« ナショナル・シアター・ライブ2020「プレゼント・ラフター」 | Main | 映画 「罪の声」 »

『アキレウスの歌』(マデリン・ミラー/早川書房)


*ネタバレします。


『アキレウスの歌』(マデリン・ミラー/早川書房)


 ギリシア神話の時代。人と神との間に生まれた半神の王子アキレウス。
 引っ込み思案で偶然の罪によって追放された王子パトロクロス。二人は少年の頃に出会って、ともに育った。


 2014年の本。原本は2011年に出たようです。世界中で翻訳されベストセラー。たくさんの賞を受賞してるらしい。私は全然知らなかったのだけれども、最近Twitterですごくはまってる人のコメント見て気になって読んでみた。

 アキレウスってアキレスのかかとが弱点、みたいなあの人物か。ギリシア戦争、トロイアとの戦、って、トロイの木馬が出てくるあれか。ブラピが出てる映画見た事あるなあ。オーランド・ブルームがパリスだったやつ。アキレス、アキレウスってブラピがやってた役かー。
 なんて思いつつ。私はギリシア神話のことをうっすらとしか知らないので、なんとなーく、の、感じで詠みました。
 イリアスやオデュッセイアも、読んでみようとしたことあるかもだけど、多分読んでない、し、あんまわからない。

 けれどまあギリシア神話はともかく。この本の語り手はパトロクロス。多分わき役扱いされてきたのであろう少年、王子、で、アキレスの従士。パトロクロスの見た、恋した、アキレウスの姿の物語だった。

 パトロクロスは、王子とはいえ、親の期待に何一つ答えることができず、愛情もかけられてこなかった少年。たまたまちょっとした諍いで突き飛ばした相手が打ちどころ悪く死んでしまって、追放される。
 そしてプティアの寛大な王ペレウスのもとで、多くの里子たちと暮らすようになる。そこで、王子アキレウスに出会う。

 海の女神テティスの子。半分神であるアキレウスは英雄となる期待を受け、自身もそう望んでいた。
 ある時、サボってたって言われるパトロクロスをかばって、アキレウスは王に、パトロクロスを従士にしたと言う。そうして、二人は初めはぎくしゃくとしながら、次第に深い友情を築いていく。

 誰よりも美しい。誰よりも強い。アキレウスを見つめてパトロクロスは友情以上の感情を持つ。それは、アキレウスも同じだった。

 みたいな感じでーーーっ。最初は反発しながらもパトロクロスはアキレウスとの関係を深め、互いにかけがえのない相手として育っていく。

 パトロクロスのキャラクターは、近代人の自我って感じがする。といってもまあ、私はギリシア時代の人間の自我がどんな感じだったのかなーとか全然わからないわけですが。
 パトロクロスは人間なので。その語られる感じはわかりやすくて面白かった。神々が人間と交わり、人間の味方になったり、怒りや罰を下したり、という、神話時代の世界だけれども、パトロクロスを通して読むのはすごくわかりやすい。

 学園ものっぽくもあり、戦争に駆り出される悲劇の若者たちの話でもある。
 でもなー。
 私はどっちのキャラにも思い入れ持てず。
 アキレウスが名誉のためにギリシア軍の負けにも手をかさないとか。アポロンだとか神々が人間に手を貸すとか不興で疫病流行らせるとか、は?? と思う。

 特に今はな~~~。疫病がとかに対して敏感になっちゃうよ。神々よーなんでやねん。アガメムノンに怒ったならアガメムノンに罰与えなよ。なんでモブの名もなき兵士が疫病でごろごろ死ななきゃいけないんだよ。ムカつくぜ。疫病退散っ。

 二人でケイロンの処で学び鍛えられていく日々が一番平和できらきらの青春でしあわせいっぱいだった。
 でもそういう青春の日々って、儚いからこそうつくしい、みたいなことなんだなあ。
 戦争が起き、戦いに赴くことになり。
 その前には結婚だとか子作りイベンドがあり。
 同性愛というか、友情愛情の関係はあれど、母である女神の怒りはかうし、女と子をなすことこそ、みたいなことではあるんだねえと、なかなか、生きて育っていくって普遍でもあるのかなあ。
 まあ、そんなこんなも、私個人的には全然面白くないところなので、ふーん、というくらいの気持ちで読んだ。

 ギリシア軍がトロイに攻め込む、の、戦争。のんびりーって感じで9年10年もも続くものだったのか、とか、改めて読むと、へ~~~~~。と思う。
 捕虜、戦利品として女を持ってきたり。それを助けるようパトロクロスがアキレウスに頼んだり。
 その辺も、なんか、ふむー。今どきの感覚で描かれてるのかなと思う。
 いや、昔ってもそうだったのかもしれないけど。

 パトロクロスが、アキレウスに愛されてることに傲慢、って気がしてしまった。
 正直私にはパトロクロスの魅力ってわからなくて。戦いや名誉を求めない善良な青年、って感じかなあ。たまたまアキレウスの近くにいた、その偶然こそが運命、みたいなことか。でも、アキレウスの名声の邪魔って気がするのはテティスに同感。
 
 アキレウスは、名声を得て英雄になることが本当に望みなのか。
 ただ平凡に、ただパトロクロスと暮らす、では満足できない、んだよねえ。半神だし。無敵だし。
 でもなー。
 パトロクロスを失ったら我を忘れて復讐に走り残虐を発揮するほどの狭隘盲目の愛がありながら、ねえ。でもなんでアキレウスはそんなにパトロクロスが好きなの。初恋的な? 初恋を失うことすらありえない王子としての傲慢?

 アキレウスとパトロクロスのらぶいちゃに、ときめきはしたけど、どっちのことも私は好きにはなれなかったな。
 
 パトロクロスが先に死ぬんだろうと途中からわかるんで、死後のアキレウスのことはどう語るんだろうと思っていたら、成仏、いや成仏ってことはないか、仏教じゃない、えーと、魂が現世に残ってしまって、みたいな感じだった。
 そしてアキレウスも死ぬ。
 遺灰は二人のを混ぜろ、と命令していたので、本当に混ぜられて。
 埋葬。墓碑銘はアキレウスの名前しか書かれなかったので、やっぱ成仏できない、みたいなパトロクロス。
 息子、孫を失ったテティスにアキレウスの思い出を語る、みたいな、それがこの本の中の話、みたいなことかな。それで。テティスの怒りがやっととけて。二人の名前が墓碑銘に並んで。
 二人は黄金の光の向こうへ、みたいな感じで終り。

 なんかこう、登場人物、というか登場人物かつ神、みたいな所とか、なんか二人の間に入る女性キャラとか、どーもうまく私は話に入っていけなかった。好きになる要素より、はーん、嫌い、みたいな所のほうが多かった。
 でも読んでみたのはよかった。ギリシア神話ってすっごい古典なのに、こういう風に読み解いたりできるんだなあと思った。

 

|

« ナショナル・シアター・ライブ2020「プレゼント・ラフター」 | Main | 映画 「罪の声」 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事