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映画 「マティアス&マキシム」


*ネタバレします。


映画 「マティアス&マキシム」


 マティアス、マキシム、リヴェット、フランク、シャリフ、などなど、大人になっていても仲良し男子たち。バカンスかな? わいわいお泊りしてる時に、リヴェットの妹エリカが仲間と作っている映画のキャストがドタキャンになり、二人、出演してくれない? と頼んできた。マキシムはまあいいけど、と承諾。もう一人は、ちょっとした罰ゲームでマティアスになった。
 エリカの映画は印象派? 的な、シーンの断片、らしい。男二人のディープキスの絵が欲しい、と。仕方なく、キスしたマティアスとマキシム。
 ただの素人の映画のための、ただのキス。けれど、二人の心にはどうしようもない波が立つ。

 グザヴィエ・ドラン監督。ドランはマキシムとして演じてもいて。舞台はカナダ。ケベック。フランス語と英語。監督の地元? 本拠地? で、自身の20代ラストの記念的作品、らしい。自伝ではないしプライベートでもないけど、仲良し仲間と作ったって感じらしい。
 「君の名前で僕を呼んで」に感動して、ラブストーリーを作ろう、とした映画なんだって。なるほど、触発されたのかなあというイメージはあった。ピアノ曲いっぱいとか。
 でも、やっぱさすがドラン監督。ただ二人の恋ってだけじゃない、母と息子もありだし。カナダ? の社会とかを私がほとんど知らないので、わかんないなあと思う所も多々。社会。世界。
 でもほんっと。その中で恋の瞬間の苦しさ切なさが物凄くて、呼吸とまってしまう。んあーーーーーーっ。

 これといって何の説明もないので映し出されてることから読み取るしかないんだけど、わーーーっとした中に見えることが多い。いっぱい。

 多分ご近所で仲良し友達たち。子どもの頃からのつきあいみたい。特にマティアスとマキシムは仲良しみたい。エリカにいっつもくっついてんじゃん、って言われてた。
 でも彼ら、30歳になったところ、らしい。マティアス、マットって呼ばれてる、マットは弁護士。ちゃんとスーツを着て。昇進の話を持ち掛けられたりもして。でも断りかけてた。なんだろ。そこでの出世には興味ないって感じかな。彼女、妻なのか、な、そういう相手もいて、人生順調そう。仲間うちでは、言葉にうるさい、頭よさげなのが鼻につく、って感じ。でもまあ仲良し。
 マキシムは、マックスって呼ばれてたかな。ドラン監督が演じてる方。顔に目立つ赤っぽい痣がある。しがないバーテンらしい。もうすぐオーストラリアへ旅立つところ。二年間かな? ワーキングホリデーみたいな感じ? あっちでもとりあえずバーテンやって、仕事探す、とか。

 マックスの母親が、ひどいというかこわいというか。多分ドラッグで身を持ち崩したのかなあ。多分、もともとは、あのちょっとハイソっぽいママ友たちの世界にいたの、だろうなあ。マティアス、マキシム、ちびっこの頃からの友達だから。多分、ある程度のいい暮らしはしてるご近所だったのだろう。マックスの母親、今は一人じゃほっとけないから、マックスは叔母に青年後見人を頼んでた。
 あたしのお金っ、とかママがキレたりしてたから、多分、一応それなりにお金もあるんじゃないかな。それとも保護みたいなのもらってるかなんかなのか? 支給を管理できない感じ? わかんないけど。ママはもうちっともよりつかない弟の方を可愛がってる感。マックスはこの家から、母から、逃れたくてオーストラリア行くんだろうなあ。

 やっぱりドラン監督。母と息子の関係がえぐいじゃないの。
 こういう多分底辺な感じの社会、それがそういう感じでただある、ってところを当たり前に描くんだな。

 で、そんなどん詰まりっぽい所から脱出しようとしてるマキシム。でも、あのキスのあと、ぎこちなくなってしまったマティアスのことが気になってる。
 マティアスは何もかもに上の空になってしまってる。マキシムのことが気になる。でも、それが何なのかわかんない、って感じ。八つ当たりもして、お別れパーティだかでうまくふるまえなくて、喧嘩したり。でも仲直りしたり。男子たち~って感じだなー。

