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『指名手配』 (ロバート・クレイス/創元推理文庫)

*ネタバレしています。


『指名手配』 (ロバート・クレイス/創元推理文庫)

 ロスの私立探偵、エルヴィス・コール。デヴォンという依頼人の息子を調べて欲しいという仕事を受ける。タイソンは17歳。前の学校でうまくいかなくて、転校したばかり。新しい友人ができたのかなんだか、不相応な品を持つようになった。高級なジャケット、ロレックスや現金の束。心配するデヴォンに、コールはまずその時計が本物なのか、盗品かどうか調べてみることから提案した。
 それは盗品だった。金持ちの家の空き巣が連続しているらしい、その盗品リストのもの。
 コールはデヴォンと共にタイソンを保護しようとする。
 ハーヴェイとステムズという二人組が空き巣犯を追っていた。警察なのか、何なのか。でかいのとバカでかい二人組。タイソンの盗み仲間は見つかって殺される。彼らは、盗まれた物のうち、ノートパソコンを探しているらしい。

 と、これ、私立探偵のコール&パイクシリーズの新作ってこと、かと思ったんだけども。「訳者あとがき」によると、『容疑者』の続編の『約束』がコール&パイクシリーズでもあり、その後のこれ、で、だから裏表紙の所に「『容疑者』『約束』に続く第3弾」って書いてあるのね。この私立探偵のって、30年物じゃん??? と不思議だったのだった。
 『容疑者』は読んだことある。犬のマギーが優秀なやつ、だよね。ちょっと、あんまりちゃんと覚えてないけど、読んでる。『約束』を読んでなくてわからなくなってるんだなー。
 けどこれ、この一冊単独でもまあ、事件としては別に問題なく読める気がする。コールが別れた女のこととかその息子くんを思ったりしてるのが、なんだ? と思うくらいかな。

 で、うーんと。この事件は、危なっかしい子どもがママのいう事聞かなくてハラハラして。追手に見つかれば殺されるってのに子どもは危機感なくて。コールはちゃんと間に合うのか? タイソンくんしっかりしろ逃げられないぞ、ってもう私はすっかり親側の気分で読みました。面白かったけど、まあ、まあまあくらいかなー。
 やっぱりなんとなくシティハンターを連想してしまう。そしてややおしゃれっぽさとかの雰囲気がして村上春樹が書いたロスのシティハンター、みたいに思ってしまう。独断と偏見。
 子どもおっかけることになる、ハーヴェイとステムズ二人組の方が、味わいとしてはいいなあ。なんだか謎の過去回想で、どっか小さい酒場で音楽の天才少年がいて、飲んだ勢いで一緒に演奏しまくって楽しかったな、とか。最後、二人は撃たれて死亡、なのでもう出番はないけど。
 
 アンバーが機転きかせて、撃ち合いになった瞬間は派手でかっこよくって、確かに彼女がいうとおり、もしもこの事件が映画化になったら、アンバーは大逆転ヒーローヒロインって所だな。
 家庭、家族に問題がある子ども、ってこともちょっと描かれてたり。
 でもやっぱちょっとどうにも私はどのキャラも好きーってほどにはならなくて、うーん。『約束』を読んでないので読もうかなあ。マギーの話は好きだったような、気がする。どうかな。どうなんだろうなー。読んだらこの「第3弾」ってのにものれるだろうか。うーん。一応、読みたい本リストに入れておこう。

 まだシリーズは続く予定らしく、バイクの話とかにもなるらしい。うーむ。そんなおっかけたいほどには好きでもないかなあ。すごく話はうまくて面白いと思うけど、入れ込めないなあ。名前は憶えておこう。

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映画 「ロケットマン」

*ネタバレしています。


映画 「ロケットマン」

 エルトン・ジョン。その半生の映画化。ミュージカルだった。ド派手で! とても切ない物語。

 エルトン・ジョンの名前は知っている。けども、いまいち私はちゃんとは知らなくて、多分絶頂期をすぎて後の、同性婚をしたとかそんなニュースのの方が印象にある。曲も、有名なのはちょっと知ってた、けども、あんまりは知らなくて。映画を見て、作詞する人がいての曲作り、歌、がエルトンってことなのかあ、と初めて知った。なんとなく、作詞作曲全部やってるものかと思ってた、ロックスターって。
 
