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映画 「コリーニ事件」


*ネタバレします。


映画 「コリーニ事件」


 ホテルのスイート。実業家のハンス・マイヤーは新聞記者の取材を受けるつもりで男を迎えた。しかし、男は銃をつきつける。
 ロビーへ降りてきた男の足跡は血の跡。その男コリーニはイタリア人。ドイツに住んで30年あまり。彼は何故、ハンス・マイヤーを殺したのか。黙秘を続けるコリーニの国選弁護人になったカスパー・ライネンは三か月前に弁護士になったばかりだった。

 これ原作がすっごく面白いと評判になっていたのを覚えてる。ドイツの弁護士で作家、というシーラッハの。面白いのかあ、面白いんだろうなあとは思っていたけど、読んだことなかった。でも、映画きたし面白いミステリらしいし一応見に行っておこうと思って行きました。
 凄い。
 すごく重い。辛い。ほんと面白かった。


 新人弁護士くんが頑張って、黙秘を続けるコリーニの動機を明かしていくミステリ。でもこれ、ドイツ、過去、ってなってきたら、ナチ絡みでなんかあるんだろうなーと察しはつくわけですが。イタリアもドイツに占領された? イタリアとドイツ同盟国だったのではとかよく知らなくて、ちょっとぐぐったら、イタリアが降伏した後に、イタリア戦線とかあったのね。歴史をあまり知らなくて申し訳ない。。。

 新人弁護士くんは、トルコ人、だっけ。移民の子ってことなんだろう。子どもの頃、父はいなくなって、母が苦労して育ててくれたって感じ。で、ハンス・マイヤーはご近所さんかなんかなのか? 最初は意地悪してきた子の祖父か。でも仲良くなっていって、ライネンくんの父のようなもの、とかで、多分学資とか支援してくれてたかなんかなんだと思う。
 恩人を殺した男の弁護を引き受けてしまった。被害者の名前が本名だったから気づかなくて。ハンスってのは通称ってことなのか。

 一度は断ろうとしたけれど、弁護士に私情は禁物と、刑法を習った教授、相手側の弁護士やる人に言われて、引き受けることになる。黙秘するばかりのコリーニに手を焼いて、もうてきとーに済ませちゃえ、みたいに思いかけてた所、凶器の銃がワルサーP38、だとかで。お?ルパン? とか思ったけど。それは古いタイプだかなんだかで、一般的ではない、みたいなことから、昔、友達がこっそり見せてくれた同じ銃のことを思い出す。ハンス・マイヤーの図書室の本の奥に隠されていた銃。

 何故そんな銃で殺したのか。

 で、過去を探ると、ハンス・マイヤーはナチ。しかも酷い行いをしてた事がわかってくる。ドイツ兵がテロにあった報復に、無関係な村で勝手に十倍の人数を殺したのだった。
 コリーニは一度はちゃんと訴えを起こしたことがあった、ということもわかってくる。戦争犯罪を告発したのに、マイヤーは起訴されなかった。何故だ、という、ついに喋ったコリーニはライネンに訴える。

 そこで、ライネンは不起訴になったわけを調べていくと、ドイツの法改正かなんかで、戦争犯罪をしれっと時効にしちゃうような条文があって、それを起草した会議に、相手側弁護士、恩師である教授が若い頃関わってて。

 ナチスの過ち。狂気。その犠牲を戦争が終わってから訴えてもそれをすり抜ける道が用意されているなんて。

 コリーニがまだほんの子どもだった頃。村にやってきて虐殺をしたマイヤーは、女、子どもには手を出さないけれど、わざわざ、コリーニの父を選んで、目の前で殺させた。コリーニにとっては地獄だったろう。パパ、とあの時自分が声をあげてしまったから、父親は選び出されて殺された。
 戦争、戦後の苦しみ。父の死をどれほどの思いで抱えて生きてきたのか。
 ハンス・マイヤーのやったことは戦時下とはいえ、酷い。戦争犯罪が、不起訴にされたことに納得なんてできない。
 かといって、私刑で殺したことは罪であると、コリーニだってわかっている。

