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映画「スキャンダル」

*ネタバレします。

 

 

映画「スキャンダル」

 

 

 2016年、アメリカ、FOXのニュースキャスターがボスをセクハラで訴えた。この実際のニュースは記憶にある。けど、実際FOXがどんななのかとか、ニュースキャスター、アンカー?とか、アメリカでのメディアの世界がどうなのかとか、私は知らない。知らない、わからないなりにも、ニュースの世界、テレビ局の中でのゾクゾクくるぶつかりあいを見ちゃって、うっわー、いいのかしらこれ、って気分になってすごく面白かった。

 

 最初は、メーガン、女性キャスター、アンカー? 看板番組のトップって感じか。彼女が大統領選前のトランプと討論番組でやりあって、トランプがツイッターでなんだかんだ書き込みまくって、メーガンの生活が脅かされる、ということが描かれる。彼女をまともに守ってくれる人はいない。

 

 グレッチェンはロジャーの誘いを断ったせいでもともと視聴率のとれない昼の時間帯へ実質降格させられ、さらについにはクビにされた。

 

 若く野心溢れるケイラはロジャーに会える機会をつかみ、なんとか彼にひきたててもらおうとする。女性キャスターの脚をうつしてみせることで視聴者の目をひいた実績のあるロジャーは、まず女を立たせ、回って見せろという。そしてケイラはもっとスカートをあげろ、と求められるままに、下着までも見せてしまう。次の時には、もっと。

 

 実話ベースとはいえ、映画、面白くいきおいよく見せるエンタメ作品になってて凄い。女性が声を上げることの困難の根深さ、パワーを持つものが、当然の権利のようにセクハラ行為をすることが描かれている。遠まわしな、あからさまな、セクシャルな要求を、女性は時に冗談のように、まるで自分が悪かったかのように、ごまかし、愛想笑いをし、なんとか交わしてうまくあしらおうとする。それなのに、相手はさらにきわどく迫ったり、機嫌を損ねたりする。不当な要求をしたなんて思ってもみない、パワーを持つ者たち。

 

 ああいう、ごまかしとか、うまくかわすことも女の仕事、みたいに思い込むこととか、そういうの物凄く誰もが思い当たることだと思う。ああいうトップクラスな世界ばかりでなく、社会に溢れた大なり小なりのあれこれ。

 そういうの、ほんっともううんざりだ、という、Me Too 運動のはしり。そして証拠を固めて訴えて、グレッチェンは勝利する。ただし、それ以上何も言わないという契約にサインをして。

 

 若いケイラが、セクハラを受けたことを誰にも言わず、言えず、友達と思っててもだれも助けられず、何が行われるかうすうす察していながら、見過ごしてきたそれまでの女性たち。その、罪も、辛さも、深い。彼女を助けられたのか。彼女がもっと慎重にもっとうまくふるまうべきだったのか。自分を責めて自分が不潔だと感じて、どうしていいのか誰に話していいのか何も分からなくなった時に、訴訟騒ぎが起きて、やっと、ケイラは泣く。誰かに、そうするのが一番よって言って欲しかった、って。

 悪いのはセクハラをした方なのに、被害者が自分を責めるように仕向けてきた社会。そういうのは間違いで、そういうのはもうやめてくれという訴え。

 仕事で認められたい、出世したい、そのためにいる場で、セックスを使えと強要される酷い侮辱。辛い。

 

 シャーリーズ・セロンがメーガン。最初誰だかよくわからなかった。これ本人にそっくりってことなのかな。アメリカのテレビを普段見てる観客だったらもっとよかったのかなあ。それでもわからないなりにも、トップキャスターってなんかすっごいな! というのはガンガン伝わってきた。自分の番組持つ、自分のスタッフを持つって感じなんだね。クールでタフで、当然スマート。まさにトップ。自分たちはエスタブリッシュメントの側なんだよ、っての、ほんとすごいそれなーって感じ。グレッチェンの訴えに賛同すると、ここまで築き上げたキャリアを捨てることになるかもしれないというプレッシャーははかり知れない。でも声をあげたんだなあ。

 

 グレッチェンを演じていたのはニコール・キッドマン。見苦しい中年女め、なんて言われる役をすっぴん見せて演じるのね~。ニコール・キッドマンが~~~~。彼女が必ずしもヒーローって祭り上げられる描き方でもなくて、なんか視聴者から嫌われたりしてたりなのも、面白かった。自分の意見を持つ生意気な女は嫌われる、ってか。

 

 若きケイラはマーゴット・ロビー。今すごい売れっ子だなあ。今回の役は野心溢れる、けれど弱いところのある、普通の女の子って感じ。ロジャーの部屋に呼ばれて、緊張してたり、懸命にアピールしたし、精一杯愛想よくしたり、けれどセクハラでぎこちなく、落ち着かなく、表情が固まっていく感じとても辛かった。

 

 女優三人、それぞれにすっごくうまくて素敵でかっこよくて、そういう面でもすっごく見応えありあり。エンタメしてるなあ。まだ割と最近って記憶にあるニュースがこういう映画になるんだなあ。すごいテンポよくて、シリアスでかつエンタメで、面白かった。

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