは唯一逃げおおせたらしく、また捕まってないらしい。凄いな。一番いい宝石まんまと盗っていったいったみたい。この映画、どこかで見たりしたのかなあ。

 警察がちゃんと有能で、監視カメラだとかいろいろ、それなりにさくさく捜査していって、ちゃんと捕まえていったのもよかった。というか、ちゃんと捕まってなかったらそもそも映画にならないかー。そして警察ちゃんと有能、って描かれるのは安心でもあって、よかったわ。

 最後、裁判に向かうために囚人服からスーツにお着替えするじーさんたち。ジジイたちとはいえやはり、素敵だよねえ、俳優だし。持病を言って同情をかおうとか、いやそういうの言うとかえって反感かうからやめとけとか、ジジイたち、ほんときみたち反省しろよ、と思って笑ってしまう。
 最初思ってたほど楽しい映画というわけではないけれども、ははーんこういうの、うむうむ、って、クスっと笑えて、ジジイ俳優たちを堪能できてとてもよかったです。

 マイケル・ケインは、この事件の映画化あれば話がくるかもな、って思った、とかなんとかインタビュー記事読んだ気がする。なんかそれいいな~と思った。マイケル・ケインの若き日の姿もちらっと出たりして、もうほんと色気がただならぬ。素晴らしい素敵でした。音楽もよかった。満足です。

 

 

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映画 「聖なる犯罪者」


 19日(火曜日)に見に行ったのでした。

*ネタバレしてます。


映画 「聖なる犯罪者」


 少年院にいるダニエル。所内で行われるミサの手伝いをよくしている。神父に、神学校へ行きたいと相談はしたが、犯罪歴のあるものには無理なのだった。
 仮釈放。雇ってもらう予定の製材所へ向かうものの、通り過ぎてその街の教会へ行ってみた。司祭なんだ。と、意味なくついた嘘が信じられてしまい、そのままその教会の司祭の代わりを務めることになる。
 ぎこちなく型破りながらも、トマシュと名乗ったダニエルは司祭として行動し、街の人々との交流を深めていく。

 2019年製作、ポーランド・フランス合作。ポーランド語なのでしょうか。私にはまったくわからない言葉で素敵だった。
 実話ベースらしい。
 そんなことってある??
 とはいえ、もちろん映画なので映画ならではの脚色は多いいにされているのだろう。でも、ダニエルは偽者とわかって、そして、その後あの街の人たちはどうしたんだろう、と、つくづく思ってしまった。あの教区の人達にとって、ダニエルの存在は深く大きなものになっていたから。

 若すぎるわね、みたいに見られていて、でもだんだんダニエルの言葉、祈りの真摯さは人の心をうつものになっていた。
 その街で、一年ほど前に起きた悲しい事故。若者たち6人が乗っていた車、衝突事故で、相手側1人と、7人が亡くなる事故が起きていたこと。
 若い子どもたちを失った遺族は哀しみをいやすことができずにいて。でも事故った相手も街の人で、その運転手は同じ墓地に入れられず、葬儀も行われず、という状況だった。

 ダニエルはその問題に取り組む。積極的に遺族の悲しみに向き合い、ともに乗り越えようとし。運転手側も同じく亡くなったのだし、憎みあうのではなく、ともに、葬り、祈り、癒すことをめざしていく。
 それは、正しい。正しいと思う。だが子どもを失った親が受け入れがたいのもわかる。わかる。でも。

 聖職につきたいと願うダニエルの思いは真剣。だけど、外に出たら躊躇なく酒、ドラッグ、セックス、ってガンガンやって。製材所で真面目に働くのはなんか嫌そうで、狙ったわけではないにせよ嘘のまま教会に入り込んで、なんとかしようとしちゃうの、きみは一体なんなんだと思う。
 街の若者たちと仲良くなってダメだけど、と控えめに笑ったりもしながら酒飲んでタバコ吸うしヘヴィな音楽でノリノリにもなっちゃう。
 ダニエル。
 きみは何なんだ。

 それでも、祈り、より良い方へと導きたいような真摯な思い、嘘ではない切実さがあって、それが教区の人にも通じて、受け入れられて。でも事故のことをなんとかしようとするのは反感かって。でも。でも。でも、ほんとは受け入れるべき? その迷い苦しみ、いろんなことが、ダニエルがあの時あの場所で、神の代理人だったのかもと思えて、凄かった。
 映画見ながら、何故? どうすればいい? 神よ。と、祈り、問いかけたい気持ちになる。


