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映画 「初恋」

*ネタバレします。

 

 

映画 「初恋」

 

 

 葛城レオはボクサー。駆け出しながらセンスは高く買われ、勝っている。とはいえ今どきの青年。勝利しても大げさに喜ぶこともなく、黙々とトレーニングに励み、バイトをする毎日。赤ちゃんの時に捨てられて親の顔も知らない。天涯孤独。ボクシングしかない。

 ある日、思いがけないパンチでKOくらった。病院で脳腫瘍があることを告げられる。手術も難しい状態、と。呆然と夜の街を歩いている時にすれ違った女の子、何かから逃げて、助けて、と言った。彼女をおっかけていた男を思わず殴り倒すと、その男のポケットから警察手帳がこぼれる。

 なりゆきで女の子を助けて走り出すレオ。彼女は親の借金のカタにヤクザに売られていた。薬で幻覚を見て、怯えて謝るばかりの百合。彼女にやりたいことはないの? と聞いてみて、百合がかつて救いに思った男の子の元を訪ねてみることにした。

 

 ヤクザとつるんで麻薬を横取りしようとしていた、レオに殴り倒された警官、大伴。組を裏切った加瀬。彼らもレオたちを追うことになる。

 

 そんなこんなで、青春初恋胸キュン。ってまあそんな甘いもんじゃなくてわりとどん底状態ではあるけれども、主役若者たちの姿と、ヤクザもののどろどろ腹黒、泥縄式の事態最悪に進んでいく感じと、なかなか切なくうまく話が展開していって、すごく面白かった。

 今のこのなんだかみんなじっと息をひそめてなきゃいけない、みたいな社会の空気がつらく。まあそりゃウィルス対策だよね仕方ないとは思うんだけど。けど、なんか。憂鬱気分なので、三池監督の血と暴力に触れたかった。満足。しょっぱなからごろっと首が転がるよー。

 

 下っ端ヤクザの情婦、情婦っつーかまあ、その。それをベッキーが演じていて、凄い迫力だった。しぶとい。笑っちゃうほどのキレッキレで、上手かった。ちゃんと女優だなー。

 組の古臭さに耐えかねて、薬横取りしてバックレようとしてた、ヤングなヤクザを染谷将太くんが演じていた。えとー、ええと、彼は、ブッダ! とか思っちゃった。最初はほんと、半端なヤングで、自分のざっくりした計画に刑事の大伴巻き込んで、チョロい仕事って思ってたんだよね。

 だけど、百合が逃げ出しちゃったり、レオが絡んでしまったりで、加瀬の予想外の事ばかり。自分も横取り計画がスムーズにやれなかったりして、どんどんうっかり人を殺していくことになる。加瀬とか大伴がねー。ほんと、最初はだるそうにしてたのが、なんとなくなりゆきで人を殺していくにつれて、ほんっとに顔つきが変わってくる。染谷くんもすっごいな。今どきの若者の一人~でありながら、ずぶずぶ地獄にはまってく。命消費するいい顔してた~。役者~~~。

 

 余命僅か、と思って、なげやりに、占いしてもらって、けどハズレ占い師め!ってやけになってた所のレオ。けど、なんと終盤、医者が検査の画像取り違えをしてまして、あなたは健康です、謝罪させてください、なんて留守電が入ってることに気づくの。

 アホか―ww

 渋い、ヤバイ、血みどろヤクザものでありながら、トホホ~ってなる、ふっとしたゆるゆるダメ感がとってもいい塩梅で、それもすごいよかった。

 

 最後の中華系との対決になっちゃった場は、ユニティというホームセンター。ホームセンターといえばゾンビものとかパニックムービーって思ってたけど、ヤクザの喧嘩の舞台としても面白かったわー! それぞれに、銃や日本刀青龍刀なんか持参してきてたから、あんまりホームセンターで売ってるものを工夫して戦うみたいなことはあんまなかったけれども、なんかちょっとヘルメットかぶってみたり、棚のごっちゃな商品投げたり、隠れたり、駐車場からのダイブ! とかも~。面白い舞台になってた。

 駐車場からのダイブは、実際のスタント使うのは危険すぎるからアニメに、みたいなインタビューを読んでたけど、まあそういう苦肉の策だったとしても、ちゃんとはまっててよかったと思う。

 

 そもそもヤクザ映画もファンタジーだなな。映画の夢とロマンだよなあ。タカクラケンに憧れるっていうのが象徴してるみたいなこと。カタギの若者たちを、逃がす、生かす方へ促してやる渋いヤクザな大人、っていうの、やっぱかっこいいわ。

 

 ヤクザな面々、内野聖陽だとか、塩見三省さんとか、激渋いっ。素敵だ~~~。顔の陰影が濃い照明が似合う! 塩見さん、私はあまちゃんの時の琥珀のベンさんで認識したんだけど、こういう激渋のもすっごいほんと、似合う素敵だよなあ。好き。

 ダメ刑事大伴の大森南朋も腹黒、汚いのが似合う~。さっすがいいキャストそろえてるんだなあって感動。

 

 激動の夜。死んだ気になればやれるってことかー。てな悟りを得て、かどうかはともかく、生き延びて、レオと百合は血まみれの身体に冷たいシャワーを浴びて洗い流す。あれは禊みたいな感じかなあ。冬でめっちゃ寒そうだった。

 最初のきっかけだった竜司くんと偶然あえて、彼は身重の妻と一緒で、ああ、彼はもう当然彼の人生を歩んでいて。「しあわせそうで、よかったです」と、百合は言った。ふっきれたんだね。

 

 生きてみる。って、二人は一緒に帰るんだ。その辺のやりとりの、初々しさ、さりげなさ、すっごくよかったよー。

 ヤクザには夜明けは似合わないって、ヤクザ抗争したみんなは死んじゃった。

 レオはボクシングの練習と試合に励む。勝った時には前と違って、力強く勝利の雄たけびをあげる。百合は薬断ちの施設に入ったのかな。苦しんで。けれど生きる道を選んで。

 

 最後、雪の降る街、アパートを映す遠景で、レオの部屋へやってきて、部屋へ入っていく百合の姿があった。

 こういう風に、さらりと見せて終わるの、すごくいい~。素敵だった。背負ってるものは絶望でしかなくて、けれど、生きる、生きなおす二人は、これからだって大変だろうけれど、なんかちょっと、あったかくなるんだろうなって思える。二人のこれからに幸あれって、素直に心から願うよ。好きになれた。見に行ってよかった。

 

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