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映画 「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」

 

*ネタバレします。


映画 「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」


 エイミーとモリーは親友。一生懸命勉強して、名門大学への進学を決めていた。だが、高校卒業の前日、チャラく遊んでばかりいた同級生たちが、それぞれみんなちゃんといい大学とかいい会社だとかに進むことを知って愕然とする。
 私たちは勉強ばかりしてて、高校時代の遊びを何もしてない。せめて卒業前夜パーティに行って、遊びを取り戻そう!

 てことで、基本的に王道古典的青春おバカムービー。親友と、バカ騒ぎしたり喧嘩したり仲直りしたり。そんなアホな~とか、そんな青春あるかーとか、そんな若さバカさ羨ましい~~っとか、やっぱ気の合う友達がいるってミラクル最高だな!!!!!って楽しかった。

 しかし世界はイマドキにアップデートされている。
 エイミーはレズビアンとカミングアウトしてる。片想いの相手は女の子。モリーはフェミニストで生徒会長を務めてきたし成績もトップ。ボランティア活動や自己啓発も頑張ってる。
 クラスメイトたちは人種もジェンダーも様々。見た目もフリーダム。先生もかなりフリーダム。セックスも酒もドラッグもありなんだな~アメリカ~。
 あちこち落書きだらけでひどい学校。のように一見みえるけど、あの高校、すっごくハイソな世界なんだろう。みんななんだかんだエリートコースに行く、って感じで、これはリベラルな理想的世界なんだな。

 よっしゃパーティにいくぞ!ってなっても、誘われてなくて、他に友達いなくて、パーティ会場がわからない。わずかなヒントやはしゃいでる映像がSNSかなんかにあげられてるのを見て、推理、調査。ほんとはエイミーだけじゃなくモリーも片想いの相手がいる、とわかって、絶対行くぞ、ってなって。
 なんとかパーティにたどり着いたものの、結局片想いはかなわず。でも、他の出会いがあったぜ! と、なんとなくハッピーエンド。でもそれよりやっぱり、親友最高!な感じだった。
 
 映画は理想。映画は未来への希望、と思う。みんなポジティブになれたらいいし、みんな悩んだり傷ついたりしながらも未来へ旅立っていければいい。多様性、いろんな背景ある若者たちにを全肯定するみたいな、丁寧に繊細に作られたんだろうなあと思う作品だった。
 夢。希望。理想。でもただ単純にドタバタコメディとしておかしいし楽しかった~。

 やっぱ何より、気の合う友達がいて最高!!!!!! ってことなんだよね。羨ましい~。エイミーとモリーの親友っぷり。可愛かった。

 あんまり私の好みとしては、見に行くつもりのなかった映画だけど、評判よさそうで、イマドキのリベラル感とからしいの、どういう感じなんだろうと思って気になって行った。がっつりエンタメでこんなにやるんだなあ。楽しめた。若さってやっぱバカで可愛くて切なくてステキだ。友達ってほんと、いいねえ。見に行ってよかった。

 

 

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映画 「ポルトガル、夏の終り」


*ネタバレします。


映画 「ポルトガル、夏の終り」


 女優のフランキー。家族旅行といって、シントラにみんなを呼ぶ。息子、現夫の娘、つまり義理の娘、とその娘。前夫、前夫の現恋人も一緒。友人のアイリーン。ヘアメイクの仕事をしている彼女をフランキーは気に入っている。できれば息子と結婚することにならないかと、思って呼んだ。
 美しい自然。ゆっくりした時間。フランキーは余命宣告を受けていた。


 ポルトガルのシントラって、町そのものが世界遺産らしい。きれいだった。緑の山も。海も。街並みも。フランキーは有名女優みたいで、あなたのビッグファンです、っていう人が何人もいる。街を歩けば、もしよかったら姉の誕生日パーティに、乾杯だけでも、と誘われたりする。80歳の姉の誕生日パーティ。
 そこの会話の感じからするに、フランキーは癌で、一度は克服したものの、今、再発していてステージがあがって、余命わずかってところなんだろうなとわかる。

 自分の死後、家族に幸せに生きて行って欲しい。そのためのおぜん立てをするつもりのフランキー。でも、それぞれいろんな事情があって、そううまくはいかない。
 だってみんな大人だもの~。それぞれの事情を、ママに言われたからってハイめでたしめでたしにはできないよねー。
 