 少年院をやはり仮出所して製材所で働きにきた子にバレて脅されたりして。少年院でお世話になった本当のトマシュ神父にバレて連れ戻される。
 神父は、教区にいるダニエルを、ひそかに連れ出そうとするの、あれは、バレて教会の立場が悪くなるとまずい、みたいなことなのか。あの教会で、確かに司祭であるダニエルの姿を尊重したのか……。ダニエルを信頼してたみたいだし、裏切られた気持ちになって辛いよねえトマシュ神父も。複雑。

 少年院に戻ったダニエルはなんか因縁ありげな囚人たちに囲まれて、なんか決闘みたいになって。喧嘩して血まみれになって。走り出す。
 逃亡するのかなあ。したのかなあ。
 ダニエルの嘘は。神を求めた姿は、嘘ではなかった、はず、だけど。……わからない。

 前科があっても神学校に行ければ、もっとまっとうになったのだろうか。でも無理だったかも。ほんとわからない。ダニエルの複雑さがすごく魅力的だった。

 主演の俳優さん、バルトシュ・ビィエレニア、という、ポーランドで若く活躍してる人らしい。とても良かった。青い目が印象的だったし、なんか危うい姿が、佇まいだけで訴えかけてくる。
 ポーランドかあ。信仰深いところらしい。私、ほとんど何も知らない。何もわからないなりにも凄く考えちゃった。この映画見られてほんとよかった。見に行ってよかった。

 

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映画 「ワンダーウーマン1984」


 随分間が空いてしまった。年末年始タイヘンだったし……。
 去年まとめをすべき、と思いつつ、去年見にいった映画でまだ感想メモしてないやつを書いておかねば。

*ネタバレします。


映画 「ワンダーウーマン1984」

 去年12/18の公開日に見に行きました。もう地元に行ってた時で、ひっさしぶりに昔行ってた映画館に行きましたわ。IMAXスクリーンもあった。時の流れを感じたね……。

 で。
 予告で、クリス・パインが。というかスティーブね。彼がまた復活してるので、どうして?? どうなってんの?? というのが最大の関心事でした。延期を乗り越えて公開してくれてありがとう~。

 舞台は1984年。
 ダイアナは美術館だか博物館だが勤務している。一般人として暮らしながら、街の悪を懲らしめる日々、みたいな。
 どうにも冴えない女性、バーバラが新しく入ってきた古代の美術品の鑑定に、FBIから謎の石が持ち込まれる。願いをかなえる、と記された石。所詮古代の単なる祈りの文字と思うその石に触れ、バーバラが願ったのは、素敵で強いダイアナみたいになりたい、ということ。ダイアナが願ったのは、もう一度、あの人に会いたいということ。


 ってことで、なんか神の力が宿った? 謎の石のパワーで、願いがかなって、スティーブが蘇ったのね~。けど、それ、その辺の一般人の男の体にスティーブの魂が宿った、みたいなことらしい。ダイアナにはわかって、クリス・パインの姿で見えるようになるんだけど、別人ですよね??? いいの? その乗っ取られた男の体と魂はどうなってんの??? 酷くない??? と思うのに、再会できた~! と、ダイアナとスティーブはラブラブバカップルになってる。ええええ。いいの~? かなり不思議だった。

 石油開発の先行投資の胡散臭い会社で儲けようとしているマックスが、借金なんかで追い詰められて、石の力で世界中の願いを叶えるよーもちろん俺の願いもな! みたいな悪役でした。
 でもその辺わりとどうでもいい感じに見えちゃった。
 スティーブとダイアナの方が気になっちゃって。

 石の力から逃れるには、願いを取り消さなくてはいけない、らしい。かな。こまかく覚えてないけど。とにかく、願いを取り消したくない、別れたくない、って二度目の別れに哀しみながらも、ダイアナはスティーブに会いたい、の、願いを取り消す。
 ワンダーウーマンって、ラブストーリー映画なんだなあ。三部作ってことになるらしいけど、で、この後も製作決まったらしいけど、どうするんだろう。スティーブとの恋は大事な思い出にして穏やかになって、世界を救うのかなあ。女神さまも大変だ。

 場面場面の戦闘とかビジュアル、何よりガルガットのスタイルアクション見映え、すーーーーっごくかっこよくって最高!

