題詠ブログ2009 100首
昨日無事に完走。
というわけで、100首の題と、歌をまとめてアップしておきます。
11月の最後の週がきつくて、ああなんでもっと早くにちゃんとやっておかなかったんだ、と
後悔しきり、でした。自分で始めたことなのにねー。
題詠のために、辞書でいろんな語彙を探して、楽しかったけれど。なかなかいい歌にはでき
ないことが多くて、反省。歌うまくなりたいなあ。
すこしでもいいなと思ってもらえる歌があると、私が嬉しいです。
題詠blog2009 千坂麻緒
001:笑 モニタには笑顔と認識されている小さく四角小さく悪態
002:一日 一日はうそつきですねよく晴れた四月でしたねコマドリ・ロビン
003:助 真夜中の蛍光灯の青白に溺れる僕を記録する助手
004:ひだまり ひだまりの夢をみていた深呼吸できなくなった深海魚たち
005:調 海を裂く船の軌跡のようである調査結果をきかされている
006:水玉 薄明の森で鋭く鳥が鳴き水玉草は水を宿した
007:ランチ ベジタブルプラオをおすすめされているひとり時間のランチレシピに
008:飾 剥製のミソサザイ啼く飾り棚空の果てから遠くはなれて
009:ふわふわ やくそくのあまさ 遠くの飛行機のひかっているのがふわふわ見える
010:街 風の強い街に引っ越し終えました報告しますこわくないです
011:嫉妬 嫉妬嫉妬嫉妬しとしと嫉妬しとシト使徒嫉妬イヤな子わたし
012:達 せんせいの熱伝達の解説が愛のことばと響いて五月
013:カタカナ モニターにカタカナが降る夜が明ける気配を嗅いであくびする猫
014:煮 筍を煮ておきました帰ったら食べてもいいよ捨ててもいいよ
015:型 鉄道模型が走る小さな陸橋に星を降らせて左手の神
016:Uターン 電柱にUターンする矢印の看板があり ダメになりたい
017:解 モノクロの解剖学図にんげんの中身に全部名前をつける
018:格差 なにもかも格差社会のせいでしょうあなたはあおい声でないてる
019:ノート エラソウニ語ってるきみねえいつか憧れのブルーノートへ行こうか
020:貧 貧歯目アルマジロ科の哺乳類丸焼きになるマルマルマジロ
021:くちばし くちばしの形に進化を見出して神を無効化しちゃったおとこ
022:職 さよならの懲戒免職わたしからあなたをじゆうにしてあげなくちゃ
023:シャツ 夏色のシャツのサイズを間違えた昨日より今日全力疾走
024:天ぷら 蕎麦屋にて季節の野菜の天ぷらを冷えたビールを 好きに生きるか
025:氷 はるになる滝の氷が水になるなつにはちいさな虹をみにいく
026:コンビニ アルバイト募集の紙が日焼けして薄れる笑顔コンビニのドア
027:既 ここからは既約分数ゆびさきがきみの温度を確かめながら
028:透明 すくったら透明でした膨大な青を湛えた夏だったのに
029:くしゃくしゃ くしゃくしゃの軽い抜け殻あたらしい翅でここから飛んでったんだね
030:牛 木曜日牛肉4割引の日と覚える我をひとりたのしむ
031:てっぺん はるばると見上げる高層マンションのてっぺんにいるクレーン 夕暮れ
032:世界 水底で世界のひかりをみていたら笑う笑ったあれは夏の日
033:冠 長い長い手紙を書いて手を汚す あなたに似合う雨冠に
034:序 新訳の『方法序説』は読みやすく午後二時のカフェ猫をみている
035:ロンドン 合言葉霧のロンドンエアポート薄明の空しずかに濡れて
036:意図 あんまりは深い意図などないんだねあなたがくれたドラえもん(ミニ)
037:藤 いいやつを演じることに疲れたら藤井くんもう銃は捨てろよ
038:→ 使用前→使用後写真その白い歯を見せながら笑う犬たち
039:広 夕焼けは広角レンズがいいらしいグスコーブドリがきれいに撮れる
040:すみれ おじさんの指がすみれにふれている小さな声で歌うハレルヤ
041:越 少しずつ壊れる自我がダイブする越前水母の半透明に
042:クリック ×印クリックをして窓を消すガスコンロの火、きちんと青い
043:係 すきなひとと関係をもつ あいじょうはあってもなくてもメールは繋がる
044:わさび ポテトサラダわさびマヨ和えにぎやかにテレビで日本が活躍している
045:幕 寒空にはりめぐらせた鯨幕しばし世界の色彩を消す
046:常識 常識の猫さえうまくかぶれない遮断機の前で立ち尽くす朝
047:警 個人的警戒警報発令中季節限定栗蒸羊羹