 きれいな景色。そこにいる普通の人々。まあ、女優とかその家族って普通とはちょっと違うかもだけど、まあ、でも、彼らの普通。死が近いということは劇的なことかもしれないけど、でも、どんな人にも必ずあることで、まあ、普通のこと。
 殊更なドラマチックさはなくて、静かで、つい、寝てしまう……。映画館涼しくてこのごろぐったりしてるからさあ。
 とはいえ、すうっと一瞬寝てしまう気持ちよさって最高。
 そして映画の穏やかさも最高。みんな大人だ。大人だから、ちゃんとして、でもちゃんとしてなくて、なんだかんだみんなうまくいかなかったり、それでも思いやりをもったり。

 大袈裟なところがなくて、ナチュラル~。ふわーっと引き込まれる。
 フランキー、結局なんもうまくもいかなったかな。でも、最後、山にいって、夕日を見て。少しだけ微笑む彼女はとてもきれいだった。

 この最後のシーン、ずーっと遠景で撮ってるんだよね。山のぼり、海と夕日の光になっていく景色。人は小さく遠くて、家族がそろってなんか喋ったりしてるのかどうかとか、あんまりはっきりわからない。
 下手なドラマだったら、キャストそれぞれのアップとか会話とかなんなら和解とかで涙を流すみたいなシーンだと思うんだけど。こんな引きで撮ってただただ景色の中の人々、で、終わるんだなあ。とても素敵だった。

 主演、イザベル・ユペール。きれいだった。可愛かった。
 監督、アイラ・サックス。「人生は小説よりも奇なり」の人なんだーと気づいて見に行った。あの映画もとてもよかった気がするし。熟年ゲイカップルがついに結婚を、ってところで起きるドラマの映画だったよね。

 人生、という感じを見せてくれる監督なのかな。人生、って思った。人生は終わるなあ、と思った。終わる時まで、人生は続くんだな。
 特にこの夏、死を近く思う時だったから。
 人生って。
 自分がもういい年になってるから。死が近く、近しい人を亡くしていくばかりになるんだろうなと思うから。そして多分私も随分死が近くなってきているんだと思う。
 そんなことをしみじみ思ったりした。そう思わせてくれる、いい映画だったな。見に行ってよかった。

 

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映画 「インセプション」 (二回目)


*ネタバレあり、かな。

映画 「インセプション」 (二回目)


 昨日、18日にもう一回見に行ってきました。IMAXで見られるならやっぱもう一回っ、と思って。
 うっかり前よりの席にしてしまったのだけれども、おかげで視界全部がスクリーン。IMAXの映像で、音で、インセプションワールドを満喫! ぐおおおおおお~んと街が折れ曲がって被さってくるのを堪能!
 ものすごいドアップにでっかくキャストの顔を凝視! あんなでっかくなって見てもみんな綺麗な顔をしてて素晴らしい。かっこいい~すごい~。

 少しは落ち着いてみるつもりだったのに、やっぱりずっとコーフンして見てました。面白い。

 ダニクレボンドの最初、「カジノロワイヤル」が2006年なんだね。なんとなく、007っぽ~いアクション大作~と思った。雪山の所とか特に思ったわけだけど、わりと最初から、なんか赤茶けた街の狭い路地駆使しながら走り回ったり、勝手な思い込みだけど、007っぽーい、派手かつごちゃごちゃとしてるシーンいっぱいで、特にダニクレボンドからの007が大好きな私は、わくわくがいっぱいでした。こんなこと行っておきながら、私が実際にダニクレボンドを見たのは「スカイフォール」からで、あとからカジロワとか見たので。「インセプション」を公開当時見に行った時には知らなくて、あんまりわからなかったんだな。
 そういう面でも、今リバイバル上映してくれてよかった。楽しい。私が。
 ダニクレボンド的な007っぽさと、ノーラン監督ならではの時間、夢の映画。面白い。

 キャストもねー。みんな大好きになってるけど、その10年前の可愛い姿が見られて幸せ。みんな! アクションがんばってる! きゃ~~~(*ノωノ)

 ノーラン監督は世界を造る。そんな中、「インセプション」は世界を造るのはもちろん、アクション娯楽大作!って、キャラもえもたっぷりさせてくれるサービス満点の映画だな~。一つの冒険のために集まるチーム、とか、ふらふらしちゃう不安定な心とか、もえポイント満載。めちゃめちゃサービスされている、と、改めて気が付きました。
 最初一回見た時には、おおおお??? 夢?? 三段階? もっと? で??? みたいな方が気になっちゃうもんね。ほんと、見直すことができてよかった。めちゃ楽しい。大好きです!

