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『償いの雪が降る』(アレン・エスケンス/創元推理文庫)

*ネタバレしてます。


『償いの雪が降る』(アレン・エスケンス/創元推理文庫)


 ジョー・タルバートは大学生。英語の課題で、年長者にインタビューをして、その伝記を書かなくてはならない。あいにくジョーは母子家庭。祖父母はもういない。ろくでもない母の話を聞くなんて考えられない。そして老人ホーム、シニア・センターとかそういう所で、話を聞かせてくれる人を見つけようと考えた。
 そして、知り合ったのは殺人犯。14歳の少女をレイプし殺し死体を放置した小屋に火をつけた罪に問われた男。カール・アイヴァソンというその男は癌で余命数か月となり、刑務所を出て施設で死を待っていた。

 カールが話してくれたのはジョーの心の奥のトラウマ的な告白のあと。ジョーは11歳の頃、祖父と釣りにいった川で、誤って転落した祖父を助けることができず、ただ見ていたことを悔やんでいた。その死は自分のせいだと。
 カールはジョーの真摯さに応えるように、ベトナム戦争での経験を語る。
 話を聞くほどに、カールが犯人ではないという思いを強めていくジョー。

 そんなこんなの、若者の探偵ごっこ、まあ、ごっこってわけでもないのだけれども、カールの無実を信じ、行動していくジョーのピュアさと無謀さにハラハラひきこまれていく。危ないよ~~~ちゃんともっと警察を頼るとか~~してくれ~~。

 ジョーにはジェレミーという弟がいる。自閉症かな。18歳だけどまるで子どもで、環境の変化が嫌いだし独自のこだわりが強い。母はだらしない。その家を出て、大学生としてやっていこうとしているのに、なにかと足をひっぱられるの。ジェレミーのことは好きで大事にしてやりたいけど、重荷にも感じていて、ジェレミーを引き受けることなんてできないと思っている。けど、その思いが変わっていくのもよかったな。感動……。お兄ちゃんだなあ。いいお兄ちゃん。ジェレミーの特性に合わせてうまく話をしたり、カッとなるのを抑えたり。お兄ちゃん、大変だよなあ。それでも弟を守るお兄ちゃん;;ジェレミーもお兄ちゃんが好きなんだよねー。幸せになってくれ。

 ジョーのお隣さんとして、同じ大学生のライラがいる。なんとか彼女の気を引きたいと思っていたところ、ジェレミーとのつながりで、ライラと夕食をするまでにこぎつける。そして英語の課題の話、殺人犯にインタビューの是非についてとか、意見を交わして仲良くなっていく。
 ライラにも辛い過去があった。男の子たちといちゃいちゃするのが好き、というふわふわした日々でいた所、次第にただ簡単にやれる女扱いになり、レイプ被害にあう。そのカウンセリングで一年の休学があったという。
 そういう、傷ついた心を誰もが持っている。

 ちょっとさ、キャラクター作りとか、話の筋道づくりの作者の手つきが見えるような気がするな~。うまくまとまってて、都合よく甘い気が、しないでもない。ストーリー作りのお手本とかキャラの肉付けのポイントとかマメにおさえて書き上げられたのでは。って気がする。素直でわかりやすくて、ドキドキハラハラもあって、ピンチ、脱出、とか、実は最後に頼りになったかっこいい刑事とか、カールの死に間に合うように現在の大事件が過去を明らかに、そして救済、みたいなのも。ほんときれいにまとまってるんだよねえ。

 殺された少女の日記にはシンプルな暗号が記されている。それこそが本当の犯人を示す手がかりなんだけど、カールが捕まった時には暗号は解読されてなくて、カールもむしろ逮捕されることを願っているかのようで、すでに状況証拠は十分ってことで見過ごされてきた。
 しかし、ジェレミーの他愛ないおしゃべりがきっかけで、タイピングに使う例文がキーだ、と気づくと、犯人は義父だとわかる。
 でも本当はその息子、義理の兄だった、と、さらにわかる。おおー、ヤバイ。と、読みながら緊張しちゃった。だからさ、もう~~さっさと警察に行こうよーー。

 ともあれなんとか無事事件終了。カールは大雪のうつくしさを眺めることができて。そして無罪になった知らせを聞くことができて、逝った。
 カールの葬儀の日に、犯人が他にも犯行を重ねていて、別の被害者に懸賞金がかかっていて、ジョーたちは10ドル、さらにもうちょっと、受け取ることができるという。
 ジェレミーを引き取り、学生生活を続けることができる。そんな救いもあった。めでたしめでたし。ドキドキハラハラも、しんみりしみじみも、たっぷり堪能できて、良かったなあ。

 これは作者デビュー作だそうで、いろいろ賞もとってるみたい。本国2014年の作品なんですね。その後、この中のキャラでの話とか、今作の続編とかも書かれているみたい。読んでみたいかも。ルパート刑事の話特に読みたいよー。翻訳されるのかなあ? でもこの続編はきっと翻訳くるよね? わかんないけど、お待ちしたい。出ればまた読みたい。もっと洗練されていってるのか、なんかもっと深くなってるのか。読みたいな。

 

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