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『影裏』 (沼田真佑/文藝春秋)

*ネタバレ

 

 

『影裏』 (沼田真佑/文藝春秋)

 

 「わたし」、今野は釣りを趣味としている。友人の日浅と川にそって歩いている。大きな水楢の倒木に感銘を受けているらしい日浅。彼はこう、大きな崩壊に感じ入るところがあるたちだった。

 

 

 映画すきだったので、本はどうなんだろうと思って読んでみました。これが文学界新人でデビュー作、そして芥川賞なんだ。すごい。2017年刊行。

 本文90ページあまりの、これは、中編、て感じか。「わたし」今野君の一人称なんですね。映画でちょっとよくわかんないと思ったことがもう少し詳しく書かれてたりするかなと思ったけど、むしろ映画よりずっとシンプルでさらりとした作品だった。日浅のことは映画よりもっとわからない。というか、この原作から、あんな風に膨らみ持って映画になるのかあ。と。

 

 映画だと生身の俳優が演じてるわけで、その体温、実際二人がいることを目にした。

 本を読むと、そこにいるのは今野くんで、体温低い感じで、あんまり説明もしてくれない。でもこの文体、文章、こういうひとりな感じ、とてもよかった。うつくしい。

 

 映画だともっと明確にゲイであることとかわかりやすかったけど、本だとあまりその辺強くはない。ダイレクトに目にする映像やセリフは強いものだなと、本を読んでみて改めて思った。本くらいの低音な感じでもいいと思った。どっちも好きになれてよかった。

 

 つくづく、映画化、いいキャスティングだなあと思った。今野と日浅だけでなく、父とか。西山さんとか。原作では名前のみだった兄の登場も、いいと思う。

 

 本読んでみると、映画はあれでも語りすぎかもなあとちょっと思うけど、でもそれはそれで当然必然のような気もする。それに映画見た時にはもうちょっとくれ、とも思ったわけで、あれはあれで随分抑制きいていたんだな。けどほんと、本の、つめたい水みたいな感じ、好きだなあ。どっちも味わえて本当によかった。すきです。

 

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