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映画 「ボーダー 二つの世界」


*ネタバレしています。


映画 「ボーダー 二つの世界」


 2018年製作、スウェーデン・デンマーク合作。
 カンヌ映画祭で、ある視点部門でグランプリだとか。北欧ミステリー、だそうで、なんだか気になるけどどういう映画なのかよくわからず、見に行くかどうか迷ったのだけれども、やっぱり行ってみた。

 ティーナはフェリーの税関、かな、入国してくる人の持ち物チェックをしている。匂いで。
 彼女は犯罪の匂い、人の罪悪感や悪事を働く時の匂いを嗅ぎつけるという。人の感情を嗅ぎ分ける。
 不法な酒の持ち込みや、児童ポルノ所持の男を見つける。ある時、何かおかしいとチェックするよう別室へ呼んだ男がいたが、彼、あるいは彼女、は、違法なものを持ってはいなかった。なのにどうしても気になる。彼の名前はヴォーレ。住むところに困っているらしいヴォーレに自宅の離れを貸すティーナ。

 児童ポルノ摘発の捜査に協力を求められて、加わる。怪しい家を見つけて、その家にいないはずの赤ん坊の気配に不審を抱く警察。

 ティーナの家に同居していた犬好きの男、ローランド。恋人というわけではない。犬はティーナには懐かない。ヴォーレと親しくなり、ローランドを追い出す。

 衝動的にひかれあうティーナとヴォーレは、同じ種族だった。人間にしては醜い姿。森でこそ落ち着く。虫を美味しく食べてしまう。彼らはトロル。人間ではない種族。激情のままにセックスするとき、ティーナの不完全と思っていた性器からはペニスが伸びて、ヴォーレと交わる。
 
 と、まあ、なんか、あらすじとかもまとめられない。最初、北欧ミステリなの? なんか特殊能力、異様な嗅覚で犯罪捜査とかしていく感じ? と思っていたけれども、そういうものじゃなかった。
 一応、捜査協力みたいなことはしてたし、赤ん坊が取り換えられるみたいなこともあったりだけれども、その謎の解明、というか、犯罪を暴いて逮捕みたいなわけではない。
 なんてったって俺たちはトロルさ、なんてことになってしまうのだから。
 ムーミン……??

 ファンタジーというわけでもない、っていうか。別の種族として生きてる集団あるらしいし、人間に捉えられて生体実験みたいなことをされたりみたいなこともあるみたい、とか。
 ティーナは、けどちゃんと引き取られて育てられたから人間社会になじんでいるのでは、と思うけど、やっぱり、あんまり助けてくれなかったとか守ってもらえなかったって感じがティーナにはあるみたい。

 いろいろと背景は、なんとなくわかる。けれども、なんだかもう、ほんっと、そっかートロルなのか、という、二人の姿に圧倒されてしまう。
 俳優さんすげえ。
 虫とか食べてるの、あれ、は、まあ、実際食べてるわけではない、ないよな? 口には入れたのか?? わかんないけど。
 森の中裸足で、裸で、かけまわったり。泳いだり。野生……。
 セックスもまるっきり獣同士って感じだった。すごい。迫力。
 性別も曖昧。というか境界なんてなかったことになるのか。

 「ボーダー」というタイトル、人間とトロルとか、男女、雄雌? 社会と野生とか、なんかもう、いろいろと、越えるってことかなあ。

 怖いというか、混乱というか。何を見せられてるんだか、物凄い圧倒される。
 ティーナは、ヴォーレと出会ってやっと、自分が自分であることがわかる、という感じ。ずっと、人間として不完全、という感覚があったんだろう。でも、人間じゃないなら、これでいい、それがいい、っていうか。
 けれど、人間ってものに復讐しようと、赤ちゃん取り換え、売買してしまうヴォーレのことは許せない。あのご近所さん、と、それなりに仲良くつきあってきてたって感じなんだろうなあ。人間だからっていうだけでそんな無差別な復讐を、していいわけない。

 ヴォーレは、多分逃げ延びて。未授精、ではない赤ちゃんを産んだわけだ。
 ティーナのうちの前に置かれた赤ちゃんにはしっぽがあった。ティーナが育てていくのかなあ。繁殖……。
 やっぱ、生き物だから、繁殖したいものなんだ。
 それはそれで圧倒的に正しい……。

 これはこういう映画、って、すんなり咀嚼できない、圧倒的な力をぶつけられた映画だった。人間か。人間ではないか。そのあわいが、ゆらぎのまま描き出されている。
 北欧ミステリーっていうか、ミステリ??? ファンタジー?? うーん。そういうの言えない感じ。パワー……。

 「ぼくのエリ 200歳の少女」の原作者ヨン・アイビデ・リンドクビスト、が、原作、脚本も手掛けた、とのこと。私、ぼくのエリ 見てないんだよな。それもすごく評判よかったのは知ってる。けど、まあ、それを知ってても知らなくてもいいと思うけど。
 とにかく見に行ってよかった。呆然としちゃう。見てよかった。

 

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