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『堆塵館』 『穢れの町』 『肺都』 

*ネタバレしています。

アイアマンガー三部作
『堆塵館』
『穢れの町』
『肺都』   エドワード・ケアリー(東京創元社)


 1作目翻訳が出たのが2016年9月。それから2017年5月、2017年12月と出てる。元のが出たのは2013年ですか。がっつり分厚い三部作、エドワード・ケアリーの新作がこんな分厚くたっぷり。と震えてすぐ買ってたのだけども、読んだら読み終わってしまう。どうせなら大事にじっくり読みたい。と、積んでました。しかしなんとなく、もう読んじゃおうかなと思って、今月、読み始めました。

 分厚い、けれども、一段組だし、漢字にはルビいっぱい。これって児童書だっけ? と不思議に思っていたら、もとは10代向けの作品ということらしい。主人公も少年少女だね。けどまあもちろん、どの年代の人が読んでもいい。これ10代で読んだらはまりっぷりがひどいことになりそう、と、思うけど、けど、今の自分が読んでもやっぱり面白くてやめられないとまらないで、1と2は一日くらいで読んでしまい。3はちょっと時間かかったけれども、それでも十日もかけずに読んでしまった。もったいない。読み終わりたくなかった。けど読んじゃった。すごい、エンタメしてる~って思った。望楼館のイメージが強烈だったので、というか、あれが好きすぎて他に手を出せなかったんだ。全部読破してなくてごめん、ああいうナイーヴさとは違ってきてるんだなあ、まあそっかーと。

 そしてけれどやっぱりこれも、膨大なモノたちに埋め尽くされていく話だった。凄い。

 ヴィクトリア朝時代のロンドン。少し離れたフィルチング。ゴミの海の中にある堆塵館に暮らす、アイアマンガー一族。純血のアイアマンガーたちは上の階にいて、下で働く召使いたちは、混血のアイアマンガー。ロンドンから集まるゴミの中で財を築き上げたアイアマンガー一族。奇妙なしきたりを守り、不思議な力を持つものもいる、一族。
 クロッドは15歳。まだ半ズボン。16歳になったら大人として、長ズボンをはいて、決められた結婚相手と逢瀬をする決まり。クロッドが持っている誕生の品は、栓。なんの変哲もない、お風呂とかのゴムの栓。アイアマンガーの一族は、生まれた時に、授けられた誕生の品を肌身離さずもっているしきたり。クロッドのそれは、栓なのだ。
 クロッドは、ものの声が聞こえる。誕生の品は、それぞれの名前を喋る。クロッドの栓はジェームズ・ヘンリー・ヘイワード。最初は名前しか聞こえなかったのに、クロッドは、だんだん、ものが文章を喋るのを聞くようになる。

 もう一人主人公といえるのは、ルーシー・ペナント。両親が亡くなって、アイアマンガーの遠い血縁がある、と、孤児院から堆塵館へひきとられた。召使い、暖炉掃除の役目をいいつけられる。召使いは名前を奪われる。けれど、ルーシーはなんとか名前を忘れなかった。たまたまクロッドと鉢合わせしてしまい、そしてひかれあう。
 しかしルーシーは孤児院で間違えられたのだ。本当のアイアマンガーの血筋はもう一人の赤毛の女の子。ルーシーは館を追い出されそうになる。

 と、そんなこんなが始まり。それから二人は引き裂かれたり巡り合ったり。堆塵館が崩壊しちゃうとかロンドンから焼かれ、逃げ出し、ロンドンに潜み、奇妙な病気で人はどんどんものに代わってしまったり、ごみがつきまとってきたり。
 登場人物もいっぱい、その人たちが持っている誕生の品にも名前があって。人がものに代わっていって、そのてんでバラバラなおびただしさとか。物としての本の分厚さ、そして物語の中でも膨大に物が襲いかかってきて、物と名前の洪水~~~。

 この前読んだ『クロストーク』もひたすらうるさい小説だったなあと思った。あれはあれですっきりしたけど。アイアマンガーの膨大さはまた格別でした。

 これは、なんていうんだろうなあ。ファンタジーかなあ。昔のロンドンが舞台、ではあるけれども、歴史ものってわけではないし。超能力でものを動かせるようになるクロッド。あれは、サイコキネシスって感じ? けど、ものに命があるから、って感じで、SFって雰囲気ではない。寓話的? わかんないけど。

 ごみの山、海の世界、そしてロンドンの町へ行っても、下町とかはどろどろのべたべた。物語の中にはごみいっぱいで悪臭酷そう。なのに、どっぷり浸って読まされてしまう。面白い。基本的にはごくシンプルに王道で、男の子と女の子が出会って、世界が変わって、必死にサバイバルして成長していくもの。
 けれどそれを彩る世界の奇妙さ、独特さ。そして物。ものが溢れかえり、名前が繰り返されるし増えまくっていく。最初はわけがわからなかった一族たちも、三部の頃にはすっかりおなじみの、って気分。
 表紙も挿絵も、エドワード・ケアリーが描いたものだそうで、この、これも、すごい癖のある絵。不健康に不機嫌に、憂鬱な人物ばかり。どんよりとした空。闇。
 エドワード・ケアリーの世界。全然綺麗なこと書いてないのにうっとりさせられるの凄い。映画化の権利はとられてるそうだけど、けどな~。映画じゃなくていいよ。本が最高だと思うなあ。永遠に読んでいたい……。
 けど、最後の方の派手なカタルシスは、もし本当に凄くうまく映像化されたら、圧巻だろうなあ。
 幸せな読書しました。エドワード・ケアリー、なんなんだろう。あんまり私の好みって感じのものじゃないのに大好きの中毒にさせられてしまう。こわい。すごい。お風呂の栓が愛しくなっちゃうじゃん……。私の誕生の品が欲しくなる……。面白かった~。

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