048:逢 あいたいが「逢いたい」という漢字へと変換されて 水になるとき
049:ソムリエ 空間をパステルカラーで語りだすにこにこにこにこ空気ソムリエ
050:災 笑ってはダメです防災訓練の早足でゆく晴れた校庭
051:言い訳 言い訳もいってくれない朝がくるたぶんやさしいつもりの椿
052:縄 お互いに行ったことない沖縄の連想ゲームの果てない夜更け
053:妊娠 こんなにも妊娠望むひとがいる白く静かな不妊治療院
054:首 やすやすと手首を掴ませ昔々、失くした恋を言い出すお前
055:式 おやすみをモニタの彼方へ 文字だけでつながるひとをしんじる儀式
056:アドレス アドレスのアルファベットの連なりが古歌を奏でる暗号でした
057:縁 手首には絹の縁(えにし)の糸をつけ少女はひとり 溶ける黄昏
058:魔法 あの人は魔法の国の住人で人間にだけ変身できず
059:済 西日差すギャラリーの窓閉じられて売約済のきみの耳朶
060:引退 ファンファーレ心の中で鳴り響けひとりっきりの引退試合
061:ピンク 猫に会ったら指をいっぽん差し出してちいさなピンクの鼻を待ちます
062:坂 千の坂をまだ登ってるまだ遠いあのセザンヌの絵のところまで
063:ゆらり 隣には音楽とともに眠ってる他人のきみがゆらり傾く
064:宮 脳髄の宮殿あらゆる壁際に積み重ね行く本の暗闇
065:選挙 はじめての不在投票真夜中の選挙速報ひとりカップ麺
066:角 南向き角部屋今でも間取り図の中の妄想家族ごっこを
067:フルート 放課後に取り残されたフルートの銀のひかりに刻んだ傷跡
068:秋刀魚 ビカビカの秋刀魚が98円の売り場の温度バカっぽい曲
069:隅 サッシ窓のレールの隅に固まった黒い埃の中の虫たち
070:CD 若者はCDじゃなくもっともっと小さく軽いもので楽しい
071:痩 眠れない男が痩せてゆくわけは自分に隠した秘密の重さ
072:瀬戸 ゆれ方が変わる 列車が海の上瀬戸大橋を渡って帰る
073:マスク 電車では三人ほどがマスクして冬の日差しが淡くやさしい
074:肩 右よりも左の肩が凝ってます知らない場所をほぐされてゆく
075:おまけ あげるよ、って、おまけのパンダのマスコットぎゅって握った小さいパンダ
076:住 一切の理由は不明クマの絵の住所変更通知の葉書
077:屑 早朝の花屑踏んでついてゆくついておいでと言わないひとに
078:アンコール 予定より一曲多いアンコール帰りたくない時間がゆれる
079:恥 犬だもん恥ずかしげもなくめいっぱいおかえり!おかえり!跳ねて笑うよ
080:午後 長く日がモニタにさして白くなる小春日午後のキャラメルロール
081:早 もっと早く言えばよかったもっと早く全部の窓をなくせばよかった
082:源 ひっそりとここが源流水の声は冷たくなった耳に囁く
083:憂鬱 薔薇十字探偵の目の憂鬱はあくびをしている猫にまかせた
084:河 特別な薬液に浸け封じますこれは河童の透明標本
085:クリスマス クリスマス中止の理由は出尽くして眠った亀とさしで飲もうか
086:符 足音が音符のように走りぬけ散歩の犬と競争の子ら
087:気分 夕方がこんなに早いふさぎこむ気分のための花の紅茶を
088:編 あのセーター編み終わることのないまんま やり直すことはもうないからね
089:テスト 三年の期末テストの最終日モノクロ映画のチケットを買う
090:長 髪を長く伸ばし始めたほんとうの理由は言わない 真冬の苺
091:冬 冬の樹はきらきら光の枝伸ばすヒトの都合に静かに従う
092:夕焼け 日本一きれいな夕焼けスポットのおだやかな海で声を聞いてる
093:鼻 鼻先をしっぽで隠して丸くなり眠った犬にそっと手を出す
094:彼方 彼方此方を右往左往す途中では鳥の卵をみつけてみたり
095:卓 軽快な音で電卓たたくためジェルネイルに今日星をのせます
096:マイナス 前年比マイナスばかりの報告をペットショップの鳥に聞かせる
097:断 人類の記憶の中の断層の手触りのこと語るきみはも
098:電気 生ビールチェイサーにして飲むという電気ブランのロマンの香り
099:戻 ここからはもう戻れない場所があるファントムの薔薇にふるひかりあれ
100:好 お互いに好きだったことお互いに子どもだったね 東京にいます
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