 

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映画 「インセプション」 


*ネタバレします。


映画 「インセプション」 


 リバイバル上映始まった~。てことで昨日、14日(金曜日)IMAX見に行きました。
 2010年製作。公開10周年なんですね。十年、十年も前か……。公開当時は、デカプリオ~きゃ~、とか、渡辺謙さん~おお~ほんとにメインキャストで凄い。かっこいい。なんて感じで見に行った気がする。もちろん今も大好き。デカプリオやっぱ素敵だよ~きゃ~(*ノωノ)。
 でも今回は! キリアン・マーフィとトム・ハーディ目当てだ! きゃ~~~~~(*ノωノ) 好き。好き。昔ももちろんかっこいいなあとは思ってたけど、しっかりちゃんと認識できてなかったと思う。そうか。十年という時の流れよ……。


 夢の中、つまり人の深層意識に入り込み、情報を盗むコブ。では逆に深層心理に望む情報を植え付けてしまう、インセプションができるのではないか。無理だとされているが、コブならできると見込んで、ライバル企業の後継者に、自ら会社を潰すよう仕向ける依頼をするサイトー。
 父の死の直後のロバート・フィッシャーを、眠らせ、コブたちのチーム、+サイトーは、夢の中へと侵入する。


 多分十年ぶりにまともに全部見た気がする。テレビでやったっけ、そういうのを見た事あると思うしブルーレイ買ったけど、見直してない。夢と時間、記憶の物語、という印象だったけど、がっつりしっかりアクション大作だった。特に雪山のシーンとか、すごく007っぽいな~って楽しんだ。重力どうなってんだがわかんないすごいホテルでのアクションとか。いや、実際セット作ってホテルの廊下の方を回転させてるとかのメイキング見たことあるけど、それでもなんか、どうなってんだよとびっくりする。凄い面白い。

 当然ながら、夢の設計の練習~と、リアルな街がぐにゃり~と降り曲がったり、爆発したりの、驚異の映像を、IMAXで見るのは最高。またスクリーンで見られてよかったー! 
 アリアドネちゃんの好奇心が強すぎてハラハラする。
 夢の中のモルは、コブが投影してる影なんだよね? それにしても怖すぎる。モル絡みはすごくホラーテイストだと思う。というか、この夢と現実が曖昧になって夢の中に囚われたままになっているのではないかという不安、全部が夢なのか、という不安、ホラー映画な気がするよねえ。こわくて悲しくて不思議で面白い。

 最後の、夢から覚めてると確認するためのコマが揺らぐところで終り、になる、にくい〆方は、私はやっぱり、めでたしめでたしで、終わったんだと思う、多分。生きて帰ってくるために、コブ、すっごく頑張ったじゃん。報われて欲しい。。。


 そんなこんなでやっぱり隅々まですっごく面白かった。
 そして登場人物たちがみんないいキャラで素敵~! もえる~!

 やっぱり私はキリアン好きなので(*ノωノ) ロバート坊ちゃまが、攫われちゃうし薬で眠らされちゃうし、夢の中で脅されたり守られたり死にかけたり縛られたり、あああああ~もうううう~~タイヘンだった。
 誘拐か? ってなった時、またか。もううんざり。みたいなロバート。あの、狙われて危ない目にあうのに慣れてしまってる感、うんざりしてる感、慌てず騒がず金なら出す、って感じがすっごいもう、あああ~。お坊ちゃま。タイヘンな人生じゃん。
 そしてそんな中、無事に大人に育ってよかったね、って思う。んでもやっぱまたこう狙われて、自分の意志に勘違いさせるように情報植え付けられちゃうんだよ。可哀相;; ロバートがんばれ~。
 お坊ちゃまだからなんか素直で、なんかすぐ騙されちゃうし、信じちゃうし。ほんとロバートくんが心配だったよ。キリアン可愛すぎるでしょ。。。はー。好き。
 
 トムハはイームス。夢の中でロバートの身近な人間に成りすまして騙し、情報を植え付ける役目。下調べの段階でしれっとロバートの仕事の取引の場にいたり、レポート作ったりしてたなあ。夢の中に引きこんでからも大体イームスがロバートを連れまわす感じで、ああああ~~~トムキリーっ(*ノωノ) という妄想がはかどる。好き。

 雪の病院の階層で、ロバートが撃たれて、死ぬかもって危機で、心臓蘇生のあの機械、パッドはったりするのイームスなんだけど、なんか、セーターの中に手を入れてって感じで肌見せないんだよねえ。サイトーが撃たれたところもそうだったけど、あれは、普通、というか、よくある感じだと、バッと服はだけて傷を確かめ、とかじゃない? かたくなに肌を見せないのは、ノーラン監督の好みなのか。けど見せないがゆえのエロス、って、もう~~っ(*ノωノ)もえる。

