« 映画「マザーレス・ブルックリン」 | Main | 映画 「ジョジョ・ラビット」 »

映画「アラビアのロレンス 完全版」

*ネタバレします。

 

 

映画「アラビアのロレンス 完全版」

 

 

 午前十時の映画祭で見てきました。1962年公開のものより、20分長い完全版が88年にできたそうで、それですね。上映時間227分らしい。インターミッションで10休憩入りましたから、4時間ほどの上映でした。長かった……。

 

 始まり。序曲、なのね。画面は暗く何もなく、不安になってしまう。昔はこういうものだったのかな。で、ようやく始まった。男とバイク。上から映しているショット。バイクの手入れをして、乗る。走り出して、ようやく男の姿が映る。金髪、スーツ、防風眼鏡。スピードを上げていく。不意に、自転車がいて、避けて道をそれたバイクは横転。

 そして男の葬儀。彼のブロンズの胸像が飾られるほどの盛大な葬儀だった。ロレンス大佐。偉大な人物だった、いやそうでもない、よく知らない。参列者に記者がインタビューしようとするが、人それぞれにいう事は違っていて、わからない。

 そして、アラビアの戦地。地図を描いている気取った男、タバコに火をつけたマッチを手で消して見せるヘンな男、が、ロレンスだ。

 

 

 始まったと思ったらいきなり主人公死んだ?? と、びっくりした。

有名だし傑作だ名作だと言われているし、アラビアで英国兵ながらアラブの人々を率いて戦った強い英雄の映画、かと思ってた。

 違った。変わり者扱いされていたインテリの一人の男が、最初は強気に戦場へ出てゆき、戦いの中で次第に狂気をはらみ、傷つき、苦しみ、これまでの人生や正しさを見失い、失意の中でどこにも居場所を失って、去ってゆく映画だった。

 

 舞台は1916年あたりかな。イギリスはアラブ方面で軍事展開中? 歴史的背景を私は無知でわからなくて、なんの戦いをしてるんだ? といまいち把握しないまま見てしまった。アラブがトルコから独立しようとしてるのかな? 一応かえってググってみたけど、うーんと、なんか、オスマン帝国の支配下からアラブ独立を助けするよという名目でイギリス軍がきてる、みたい。まあ、わかんないけど、まあいっか。というか中東情勢のもめごとってもう大昔からなんだなあという気持ち。

 

 で、ロレンスは、学識豊かなユニークな経歴、語学に堪能、って感じで、アラブの王子にあってきて協力を、みたいなふわっとした感じで赴任していく。最初は一人で、案内人一人だけで、砂漠に進んでいくうちに、井戸の水を勝手に飲んだな、と、なんかの種族の首長に案内人殺されちゃって、けどなんとなくその男と行動を共にすることになって、やがてどんどん仲間がというか、協力してくれる部族ができて、王子に会いに行って、砂漠を超えて、なんか勢いでトルコ領下の街へ攻め込んで。

 なんか、そんな? 一人でふらっと戦闘おっぱじめてぐいぐいいっちゃう感じ?? 兵士だよね? と、いろいろ不思議だったけど。まあ。昔はなんかゆるかったりもしたのかなあ。まあ。うーん。ま、軍事行動とかはわかんなくてもいいか。なんとなくで。ミリタリードキュメントでもないし。

 

 この、最初の井戸で出会ったアリが、ロレンスとその後もずっと一緒にいることになる黒づくめの騎士って感じでかっこいいんだ~。ベドウィンの民。ベドウィン、砂漠を移動している民族がいろいろあって、部族間の対立も複雑そう。けど、アリが味方になってくれるんだよー。

 

 過酷な砂漠越え。次の水場まではラクダも死ぬかもしれない道のり。雄大な砂漠、手率潔太陽、砂漠って、移動するということそのものが試練だなあ。砂漠、とてつもなくうつくしくて、残酷。

 ガジムという男が、砂嵐の中、ラクダから落ちたかなんかでいなくなっていることがわかった。探しに引き返す余裕はない。水場へ向かう一行と、一人ででも探しに戻るロレンス。誰もが無理だと思っていたのに、ロレンスは彼を助けて戻ってきた。

 わー!! ってことでロレンスはベドウィンのみんなに英雄として認められる。運命を自分で切り開くことができる男こそ首長だ、みたいな感じで、一人前どころか尊敬集める立場になる。

 アリが、すっかりツンデレのデレのターンになっちゃって、それまで軍服だったロレンスのくたびれた服を勝手に焼き捨てちゃって、真っ白なアラブの装束を着せちゃうの~~~。な、なにこれ。お気に入りにおめかしドレスアップさせるやつじゃん! しかも自分は真っ黒で、ロレンスは真っ白で。花嫁衣裳。。。って思っちゃったよ~~~。まあなんか首長の服だ、みたいに、なんかとにかくいい服らしいけど。けど~。花嫁じゃん。ロレンスがまたそれ着てちょっと離れたところで、どうかな~似合う~くるくる~とか一人でひっそり喜んでたのが可愛かった~~~~。

 アリの愛が深い。重い。ロレンスの生い立ちみたいな話を聞いて、自分で名前を決められるじゃないか、エル・オレンスが一番いい、って、お気に入りの名前にさせちゃうのとか。愛だなあ愛。