 なんだけど、なんか、うーん。映画としてちゃんとうまくまとまってない気がしたなあ。場面ごとの断片は最高にかっこいいんだけど。話というか、なんか、雑に処理してるのでは、と。思った。

 まあ、ポップコーンムービー! 考えず楽しく見て! てならそういうものかな~~~。

 見に行って楽しんだけど、満足感は低め、でした。
 これが2020年見に行った映画ラストでした。

 

 

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映画 「燃ゆる女の肖像」


*ネタバレします。


映画 「燃ゆる女の肖像」


 少女たちに絵を教えているらしい、女性の先生。彼女が昔、描いた絵について、生徒に尋ねられる。スカートが燃えている女性の姿を夕闇の草原の中に描いたもの。タイトルは「燃ゆる女の肖像」、と先生は答えて。回想が始まる。

 海を小舟で渡る島。そこにある館に、画家であるマリアンヌは、娘の肖像画を描くために呼ばれた。
 結婚話があり、その相手に送るための肖像画。だが、お嬢様は乗り気ではなく、前に呼ばれた画家の前には一度も顔を見せなかったという。そこで母親は、マリアンヌは散歩相手としてやってきたのだ、娘には内緒で絵を描くようにと頼む。
 散歩をし、会話をするようになり、マリアンヌとエロイーズは親しくなっていく。


 「2019年・第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィアパルム賞を受賞したラブストーリー」だそうで、見たくて待ってました。
 さすが画家の物語。絵で、画面で、二人の姿、視線だけで豊かに物語ってくる。言葉にならない。言葉はいらない。
 
 最初はマリアンヌの視点で。冒頭、マリアンヌ、船で海を渡ってくるとき、荷物が海に落ちてしまったら、迷わず自分が海に飛び込んでいくんだよ。すごい。舞台は18世紀らしい。わっさわっさの重いドレスを着てるのに。
 画家で、荷物は大事なキャンバスだったんだなとわかる。いきなり、マリアンヌの行動的な感じが見せられる。

 館について、でもなかなか誰も何も説明がなくて、暗いしガランとしてるし、ちょっとホラーめいて怖い。でも、それはそういうもの、という風に、マリアンヌは勝手に台所でパン食べたりしててたくましいわ~。
 そんなこんなで見ててわりとすぐにマリアンヌのことを好きになりました。

 お嬢様は、ちょっと前まで修道院にいたそうで。姉が多分自殺。で、結婚話が回ってきて呼び戻された感じ。気難しいお嬢様かと思うけど、自由が欲しいよねえと、お嬢様のことも好きになる。
 初めて散歩に行くとき、マントを被ったお嬢様がずんずん先に行って、歩くうちにマントのフードが落ちて、金髪が現れて。振り返った時のブルーグリーン、グレイ、みたいな瞳が鮮やかできれいで、ぱっとひかり輝くみたいだった。ああ。これは好きになるわ。

 この時代、女性に自由な時間はほとんどない。結婚せず、父の跡を継ぐ、と画家になったマリアンヌにはまだ比較的自由はあるけど、お嬢様であるエロイーズは結婚に縛られていくしかない。メイドのソフィは、望まぬ妊娠をしていて、ひそかにおろすしかない。母親が不在にする5日間、三人で自由を楽しむのが切なく美しく愛しかった。堕胎しなくちゃという苦しさがあって、それでも三人一緒に、そういうもの、としてなんとかしようとするの。身分も何もなく、あの時間ただ三人は仲間だったなあ。

 本を読んで、ギリシャ神話かな、オルフェウスが黄泉の国から妻を連れ戻そうとして、でもあともう少しの所で心配になって振り返ってしまったので、妻は冥府に引き戻されてしまった、という話を、三人それぞれに、なんでよ、ひどい、とか、でも妻が呼んだのかもよとか、心配で振り返ったんだもの、愛だ、とか、わいわい言ってるの。
 愛。
 恋を知らなかったエロイーズが、モデルになって見つめあって、マリアンヌと初めてのキスをして。と。も~~~~~。ときめきで息が苦しくてドキドキで一瞬も目が離せずに見た。

 画家とモデルで見つめあうの、たまんないよねえ。好き。
 最初、お嬢様に内緒で描いた絵と、実際にうちとけてモデルになって描き上げた絵と、全然違うの。当然最初のも上手い絵なんだけど、エロイーズと並んでみると、エロイーズそのもの、という生き生きと雄弁な後からの肖像画の素晴らしさがほんっと、よくわかる。

 肖像画が完成して。エロイーズもこの絵は気に入って。けれど、この絵が完成したらあなたは人のものになってしまう、と言ってしまったマリアンヌに、エロイーズは怒る。
 わかってたことなのに。どうしようもないのに。
 絶望的な思いと、だからこそ燃え上がる恋と。何もかもが美しかった。悲しかった。