 そして最後には無事目覚めて、飛行機から降りてって時にはみんなしれっと他人。イームスの方は夢の中の冒険わかってるけど、ロバートの意識には残ってないんだね。無意識、深層にはある、のだろうか。でもそれは夢だから、意識はもう出来ないのか。夢をふと思い出すみたいに、なんかタイヘンなことがあった気がするけど、あれは夢か、みたいに思うこともあるのかなあ。
 あのあとロバートはどうするんだ。サイトーの思惑通り、会社継がずに潰すことになるのかなあ。よかれと思って、自分は自分の道を。会社はもうどうでもいい、みたいになるのか。ロバートの今後が心配だよ……。

 サイトーは、リンボに落ちて老いていて、帰ってこられたけれども、魂は老いてしまっていて。ということだよね。若い身体に戻って、ちゃんと約束覚えていてコブが自由になるよう取り計らう電話をかけたけど。老いた魂に、またビジネスの野望みたいなのはあるんだろうか。サイトーの今後も心配だよ……。

 自在に夢で世界を造る。これって監督の世界かなあと思う。映画の中に自分の夢の世界を造ってる。ノーラン監督って、神だなーと思う。自分の世界を造ってる。
 それでも十分エンタメに面白く見せてくるのが凄い。

 さんざんに予告見て煽られまくってるんですけど、「テネット」、どんな世界が造られているのか、すごく楽しみだ。

 

 

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『パーフェクト・クオーツ 北の結晶』 (五條瑛/小学館文庫)


*ネタバレします。


『パーフェクト・クオーツ 北の結晶』 (五條瑛/小学館文庫)


 北の国の指導者の跡継ぎになれなかった男。ヨハンと呼ばれる彼が亡命を求めているという情報が米軍にもたらされ、ひそかに情報部が動き出した。
 橋渡しをする韓国の財閥の若き社長、重貞高平と接触するエディと葉山隆。慎重に、だが焦っているヨハン。政治スキャンダルに巻き込まれた高平。亡命は成し遂げられるのか。


 そんなこんなで、現実の暗殺だか殺人だかのあの事件を思いつつ、こんな背後があったりして~という想像リアリティがすごく面白くて、複雑だけど読みやすくて、大満足。

 父と息子の物語なんだよな。高平のところも。葉山くんとミスター・オリエンタルな亡き父と。北の指導者とヨハンと。兄弟もか。五條さんの世界はこういう業の深い父と息子、血の絆とかの呪縛が苦しくてとても良い。好き。一方通行の愛みたいなの、受ける方には酷くて、とてもよい。好き。

 亡命どうなるかのところと、葉山くんが偶然、父を知る男に会ったり、スリー・アゲーツのあと託されたテープからスパイを探ろうとしてたり、細々した謎も深まったり明らかになったりして楽しい。そして猫目石へ続く、みたいなことらしいんだけど。

 だけどー。作者のあとがきでも、なんかもう出版する気はないみたいな感じだったりして、単なる一読者でしかない私にはもう読めない世界なのかなと、悲しくなる。まー……。作者が出さないってゆーならただの読者にはどうしようもない……。つか、オンデマンド出版の時買っちゃっててごめんなさい……。出すほどに赤字でタイヘンだったみたいに書いてたから、なんか、そういうのわからなくて、買っちゃってたの悪かったのかなと……。うーむ。

 ともあれ、やっぱりエディと葉山くんがあまりにもいちゃついてて、何度読んでも萌え転げてしまう。ご褒美か……。ありがとう……。
 一緒にお仕事~。おめかしのお着換えお洋服買ってあげる~、南国リゾート~、ホテルは同じ部屋(一応ツイン)、酔って溺れかかって助けてくれる~、つい噛んでしまう~~あとから傷跡を見てドキドキ~。ファースト・キスだとかあああ~~クリスマス直前、雪、好きなコーヒー豆用意して待っててくれて、泊まっていけ。とか~~~ああああ~~~。そんな。そんなときめきシーンたっぷりすぎて、凄かった。ありがとう……(*ノωノ)

 ほんとは二冊セットのはず、とのこと。この中ではソウルに行ってた坂下くんのお話があるのかな。読みたいな~。無理なのかなあ。読みたいけど……。期待しないで待ち続けます……。

 

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『特捜部Q -アサドの祈り-』


*ネタバレします。


『特捜部Q -アサドの祈り-』


 シリーズ8作目。サブタイトル通り、アサドの物語。

 ヨーロッパに渡ってくる難民、移民。不法に海からこっそり上陸してこようとする彼らはしかし、不慮の事故でなくなってしまうこともある。海辺に示される、難民の犠牲者の数。2117という数字になった老女の遺体をたまたま近くに居合わせたジャーナリスト、ジュアンが写真にとって新聞に大きく掲載された。
 しかしその老女は、事故死ではなく殺害されたのだとわかる。ジュアンはこの事件を追うことにした。