 始まりは、ばーん! と、エルトンがド派手なステージ衣装で扉開いてきて、けれどそこは、更生集会みたいなところで。いろんな中毒で薬物もやりまくって、って自己紹介しながら、少年時代の話を始める。
 タロン・エジャトンがエルトンを演じてて、「キングスマン」で知った彼ね~。歌もうまいってのはわかってたけども、ほんっとよかった。勿論動ける。ダンスも素敵だし歌も素敵だし、薄毛の家計の呪いもおかしかったし、らりってハイテンションなのも、孤独で切なくて苦しいのも、ほんっとすごくよかった~。

 少年時代。厳格な父、子どもより浮気熱心な母、一人で抱え込んじゃう感じの祖母、という家庭。父にハグしてほしかった、レジー少年。
 ピアノの才能があるのでは、と、習いに行くようになって、王立音楽学校だかの奨学生に推薦されて。クラシックよりロックンロールに出会ってしまい、バックバンドをやりながらさらにプロを目指し。
 たまたま、レコード会社かな、で、売り込み中に、詩の売り込みに曲つけてみてよ、って渡された詩の作者が、その後もずーっとつきあうことになるバーニーだった。
 二人が最初に会って、カフェで打ち合わせっぽい話から、音楽の話、延々ずーーーーーーーっと喋り続けてた感じ、すごくよかった~。気が合う、ってそういうことな~~。

 二人で楽曲づくり。バーニーは、エルトンがゲイだと自覚しててカミングアウトしても、友達で兄弟みたいな愛のままで仲は変わらなかった。エルトンはほんとはちょっと恋愛感情あったんだろうねえ。そして大ヒットが生まれて、アメリカツアーでも大成功。たっぷり金を稼ぐと、生活も一変。
 最初は、アメリカでのステージにびびってたのに。金持ちになると悪い男もよってきますね。若いエルトンくんはすっかりメロメロに。
 この、マネージャー買って出る男、わるいおとこ、ジョン・リードを演じてるのがリチャード・マッデン。
 まともに見たことあるの、私はドラマの「ボディーガード」だけなんだけど、あれもとてもよかったんだけれども。この~~~悪い男~~~っ。うぶなゲイの金づるをがっつりつかんでいくのたまんねえな。すっごいよかった。わるいおとこだよね~~嗚呼~それなのに~~~。ウインクがめっちゃ決まってて参った。すごいな。
 なんか公開前にはレーディングがどーのこーの、ゲイである二人のラブシーンがどのくらいかとかなんだかんだあったらしいけれども、別に普通に、とっても素敵めろめろらぶらぶシーンでよかったね。一瞬の幻惑の愛~~。はあ。エルトン辛かったね。わるいおとこは魅力的だからな。嗚呼~~。よかった。

 親との確執とか、結局薬や酒におぼれまくってぼろぼろだ、と自覚して、自分から更生施設に行った、ってことなのね。
 子どもだった頃、ハグして、と父にねだってかなえられなかった、愛されたいという思いは、自分で自分の子供時代ごと愛する、自分を愛する、自分をハグして、自分を大事にする、という所から始めなくちゃならない。それからやっと、愛がわかるんだなあ。
 バーニーはずっと友達だったのに。
 音楽はずっと彼の中からあふれてくる。

 終りに、禁酒は今も続けられてて、けど今も買い物依存症! とか、劇中のド派手衣装やスタイルは実際やってましたこんなでした! の写真とかあって、この映画の後、パートナーと出会って、子育てのためにツアーからは引退、とか、今はハッピーなんだろうなって〆でほっとできる。
 音楽はもっちろんすごく素晴らしい。かっこいい。
 ミュージカルだね~。歌いながらどんどん場面変わっていくとかシーンが進むとか、見せ場満載で楽しかった。けれども、ロックスターが大ヒット絶好調!って頃にあんな切ない日々だったのかとか、悲しくなっちゃうね。スターの栄光と孤独。それはまあよくあるというかイメージ通りな所でもあるけれども。みんなみんなが幸せになってほしいよ。
 大事な人を、大事にしよう。映画って、音楽っていいね。

