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ナショナル・シアター・ライヴ 2020 「フリーバッグ」

*ネタバレします。

 

 

ナショナル・シアター・ライヴ 2020 「フリーバッグ」

 

 

 13日(金曜日)に見に行きました。特別料金だからいついっても一緒だ。なら初日に行くべし、と思って。

 

 88分。一人舞台。作、主演フィービー・ウォーラー=ブリッジ。

 なんかいろんな賞とりまくりの、これきっかけで超売れっ子になった人、という私の認識。今度の007の脚本にも参加、ということくらいしか私は知らないんだけれども。

 アマゾンプライムで、テレビシリーズの1、2は見た。最初はアンドリュー・スコットが2に出るらしいな、というくらいの軽い気持ちで見たんだけど、ぐいぐい引き込まれて、どっぷり、泣いたわ。

 

 で。元は舞台だったという、それを、見ることができてよかった!

 ほんっとに一人で、舞台セットといっても椅子が一つあるだけ。赤いセーターとパンツ姿のフィービー・ウォーラー=ブリッジ一人が、ただそこで語って演じてくれるだけ。これ以上ないシンプルさ。他の人の声の出演がすこーしだけあったけれども、ほんっと、本当に一人、彼女の話を聞くだけ。凄い。

 

 親友のブーと始めたカフェが破産の危機。必死に面接を受ける女。うまくいかない。

ブーは事故でなくなった。家族との関係いまいち。彼氏はいたけど出ていっちゃった。セックスは好き。求められるのが好き。動画みてマスターベーションよくやる。街での出会いもある。でも満たされない。

 ブーが亡くなったきっかけは、彼氏の浮気へのあてつけのために、ちょっと車道に飛び出して怪我してやろうってしたこと。ちょっとした怪我、ではなく彼女は自転車と車に、三回はねられて死んでしまった。

 彼氏の浮気。それは、フリーバッグとの浮気。親友の彼氏とやっちゃったこと。親友が、死んじゃったこと。ひとりぼっち。いずれ年をとる。怖い。誰にも求められなくなっていくのが怖い。何もない。若さも残り少ない。怖い。みんな、どうやって生きていってるの!?

 

 基本的にコメディで、すごい、一人芝居の間合い、語り、演じ分け、すっごい上手い。顔芸もヒドイ可笑しい。笑っちゃう。劇場映してるので観客の笑いもいっぱいで、見てて私も笑った。

 けれど、その背後に彼女の悲鳴が、悲しみが時々鋭く聞こえてしまう。ちょっとだらしないし欲深いし図々しいし、正直いい子ではない彼女、けれど必死に生きようとして生きることがわからなくなっている彼女の姿。それは私の姿。今、この社会に生きている一人一人みんなの姿。今、「若い女」として生きる悲鳴。何者でもなくても、必死に生きるしかない、どうしていいのかわからない姿。

 

 コメディだし笑わせてくれるけど、見終わって目の奥が熱くなってどうしようってなる。

 

 ドラマの方がやはりわかりやすくて、時間ももっと長いわけで、丁寧でいいなあと思う。けれど舞台は舞台ならでは、たった一人の彼女の孤独と滑稽さが際立っててすごい。

 

 モルモットカフェになっちゃってて、モルモット、ヒラリーがいて、でもヒラリー、ネズミ男に蹴られて瀕死になって。フリーバッグがもう虫の息で苦しんでいるだけのヒラリーを、物凄くためらって辛そうながらも自分で絞め殺してしまうの、凄い。苦しみを終わらせてあげる、自分の手で。

 苦しみを、終わらせることができるのか、自分の手で。

 

 ひとしきり語った終わり、なんと冒頭の面接の場面に戻って、おっ、この舞台ってほんの一瞬の回想って感じなのか、って構成にもびっくりした。そして最後のセリフは「FUCK OFF!」。(だったと思う)ヒドイ言葉。笑って言って暗転。

 あー。こうやって生きていくし。生きるし。生きるしかないし。フリーバッグ、愛しい。

 

 先にドラマ見ててよかったのかなあ。わかりやすくはあったと思う。そしてドラマすっごい、ドラマはドラマですっごいよかったから、両方見られて本当によかった。ドラマの2も最高なので本当によかった。

 結局彼女の語りかけって、ブーに喋ってる感じなんだろうと思う。いつも、ブーと延々どうでもいいお喋りしまくっていたのだろう。それを、「観客」「視聴者」に向かってしてみせた。彼女の本心。相対してる相手じゃなくて、あとからブーにお喋りするときの本心を、聞かせてくれているんだ。だから、フリーバッグのこと、親友になった気持ちで、愛しく見ちゃう。あけすけな本心を一緒になって笑っちゃう。私で、あなただ。

 これを舞台としてドラマとして成立させて、見るものすべてを自分のペースに巻き込めるの、ほんっと凄い。人間て。世界って凄いね。

 

 

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