 デンマークでアサドはその記事、写真を見ると、号泣してしまった。すっかり引き籠りになっているローセの様子を見に行った時で、ローセに少しずつ話をする。
 アサドの隠してきた過去。アサドの本当の名前はサイード。語学に堪能な兵士だった。愛する妻子と離れたのは、かつてアフガニスタンへ派兵された時の事件のせい。捕虜となった仲間を助けた出来事だった。
 刑務所から逃げた時、怪我を負わせたカーリブが、アサドを深く恨み、復讐のために家族を奪ったのだった。


 これまでにもアサドには何か凄い過去があるんだろうなと思ってきたけれども、描かれて見ると、むちゃむちゃ過酷すぎて読むのが辛くて、一気読みなんてとてもできなくてちょっとずつ読みました。
 おー国際情勢。9.11の頃とか。イスラム世界との西側の対立とか。国連軍とか。そんな渦中に、ラース・ビャアンとその兄を助けることに協力したアサド。ラースの病死で過去の縛りがとける時でもあったのか。

 巻き込んだ責任としてラースはアサドをデンマーク警察内部に匿ってた、ってことかな。けどさー。あんまり酷いことに巻き込んだんじゃないか。酷い。
 妻と娘二人。大事な家族を奪われて、生死も不明なまま、アサドは作中で12年くらい? 特捜部の一員としてしっかり働いてきたわけか……。カールと、チームのみんなと仲良くなって。
 特捜部での日々は、命にかかわる事件もいくつもあったとはいえ、それでも、まだ穏やかだったのか。心の中は苦しみ悲しみでいっぱいだったとしても……。カールやローセと事件を追って解決して、というのは、アサドにも多少なりとも生きていける力になる日々だったのだと、思う……。今作では、ローセが復活になってアサドの力になるし。何よりアサドはカールがいることを信頼しているのがわかってよかった。カールももちろんアサドのために力を尽くす。

 あともう一つの事件として、ひきこもり青年アレクサンダが、なんだか犠牲者2117の写真に好きだったおばあちゃんの面影を見て、ブチ切れでゲームで2117のステージまで行ったら、日本刀もって外に出て無差別殺人してやる! と張り切っちゃう話も並行してあった。微妙に日本かぶれで、日本刀とか偽名にトシローって名乗ったりして。
 この引きこもりくんの話は何なんだ。父親は実際殺しちゃったし、母とご近所さんもあわやという所だったけど。特捜部のチームを二分割するため? なんか、アサドの方に集中するときつすぎるからちょっと緩い、といってもまあ重大事件になるとこだったけど、まあ、引きこもりくん事件も並行していくことに。でもそんな坊やの話なんか邪魔だー。
 
 邪魔だ―、ってのが狙いなのかなあ。犠牲者に勝手にわいわいやるはた迷惑な野次馬みたいなことなのか。んー。わからん。
 まあ、ともかく、ゴードンの見せ場ってことかな。ゴードンとローセががんばって、一応なんとか、犠牲は父だけという所で止められた。よかったよかった、かなあ。

 アサドに復讐したいカーリブがついでにベルリンで酷いテロを企んでいて。アサドの妻子を薬漬けにして車椅子に縛り付け、爆弾つけて、アサドの目の前で爆発を、ってたくらみで。酷い。その日まで、カウントダウンに描かれていってて、読むのが、ほんとしんどくなってしまう。
 最後まで、ダメなのかもしれない、目の前で殺されちゃうかも。と思いながら読んだ。
 かろうじて間に合って、助かったけれども。

 けれども、助かったのはよかった、けど。カーリブの息子なのかと思ってた子が本当はアサドの子だといったり。妻子は人質になっていた十年以上もの間、蹂躙されまくっていたみたいで。アサドと再会できて、家族がまた家族として、やっていけるのか。あまりにも辛い日々になるんじゃないのか。わからない。難しい。どうなっていくの。アサドに心の平安が来る日はくるの? どうなるの……。今すぐ続きを読ませてくれ;;

 カールはモーナとの間に赤ちゃんができるみたいだし。ハーディに、動けるようになるかもしれない希望とかあるみたいだけどやっぱりダメだったのかなとか、いよいよ一作目の最初、そもそもカールが特捜部に閉じ込められるきっかけともいう事件、仲間を失ってカール自身も怪我して、ハーディが動けなくなった事件のことが、動きがあるのかな。次、どうなるの。読ませてくれー。

