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『わが母なるロージー』 (ピエール・ルメートル/文春文庫)

*ネタバレしてます。


『わが母なるロージー』 (ピエール・ルメートル/文春文庫)

カミーユ警部のシリーズ、2.5作目、といった所。シリーズの三部作の途中に入る、200ページあまりの中編。

 序文によると、依頼があって書いた。その頃、『天国でまた会おう』を構想中、で、道端に開いている何かの工事かなんかの深い穴が開いているのを見た。で、この小説のアイデアが固まった。というようなことらしい。すごい。書いてくれてありがとうの気持ち。

 パリの街で爆弾が爆発した。テロ組織によるものではない。なんと戦争時の不発弾をもってきて起爆させたものらしい。
 カミーユは休みあけ、ルイから電話を受ける。犯人が自首してきた、カミーユとだけ話すと言っている、と。

 で、爆発が起きてから三日間の物語。ジョン、でも自分ではジャンだと言い張る犯人は、全部で7発、爆弾を仕掛けてる。要求として、車で死亡事故を起こして捕まっている母、ロージーを開放して、自分と母とをオーストラリアへ身を隠せるよう手配してくれ、ということ。
 そんな要望はきけない。けれど残りの爆弾を爆発させるわけにはいかない。カミーユから、特殊部隊(だっけ?)の拷問に切り替わっても、ジャンの要求は変わらない。
 何故、彼はそんな事をしているのか。母の事故とは。

 母と息子の物語だった。
 ちょっと愚かで、息子べったりの母親。喧嘩ばっかりしている親子なのに、ジャンが家を出ようとすると、一度は喜んでみせるものの、母は絶対に息子を手放しはしない。
 ジャンもまた、こんな事件を起こしたりせず、今が自立のチャンスのはずなのに。母にこだわる。何故。

 てことで、カミーユもずっと何故、と違和感を抱えて突き詰めていって、この親子は離れられない、ということ、が、わかった、わかったんだろうな。彼らは逃亡しきることは出来ない。

 で、神経戦って感じでヒリヒリと捜査の進行とジャンとの尋問とがぎゅっと詰まってる。
 相変わらずルイくんは超有能で、かっこよかった~。私の脳内キャストはアーミー・ハマーだよ。政府のえらいさんになりかけてるかつてのクラスメイト(?)がいて、えらそうにしてるかと思いきや、ルイが来た途端しょぼんってなるシーン面白かった。ルイは首席、彼は落第すれすれだった、みたいなことらしい。

 で、最後には、警察は要求をのむふりで、飛行機にが離陸と同時に爆弾の場所を教えろ、と、ジャンとロージーを開放する。爆弾の場所を聞き出せば飛行機をUターンさせる計画。
 しかし、ジャンは空港へ行かない。夜の公園。自分が仕掛けておいた地下の爆弾の真上で、母とともに踊る。携帯で鳴らす古いヒット曲。「ロージーとジョン」。ロージーがその曲にちなんで息子の名前をジョンにした。ジョンは、自分ではジャンだと言い張った。

 愛し合っていた恋人たちの歌、名前。ロージーとジョン。
 最後にその曲とともに、ジャンは母を抱きしめて爆弾を爆発させ、死んだ。

 張り詰めたラストシーン、とてつもなくうつくしかった。
 ロージーが息子に執着してて、息子は被害者的な、洗脳っつーか支配下にあって、って感じに思ってたけど、息子のほうも、どうしようもなく愛してた、のか。愛? 愛かなあ。それはやっぱり支配されてたのでは。何度か逃れようとして。けれど逃れられなくて。それは、それでも、ジャンはジョンである自分を、持て余し苦しみ、最後に受け入れたのか。
 さすがにおフランスといえども、実の母子の、親子愛じゃない感じの愛は、なしだよねえ。
 捕まった母から、離れがたかったのか。そしてもう、無茶なことをしなくては母ともう一度一緒になれないし。そして。死を選ぶしかない、と、いうことだったのかなあ。

 あっという間に読み終わってしまった。
 これ、三巻目の時に、ちらっと触れられてた事件なんだよねえ。これで、カミーユ警部のシリーズは全部翻訳が出たってことか。
 今からなら順番に読んでいける。いい。

 『悲しみのイレーヌ』→『その女アレックス』→『わが母なるロージー』→『傷だらけのカミーユ』ね。一応事件は一つずつ、とはいえ。やっぱり二冊目から出て、っていうのは、ちょっとなあ。けどまあ、それで面白くて続いたってことなんだろうから、うーん。難しい。
 だんだんはまってきた。ルメートル。カミーユ警部ものはもう書かないそうだけど。ルイくんでスピンオフとか~どうですか。どうかな。
 次は天国―からの三部作目なんだっけ。お待ちしています。

 


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