 

 せっかく助けたガジムを部族争いの処罰として自分が殺さなくちゃいけなくなったり。従者にしてた子どもの一人を流砂で目の前で死なせてしまったり。街に攻め込んで勝利をえても、ロレンスは苦悩する。

 ボロボロになってカイロに戻ったら、カイロって大都会……。軍に報告に行けばアラブ服は浮きまくり。昇進を言い渡されても特に嬉しくもなさそうな、ボロボロのロレンス。その差がすごく見ていて辛く刺さった。

 

 インターミッション、10分休憩~。そんでまた次が始まる時にもひとしきり曲が。昔の映画ってこういうもんなんだっけ。

 

 アラブで、列車爆破のテロ的な戦いを重ねているロレンス。だんだん自分は負けない、特別な男なんだ、って高慢さが出てきてる。戦闘というより結構残虐なテロって感じになってたりして、ツライ。

 けれど気まぐれなベドウィンたち。ひとしきり略奪とかして自分の取り分とっちゃったら、冬だしもう帰る~みたいに軍から去ってしまったりする。

 軍隊と言えないほどに仲間が減っていくけど、ロレンスは北進する。

 

 で。ロレンス、トルコ軍に捕まるのね。司令官みたいな男が、退屈してる嫌な奴って感じで、ロレンスの服をばっと脱がせたりして。青い目だ、白い肌だ、と。ロレンスの体をつついたりしてる手つきが、いやらしい!!! あ~これかあ、って震えましたね。これは、やばいっす。撮り方も、明らかに、この美しいロレンスをこの男たちは犯そうとしています、って見せてくる撮り方だよなあ。単に拷問されるんじゃなくて、性的にもやられる、って察したロレンスのあやうさがたまんないっす。ヤバイ。シーンとしてうつったのは細い竹の棒で背中うたれまくる所少しだけだけど、あのあと絶対凌辱されましたねこれは……って感じ。

 アリがそとにいて、ぼろぼろになったロレンスを助ける。

 拷問の名目としては、アラブ軍の情勢情報を教えろってことだったみたい。

 ロレンスが、あやうく口を割る所だったと、落ち込んでたりして。心も体も傷つけられすぎてもう無理、って感じが痛々しい。アリがかいがいしくお世話しちゃうのが悲しくも愛しい。アリ。アリだけが最後までずっとロレンスの味方;;

 

 

 アラブ軍がダマスカスを先に占領するぞー!って戦いに行くも、アラブの人たちはバラバラで、街を統治するとかインフラ整備とかができない。電気がとまる、水道がとまる、電話は通じない。ボロボロ。ロレンスは人々をまとめることができない。ただ人が転がされているだけの病院の惨状を見て、イギリスの軍医に叱り飛ばされて、どうしようもない。

 

 兵士は去り。で、お偉いさんとか王子とかが、今後の方針を話し合って、あとは政治がやりますよ、みたいな感じ。

 戦うだけじゃ自由を得られない。

 ロレンスはさらに昇進して、大佐と呼ばれるも、本国へ帰れ、という扱い。

 もうやっかいものでしかないロレンスがあまりにも切ない。

 それでも、ロレンスを英雄だ、とはしゃいで見つめるものもいる。本国へ帰れるなんて羨ましいです、と、送ってくれる兵士に言われて、何とも言えず危うい、脆い、顔してるのが切なかった。

 

 英雄譚ではなかった。戦争の狂気にはまり、居場所を亡くした傷ついた男の映画だった。一時は殺戮を楽しむようなこともしてた。軽やかに変人として意気揚々としてた最初の頃のロレンスとはすっかり変わって、アラブを去ることになったロレンス。英雄、変人、手柄を自慢する男、寛大な偉大な男。葬儀の時にさまざまに評価が分かれたのは当然か。 

 誰だっていろんな面を抱えてる。単純なヒーローなんて戦争にはいない。どこにもいない。古い映画だけど、全然古臭くなかった。長いなーと躊躇して今までまともに全部見たことなかったけど、見てきてよかった。

 

 あとやっぱり砂漠とか、馬とか駱駝とか、戦闘シーンとか全部リアルに人が演じて実物撮ってるわけだよなあ。当然ながらCGでちょっといい感じに修正~とか描きたし~とかない時代だよねえ。この、これ、本物……すっげー。壮大というか。こんなにどーっと人馬走らせちゃうんだ。

 砂漠に、海辺に、駱駝とロレンスとか。はるばるとした景色も全部、ほんもの。綺麗だった。よくこんなに撮った、こんな、凄い作品つくりあげて。凄い。音楽もたっぷりで素敵ですっごいゴージャス。まあ、凄いって知ってましたけど、わかってなかったねえ。

 最初の方の眠くなる~、を超えて、アリがデレのターンになってくれるとぐいぐいいける。面白かった。ほんと、こういうきっかけでないと見ないままになってたかも。午前十時の映画祭ありがとう。今回で10周年、そして終わる企画だけど、名作をありがとう。

 

 

 

 

 

|

« 映画「マザーレス・ブルックリン」 | Main | 映画 「ジョジョ・ラビット」 »

映画・テレビ」カテゴリの記事