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『モーリス』(E.M.フォースター/光文社古典新訳文庫)

*ネタバレしてます。


『モーリス』(E.M.フォースター/光文社古典新訳文庫)


 モーリスは父を早くに亡くしたものの、母、妹たちと穏やかに暮らしていた。パブリック・スクールへの進学。その後は仕事につく。教養ある紳士として家族の中心となるべく学びに行った。ラグビーも楽しんだ。
 クライヴ・ダラムという一つ上の学生との出会いが、モーリスの心に押し込めていた感情を目覚めさせた。ギリシア的な愛。互いを高めあう精神的なつながり。議論を戦わせ、あるいはただぼんやりと一緒にいる。
 幸せな学生生活が終わると、やがてクライヴは地主として、政界入りを目指して、そして女性を愛するようになり、結婚する。
 モーリスをもう愛していない。
 一人苦しみの中に残されたモーリスが新たに出会ったのは、森番のスカダーだった。


 映画はずいぶん前に見て勿論大好きですが、本を読むのは初めて。去年の6月刊行。その時買ったまま積読でした。やっと読んでみた。読み始めると、すごく読みやすくわかりやすくて、ときめく。さすが新訳。

 書かれたのは1913年ごろのようで、その後改稿はしつつ、出版はなされなかった。イギリスの同性愛は罪、の厳しさの中ではとてもそんなことは出来ないということだったらしい。作者の死後、1971に出版されたそう。そんなこんなの、作者自身のはしがきがあったり、解説も丁寧で背景わかりやすくて面白かった。

 モーリスが、魅力的な、だけどちょっと素朴で自分の気持ちにさえ気が付くことがなかなかできない、そんな戸惑いや苦悩の様が映画よりもよくわかって、本を読んでみてよかったなあ。
 クライヴのほうは、映画の印象よりだいぶ酷い気がする。同性愛者ではなかった、ってことかなあ。青年期だけの思いだった、ってことで、結婚とかモーリスと別れるとか、別にあんまり悩んでない。モーリス可哀相……。
 モーリスもまた、年を重ねれば同性愛傾向が消えるのでは? と希望を持ってみたり、それでも治らない、と、医者に相談したり、でも全然あてにならなかったり、催眠術で治療を試みるとか、滑稽なほど悲しい。同性愛は罪。同性愛は汚らわしい。ありえない。異常な病気だ。そんな背景が辛い。

 森番、アレックス・スカダーと会って、多分お互い一夜だけの勢い、だけど、忘れられなくて、でも会えない、怖い。そんなすれ違いから、スカダーのほうはモーリスを脅迫するような追い詰め方をしようとしたりして。辛い。でも、本当は互いの気持ちは一つなんだ、という、ハッピーエンドになるのは素晴らしい。同性愛は罪。そもそも階級が違う、みたいな、当時の社会を超えて、愛の物語として終わる。

 今は、同性愛者がいることは当たり前で、もう罪ではない。結婚だってある。それでも、差別も偏見もまだまだあるだろう。けれど、ハッピーエンドが、ありだ、という世界のさきがけとして、『モーリス』はあったんだなあ。

 また映画見よう。切なく。けれど、ハッピーエンドな世界を。

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