 恋だった。
 
 恋だよねえ。「君の名前で僕を呼んで」を連想した。ラストシーンがね、オーケストラを聞きに来ている劇場で、マリアンヌはエロイーズに気づいて遠い席を見つめてるんだけど、エロイーズは気が付かないで、じっと音楽に聞き入っている。音楽をききながら、胸の内を思いがめぐっていっぱいになっているのがわかる。涙が浮かぶ。その、言葉のないエロイーズを映し続けて、終わるの。

 あの音楽、マリアンヌが音程とれないチェンバロかなんかでエロイーズに聞かせた好きな曲です、ってやつ、かな。多分。並んで音楽、あの時なんじゃないかな、エロイーズが初めてあなたにキスしたいと思った時、って。ベッドでいちゃついてたときに教えてくれなかったと思うんだけど。
 
 意外とお嬢様がたくましくて、恋しちゃってからはマリアンヌのほうが心ボロボロってなるのがまた可愛くて。
 
 夜のお祭り? のシーン、最初、んーーーってハミングがこわくて、歌になり始める前がこわくて、おお? なんかこわい? ミッドサマー? とか思っちゃった。歌になるときれいで夢のよう。
 そんな中、エロイーズのドレスの裾に焚火の火がついちゃって。冒頭で見た、ドレスが燃えかかっている姿の絵のシーンだね。綺麗だった。

 母親が帰ってきて、もう絵が出来ているからマリアンヌは用済みで。そっけなく別れなくてはいけなくて。
 「振り返ってよ」とエロイーズが言うの、あれはオルフェウスの話の時に、妻のほうが声をかけたのかも、という、あれ。母のお土産ってことなのか、真っ白なドレス、花嫁衣裳なんだろう。それを身に着けて。そのエロイーズの姿、マリアンヌは何度か夜の幻想で見てるんだよなあ。
 結婚は、冥府へ連れていかれることなのか……。
 そんな風に、映画がすすむにつれて、嗚呼、あれは。と振り返る気持ちになるの、回想からその後、みたいな構造にすんなり同化できて参った。

 絵だった。映画だった。ひらすら見続けて、悲しくて美しくてうっとりした。
 
 恋だった。

 素晴らしかった。

 

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映画 「魔女がいっぱい」

 

*ネタバレします。


映画 「魔女がいっぱい」


 1968年アメリカ。僕は交通事故で両親を失った。おばあちゃんの所へひきとられ、おばあちゃんの助けで哀しみを乗り越える。
 ある日、雑貨店の買い物の時に、とてもこわい女に出会った僕。おばあちゃんに話すと、魔女に出会ったのかもしれない、と僕らは家から避難して、知り合いのツテがある高級ホテルに出かけた。魔女が狙うのは貧しい子どもだから。消えても誰にも気にされないような子。だから、高級ホテルなら安心のはず。
 だが、そこで、児童保護団体をかたった魔女たちの集会が開かれていた。迷い込んで秘密を知ってしまった僕。見つかってネズミに姿を変えられてしまう。
 おばあちゃんに助けを求め、魔女との対決が始まった。


 ロアルト・ダール原作とのことで、かなり皮肉な、ブラックジョークな、児童文学、って感じなのかな。私は読んだことないのでイメージですが。
 で、まあ、ブラックジョークなんだろうなあと思うものの、私は、正直全然笑えない、ええとーこれはー。ついていけないのだった。時代もあるし、そういう中のコメディなのだろう、と、思う。思うけど。

 アン・ハサウェイが、魔女のボスっつーか大魔女で、特殊メイクで口裂けたりするし。実に見事に怪演してた! アン・ハサウェイなら特殊メイクとかCGなくても大魔女、いけるよねえと思う。けどまあ敢えて戯画化かな。微妙なチープさも怪演だった。 魔女たちの衣装も素敵よ。ゴージャスなホテルも素敵だった。

 そんな、まあ、楽しんだとこもあったけれども。

 いきなり車の事故で、一人だけシートベルトしてたから僕は生き残ったの、辛い。。。ま。まあ、一人ぼっちになっちゃった僕、って、まあ、よくあるよね。んで、おばあちゃんにちゃんと引き取られ大事にされて、よかったの。
 んでもまたおばあちゃんが子どもの頃に魔女になった話、してくれる回想シーンで、あー、貧しかった黒人の暮らし、みたいな雰囲気の背景が感じられて。ま。まあ。そうだものね、と思う。思うけど。
 魔女が貧しい子どもを狙うんだよ。消えても誰にも気にかけなれない、とかいうのが、うー、キツい……。黒人の子どもとか狙われる事件みたいなの、おとぎ話じゃないだろ、と、思ってしまう。まあ、そういうのはほんのさらっとしたセリフ一言だけだったりするんだけど、うー。けっこうきつくない? グロくない?? と、思ってしまった。

