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映画 「トールキン 旅のはじまり」

*ネタバレしています。


映画 「トールキン 旅のはじまり」


 トールキンは幼い頃に父を亡くし、母と弟と貧しい暮らしをしていた。夜には母親が読み聞かせを熱演しながらしてくれるのが兄弟の楽しみ。だがその母も突然亡くなってしまう。
 神父の助けを得て、成績優秀な兄弟は裕福な家に住まわせてもらい、一流の学校に通うようになる。その家にはエディスという女の子も世話になっており、彼女は夫人のそばでピアノを弾いたり、細々とした用を手伝ったりしていた。
 トールキンは最初こそいじめにあいかけるが、彼の優秀への嫉妬だ、と、いさめる友人がいて、四人のグループで深い友情を築く。
 エディスとの恋。だがまだ大人ではない彼らに自由はなかった。

 オックスフォードへの進学。しかし成績がかんばしくなく、酔っ払ってふざけたことの処分もあいまって奨学金を打ち切られることになる。学費を用意できない彼には退学も同然の処分だった。
 だが、酔った挙句に、自分が作り出した言語でわめいているのを聞いた教授が翌日話しかけてきた。言語学の教授の下で学びたい、と食い下がって、トールキンはそこでの奨学金を頼み、本当に学びたかったのはこっちだとわかる。
 そして、戦争が始まる。第一次世界大戦。戦場で行方知れずの友を探すトールキン。泥にまみれ、体はふらふら。忠実な従者に助けられて、生き延びる。
 気が付くと病院で、エディスがずっと看病してくれていた。
 やがて、大学の教授となり、エディスと結婚して子どももできた。トールキンは長い物語を書き始める。冒険、愛、魔法も出てくる、そして何より、友情の、仲間の物語を。


 私はファンタジーにあまり親しみもってこなかったし、『ホビット』や『指輪物語』も読んでこなかった。映画を見てから知って、読みましたけど。面白かった。
 そしてトールキンについても、その作者としてとか、自分でオリジナルの言語作って世界観作り上げたらしいとかそんな感じのことしかイメージなかったです。
 ほぼ、孤児でありながら、機会を得て、学び、成長していったんだなあっていうの、この映画の通りなのかどうかはわかんないですが、まあ、ざっくりとは多分正確でしょうから、そういう育ち、半生で、凄い作家になったんだなあと、面白かった。
 弟くんと仲悪いわけじゃないんだろうけど、ほとんど触れてなかったなあ。恋と友情の方に焦点あててのことだからなのか? 
 やはり何より、学校時代が素敵だった~。あ~~英国男子~~って感じ。反発からの友情。そしてお茶を飲もうよ、という仲良くなっていく感じ。お気に入りの店があって、町一番の紅茶だ、とか、子どもたちが~~生意気言って~~。
 でもエリート教育の感じってこうなんだろうなあって雰囲気がすごく、うう、英国男子様、もえる。子役くんたちもすごくよかったし、育ってからのニコラス・ホルトも可愛かった。みんな若きジェントルマン、だけど生意気盛り、勉強もするアホ男子な感じも最高。
 
 仲間で絆深め合おうぜ~ってクラブ作ったり、目的は世界を変えること! とか勢いあるのも、あーっ10代! ってキラキラしてる~。
 
 しかし戦争が起きる。
 若き彼らは戦場へ行き、泥の中を這うように進む。
 戦場でさまようシーンと、回想的なその前の時と、ポリフォニックに描かれていて。でも戦場のシーン、生々しくどろどろで、それはそれでリアルかと思ってたけど、なんか、友達探すとかフラフラしまくりで、戦闘中にそんな自分勝手なことしてていいの?? と不思議だったけれど、あれ、幻想というか病気、熱で気を失ってる中での妄想というかなんだなあ。悪魔のような鬼のような影とか火を吐くドラゴンとか幻視しちゃうの。
 後の、トールキンが書くことになる世界がオーバーラップしている。

 トールキンの半生、伝記的ではあるものの、物語を重ねていて、ファンタジックでもある映画だった。
 
 オックスフォード退学になりかけたりしたの、古典では成績が悪かったそーで、けど言語学の世界こそがトールキンにとっては興味あるし才能もあるってことだったんだろう。ああいうトップクラスな世界だと、学ぶにも向き不向きっていうのが致命的になっちゃうのかなあ。まあ特に奨学金をもらって、となると厳しいんだろうな。
 でもほんとにやりたいことはこっちだった、って言語学の教授のクラスに行けるようになった時の生き生き嬉しそうな感じ、すごくよかったねって思う。

 バーミンガムとか戦争だとかで、ピーキー・美ブラインダーズも連想しちゃったけど。戦争で人生に、心に、大きな傷を負う、大事な人をなくす、というのは本当に残酷なことで。失った人、その才能は取り返しがつかない。生き延びたほうはそれを背負っていくんだなあ。

 世界を変えよう!っていう若き日の勢いの目標。トールキンは物語の中に世界を作って、そして、愛と友情が勝つと、書き記した。
 あの、戦場でずっと付き添ってくれた従者、彼が、フロドの従者のサムなんだろうか。トールキン、ちゃんとたくさんみんなに愛されてるように描かれていて、よかった。亡くなった友人の残した詩を、出版するように尽力するのもよかった。
 美しい映画でした。

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