 特捜部Qの翻訳出たのが2011年みたい。途中全部細々と覚えているわけじゃないけれども、長く付き合ってきた気分なので、登場人物たち、知り合い、って気分。カールたちが、どうなるのか。心配しちゃうよ……。
 全10作の予定だよね。無事に全部書いてくれ。読ませてくれー。みんな、生きててくれと願う。みんなを見届けたいと思う。早く次が書かれますように。読めますように。

 

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映画 「ダンケルク」


*ネタバレします。


映画 「ダンケルク」


 IMAXでリバイバル上映ですねー。公開時にも二回、か、な、多分、行ったけどまた行ってきた。
 2017年製作かあ。ついこの前って気分だけど3年前か。。。

 海岸に追い詰められた英、仏軍兵士。英国兵士たちは撤退の船を待ち、海岸に長い列を作っていた。負傷兵を運ぶことで列を押しのけていくトミー。だが、船は敵の戦闘機に撃沈されてしまう。
 海を渡れば故郷に帰れる。救いの船は、なかなかこない。

 史実ベース。でも戦争の大局ではなく、徹底的にその日、その時、目の前の名もなき兵士たちを描く。もうわかってる映画なんだけど、やっぱりずっとずっと緊張しまくりで、見終わるとぐったりしてしまう。生き延びた兵士。だけど、まだそれは戦争の渦中、苦しみは続くということ……。それでも生きてよかった。それでも、生きられなかった、海に沈んた兵士たちよりよかった。よかった、んだよな。それでも。

 命をわけたのは偶然。それは感謝なのか。その後の兵士たちの人生は誰にもわからない。

 三つの時間軸がある。初見の時には、空、海、海岸からの脱出の三つがあるから、というのがスピットファイアによって見えるまでわかってなかった。もうわかってて見て、残酷な対比にも思える。
 飛行機ならほんの一時間。小舟でも一日足らず。けれその距離、海を越えることが、陸兵たちにはどれほどの困難であったことか。
 ずっと、トミーの焦燥とともにあったから、帰って列車に乗った彼が束の間とはいえ眠れたのは、ほっとした。けど、辛い。

 名前のあるドラマは、ムーンストーン号で、あの小さな船が出航するとき、ジョージが登場のシーンからしてもううるっときてしまうよね。
 沈んだボートの残骸に一人取り残されていた兵士にも。登場の時からうるうるくる。
 キリアン・マーフィが演じてて、大好きなわけですが。
 トミーが海に流されてる時に会った時には、普通にまともな兵士だった彼が、Uボードに沈められる恐怖、仲間みんな死んでいなくて、あの海に一人残って、やっと、救われたけどまたダンケルクに戻るってなってパニックになるのは仕方ないし。その孤独と恐怖を思うと本当に辛い。でも物の弾みとはいえジョージが犠牲になるのが、あまりにも辛い。

 たくさんの犠牲。
 生きて帰ってきたことを大喜びで迎えてくれる人たちは善良だと思うけど。希望はある。救いもある。歴史の決着を知っている。連合軍が勝つんだ。でも、戦争は。

 エンドロール前に、ダンケルクの戦いで人生を変えられた人に、みたいな献辞があったと思うんだけど、そう、戦争は、人生を変えられてしまう、狂わされてしまう事。その端的な、象徴的な、出来事を描いた映画だと思う。

 空軍はさー、どうしたってもう最高にかっこいいけどさ~~~。トム・ハーディだもの~~~。
 地を這い、海に、砂に、重油にまみれて溺れかける地上を軽々と超えていくスピットファイア。素晴らしいエンジン音。かっこいいよ……。
 
 何度見ても隅々まで面白くて困る。すごい好き。描かれたことも、描かれていない余白も余韻も。好きだ。

 

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映画 「コンフィデンスマンJP プリンセス編」


*ネタバレします。


映画 「コンフィデンスマンJP プリンセス編」


 資産10兆円を超えるとも言われる、フウ家。当主レイモンドが他界。三人の子どもがいるものの、残した遺言は、誰も知らなかったもう一人の子ども、ミッシェルに跡を継がせるというもの。年齢も性別も不明。謎の子ども、ミッシェルの偽物をでっちあげ、ダー子たちはフウ家のお宝を狙って潜り込む!

