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『ティファニーで朝食を』 (トルーマン・カポーティ/新潮文庫)

 

*ネタバレします。


『ティファニーで朝食を』 (トルーマン・カポーティ/新潮文庫)


 作家志望の僕。以前暮らしていた場所、イーストサイド七十二丁目のことを思い出す。ホリー・ゴライトリーと出会った場所。古くてひどいアパートメントだったけれど、僕が生まれて初めて手にした自分の場所だったのだ。

 作家になった僕の回想というスタイルの短編、中編かな、の、小説なんだね。読みました。
 この前、カポーティのドキュメンタリー映画を見て、作品読むべきかなあと気になっていて。ちょうどBSで「ティファニーで朝食を」を先日やってたので、ちゃんと見た事なかった~と思って見て。
 オードリー・ヘプバーン、言うまでもなく素晴らしく可愛いし綺麗だった~。そしてさすがの名作ラブロマンス、ちょっとコメディ、でもすごく切なくもあって、そしてハッピーエンド、って見ました。見てよかった。面白かった。なるほど名作。

 でも本は結末が違うとか、カポーティは映画をあんまり気に入ってなかったらしいとかだよね、やっぱ本を読もうと思って。
 読んでみてよかった。

 大雑把にあらすじを言えば、映画と同じ。ホリー・ゴライトリーという魅力的な若い女の子と知り合って、僕は彼女と仲良しになって。奔放な彼女に振り回されつつ、彼女の助けにもなる。
 14歳なんていうほんの子供の時に結婚したという夫がやってきたり、自分は何も知らないままに麻薬売人の伝言係になっていたり、金持ちと結婚しようとがんばり、連日のパーティや夜遊び三昧。ホリーは貧しかった少女時代から脱却してニューヨークを愛していて、いい男をつかまえるべく奮闘している。唯一大事な兄弟、フレッドに似てる、といって「僕」をフレッドと呼んで友達になって。
  
 二人の好意は、本で読むとやはりラブロマンスの気配は、なくはないけど、友情、だなあ。映画はまあやっぱ美男美女ですものねえ。それはやっぱラブロマンスにしちゃうか。
 猫ちゃん。
 名前をつけられない猫ちゃんも、雨の日に捨てられた後、ちゃんと素敵なおうちに拾われて、しっかり綺麗な窓の内にいることを僕が確認してた。

 ホリーは旅立ち、きっとどこかで幸せになっているはずだ、と、僕は信じる。願う。
 本を読むと、ホリーは男と恋して幸せを得るというよりは、男を利用して自分の生きる道、場所を掴む、って感じでした。愛情もあるけど、フレッドを亡くして、たった一人だ、という感じが強い。僕もよけない真似はしない。彼女を送り出すしかないの、そんな無力さもよかったな。面白かった。

 他に短編も入っていた。「花盛りの家」「ダイアモンドのギター」「クリスマスの思い出」
 どれもよかったなあ。面白かった。人物がみんな魅力的。んで、同性愛の雰囲気とか要素、隠そうとかしてないんだなあと思った。ヘテロもあるけどそうでもないのもある、当たり前って感じがした。だよねー。

 「ダイアモンドのギター」

 は、囲いのない、囚人が力仕事みたいなことして刑期を務めるところの話。そこの優良囚人なミスタ・シェーファーは、新入りの若い男、ティコ・フィオにひかれ、彼にそそのかされて、脱走しかける。成功しなかったけど。
 思いがけずそんな年になって初めてティコに恋したって感じ~~~。きゅんとしてしまう。

 「クリスマスの思い出」

 ちょうど今、11月の終りの頃の思い出。まだ小さかった僕、と、60くらい年の離れたうんと遠縁のいとこのお話。彼女はクリスマスが近くなったある日、フルーツケーキの季節がきたよ! と叫ぶ。そして、一緒に30ものフルーツケーキを焼く準備をして、作って、送るのだ。
 クリスマスツリーも二人で切り出しにいく。僕らだけの秘密の場所からとってくる。老いた犬のクイーニーも一緒にはしゃぐ。


 カポーティ本人の思い出だよねえ。
 この前見たドキュメンタリーで、小さい頃世話になっていた家で、おばさんが焼いてくれたジンジャーマンのクッキーを缶に入れてずうっとずーっと大事に持ってた、みたいなエピソードがあった。
 貧しくて、でも二人は親友で、一緒にクリスマスの準備をして。
 大事な思い出。大事な人。
 とてつもなくうつくしくて素晴らしい短編で、泣いてしまった。めちゃくちゃ良い。

 あ、翻訳、村上春樹、と思ったけど、別にそれは気にならなくて。訳者あとがきにあったように、カポーティってすっごく書くのが上手くて凄すぎる、のが、わかる気がした。
 他の作品も読もうと思う。
 
 ドキュメンタリー見て、ティファニーで朝食を 映画を見て、本を読んで。と、なんとなく名前は知ってて読もうとしたこともあったけど、いまいちわかってなくて、という作家を、今こうして出会って辿り着いた気持ちで読めて、よかったな。やはり本との出会いはタイミング。私には今だったな~と思える。よかった。

 

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