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『遠い声 遠い部屋』(トルーマン・カポーティ/新潮文庫)


*ネタバレします。(別にミステリとかではないしネタバレとか関係ない気がするけど)


『遠い声 遠い部屋』(トルーマン・カポーティ/新潮文庫)


 ヌーン・シティへたどり着いた一人の少年。ジョエル。13歳の誕生日に、会ったこともない父からの手紙がきて、エレン叔母さんと暮らしていたニューオリンズから旅立ってきた。
 スカイリズ・ランディングというお屋敷にいるはずの父。だがジョエルはなかなか会うことができない。
 従弟だというランドルフさん。父の妻エイミイ。台所仕事をしているズー。その父、ジーザス。町で出会ったアイダベル、フローラベルという姉妹の女の子。
 ジョエルの見た家。人。ジョエルのみた世界。


 カポーティの処女長編。半自伝的、らしい。親戚の家たら回しみたいな少年時代だったみたいだもんね。その頃経験したこととかモデルとかがあるらしい。

 身寄りのない少年がやってきた古い屋敷。町の人からは謎めいて遠巻きにされているらしい屋敷。住人はどこか悲劇的。父に呼ばれてきたのに、なかなか会わせてもらえない。秘密を抱えているような屋敷。
 ホラーっぽい雰囲気いっぱい。でも別にホラーではない。明確なストーリーがあるわけではないかなあ。ジョエルがそこで見た、出会った、聞いた物事が次々ゆらぎながら描かれていって、幻想めいて不思議な感触になる。

 子どもの世界ならではの混乱とか不自由さの感覚が鮮明だけど夢みたい。移り変わりの唐突さとか、なかなかついていけない~と思いながら読んだ。

 文章読みにくい。ティファニーの方がずっと読みやすかったなあ。まあ、これは最初の長編だそうだし。なんといっても22歳で書き上げたとかの、若き勢いみたいなのもあるのか。
 物凄く端的に言えば、子ども時代が一歩進んだ、少年の日々への別れの季節、みたいな感じ。

 鬱屈した屋敷から、町から、アイダベルと一緒に逃げ出そうとして、でも逃げられなくて。少し前に逃げたはずのズーも傷ついて戻ってくるほかなくて。一人で人気のない道歩いてるとレイプされちゃったりなんだな。辛い……。
 ジョエルももちろんまだ子どもで。
 しばらく寝込んで、一度死んだような気分になって。そして何かを諦め訣別して、家の中へ戻る。うつくしくて切なくて輝くラストシーンだった。

 ランドルフさんが、どうやらゲイであると。昔自覚して、でもどうにもならない感じでいて。ジョエルもなんかなんとなく。ランドルフさんと同じ人間だよ、というの。こういう自覚とかある感じかあ。わからないけどすごくわかる気がする。
 
 文章読みにくい、んだけど、描写の細やかさ、その表現の比喩の美しさ、面白さ、飛躍、詩的というのかな。すごくきれい。きれいは汚い汚いはきれい、みたいに、必ずしも美しい表現じゃなくて、うげー、なんかヤダ、みたいな生生しさのリアルもある。でもやっぱり幻想的。

 この本、翻訳出たのが1955年だかで。本国で1948年に出たのですね。70年以上昔の作品なんだな。カポーティの少年時代と考えると1920年代のアメリカ。私はその時代も何も知らないけれども、なんだかこういう暮らしがあった世界の手触りを感じる気がした。遠い昔の古臭さはあまり感じなくて、普通に読めたし面白かった。あんまりわかった!って感じではなくて、迷宮連れまわされるような気持ちになりながら。わからないけど面白くて、読んでよかったわ。

 

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