 んで、ネズミに姿を変えられてしまった僕、ホテルで出会った男の子ブルーノ、僕のペットだったネズミも実はもとは子どもだったの、その三匹ネズミちゃんたち。おばあちゃんが良い魔女的な感じで、秘薬を作ってくれ、そう、で、戻れるのかなーと思ったら戻れなかった。解毒薬(?)づくりは失敗。僕たちは結局ずーーーっとネズミなの~。
 ネズミのままでもいいや! 楽しいよ! 学校も行かなくていいし! って、なんか、まあ、ネズミのままでハッピーエンドっぽい?? いやでも~~~。私はなんか、そっかそうだね! ってハッピー気分では終われなかったよ……。まあ、本人たちが楽しそうだし人間は人間に戻れなくちゃいけないってわけでもないかーと、思う。思うけど。
 私の頭が固すぎるのか……。わからない……。
 ここは、あっはっは、ずーっとネズミかあ、まあいいじゃん! って笑うもんなの?? それとも、ネズミのまんまだってよ、かわいそ~、ってシニカルに笑うべきなの?? わからない……。

 で、ネズミのままの僕らが、魔女のことを語って、子どもたちみんなに、魔女狩りに行こうぜ~イエー!ってやってるんだけど。それがこの映画なのね。いやあ? それ、楽しい遊び?? わからない……。 

 それにネズミ化、子どもちはまあそれなりに一応は可愛いキャラ化はしてたけど、結構リアルなネズミ姿なんだよね。ネズミ、リアルネズミにたいしてあんまり可愛いと思う気持ちが私にはもともとあんまりないですし。魔女たちのネズミ化は怖い醜い系でリアルネズミ姿なんで、うう~。やっぱ結構グロいと私は思った。

 あんま良い観客じゃなくてすまんかった。

 

 

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映画 「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来」


*ネタバレします。


映画 「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来」


 2019年製作。吹替え版見てきました。

 黒い仔猫の姿をした妖精、シャオヘイ。子どもの姿に変化もできる。
 妖精たちは森の棲み処を人間に追われていた。居場所を探して街をさまよっていたシャオヘイ。
 ある時、フーシーという妖精仲間に出会う。街から離れた豊かな緑の場所に連れていってもらって、フーシーの仲間もいて、やっと安心できる家と仲間ができたと喜ぶシャオヘイ。
 だが、フーシーはムゲンという人間に追われ、戦っていた。訳も分からず戦うシャオヘイ。だが、島に取り残されて、仕方なくムゲンに連れられて陸地へ戻る旅をする。
 旅するうちに自分の力を鍛ることをムゲンに教わり、人間の街を見たり、そこで妖精たちも人間に紛れて暮らしていることを知るシャオヘイ。ムゲンは本当に敵なのか。フーシーがいいやつでムゲンは悪いやつ? 
 シャオヘイの秘めた力を狙って、壮大な戦いが起きる。


 中国のアニメ?? わからない。と思って最初あんまり興味なかったのだけれど、すごく面白いって評判いいし、見た人みんなかわいいかわいいいってるみたいだな~(*偏った観測です)。やっぱ気になるかも。と釣られやすい私は今日めっちゃ寒いーっと思いつつがんばって出かけてきました。

 ほんとだ。すごい面白かった。めっちゃバトルアクションだ! すっごいかっこいいいいいいい~~!!!めっちゃ動くっ!
 ほんとにほんとに、バトルアクションの見せ方がこれでもかこれでもかこんなんでどうだ!どうだどうだ!! と凄くて、すーっごくかっこよかったです。

 ドラゴンボールだった、てな感想をTwitterで見かけたことあったんだけど、ほんとだドラゴンボールだ。トトロっぽいな~というかジブリっぽいのか。木霊~? って思ったり、AKIRA かな? AKIRA くんの暴走? とか思ったり。
 少女漫画の王道、スポコン少女漫画(みたいな??)の王道かな、これ、夢? ワタシ平凡な妖精シャオヘイ、居場所のない私を最初に見つけてくれたフーシー、出会いの印象最悪だったムゲン、二人の間で揺れ動いちゃうワタシ、ワタシ、でも、ほんとはすごい力があったなんて! ワタシを本当に愛してくれていたのは、どっち? 本当は、ほんとうは、ムゲンさまー! みたいな感じ。師弟モノだけど。
 あとファンタビも連想した。クリーデンスくんを利用したいグリンデルバルトとか~。いろんな似た感じがある先行作品あれこれがある、って感じる。
 作った人、アニメとか映画とかよく見てるんだろうなあ。