 てことで、映画第二弾ですね。前の映画、ドラマシリーズから引き続きのゲストキャストもいっぱい。ちょいちょいチョイ役に豪華ゲストもいっぱい。いっぱい、かな。テレビバラエティ的なノリが強くなってる~むむ~、というつまんなさもありつつ、でもやっぱり相変わらずの、ダー子、ボクちゃん、リチャードの三人組が核にいるので、ま、映画化っていうお祭りでお遊びだ、めいっぱい遊んで、大事なとこだけ大事にする、という仕上がりでしょうか。

 プリンセス、とは、隠し子ミッシェルに仕立てあげる、コックリと呼ばれる女の子。詐欺師の娘、母を亡くして、知り合いの間をたらいまわしにされ、ろくに学校も行ってない、ケチなスリの手下をさせられていたのを、偶然見つけたダー子が救い出して仲間にした女の子。
 殴られたり、邪魔にされたり、教育も受けてないから何もわかってないダメ扱いされていた子が、ダー子たちのたくらみに乗って、お嬢様教育を受ける数か月が、夢みたいにしあわせで、と泣く。怖くない、と。

 おおむねバカバカしく楽しくコンゲームなんだけど、こっくりの偽物から成り上がってくのも、そんなアホな~というベタさなんだけど。
 まともな大人にちゃんと育てられなかった子ども。貧しさの中でどうしようもなく生きる場所のない子ども、という、結構実は日本でも今ある問題なんじゃないのか、という所が描かれているものだと思う。

 勿論、楽しくバカバカしくドラマならではの、嘘やろ~そんな都合よくいくかよー、って感じで彼女は救われるわけだけど。

 楽しく騙して金儲け! な、ダー子もボクちゃんも、ほんとは見捨てられた子どもだったっぽい、というのが背景にあった、よね。たぶん。ドラマの終りの方。あれがホントか嘘か、は言われないまでも。だから、こっくりちゃんが本当にフウ家でやっていける、と見極めたら、ダー子は彼女を本物にしてしまった。

 詐欺師は嘘を売り、嘘を信じさせ、自分でも信じる。何にでもなれる。嘘でも偽者でも、本物になれる。ほんとの覚悟があれば。

 当主レイモンド。実は、ミシェルなんて隠し子はいなくて、二年前の香港で、たまたまあの時のダー子たちが、架空の後継者がいるってことにして、群がってくる詐欺師の中から優秀なの選んじゃえばいいのよ、なんて雑談を聞いてたことからアイデア得て、遺言を残したのだーってことだった。そんなバカなw
 でも、執事、つか、フウ家を生真面目に支えるトニー、柴田恭兵ね、トニーがちゃんと選んで、一番見込みがある人間を後継者にすればいい、という、その企み、なんだね。トニーは密かにたくらみ打ち明けられていたのかどうかが、わかんないけど。言ってなかったのかなあ。どうなの、レイモンドじーさんよ。北大路欣也が演じてて、かっこいいお茶目じーさんみたいだったけど。
 子どもたち、誰も見込みはない、ってことだったのか。それとも、莫大すぎる家を継がせるのは難しい、という親心でもあったのか。わかんないけどなあ。でも偽者ちゃんが本気で跡継ぎになったことで、兄弟たち、自分のしあわせを得ることができそうっていう。なんか結果オーライ。めでたしめでたしでしたね。さすが映画。

 ほんっと盛沢山に次々たっぷりキャスト出てくるけど、それぞれそれなりにちゃんと見せてくるのすっごいよね。
 脚本のどんでん返しも、最後の最後までたっぷり仕込んでるよね。
 さすがにもうだいぶパターンはわかってるし、と思いつつも、あ、お、お、まだあった、と、エンドロールの間もそのあとまで、楽しかったです。
 エンドロールでさ、つかこうへいの脚本? 生瀬さんいたっけ?? って思ってたら、エンドロール後のおまけだったw 鎌田行進曲風味だったw アホかw

 長澤まさみダー子はほんっと最高。すごく可愛いかっこいいステキで面白い。東出くんもまあ、なんだかんだ騒動ありつつ、でもやっぱボクちゃんはボクちゃんでこの役はほんと好きだなあ。

 ジェシーを演じてる三浦春馬。この映画、もともとは5月公開予定が、コロナ禍で伸びて、今になって。その直前での自殺のニュースでほんとうに驚いてショックだった。映画の中にジェシーはいて、三浦春馬、前作見た時に、あ~ハンサムであることをちゃんと開き直って演技できるかっこいい俳優になってるよな~楽しい~と思っててすごく好きだったので。今作でもジェシーがいて嬉しいんだけれど。でも、やっぱり彼の姿を見ると悲しくなった。とても悲しい。演じ続けられなかったのかなあ。
 でもジェシー、いいキャラだし。素敵だったよ。よかったよ。好きだよ。

 波乱万丈ありますね。いい作品だしいいキャラいっぱいだから。ちょっと少し間おいてほしい気はする。同じパターンで立て続けには、今ちょっともういいのでは。数年後、また楽しく派手に、花火みたいにドラマ見せて欲しいな。ダー子たちよ、永遠に~。