 

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映画 「永遠に僕のもの」

*ネタバレしています。

昨日21日水曜日に見に行きました。二本目。勝手に美少年映画二本立ての幸せ。

映画 「永遠に僕のもの」

 2018年、アルゼンチン・スペイン合作。スペイン語なんだね。

 舞台は1971年。ブエノスアイレス。12人以上殺害を重ねた犯人は少年だった、それをモデルにした映画。
 カルリートスは、目についた屋敷に侵入し、気ままに盗みを働く。酒を飲んだり踊ったり。犯罪を犯しているといううしろめたさはゼロ。目についたものを手にいれ、だが執着はなく、人にプレゼントしたりする。
 前の学校でトラブルがあったらしく、新しい学校へ転入する。そこで、カルリートスはラモンという同級生に惹かれる。工業学校の実習中、バーナーでラモンの髪を焼きかけて、殴られて。ともに校長室に呼ばれるがカルリートスはさっさと逃げ去る。外でラモンを待っていて、そのまま仲良くなる二人。
 ラモンの家族に銃を撃ってみるようすすめられて気に行ったり、一緒に盗みを働くようになる。計画なんて気にせず、盗みを重ねるカルリートス。邪魔ものがいれば撃ち殺してしまう。
 盗みも殺人も平気。ブロンドの巻き毛、見た目は天使のカルリートス。自分の親には大事にされて可愛がられてきた様子。ピアノを弾いて、両親を喜ばせたりもする。
 ラモンと一緒に、宝石を盗み、そんな日々を重ねていくつもりだったのか。けれど、ラモンは絵を売り払うことをきっかけにゲイの金持ちと知り合い、その男に取り入って、テレビに出て有名人になりたい、という夢を抱く。
 金とか、有名人になりたいとか、そんなラモンにカルリートスは複雑な思いを抱く。

 宣伝のころから大注目美少年!みたいな感じで、しかしそーいって宣伝されても、期待外れかもしれないし~、と思いつつ、やっぱ美少年で連続殺人犯とかすごく気になるので公開待ってましたっ。
 サイコパスって感じでもないんだよなあ。すごい。すごく、めちゃめちゃで、天使だった。凄い。憎しみも怒りも何もなく、あ、邪魔。ってことで銃を撃つ。最初こそ撃ってしまったことにちょっとびっくり、な感じはあったけれども、どんどん気軽に殺していく。
 盗みにもためらいはゼロ。みんなもっと自由に生きられるのに、と、人間社会のルールを全く気にしないで、まさに踊るように生きてるみたいだった。天使……。

 写真で見るより、ほんっと、ほんっっとに、映画の中でカルリートスは美少年だった……。映画の神様ありがとう;; オーディションにきてくれてありがとう;; この作品の中に彼の姿をとどめてくれてありがとう;; ロレンソ・フェロ、ほぼ新人らしい。綺麗だったけど、普段の時には普通に素敵だなーという感じで。映画の中では天使で悪魔だった、あの、あんな、あんな風になれる、撮られる、撮っていくの、すっごい。映画ってほんとうに、凄い~~~。

 宝石泥棒してる時に、大きな真珠(かな)のイヤリングをつけてみるカルリートス。それ一つで、ぐっと色気が増す。マリリン・モンローみたいだな、なんて、ラモンも一緒に鏡をのぞきこみ、かっこつけるポーズをしてみたり。
 ラモンは、ゲイじゃない、というかホモなんてキモイ、って感じだけど、金持ちに取り入るためには舐めさせたりもしてて、絶対拒否って感じでもなく。カルリートスとの距離が近くなっていく感じは、とてもドキドキする関係で、そっとラモンの肩に頭をのせる一瞬、くらいのわずかなふれあいしかないんだけれども、時代が違えば、それは恋、だったかもしれない。
 けれど、恋となることはなく。ただただ、カルリートスのピュアさは、人間としては残酷すぎるんだろう。今のままでいたいカルリートスと、もっと金が欲しい、そして将来の夢とかに浮かれ始めるラモンはうまくいかない。
 検問にひっかかり身分証明書を持ってなかったラモンを警察で見捨てたりもしてた。