 裁判の結果が出る日、コリーニが自殺したと知らされる。法廷で、ドイツの過ち、法律そのものがおかしい、と明かされたことに、コリーニはありがとうとライネンに言ったのだった。彼が求めた正義が、明かされて。

 これはフィクションで小説で、でもこの条文は現実らしい。この小説が出た後に、ドイツでは見直しが始まったりしたとかなんとからしい。実話ベースじゃなくても、フィクションの力って、あるなあ。

 ハンス・マイヤーは戦後、多分正気に返って、いいおじいちゃんになったのだろう。ライネンを支援する紳士だった。コリーニに銃をつきつけられた時、ひざまずき、うなだれて抵抗しなかったみたい。
 人は変わる。
 けれど、許せないのも当然。コリーニの自殺を知らされたシーンからエンドロール終わってもずっと涙が止まらなかった。
 コリーニが訴えた時にまともに裁かれていれば、この事件はなかっただろうに。

 過去を調べていくのに、膨大な文書、記録を調べていく。その、記録が緻密にいっぱいあってよかったねと思う。記録、大事だ。すごく大事だ。記録がちゃんとあるから、後世に伝わる。調べたり、考えたりすることができる。記録。
 時代が変わると、正義も変わる。正義というか、ね。
 戦争中なら仕方なかった。戦争直後なら仕方なかった。そういうことはあるだろう。
 でも、その記録を調べて、今、新たにちゃんと過ちをただすことができるように、していかなくては。

 つくづく、この頃の我が国は、公であっても記録しないとか消したとか捨てたとか、何かと酷い話になってるのを思って、マジ記録大事だからほんと頼むよ我が国。。。と、暗澹たる思いに陥った。

 過ちはある。人は過ちを犯す。それを認め、改善していけるのも、人。時代は変わる。社会は、よりよくなっていくはすだ。よくなっていけるはずだ。そう、信じるよ。


 ライネンくんが新人であることもあるけど、トルコ人のくせに弁護士、みたいな見られ方もある感じが、今も根深い差別問題みたいなのもはらんでいることがちらりと盛り込まれてうまいキャラだなあと思った。
 新人弁護士くん、可愛いね、といった感じもある。その軽くみられる感じが、ヤな感じ~でもある。
 マイヤーの過去を、ライネンに暴かれたくない、やんわり圧力かけてくる感じとか買収めいたことを持ちかけるとか、なかなかヤバイじわじわもよかった。

 ライネンくんのチームになる、友達や、たまたま知り合ったピザ屋の女の子や、父との和解めいた感じとか。その辺はあっさりだったなー。時間の都合なんだろうか。でもなんかちゃんと孤独じゃなく戦う感じ、よかったー。

 ラストシーンが、サッカーボールが転がってきて、ちびっこの頃のコリーニ親子の幻を、ライネンくんが見てほっとする、みたいな感じだったの、それはなんかちょっと~~。とってつけたような~~~。それいらないよー。と思ったけど、そういうちょっとホッとできる気分で終わりにするってのが、まあ、監督の親切なのかな。原作がそうだったのかしら。わからないけど。

 けどほんと、見応えずっしり。コリーニを演じてたフランコ・ネロ。「被告人コリーニを「続・荒野の用心棒」の名優フランコ・ネロが演じる」だとかで、私はちゃんと認識したことなかったけど、名優なのね。
 セリフほとんどなし。黙秘してるから。それでも、青い目がとても素敵で、ぐっと渋い、まさにいぶし銀て感じで、無言でいる佇まいだけですごく、迫力、説得力があった。かっこよかった;;

 とてもよくて、感動したので、本も読もうかなと思う。映画化でアレンジしたところもだいぶあるみたい。でもたぶんすごくいい、うまい映画化なんだと思う。見に行ってよかった。

 

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