 

 

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映画 「エレファント・マン」


*ネタバレします。


映画 「エレファント・マン」


 19世紀末のロンドン。エレファント・マンとして見世物になっている青年がいた。医者のトリーヴスは異様な姿の彼を医学的に調べ、学会で発表する。
 酷い扱いを受けていた彼をロンドン病院の一室に住まわせ、保護するトリーヴス。最初、話すこともままならず、知能は低いと思っていたが、ジョン・メリックという名の彼は、聖書を読み込んでいて暗誦することもできるのだった。
 恐ろしい見た目でも、落ち着いて話しができるようになると、ジョン・メリックの事が新聞記事になり、人々の興味をひく。女優や、上流階級の人々もジョンに面会にやってくる。病院の下働きの男は酒場で金をとって、酔客をジョンの部屋へ案内して見世物にした。
 一度はまたサーカスに連れ戻されたジョン。だが、あまりにひどい扱いに、同じく見世物になっていた仲間がジョンを逃がしてくれる。
 心ない人々に追い詰められながらも、ロンドンへ戻ってこられたジョン。またトリーヴスや女優にに友人として劇場へ案内され、素晴らしい舞台に感激して。しあわせを感じながらしずかに眠りにつくジョン・メリック。横になって眠ると、多分命を落とす。穏やかな自殺を選んだラストだったのだと思う。


 1980年製作で、40周年記念、リマスター版? 4K修復版? とのことで、リバイバル上映になっている。昨日見に行けた。
 デビッド・リンチ監督。見たかったんだよー。
 実話ベースの物語ですが、やっぱなんかリンチ監督。工場、煙、機械音が鳴り響く。「イレイザーヘッド」を連想した。
 リンチ監督、フリークス好きだよね。
 
 エレファント・マンことジョン・メリックを演じていたのはジョン・ハート。特殊メイクなので顔とかあまりわからないけど。うまく喋れないなりに、ジョンはちゃんとジェントルマン、という感じが素敵で。
 でも複雑だ。知性があって、聖書を読み込んでいて、詩や美しいものを愛して窓から見える教会のミニチュア模型を作ってみたりする、芸術的な人物だったから大事にされて、愛される、のか。彼がもしもっと知性がない、紳士なふるまいができなかったら? 大事にはされないのか。また放置されてしまうのか。見た目のグロテスクさを、上品に見つめる人々は、でもサーカスで見世物にされてた頃の観客と何が違うというのか。

 医者に看護婦長が、先生も見世物にしてます、って忠告したり、医者自身もそのことに悩んだりもあったけど。でもサーカスで見世物になってる時よりはジョンはずっと幸せそうで。上品ぶった人に会うのも、医者を友と呼ぶのも嬉しそうで。それはそれでよかったんだろうなあ。殴られて檻に入れられてるよりずっといいのは確か。でも。

 医者を演じていたのはアンソニー・ホプキンスでした。若い。ま、そりゃそうか。四十年前。四十代なのかな。モノクロ映画だけれども、医者の瞳は綺麗な青に違いないって思ってひきこまれる。当たり前ですが名優。ジェントルマン~。
 最初の方は、ジョンの姿をなかなか映さない。ジョンを見る医者の顔のアップとかが綺麗ですごい。アンソニー・ホプキンスってかっこいいんだよなあって改めて思ったなあ。

 ステキな医者と向き合う、大きなこぶや歪にひきつった顔のジョン。でも、友情なのだ、と。
 でも、どーなの。それは本当に友情? ただの利用でただの同情?
 ジョンが素直に喜ぶたびに、見ていて、ああ、見ていていいのかな私、と考えてしまう。けれど、友情であるのも本当だな、とも思えた。医者もジョンのこと結構好きになった感じあった。

 ジョンを見世物にしてた親方さあ。父親だったのかな。ジョンのこと酷い扱いしてるのに、宝物、と詠んで執着がすごかった。見世物にして金儲けだ、ってことだろうけど、でも、それ以上に執着があった感じがして。どうなのかなあ。わからないけど。

 実話ベース、ってことでなんか記録とかあるのかな。ちょっと気になる。けど。うーん。難しい。人権とは。とか難しいよなあ。殴られたり檻に入れられたりは論外に酷いとして、けど、見世物、という手段で金を稼ぐしかないっていうのは、それは、うーん。
 今見ても凄いし、多分今後も凄い。リンチ監督だなーってのもあるし、深いヒューマンドラマでもある。見に行けてよかった。とてもよかった。
 

 

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