 庵野監督だっけ、多分。これまでの先行作品にたいていなんでもやられてるから、新しいの作るったって、リミックスしてバージョンアップするしかない、組み合わせ方で新しくするしかない、みたいなこと言ってた気がするんだけど。多分。
 これもやっぱり、いろんな先行作品ふまえてーの、あんなこんなかっこいいのふまえてーの、さらにもっとかっこよく見せるぞどうだ!って感じで凄い。キャラも見せ方もきゅんきゅんにツボ押さえてよねえ。くすぐりや省略の仕方も、あ~わかる~って感じ。何よりテンポよくて、ぐいぐいひっぱる推進力がすごい。
 可愛さも存分に大サービスで。みなさん、こういうの好きじゃないですか?好きでしょ?可愛いでしょかっこいいでしょ? わたしたちはすきー!かっこいいー!って作り手が全力大サービスしてくれてる感じ。あざと可愛いですわあ~。シャオヘイが可愛いのは勿論ながら、ムゲン師匠も可愛いのずるいですわ~。そしてめっちゃ強いの、ずるいわあ~。


 森を追われた妖精、って、自然開発する人間悪い奴、という始まりなんだけど、でも、人間だって悪い人ばかりじゃないよ、共存の道もあるはずだよ。って実は強力な力を持ったピュアなシャオヘイが人間側、人間と共存する側に傾いていく感じなんだけど、これはなあ。侵略者側の論理が強いよなあ。
 妖精さん、じゃなくてアメリカのネイティブアメリカンだったら? 少数民族だったら? 本来の居場所を奪われたものに、別の場所もあるよとか、ひっそり共存しようよ、敵対するばかりじゃなくてさ。って、まーーー。それはそうなんだけど。そうなんだけど~~~。
 人間側に都合よくつくられてるアニメじゃん、という気持ち。。。いやまあ自分も人間側だが。これ素直に感動していいのか悩んじゃうな。


 あと私、ごく最近、「呪術廻戦」のアニメにドはまりしたところなんだけど、術式、とか、領域展開、みたいなことって、そういうものなの?? 私はつい先日呪術で見て、ほほう~って思ったところなんだけど。領域、とか、って、マインドパレスみたいな。って思ったりなんだけど、んー? どうなの。術式とかなんか、そういう世界ってあったんだっけ。わからない。個人的にはちょうど呪術にはまりたててすごいよくわかる感じ~って思ったけど、何がどのくらい共通認識なのか、共通って思っていいのかどうか、悩んじゃった。私が知らないだけでドラゴンボールだとかで展開されてた世界観みたいなの? 私、ドラゴンボールも途中であんまり見なくなったからなあ。わからない。
 ま、あんまその辺は、深く気にせず、そういうものかーと思っておけばいいかな。

 なるほど面白いなあ、と、見に行って納得できてよかった。
 でもまあ、やっぱ個人的好みとしては、あんまハマらないなあ。絵柄が好みじゃないなあ。可愛いし動きかっこよかったけど。
 やっぱ今わたしは「呪術廻戦」にハマり中!

 

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映画 「ウルフウォーカー」


*ネタバレします。


映画 「ウルフウォーカー」


 17世紀。アイルランド、キルケニーが舞台。街にはイングランドから護国卿がやってきて、森を切り開き狼を追い払い開拓していこうとしていた。
 ロビンは女の子。父を手伝ってハンターとして一緒に森へ行きたい。けれど、父は危ないから家にいなさい、城壁から外に出てはだめだという。お前を守るためだよ、と、ロビンを町に閉じ込めようとする。
 けれど、一人森へ行ったロビンは、大事な鳥、(鷹?)のマーリンを誤って傷つけてしまう。マーリンは狼とともに現れた少女に連れていかれた。マーリンを追って森の奥深くへ行ったロビンは、伝説のウルフウォーカー、マーリンの傷を治してくれたメーヴという女の子と友達になる。メーヴのママの魂がかえってこないのを、森で待ち続けてるメーヴ。

