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『詐欺師をはめろ』(デイヴィッド・ハワード/早川書房)

*ネタバレしています。

『詐欺師をはめろ』(デイヴィッド・ハワード/早川書房)

世界一チャーミングな犯罪者vs. FBI

 実録、なのでネタバレどーこーってものではないのだけれども。1976年に始まる、FBIがまださほど詐欺事件や潜入捜査に慣れてない頃。まだ若い捜査官が、最初はまあやってみるか、くらいの感じから世界一の詐欺師のもとに弟子入りして一年ほども行動を共にし、友情を築き、そして逮捕にいたる物語。

 はじめに実際の彼らの写真がある。世界一チャーミングな詐欺師キッツァーはほんとハンサム。これで口が超絶上手いとか記憶力抜群とか、もうこれは映画になるしかないねと思う。東京で遊んだ時の、捜査官のブレナンとウェディックと三人で撮った写真、三人のバランスが~。ブレナンはやや太め、真ん中のキッツァーは小柄、ウェディックは細身長身、と、スタイルの違いも絵になる。3人で旅しまくって楽しく過ごした時間っていうのは、格別だったんだろうなあ。若い二人の正体を知らないキッツァーとしては後継者育てちゃうようなつもりだったのかなあ。捜査官たちはヒヤヒヤドキドキしながらもキッツァーの勢いや魅力や天才性カリスマ性に惹かれてしまったりもして。犯罪者と捜査官。特別な関係だよなー。

 本書での人物たちの発言は裁判記録やキッツァーが後に講習、講演したものの書き起こし記録からだそうで、細かい状況や推移がしっかりよくわかる。実録、だけど、多分著者もキッツァーにほれ込んだんだろうなあと思う、人物がとてもとても魅力的で面白かった。
 しかし詐欺の手口の話も丁寧に描かれていて、ん、んー、わかる、ような気がする。と、これは私が何かと無知なせいだと思うけど、銀行の証券がとか融資が担保が、とか、自分にとってなじみななさすぎてぴんとこない。それでも丁寧に書かれているので、一応、なんとなくそういうものかーという気にはなる。わかんないけど。
 
 ホワイトカラー犯罪って結局「信用」という見えないものを売買してるわけだ。ほんとは現金積むのが正解なところを、実際社会って金額が大きくなればなるほど現金積んだりするわけなくて銀行にあるよー小切手だよーみたいなことで、「信用」をやりとりするんだなあ。その証明は銀行からの紙一枚だったりするわけ。うーむ。
 経済とか保険とか銀行業とかに精通すればするほど、そのすり抜け方、渡り歩き方で儲ける。キッツァーが実際どのくらいの詐欺を働いたのか、正確には把握されなかったとか、数百億ドルかもとか、もうそれは、経済活動なのでは。個人がどうこうっていうレベルじゃない感じ~。すごいわからない。自分からは遠すぎる金額で全然わからない。

 物語として面白く読むのは読んじゃうんだけれども、実際あった犯罪で、マフィア絡みの方はともかく、もうちょっと普通に融資を得て人生かけようとしてた人とか、保険かけてるつもりだったのに支払いがされないとか、被害にあって人生狂って困った人もたくさんいたわけで。どうしたって犯罪、ダメ、絶対……。

 そして、潜入捜査の手法とかバックアップとか、そもそも詐欺事件への取り組みとかが、FBIの中でそんなに確立してなかったころなんですね。ウェディックとブレナンは潜入捜査の訓練受けてない。最初はちょっとした情報提供によって、結構大物詐欺師に接近できるかも? という感じで、数回会ってみるか? って始めたことが、どんどん長く深く続く捜査になっていく。
 小型録音機、っつても今見るとでかいよね、ってやつで録音したり、キッツァーの気まぐれで国境超えるとなると、相手側の国に連邦捜査官がひそかに行きますみたいなことで外交問題かもとか書類仕事山ほど、とか、右往左往がすごい大変そう。
 この事件によって、捜査方法とか権限とか道具とかが進化していったんだなあというのもすっごく面白かった。
 ドラマの「ホワイトカラー」が大好きなんだけど、その前時代って感じも超ときめいた。こんなそんながあって、あんなドラマ生まれたりもするのね。

 捜査官たちにも家族があるとか、仕事なんだから休みもとるとか、そういうのも面白かった。ですよね。仕事だもの。生活があるリアルもよかったなあ。

 ついに、潜入捜査を終わりにして、逮捕に。キッツァーを逮捕したとき、捜査官二人のことを何も言われないうちから、あの若者二人は関係ないから、っていうのドラマチックすぎるリアル。自分たちが捜査官なんだ、って打ち明ける二人の重い気持ちもぐっとくる。
 刑務所で酷い扱いで怪我したりやつれちゃうキッツァーには胸が痛むし、司法取引に応じて、ついにはまっとうにFBI協力者になったのにはほっとした。読んでやっぱり私もキッツァーのこと好きになってしまう。捜査官二人もよかった。人物たち、魅力的なんだよな~。

 うしろにあったちょっとした解説によると、ワーナーブラザーズが映画化権を獲得してて、「ロバート・ダウニー・jrのプロデュースと出演が取り沙汰されている」とのこと。ほんとかな~実現するかな~早く実現してほしいな~~。キッツァーを脳内でダウニーにして読んだよね。すっごいぴったりすぎるでしょ。目に浮かぶ。一冊は結構なボリュームなので、うまく映画化してほしいなあ。ぜひ見たい。期待しないで楽しみに待っておこう。

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