 隣にラモンをのせて。夜のドライブするカルリートス。眠るラモンを何度も見ながら、不意にためらいなくハンドルを切る。対向車と正面衝突。ラモンは死亡。カルリートスは生き残った。

 あの事故のシーンの衝撃もすごかった。一緒に死ぬ気だったのか。生き残ってしまったのはたまたまか。「永遠に僕のもの」って、カルリートスがラモンを、ってことなんだろうなあ。凄い。自分の命さえ殺すことになんのためらいもない、黒い天使……。
 これは、なんか、何この感じ。いうなればJUNEの香り、って思った。たまらなく美しい、狂おしく切ない。自分たちにも愛だとわからない、愛。
 単純にセックスでもやっちゃえばシンプルな話なのに、そうはいかない。カルリートスの彼女の双子と付き合い始めたりしてたラモン。その女とっぱらって愛し合えばいいのに、そうはならないのなー。

 ゲイの金持ちはラモンつれてっちゃうんだけど、ちょっとびっくり。カルリートスが、あんな美少年がいるのに、そっち!?? って思っちゃった。ラモンの男くさい感じの方がモテるってことなのか……。

 とにかく、カルリートスのうつくしさに魅せられまくりで、ほんっとこの映画を撮ってくれてありがとうだった。
 唇のアップが、何度もあり。唇、赤いの。口紅とかではなく。そしてよく手入れされたぷぷるぷる~とかじゃなくて、ちょっと荒れた感じもあったりする、だけどたまらなく赤い、柔らかそうな唇。水を飲んで濡れた唇。最高すぎる;; 巻き毛くるくるも天使だし。半裸でうろうろしたりもする、その体も、若くてあやうくて、鍛えたりしてない普通に男の子の感じで、もおおお~~~~。たまんねえな。
 赤が似合う。赤いシャツ。赤いパンツ。赤い唇。踊る姿も素晴らしかった。
 大きな瞳。涙を零すシーンがあったのだけれども、涙って、涙が、あんなにも大粒に透明にうつくしくたまってぽろっとこぼれるものなんだ;; 凄かった。どんな絵よりも完璧にうつくしい涙のこぼれ方だった。凄い。

 ラモンの家庭は、犯罪一家ってことなんだろう。彼らと知り合ってしまったばっかりに、という気もちょっとするけど、うーん。彼らと盗みをはじめなければ、カルリートスは、空き巣とかはしてたろうけど、殺人まではしなかったのか。けど時間の問題だったのかなあ。
 カルリートスの家庭は、まともにいい家庭って感じだったのにな。大事に育てられてきたのだろうに。カルリートスはああなってしまった。
 ママの作ってくれるビーフカツレツ(かな)。それが好きで美味しそうに食べるカルリートス。両親にとっては可愛い息子でしかないんだ。ママに、普通の人はそんなに人殺ししない、みたいに言われて、いや別に普通だし? と、まったく当たり前みたいにしてるのが、ほんと……。天使;; 人間の世界とは別の感性で生きてる……。

 脱獄? 逃走? して、ママに電話したら、ママは何事もないかのように電話受けてるけど、その周り部屋いっぱいに警官、とか、逃亡先に向かう警官たち銃いっぱい、とかの画面は笑っちゃった。
 盗んだジュエリーをベッドに広げ、シャワーからもどったラモンの裸の股間に宝飾品盛って眺めてみるカルリートスとか。
 ちょこちょこなんか笑っちゃうシーンもあって、しかし、これは、ええと?? 笑うところ? と悩んだ。ブエノスアイレスの感性がわからない……。殴られた頬を冷やすのに牛肉使うのは普通のことなのか???

