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映画 「荒野にて」

*結末まで触れています。


映画 「荒野にて」


 チャーリーは父親と二人暮らし。引っ越してきて今は学校には行っていないみたい。父との暮らしはあんまり豊かじゃないしまともじゃないけれど親子の仲はいい。父は一応仕事はしてるけど寝る相手をふらふら変えるしチャーリーのことにあまりかまわない。母は幼いころに出て行っていてチャーリーの記憶にない。マージー叔母さんが優しくしてくれていたのだが、父と大喧嘩して12歳のころ以来音信不通だ。

 一人で近所をランニングして、チャーリーは競馬場があるよ、と父に報告する。
 ある日、ランニング中に、トラックのタイヤ交換にてこずっていたデルを手伝って、そのままその日の仕事を手伝って給料をもらった。デルは競走馬を持っている。一時よりは落ちぶれた、とはいえ、まだ6頭の馬を持っている。
 厩舎の仕事を手伝って、お金を得て、馬の世話をするのは好きだ。チャーリーはリーン・オン・ピートという馬と仲良くなる。
 ある夜、父が寝た人妻の夫が家に押し入ってきた。撃たれてしまう父親。入院した父の医療費のためにもチャーリーは仕事に出かける。だが、容態が急変、父はなくなってしまう。
 児童保護施設へ連絡しよう、という医者をふりきって、チャーリーは厩舎へ逃げた。

 しかし足を痛めたらしく勝てなくなったピートは売られてメキシコ行きになるという。デルにじゃあ僕が買う!と言ってももちろん相手にされない。騎手のボニーもとりあってくれない。チャーリーははトラックごとピートを盗み出し、叔母さんのところを目指した。


 チャーリーがほんとはいくつなんだ、と思う。15歳? 16歳? 18とか言ったのは嘘かなと思うけど、ともかく、大人に保護されなくちゃいけない子どもなのは間違いない。
 父は、悪人ってほどじゃないけど、子どもを育てるには向いてない人なんだよなあ。母もそうだったんだろうなあ。叔母さんがいい人で、チャーリーにとっていい思い出で。施設にやられるより叔母さんのところへ行く、というのはわかる。
 そこで逃げ出さないで、ちゃんと、施設なり警察なりに、叔母さんを探して、と頼めばきっと探して連絡とってくれるはずなのでは? 逃げないで。怖がらないで。
 でもチャーリーは逃げ出す。大人なんて信じられないってことなのか。かたくなに心を閉ざし、ピートだけに喋る。馬をつれて、でも自分は馬には決して乗らないで、大丈夫だよ、って馬にいいながら逃げ続けていく姿は、景色もあいまってとても美しい。
 だけど、大丈夫だよって言ってほしいのはチャーリーなんだよ。

 逃亡の途中、少しは助けてくれる人とも出会う。でも、そこでも打ち解けることはできなくて、信じられなくて、居場所じゃなくて、またピートと歩き出す。

 ピートが夜の車におびえて暴れて走り出してしまい、車にはねられたのは衝撃だった。辛い。チャーリーの衝撃と後悔、どれほど深いことか。警察がきて、そしてまたチャーリーは逃げ出す。
 
 ホームレスになり、炊き出しのところで知り合った男が親切、と、思ったのに。なんとか日雇い仕事で得た金を、男に奪われる。
 チャーリーもブチ切れて、男をレンチで殴って金を奪い返す。

 そんな旅の果て、叔母さんを見つけ出すことができて、再会できて、叔母さんにハグされて本当にほっとした。この叔母さんが、昔と変わってしまっていたらどうしよう、って息をとめる思いで見た。
 叔母さんは、ちゃんとした人だった。よかった。チャーリーをちゃんとハグして、ここにいていい? と聞いたチャーリーに、離さないわよって答えてくれる。
 やっと、やっと、安心して眠れるベッドを得て、それでも眠れなくてチャーリーは叔母さんの部屋へ行く。学校に行ける? 刑務所に行っても戻ってこれる? と聞く。もちろん、と、叔母さんは受け入れてくれる。
 チャーリーは悪夢の話をする。ピートが溺れているのに助けられないんだ。と、やっと、泣くことができた。ピートに会いたい、って。
 
 こっちが泣くわ。溺れているのはチャーリー、きみだよ。
 
 静かな、過酷な、だけどちゃんと優しさもある映画だった。チャーリー、そんなに逃げ何で。おびえないで。でも、彼はそうであるしかなかったんだな。

 デルとランチ食べるとき、マナーもなんもなってなくて、食事がきたらすぐばくばく食べて、デルに、母親になんかいわれなかったのかって呆れられたりする。父親には? チャーリーは別に何も言われないよ、って答える。
 チャーリーは学校に行ってたころには、スポーツ得意だったみたい。友達もいたみたい。だけど、今の自分を見せたくない、元気でやってるって思ってほしい、って、連絡しようとはしなかった。誰かにきちんとかまってもらって、せめてもの食事のマナーとか、ちゃんとするっていうことを、教わる家庭ではなかった。
 仕事を与えられたらすなおにやるし、汚れるようなことでも嫌がらないし、逃亡中の塗装の日雇いみたいなやつでも、真面目にやって、たぶん気に入られて、ずっと仕事にこいよ、みたいに言われてた。本当に、素直で真面目で、すごくいい子なんだよなあ。
 もう少しだけでも、父がちゃんとしてくれれば。叔母さんと引き離されなければ。もっと当たり前の幸せがあっただろうに。

 最後もランニングしてる姿で終わった。学校に行って、またスポーツをやるんだろう。これからはまともな暮らしになるだろう。少年の孤独に、やっと安心できる居場所ができたんだと思う。これからきっと優しく強くしあわせな人になるんだと思う。
 チャーリーが出会った人たち。別に悪い人ばかりではなかった。ただあともう少しでも、まともにチャーリーの話をよく聞けたら。けれど、チャーリーの方でも話さないで、逃げるしかできなくて。話せないっていう感じが、もう、辛くて。

 たぶん私自身も、チャーリーに居場所とか安心とか示せないような、人間だなって思う。
 優しくなりたいって思った。
 キャストみんなすっごくよかった。すごくいい映画。見に行ってよかった。

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