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映画 「鵞鳥湖の夜」


*ネタバレします。


映画 「鵞鳥湖の夜」


 チョウ・ザーノンはバイク泥棒の一員。メンバーの中ではベテランの方だが、刑務所へ行っていたブランクがある。
 泥棒同士、縄張り争いがあり、一度は話し合いで担当地区を分けるはずだったが、不満を訴える猫目、猫耳のチームと対立。銃撃、怪我などでたんなる落とし前では済まなくなる。
 逃亡中に警官を殺してしまったチョウ。最後に妻に会いたいと願い、自分にかけられた警察の報奨金を妻子に残そうとしていた。
 だが妻は現れず、代わりに別の女が来る。頼まれて、と。彼女はアイアイ。水浴嬢という湖での売春嬢たちの一人だった。


 以前に「薄氷の殺人」を見た、その監督の作品。正直私は「薄氷の殺人」をあんまりわからなくて、見たのは憶えてるけど記憶曖昧、でもなんだかすごく映像というか映画、絵、ひかりと闇、雰囲気独特だった気がする、という印象。ディアオ・イーナン監督。
 で、これはどうなんだろう私にとって面白いのかどうかーと思いつつ、見に行ったのでした。
 すごく面白かった。

 面白かった。と、面白いっていうか。これもまた物凄く雰囲気が独特に、すさまじくて引き込まれた。映像。闇。雨。ネオン。シルエット。あーこの監督らしさなんだろうなと感じさせる画面づくりがあって、それが素敵で凄い。
 雨、水辺で、じっとり重く厭な気配がみっしりまとわりつくようで、嫌。いやなんだけど、すごいうつくしい。雰囲気、映画の中の空気、この作品だからこその空気がむんむん伝わってくるの。すごい。

 色気があるんだなあ。
 動物的。刹那的。夜の動物園も印象的だったし、サーカスの一部みたいなのもステキだった。
 鵞鳥湖周辺、というあの街の感じも凄かった。猥雑な街。開発がすすめられそうで取り残されてるような、曖昧な空虚感。それでもそこに人はいて、暮らして、流れて、いく。

 警官もヤクザもあまり変わらないように見える。警官、ちゃんと捜査するんだなあ。警官殺されたからか。チンピラたち刹那的すぎてわけわからん。みんな未来とか希望とかないのかー。

 そんな中、チョウの妻とアイアイが、最後にはささやかに希望をもって歩いていく感じでよかった。
 アイアイ、チョウになんかちょっとほだされちゃうのわかる。チョウ、なーんか色気あるもんなあ。ちょっとストイックさがあって。でも色気あるよな~。でもなー。クズだろ。うん。駄目な男だけどなんかいい男なの。よかった。
 妻が、どうしようもないのも、アイアイがどうしようもないのも、ほんと、ひしひしとわかる。

 報奨金を結局得ることができたアイアイ。ちゃんと妻と山分けにするのかな。一緒に商売でも始めることができるのか。分け合ってバイバイするのか。わかんないけど、残った女二人が歩いていくの、とてもよかった。見に行ってよかったな。ちょっとくすっと笑っちゃうとこもあったり。うっとりしたり。細々としたところまですごく見応えあった。
 中国ノワール映画? かっこいいです。

 

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