 思い出そうとしてもなんだか夢かな、と思ってしまうような、凄い、最高大好きな映画だった。よかった。大好き。映画ってほんとうにいいものですね……。


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映画 「HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツ」

*ネタバレしています。

昨日21日水曜日に見に行きました。今月、初めて映画~。しばらく映画見に行けてなかったよ。

映画 「HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツ」

 2017年製作。ティモシー・シャラメを見に行ったのだ。

 舞台は1991年。ダニエルは父を亡くした。母もショックを受けている。持て余されたダニエルは、その夏、海辺の町、ケープコッドの叔母の家に預けられる。そこは夏のバカンスにやってくる金持ちたちと、金持ちとは言えない地元のものと二つの階層に分かれる。どっちつかずのダニエルは居場所がない。だがある日、ドラッグの売人であるハンターと知り合い、仲間になる。ハンターはヤバイ奴として町の有名人でもある。ハンターと共に売人としてさらに商売を広げ、金持ちになり、派手な車を買って勢いづくダニエル。
 ドライブシアターでたまたま町一番の美人と憧れのまとであるマッケイラと知り合い、恋してしまう。しかし彼女はハンターの妹だった。妹に手を出すなと釘をさされ、しかし秘密のまま会い続けるダニエル。彼女にもハンターにも隠し事をしてしまう。
 やがて嵐のくる日、もっとでっかい商売をしたい、と、コカインの売人に接触したものの、ただ騙されただけに終わる。
 ハンターは殺され、マッケイ町を出る。ダニエルもまた二度とその町に姿を現さなかった。


 そんなこんなの青春物語。語り手が、ダニエルたちよりもっと子ども、13歳くらいの子か? なんか、町のティーンがあの夏こんな風だったんだ、ってモノローグしてくれる。
 ま~薬の売人やっちゃお~ってんで案の定の転落ですね。悪ガキはもっと悪い大人に食い物にされてしまう。
 マッケイラが町一番の美人!ってだけあって、すごくきれいな子だった。クールビューティ。ティモシー・シャラメはイケてない男子として登場するわけだけど、彼女とのキスシーンとか最高綺麗な二人で、眼福だった。素敵。二人ともなんて綺麗な若者なんだ。

 ダニエルが棒つきキャンディをなめてると、そのキャンディをマッケイラがとって、ひとなめしてからまた返すんだよ。エロティシズム~~~~! すごくよかった。可愛かった~セクシーだった~~~!^^

 ハンターくんの家庭事情の大変そうさとか、兄と妹の感じとかも素敵そうな気配。けどまあ、青春物語だなーってところで、胸キュンのうっとり映画でした。若者たちが、ほんっと若者で危うくて。細い体で、もーっ。ほんと、おばちゃん心配になっちゃうって思っちゃうよ。この中でも半裸のシャラメたんを見られて、あ~も~ひょろっとしちゃって~~と、ハラハラしました。若者たち、体つきからしてもうほんと危うい。
 ダニエルはどうなったんだろうね。マッケイラには幸せになって欲しいな。ほんと、ひと夏の嵐の青春映画でした。


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『カササギ殺人事件』上下(アンソニー・ホロヴィッツ/東京創元社)

*ネタバレしています。

『カササギ殺人事件』上下(アンソニー・ホロヴィッツ/東京創元社)

2018年9月刊。
 発売は去年ですね。凄い! 面白い! クリスティ好きならば間違いなく読むべきみたいな絶賛評判で煽られまくってて、表紙も鮮やかで目について気になってました。でも正直、私は別にそんなにクリスティ好きでもないし、クラシカルなミステリに思い入れあるわけでもなく。そんなに面白いのかなあ、と、手を出しかねていたのです。けど、帰省のおともになんか電子書籍買っとくか、と思って、読みました。

 始まりは八月の雨の夜。「わたし」は大ヒットシリーズ、アティカス・ピュント探偵の九作目の原稿のプリントアウトを読み始めた。「わたし」はこの作家、アラン・コンウェイの担当編集者。ミステリ、本が大好き。さて、と読み始めた「カササギ殺人事件」
 舞台は1955年。とある村での葬儀が始まる場面から、その犠牲者のこと、村の人々のこと、息子やその婚約者。たんなる事故死と思われた最初の死は、もう一つの死を生んだ。
 自身が死の病にあると知らされた探偵は、一度は依頼を断ったものの、二つ目の死の報道に、やはり解決へと乗り出していった。
 そして。いよいよ犯人は。
 というところで上巻が終わり、下巻を読み始めると、なんと解決、結末の原稿がない。紛失? 上司の意地悪? わたし、スーザン・ライランドは週明けに出社して問いただそうと、ひとまず自分の推理をメモしてみたりする。だが、ニュースで、作者、アラン・コンウェイが死んだと知る。