 これ、モノローグも説明も何もなくて、何やってんだよってはっきりわかんないんだけど、でもねえ。ずっと仲間で友達でいて、でも、たまたまキスして。それで、あれは、何。キスして、欲情した? 苦しかった? 切なかった?
 映画のシーンとして撮影したキスのことは見せないんだよ。はっきり絵として見せないの~~~。も~~監督~~~っ。
 で、キスして。友達としてではない感情に気づいてしまった、いや気づいてなんかいない、でも、でも、何なんだ。って、マティアスが自分の気持ちを把握できないコントロールできない感が、リアルなのか。

 喧嘩の時に、痣野郎みたいなこと言って、友達全員からドン引きされて突き放されるとかさ。マットは堅物でちょっと性格悪いみたいな感じなんだよね。多分ヘテロで多分正義とか常識とかマッチョな思考の人物なんだろうと思う。でも、マキシムのことが気になって気持ち持て余しちゃうんだなあ。
 素直になれよおおおおおおおっっっ。

 パーティのあとの勢いみたいな激しいキスはとってもセクシーで切なくてここは息がとまった。んでもセックスまではいかなくて、また二人離れてしまう。逃げるみたいに。
 そんで別々に無茶して。
 素直になれってばよおおおおおーーーーっ;;

 でも心が、自分の心なのに、簡単にはどうしようもない、っていうの、ほんっと。恋ってやつは……。

 オーストラリアに行くにあたって、なんか、推薦状がいるとかで。何? 何の推薦状?? 私にはわからなかったんだけど、なか、そういう制度なのかな。で、マックスはマットの父に頼んでもらってて、でもそれがなかなか届かないからって、マット通してではなく直接連絡をとってみる。
 すると、三週間前にはメールで送ってますよ、という返事。
 それを聞いて泣いちゃうマキシム。

 マティアスが、マキシムを行かせたくなくて、推薦状をすんなり渡さなかった、って、ことかな? なんなんだよ素直になれよおおおおおお~~~~。

 ラストシーンでは、出発の荷造りして家を出たマキシムを、友達と、マティアスが迎えにきてたけど。あれ、マティアスがやっと素直にすきっていいにきてたのかな~どうなの~マキシムは旅立ったの? マティアスとくっつくの? 観客に委ねるスタイルですかーーーっ。
 でもなんか笑顔な感じの終りだったから、もし旅立ったとしてもマティアスの所へ帰ってくるのかなと、思った。

 これはゲイとかのセクシャリティの映画じゃなくて、誰もが思い当たるラブストーリーなんだよみたいに監督いってたけど。友情からの恋、これは恋? みたいなゆらぎ、戸惑い、胸キュンの苦しさの映画ってことか。
 でもまあ、舞台は2019年とはいえ。同性愛でいいのかの戸惑いは異性愛よりハードル高いってところでもあって。
 胸キュン苦しくて、さすがの激しさと強さだった。

 音楽が楽しく使われてたり、男子のノリのわっちゃわっちゃとか、勢いとかすごくあって、やっぱり強い。そしてやっぱり、母というものの描かれ方が、いろいろと、えぐい。マキシムの母だけじゃなくて、なんか、マダームたちのきゃっはっはみたいなかしましさとかもねえ。
 ドラン監督作品、なんか、どうなの。素直に大好き! みたいなんじゃないのに、気になって見て、好きだけど好きじゃないみたいな気持ちになって、強さにねじ伏せられる感じがして、複雑。
 それこそ、「君の名前で僕を呼んで」は、好き大好き大好き大好きって心から言うけど、これは、どうなの。でも。比べるもんじゃないか、全然違うけど。でも。あーでもやっぱすごく好きでもある。複雑。
 ともあれキスシーン、最高でした……。
 いいものを見た。

 

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