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映画 「シェイクスピアの庭」

*ネタバレします。

 

 

映画 「シェイクスピアの庭」

 

 

 ロンドンの劇場を火事で失ったシェイクスピア。筆を折って故郷へ帰る。だが、家を離れていた時間はあまりにも長く、妻、アンと娘たちにはそっけなく他人のようにふるまわれる。

 シェイクスピアにはもう一人息子がいた。ハムネット。少年だった彼の書いた詩に才能をみて、大事に期待していた息子。疫病で亡くなってしまったその子をしのんで庭を造ろうと思い立ったシェイクスピアは、一人作業を始める。

 

 ケネス・ブラナー監督主演。シェイクスピアは49歳で引退して故郷へ帰ったとか。その晩年は謎である、ってことで、この映画の物語は想像ってことですね。というかもうはるか昔の人だし、すべてが想像なのでは。と思うものの、息子の生没とか娘たちのその後のことなんかはそれなりにちゃんと記録があるってことだろうか。シェイクスピアは研究されまくってるでしょうしねえ。

 

 物語は、家族のこと。ロンドンで働いて稼いできたんだぞ! というシェイクスピアが見てなかった家族のこと。結婚してない娘、ジュディスのヒステリックさにはわけがあった。

 息子は、本当は疫病で亡くなったわけではなくて。父に褒められ、認められるのが嬉しくて見せていた詩、それは本当はジュディスが作ったもので、才能があるって褒められるべきはジュディスの方で。ハムネットは、普通に可愛い男の子だった、ってわけで。

 

 この辺、というか時代というか、1613年? 女の子はただ結婚して子ども産め、ってだけしか期待されてなくて、とにかく息子が大事! っていうねえ。辛い。

 ジュディスは読み書きができないってことなんだけど、それでも詩を作ることができたのって凄いね。シェイクスピアが褒めまくったのも、けどまあ、息子の作品だ! ってことだからってことじゃないのか。でも、ジュディス、彼女だってちゃんと学校に行ければ。

 

 妻のアンも読み書きができないんだって。昔は本当に、女性は教育の機会すらなかったってことなんだなあ。辛い。そしてただ男の子を産むことばかり期待されてるのも辛い。それ以外の生き方っていうのがなさすぎる……。

 それにこたえようとするジュディスが、それでもいい寄ってくる男がいて付き合い始めたのはけっこう楽しそうにしてて、まあよかったじゃないの。と思っていたら、女たらしの彼だったから、結婚の約束もしてないけど孕ませた女がいて、とか。辛い……。

 けどまあ、なんだかんだ波乱はありつつも、家族の真実を知り、見つめて、シェイクスピアは穏やかな晩年だったという感じねー。

 息子の死の真相は、とか、ちょっとだけミステリ風味もあったり。

 映画の最初の方に、不思議な男の子が出てきたんだけど、それは、息子の幻、というか、霊、というか、だったの。死の真実を、家族の真実をわかってくれて成仏、みたいな。そういう、成仏みたいな観念ってキリスト教でもありなんだっけ。よくわかんないけど。けどまあ、英国、幽霊大国って感じもするから、そういうもんなのかなあ。

 

 アンを演じてたのはジュディ・デンチで、さっすがの貫禄です。息子の死を疫病だったと頑なに言い張り、そうした信念みたいなの、強くて。読み書きは出来なくても、うちで大事なことはしっかり押さえてますよって感じ。最後には文字を習って、自分の名前のサインをしたの、ほろっとしちゃった。

 

 途中、サウサンプトン伯爵が遊びにくる。イアン・マッケラン。シェイクスピアのソネットで愛を捧げられている美青年と言われる人物ね~。そっかそっか。

 二人で暖炉の前で語り合ったりしてて、あなたのためだけの詩です、ってシェイクスピアが詩を暗唱して、あわよくば口説く、今からでもっ、って、おおお~~??? ってドキドキしちゃった。これはこれは。こんな恋のシーンが見られるとは思ってなくて。

 詩や劇を褒め、もっと書くべきだとか、シェイクスピアと仲良しっぽいのに、口説きモードになると、ふいっとかわして退ける、その威厳、さっすがです~~~。かっこいい。セクシー。ほんっと、イアン・マッケラン色気あるよねえ。すっかり爺さんなのに、じーさんBLにもえころげてしまった。

 去る前に、同じ詩を伯爵も暗唱してみせる。自分に捧げられた愛の言葉をしっかり覚えているの~~~。素敵すぎた。

 この二人の詩の朗読聞けただけでも大満足。うっとり~~~。好き~~~。

 

 この暖炉とか、夜の蝋燭とか。暗い所でも照明使わずに撮ったのかな。炎のゆらめき、影のゆらめき、暗さが、静けさ親密さを深める感じですごく素敵だった。

 外のシーンも。樹々、草花の中、空、そのままで、人物はシルエットになったりしてて、そういうのも綺麗だった。

 シェイクスピア、愛されてるなー。今現在でもこんなにも愛されてるんだなー。その感じの一端でも感じられて、よかったです。

 

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