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『虚実妖怪百物語 序/破/急』 (京極夏彦/角川文庫)

*ネタバレしてます。


『虚実妖怪百物語 序/破/急』 (京極夏彦/角川文庫)

 去年末に分厚~い、合巻という文庫を買いました。製本の限界を試しているのか……。
 「京極史上最長の超大作が一冊に!」という。タイトル、ついきょじつ、と読んじゃうけど「うそ まこと」とルビあり。序、破、急それぞれの1冊の3巻本もあるね。せっかくだから分厚いのにしましょう京極本だし。と思ったけど読んでる最中には、やはりこれ分冊にすればよかったかな……と思いました。けどまあ、終盤にくると一気読み。この、こ、この、あまりにも、馬鹿が馬鹿で話の腰を折りまくり引き回されるのについていくのがタイヘンだけど本半ばをすぎればこちらも慣れた。

 2016年11月の単行本の文庫化ですね。2018年平成30年12月25日初版。

 「虚構VS現実!」という帯文句があって、読み終わってみればそういう話であった。あまりどういう話か知らず、しかし京極が「不思議とはそういうことだよ」とか榎木津平太郎というキャラがいるんだな? 榎木津?? と、まんまとつられました。

 砂塵の中の遺跡。そこに現れた黒い影。加藤保憲、なのか。

 と、おお? ってそそられて読めば、虚構のキャラクターが、現実に、いる? いるのか?? 現実、どうなってる? メタフィクション? この小説の中に、実在する人物そっくり、というか、モデルというかそのものなのかどうかは私は知らないけれども、まあ、「怪」だとか雑誌の編集者とか作家とか漫画家とか、京極夏彦も荒俣宏も水木しげる大先生も出てくる。獏さんなかなか出ないなと思ったら終盤のほうにでてくる。妖怪好きとかオカルトミステリいろいろ、それぞれ厳密には違うのだ、といいながらどんどんじゃらじゃらみんな出てくる。
 私はこの頃はすっかり日本の小説を読んでいなくて、たぶん若手? たぶん今人気の作家、みたいなのがわからないのだけれども。この作中で大物っぽい人たちのはかなり読んでいる。妖怪馬鹿な人たちの側に自分自身も結構近い。多分、まあまあ、近い。
 延々ぐねぐねどんどん世界が歪んでいくのについていきながら、まあまあ言ってることや出てくる名前、ネタ、が、そこそこにはわかる。でもあんまりわかんない。
 
 そしてなんだか延々と妖怪馬鹿が馬鹿の力で馬鹿ばっかりやってるみたいな、馬鹿、馬鹿がしつこいぞ……って思いながら読むのだけれども、かなりリアルというかシリアスというか、現代日本を憂いている社会派小説だなあって思う。

 世の中にあそび、余裕がどんどんなくなって、だれもかれもがギスギスとして疑心暗鬼を抱いている。妖怪が湧いてくるのは、失われた余裕を求めるあがき、みたいな感じ。

 余裕、大事だよねえ。正論やふりかざす正義ばっかりになるとむしろ世界が滅ぶ。
 その感じはとてもわかる。
 妖怪馬鹿、というゆるみで息をしやすくなるといいのにな~という感じ。

 そして最後まで読み切った時には、ああ、水木しげる大先生が、妖怪の世界へ行ったという、そういう始末がさりげなく、でも巨大な愛を感じられて、不覚にもほろりとしてしまった。妖怪絵巻の中に納まる水木しげる。誰もが納得してしまうじゃないか。
 水木しげる2015年11月没、なんですねえ。

 で、まあ、読み終わった時にはすごくほっとした。よくもこんなぐったぐたに広げまくってかき乱した風呂敷をまとめてたたんで一段落つけたなあ~。さすがすぎる。こわい。と、感心しまくり。
 すべては虚構なのだ。
 虚構VS現実、と、そう思いながら読んだよ。けれど、現実もなにも、私はこの本を読んでいるんだもの。と、読み終わって分厚い分厚い文庫本を持ってめくって眺めて、ああ面白かったなと思い。けれども社会派だったなと思い。
 しかし榎木津の名前でつるのはずるいなあ。

 正直いって、私は、こういう、なんだろう、私が最初見たのはミステリかな、『ウロボロスの偽書』か、竹元健治の。作家が実名で出てきて、みたいなのを読んだことがあって、そーゆーノリっつーかどうにも内輪ネタとしか、いやちゃんと小説で面白いのかもしれないんだけれども、私には、なんか、無理、な、ノリ、と思ったりしてたのを思い出した。なまじ中途半端に実名で出てくる人物を実在の人、って思っちゃうのが、自分の中でうまく収められなくて、私にはなんかヤダという気持ちになっちゃうんだなー。別に登場人物ってことで実名だか実在だか気にしなければいいと思うんだけど。そもそも実名ってわかる人物にしたって本当に実際の人として知り合いとかいうわけじゃなのなー。作家の本読んだりインタビューだとかなんとかで知ってる気になってたとしても、知らないんだし。
 でもなんか、そういうのに私がついていけないのだった。あと下品なのな~。
 久しぶりになんかこういうの読んだなあという感慨。ともかくもこの分厚いの読みましたよということで、満足はしました。読み終えた時の気持ちは、よかったです。

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