 てことで、ええええ~~~っ、と、犯人判明を焦らされること二つ分のお話。作中作の犯人と、この作中での現実、アラン・コンウェイは自殺なのか他殺なのか。失われた原稿は? そんなこんなの謎解きでした。
 アラン・コンウェイは、ほんとはミステリ作家として有名になるより、もっと深い文学を書きたいんだ、みたいなことで、シャーロックを殺したがったドイルみたいに、自分の人気シリーズをこっぴどくからかって終わりにしたかった。とんでもないアナグラムで、読者をコケにするように。それを許容できない上司が犯人だったんですねー。パイ屋敷の方は、息子が、婚約をダメにしたくなくて、過去を葬り去るように屋敷の主人を殺してしまった。暴力的傾向って、なんだか、んー。まあ、そういうものか。

 そんなこんなでお話は面白く読みました。けど、やっぱりまあ、私の好みって、キャラもえ読みというか、このキャラが好き、って肩入れして読むのが自分にとっては一番楽しいことなので、この本の中の誰の事も好きにはならず、ふむふむとストーリーは楽しんだけれども、大好きだった!って満足感はなかったなあ。

 で、この、作中作の作者、アラン・コンウェイが自分の作品に仕掛けたアナグラムっていうのが、探偵の名前そのものが、ばかげたカントってことで、なーーんだその下品~って思って。まーそれが殺されるきっかけになるものだからまあ生半可なおふざけじゃダメなんだろうけど、ほんとに嫌な気分、読後感が作品そのものを読んだ後にも残るので、なんだかな~。私はこれ嫌い、という気持ちが残る。それは作中作品の作者アラン・コンウェイのことなんだけれども、なんとなーく、この作者、アンソニー・ホロヴィッツへの嫌な気分になってしまうな。

 別に私は上品な人間ではありませんし、下ネタばりばりおっけーなんだけど。やっぱこの読者を馬鹿にするやり方、それが酷いからこそ事件になったって重々承知の上でも、やっぱやだなーって気持ちが残る。やだなー。で、ひいてはこの作者そのものを信用できない気持ち。それに登場人物誰も好きにならなかったのも、私がこの作者と合わないってことなんだろうなと思う。私の個人的好みの問題。もう手を出さないようにしよーって思った。

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『堆塵館』 『穢れの町』 『肺都』 

*ネタバレしています。

アイアマンガー三部作
『堆塵館』
『穢れの町』
『肺都』   エドワード・ケアリー(東京創元社)


 1作目翻訳が出たのが2016年9月。それから2017年5月、2017年12月と出てる。元のが出たのは2013年ですか。がっつり分厚い三部作、エドワード・ケアリーの新作がこんな分厚くたっぷり。と震えてすぐ買ってたのだけども、読んだら読み終わってしまう。どうせなら大事にじっくり読みたい。と、積んでました。しかしなんとなく、もう読んじゃおうかなと思って、今月、読み始めました。

 分厚い、けれども、一段組だし、漢字にはルビいっぱい。これって児童書だっけ? と不思議に思っていたら、もとは10代向けの作品ということらしい。主人公も少年少女だね。けどまあもちろん、どの年代の人が読んでもいい。これ10代で読んだらはまりっぷりがひどいことになりそう、と、思うけど、けど、今の自分が読んでもやっぱり面白くてやめられないとまらないで、1と2は一日くらいで読んでしまい。3はちょっと時間かかったけれども、それでも十日もかけずに読んでしまった。もったいない。読み終わりたくなかった。けど読んじゃった。すごい、エンタメしてる~って思った。望楼館のイメージが強烈だったので、というか、あれが好きすぎて他に手を出せなかったんだ。全部読破してなくてごめん、ああいうナイーヴさとは違ってきてるんだなあ、まあそっかーと。

