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『なめらかな世界と、その敵』 (伴名練/早川書房)

*ネタバレしてます。

 『なめらかな世界と、その敵』 (伴名練/早川書房)

 短編集。知らない作家さんでしたが、早川のツイッターでの煽りに煽った宣伝に釣られて電書買って読みました。

 「なめらかな世界と、その敵」
 「ゼロ年代の臨界点」
 「美亜羽へ贈る拳銃」
 「ホーリーアイアンメイデン」
 「シンギュラリティ・ソヴィエト」
 「ひかりより速く、ゆるやかに」

 一つ一つゆっくり読みました。宣伝にあおられまくって買うことにしたものの、多分あんまり私の個人的好みではない、だろう、と思って。けどなんかこの勢いにのらなくちゃ、という気持ち。読んで、やっぱり、正直私の好みの世界ではなく、なるほど、と思う。
 けど、物語一つ一つ、その世界の仕組みというか、SF? ここはそういう世界、というのを、読みながら不思議でわからん、って所からしゅっとピントが合う感じに、思考させられるのがとても面白かった。
 そしてそれはとても清らかで、切実な願いと美しさに満ちた物語で、とっても綺麗だった。

 なめらかな世界と、 は、並行世界の話か。並行世界が当たり前に生きている中で、世界が一つになっちゃった友達がいて、その友達を選ぶ、という感じ。
 ゼロ年代 は、if な歴史っつーか。架空のSF史、かなあ。明治時代くらいからの、女学生が日本のSFをひらいた、みたいな所からの話。

 美亜羽 は、偽装結婚? 脳に機械を埋め込んで理想的人格を、みたいな、だっけ。ちょっとよくわからない。『クロストーク』を連想したりしたっけ。ミアハ、ってまたこれ伊藤計劃か、と思ってうんざりしたんだっけ。まあ、うーん。伊藤計劃の作品自体は好きなんだけど、その後とかその周りとかその神格化みたいなのが私はついていけなくて、わりと読むの受け入れられなかったのかな。わからん。

 ホーリーアイアンメイデン は、古風なお手紙文体。人の心を平和、というか無気力にしちゃうんだろうなあ、特別な力を持つ姉と、ただ一人その力から逃れる妹。第二次世界大戦中みたいな感じの世界か。徐々に明かされていく妹のこころ、たくらみが面白かった。

 ソヴィエト は、AIがめちゃめちゃ発達したソ連、アメリカみたいな世界。月へ行ったアメリカ、一方ソ連は電脳世界を制した、みたいな感じか。騙しあいが面白かった。

 ひかりより速く は、新幹線で修学旅行に出かけたクラスメイトたち、と、行かなかったために残された僕と友達の姉。新幹線が止まってしまった謎。止まっているのではなく、その中では時間が極端に遅くなっていて、新幹線の中の一秒が外では300日くらいかかる、みたいな感じ。どうにかその中の友達を救いたい、と思って僕、頑張る。

 全体的に、なんとなーく、百合、というか、特別な女の子の世界のためにがんばる僕、という印象がする。このところ、なんとなーく、百合!百合でしょ百合!百合は素晴らしい!みたいに、ジャンル総出で新たな読者へ広がれみたいな宣伝してるのが、どーも私にはのりきれず。それは個人的好みで、私は百合にはあんまりはもえないので、あ、そうですかかんばってね、という風にひいてしまうからなー。(かといってBL!BLでしょほらほら!って宣伝されたとしても、あ、いえ、ってひいてしまうとは思うんだ。まあほんとは別に何でもよくて、面白い小説、の中に、自分が好きーってなれるキャラがいるかどうか、で、私はまあ基本的に色気あるいい男大好き、ってことだ)

 で、別にこれも、ほらほら百合でしょ、って言われてるわけじゃないんだけれども、清らかに特別な素晴らしい女の子の世界、という風に描かれているなーと感じられて。その切なさがよい、と思えてキャラが好きってなると最高なんだろうなと思う。
 ひとつひとつの世界の作り上げ方面白いと思ったし、それが見えてくる文章の描き方もよかった。
 面白く読んだ。けど、やっぱり宣伝で煽られまくってるほどには私は良いと思えなくて、まーやっぱ好みではないです、ということで。自分の好みは自分がわかってるとおりだなーとやっぱり思ったところでした。SFに詳しくもないしSFファンですっていえるほどでもないので良い読者ではないですし。

 読みの幅を広げられない自分が不幸、かなあ。
 けど、今更広げようとしなくてもなあ、とも思ったり。ん~。
 それなりにこれからも、ちょっとでも面白そうと思ったら読みましょう。もっと好きになるのに出会うかもしれないし。好きはこのくらい、で、終りかもだけどもまあいっか。

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