 メーヴに噛まれたロビンも眠ると魂が狼の姿になって森を駆け回ることができるようになっていた。
 城に囚われていたメーヴのママを助けようとするロビンたち。人間たちは、森を焼いて狼を退治しようとした。

 

 「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」 につづくケルト三部作、とのことです。私は前のは見てない。


 ウルフウォーカーという伝説があるらしい。人と狼の融合? 狼の妖精さん?? 治癒の力があって、狼たちのリーダー。もののけ姫みたいだなと思ったけど、ウルフウォーカーは、人間と自然の対立、もだけど、少女二人の成長物語。

 ロビンは、ハンターで護国卿に使える父についてイングランドからきた、よそ者の女の子。父に大事にされているものの、本当はうちで家事するより、森へ行って父を助けたい。母親はいなくて(死別したんだろうと思う)父を大事に思ってるけど、狼と出会って親離れしていく。
 メーヴは母と狼たちと暮らしてる森の子。魂が抜けた母の側で待ってる。ロビンよりは小さい女の子って感じ。なので、ロビンが姉のようにふるまって、あなたのためなのよ、って逃がそうとしたり閉じ込めようとしたりする。それって、父がロビンのためだよといって町に閉じ込めようとしたみたいだった。
 対称的な二人の女の子。二人だから、強くなって力を得て、一緒にしあわせになるんだよ。もののけ姫とか違うハッピーエンドだった。

 ただ、ママが助かって帰ってきて、父も狼になって理解示して、人の町から離れて、父とママがそろってロビンとメーヴは姉妹みたいになって、っていうファミリーの形に納まったのが、なんか、ん~そうなるか~とちょっと、んん~と思った。両親そろって家族みたいな形におさめなくても。でも、まあ、他人、異種族、だったそれぞれが、理解しあい寄り添って家族になる、というのは、いいことかなあ。けど、結局みんなウルフウォーカーになりました、なんだよな。
 人間ともののけ姫、と別れて、それでも時々あって仲よくしよう、っていったもののけ姫の方が、ひろいような気もする。んー。ま、いいけど。

 あと、悪い人間、というのがイングランドからきた人間、だったのが、ちょっと、お。うう。と、なんか複雑だった。アイルランドを支配しようとするイングランド、という構図が見えて、うーんーそうだなあ。アイルランド、辛い、という気持ちがちょっとわく。難しいよなあ。
 人間側としても、森を切り開いて生活の場を広げたいっていうの、まあ、そういうなんやかんやの事情はある。でも、森を守れ、というのもわかる。難しい。
 とってもファンタジーだったけど、やっぱり複雑な歴史背景みたいなのもあるなあって感じがして、単純によかったね、では終わらない気持ち。最後、ロビンたちは仲良くしあわせそうに旅立っていくみたいだったけど、あれは森を出ていったのかなと思ったし。
 イングランドの支配とかまだあるだろうし、森は否応なく開発されていくだろうし。複雑~。難しい~。そんなこんなも面白かった。

 ビジュアル、動き、すっごくかっこよくって、綺麗で、すごくオリジナルな感じだった。テンポよくて全然飽きる間がない。森のうつくしさ、町の冷たさ。メーヴたちの丸っこさ、狼のシャープさ、人間の硬くごつごつした感じ。パッとそれぞれの特徴がよくわかって、隅々まで行き届いてる~。
 見に行ってよかったです。大満足。

 

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映画 「罪の声」


*ネタバレします。


映画 「罪の声」


 平成が終わる頃。大日新聞の記者である阿久津は過去の未解決事件を振り返る特集記事を、あまりやる気はないままに担当することになった。ギンガ・萬堂事件。警察マスコミを翻弄した、ふざけているかのような多くの脅迫状やお菓子に毒というセンセーショナルさの劇場型犯罪だった。

 父の跡を継いでテーラーをしている曽根。たまたま見つけた古い箱から、何やら英語での書き物の手帳と、カセットテープを見つける。1984年、とあるそのテープ。再生してみると幼い自分の声が歌っている。不意に、別の録音が始まり、それは、自分が文章を読み上げている声だった。自分が何を読んでいるのかもわからない幼い声。未解決事件で、脅迫の金を持ってこさせる指示のための声だった。


 これ、どのくらい本当の事?? と思ってしまうくらい、なんだかドキュメンタリーなのかなと錯覚しそうなくらい、じっくり丁寧に事件を追っての謎解き映画だった。
 グリコ・森永事件が元ネタだよね。私はリアルタイムの事件報道とかの記憶一応ある。35年前くらい? 考えてみれば、前世紀の事件だし、令和の今となっては二つ前の時代の出来事、なんだよなあ。フィクションで映画にもなるか。

