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映画 「屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ」

*ネタバレします。

 

 

映画 「屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ」

 

 

 1971年、74年あたり。ドイツ、ハンブルク。屋根裏に住むフリッツ・ホンカ。行きつけの酒場で女を誘うもなかなか相手にされない。行き場のなさそうな、老いた、太った、誰にも相手にされなさそうな女をつれて部屋で飲みなおそうと誘い、連れ込む。うまくいかないと殴る。殺す。

 

 17日(火)に見てきた。実在の連続殺人犯。エンドロールの時に実際の写真が出てきて、うっ、と、いっそうどんより気分に突き落とされて映画館を出ました。はー。辛い。

 孤独で、不細工で不器用で良い暮らしとは程遠い、それでも彼なりになんとかやっていこうとしてる。けれども絶望的にコミュニケーションはうまくいかず、女が欲しくてたまらないのに相手にされず、どん底同士みたいな女を連れ込んでも勃起がもたずセックスもうまくやれず、裏切られキレで殴って殺す。死体を捨てるのもうまくできず、バラバラにして部屋に隠して塞ぐ。悪臭は下の部屋のギリシャ人が臭い料理ばかり作るせいだ、と言って。

 

 何から何まで汚く不快。シリアルキラーといっても上手く犯行を隠しおおせたというよりは、どん底同士、社会の最底辺なところって感じだから被害者が消えても誰からも騒がれず見過ごされてしまったって感じかな。

 

 逃げられた女がいた。エルダだっけ。黙々と従ってホンカとやったあと、家を片付けて掃除してしばらく一緒に暮らしたのね。それでもトイレの汚さに掃除を諦めた感じとかちょっと笑った。いや。笑えない汚さだった。ぐへ~~。でもなんか、ほんのちょっとだけ、あのわずかの間、二人は一緒に暮らした、って感じがあった。一緒に料理したりして。

 ロージーって名前の娘がいる、と女が話すと、ホンカはその娘に紹介しろって迫ったりしてて、女のことは住み込みの家政婦だ、なんていうけど。ほんの一瞬、まともに生きられそうなところはあった。

 けれど彼女はまた酒場で、救世軍? あれはあれでどうなんだか全然わからないけれども、宗教の福祉なの? カルト?? わからないけど、とにかくその誘いにのって、ホンカの所から去る。無事に逃げられたよかった、ってことなのかどうかはわからない。けれど、また裏切られた、というホンカの絶望と怒りは膨らんだろうなあ。

 

 この映画は殺人犯の日常って感じで、特になんの説明もなくて、ただただホンカの姿を見せられる。一度は酒をやめて今度こそちゃんと仕事する、って夜警の勤務をがんばるけど。そこで出会った掃除婦、とその亭主にすすめられてまた飲むようになってしまう。一応、ホンカくん、断ろうとかがんばってはみたよね。けど、女とやりたい、って衝動に逆らえないんだね。

 

 ずっとホンカを見つめ続けてくので、彼の衝動とか鬱屈たまっていく様とかを、わかる、って思いかける。徹底的に汚いのも、汚いはきれいきれいは汚い、みたいな事、と言えなくもなくないかも、みたいに思う。思うけど、ぐへー、と嘔吐感がこみあげる。無理~。

 

 社会に馴染めない孤独な男が犯罪を、って「ジョーカー」とも通じるところかもしれないけどまあ、ジョーカーどころじゃないよね。この圧倒的に重く塞がれる感じ。ま~エンタメで世間にもてはやされるのはジョーカーだよね。時代も違うけど。ホンカくんは、あまりにもあまりにも、醜く惨めで汚くて、見るものの目をそらさせる。何より事実ベースですし。辛い……。

 

 殺される女性たちもどん底。辛い。

 ホンカがわずかにすれ違い、憧れる金髪美少女がいて、あー狙われてるやばい、ってところで、住んでた建物で火事騒ぎ、ホンカの屋根裏の部屋から死体発見になって、逮捕、ってなって、ほっとした。美少女ちゃん危なかった。あのひょろっとした男の子はダメだ~もう~。バカ。

 

 よくこんな映画を、作りましたね……。ホンカの苦しみは、わかる。わかるけどまったく無理。感動的に盛り上げるってこともなく、美しく悲劇的に描くこともなく、この、突き詰めるけど突き放す、カメラの感触が凄かった。

 主演の人も、すっごい。よくほんとうに。こんなに。ヨナス・ダスラー、私は知らない俳優さんだけど、よく演じ切ったなー。すごい。

 全然鑑賞の気持ちよさのない、吐き気いっぱいの映画だけど気になってたし見られてよかった。よかったのか……。よかったです。ん~。私はやっぱりレクター博士が好きなんだよ……。フィクションがいいよ……。

 

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