 そしてけれどやっぱりこれも、膨大なモノたちに埋め尽くされていく話だった。凄い。

 ヴィクトリア朝時代のロンドン。少し離れたフィルチング。ゴミの海の中にある堆塵館に暮らす、アイアマンガー一族。純血のアイアマンガーたちは上の階にいて、下で働く召使いたちは、混血のアイアマンガー。ロンドンから集まるゴミの中で財を築き上げたアイアマンガー一族。奇妙なしきたりを守り、不思議な力を持つものもいる、一族。
 クロッドは15歳。まだ半ズボン。16歳になったら大人として、長ズボンをはいて、決められた結婚相手と逢瀬をする決まり。クロッドが持っている誕生の品は、栓。なんの変哲もない、お風呂とかのゴムの栓。アイアマンガーの一族は、生まれた時に、授けられた誕生の品を肌身離さずもっているしきたり。クロッドのそれは、栓なのだ。
 クロッドは、ものの声が聞こえる。誕生の品は、それぞれの名前を喋る。クロッドの栓はジェームズ・ヘンリー・ヘイワード。最初は名前しか聞こえなかったのに、クロッドは、だんだん、ものが文章を喋るのを聞くようになる。

 もう一人主人公といえるのは、ルーシー・ペナント。両親が亡くなって、アイアマンガーの遠い血縁がある、と、孤児院から堆塵館へひきとられた。召使い、暖炉掃除の役目をいいつけられる。召使いは名前を奪われる。けれど、ルーシーはなんとか名前を忘れなかった。たまたまクロッドと鉢合わせしてしまい、そしてひかれあう。
 しかしルーシーは孤児院で間違えられたのだ。本当のアイアマンガーの血筋はもう一人の赤毛の女の子。ルーシーは館を追い出されそうになる。

 と、そんなこんなが始まり。それから二人は引き裂かれたり巡り合ったり。堆塵館が崩壊しちゃうとかロンドンから焼かれ、逃げ出し、ロンドンに潜み、奇妙な病気で人はどんどんものに代わってしまったり、ごみがつきまとってきたり。
 登場人物もいっぱい、その人たちが持っている誕生の品にも名前があって。人がものに代わっていって、そのてんでバラバラなおびただしさとか。物としての本の分厚さ、そして物語の中でも膨大に物が襲いかかってきて、物と名前の洪水~~~。

 この前読んだ『クロストーク』もひたすらうるさい小説だったなあと思った。あれはあれですっきりしたけど。アイアマンガーの膨大さはまた格別でした。

 これは、なんていうんだろうなあ。ファンタジーかなあ。昔のロンドンが舞台、ではあるけれども、歴史ものってわけではないし。超能力でものを動かせるようになるクロッド。あれは、サイコキネシスって感じ? けど、ものに命があるから、って感じで、SFって雰囲気ではない。寓話的? わかんないけど。

 ごみの山、海の世界、そしてロンドンの町へ行っても、下町とかはどろどろのべたべた。物語の中にはごみいっぱいで悪臭酷そう。なのに、どっぷり浸って読まされてしまう。面白い。基本的にはごくシンプルに王道で、男の子と女の子が出会って、世界が変わって、必死にサバイバルして成長していくもの。
 けれどそれを彩る世界の奇妙さ、独特さ。そして物。ものが溢れかえり、名前が繰り返されるし増えまくっていく。最初はわけがわからなかった一族たちも、三部の頃にはすっかりおなじみの、って気分。
 表紙も挿絵も、エドワード・ケアリーが描いたものだそうで、この、これも、すごい癖のある絵。不健康に不機嫌に、憂鬱な人物ばかり。どんよりとした空。闇。
 エドワード・ケアリーの世界。全然綺麗なこと書いてないのにうっとりさせられるの凄い。映画化の権利はとられてるそうだけど、けどな~。映画じゃなくていいよ。本が最高だと思うなあ。永遠に読んでいたい……。
 けど、最後の方の派手なカタルシスは、もし本当に凄くうまく映像化されたら、圧巻だろうなあ。
 幸せな読書しました。エドワード・ケアリー、なんなんだろう。あんまり私の好みって感じのものじゃないのに大好きの中毒にさせられてしまう。こわい。すごい。お風呂の栓が愛しくなっちゃうじゃん……。私の誕生の品が欲しくなる……。面白かった~。

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