 脅迫状替わりの子どもの声の指示。その時使われた、わけもわかってないであろう子どもの、その後の人生はどうだったのだろう。その切り口がすごく新鮮、といっていいのかどうか、ほんと、あ……と思った。子どもの声あったよな。その子、が、大人になって、自分がかかわったことに気が付いてしまったら、というのは……。

 曽根さんは、テープを見つけるまで記憶にもなかったくらい、5歳の頃の出来事で、何も知らず、事件に悩まされることなく大人になった。妻子がいて、跡を継いだ自分の店があって。父はなくなっていて、母も癌だけど、けれど、平凡な幸せのある人生。だからこそ、幼い自分の声があの大事件に関わっていたことに、言いようのない不安がつのり、苦しむのもわかる気がする。

 テープを聞かなかったことにもできず。父の兄、おじさんが事件にかかわっていたのではないかと、跡をたどっていく。

 阿久津は、記者としてのやる気はないものの、上司の熱意に押されて、事件を追ううちに、時間がたったからこそ、今だから言うけど、という証言者を辿って、ついに曽根と出会うことになる。

 話しの展開も、キャストも、どっかんと派手なことはなくて、じっくりこつこつ積み上げていく、だからこそリアリティを感じる。小栗旬と星野源ってゆー、派手に人気の俳優二人主演にすえながら、外連味なく、それぞれ普通に生きて仕事して、という人物像なのがすごいよかった。

 
 身代金とか、脅迫して金を奪う目的は表面的なことで、本当は株価操作、空売りでもうけをだす作戦だったのではないか、とか。全共闘世代が、金持ちや権力に対する社会正義のつもりで仕掛けた犯罪なんじゃないか、とか。
 犯人は寄せ集めグループだったからだんだんグダグダになって、ヤクザも絡んでて物騒になり、とか。
 そうだったのかもな~~~~、なんて思ってしまう。

 子どもの声。曽根さんは幼過ぎて事件とのかかわりを知らぬまま大人になれたけど。もっと大きかった、中学生の女の子、その弟、っていう、二人の人生、運命が、あまりにも過酷に描かれていて、とても辛かった……。
 大人の勝手な行為で、安易な発想で、子どもならわかりにくいしいいだろう、なんてことで、巻き込まれてめちゃめちゃになった人生。
 これはフィクションだ、と思ってこんなことない、って思うけど、こんなことだったりするかもしれなくて、暗澹たる気持ちになった。
 この作品は、一応、弟くんがほんとに取り返しつかなくなる前に、間に合ったけれど。でものぞみちゃんはころされていて。あまりにもひどいじゃないかー。何がなんでも子どもは守ってやれよ……。

 で、生き残ってる犯人、黒幕的なのは曽根さんのおじさん、で、英国にいるわけだ。全共闘世代。実は曽根さんの母が、我が子に読ませて録音したのだった、というのも。全共闘世代……。社会や権力への反発、自分たちなりの正義、の実行のつもりの犯罪。革命めざすのも過激な思想も、まあ、うーん、まあ、思想は自由だけど。犯罪を起こすとか、ましてや無関係な一般人を、まるっきり罪があるわけのない子どもを、巻き込むなんてあんまりだ。
 あ、いやまあ、フィクションで。犯人がこうだったってわけじゃないけど。

 しかし大人はやはり、全力で子どもを守ってくれと、つくづく思った……。

 実際、グリコ森永事件の犯人ってどうなってるんだろうなあ。告白手記だとか残したりしないのかなあ。

 事件をエンタメとして消費しない。でも真実が知りたい。どうなんだ。どうなんだ、という、悩み、ゆらぎのある、エンタメ作品だった。

 ちょうど三島由紀夫の死から50年、だとかで、先日も全共闘と対話する三島って映像見た所だ。当時暴れてた若者たち、な。あれは何だったのか、まだ生きた証言とれるうちに総括とかする時期なのかなあ。わからないけど……。
 物語としてエンタメとして消費しない。でも、どんな物語に突き動かされていたのか、知りたい気がする。でも。うーん。
 わからない……。

 見に行くかどうかちょっと迷ってたけど、見に行ってよかった。小栗旬も星野源も、すっごい、いいなあと思った。こういう地味で、重い、派手な面白みのない役でもちゃんとできる、魅せる俳優だなあ。これからもご活躍してください。見たいね。

 

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