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映画 「ウィンター・ブラザーズ」

*ネタバレしています。


映画 「ウィンター・ブラザーズ」

(監督:フリーヌル・パルマソン Hlynur Pálmason / 2017年 / デンマーク、アイスランド / デンマーク語(Danish)、英語(English) / 93min / 字幕:日本語・英語)

 トーキョー ノーザンライツフェスティバル2019 に13日行きました。
 今年はマッツの映画はなかったので心穏やかに。ラース・ミケルセンが出てるのね、と思ってこれを見に行きました。登場の時、おっさすがマッツと声が似てる、と思った。けどマッツがお兄ちゃんに似てる、だよね。


 真っ暗闇から始まる。機械の轟音が響く。ヘッドライトのわずかなひかり。採石場なのか。掘っている。作業員たちが喋ったり、隠し持った酒を飲んだり。やがて仕事を終えて地上へ戻る。外は雪景色。巨大な機械。工場? 石灰工場だそうです。
 兄、ヨハン。弟エミール。二人だけの家族らしい。工場の化学薬品を盗み、粗悪な密造酒を作って周りに売っているエミール。
 老人に、金の代わりにライフルを貰うエミール。
 雪。石灰の白い汚れ。寒さ。唸り続ける機械音。なにもかもが鬱屈した閉塞感。

 工場主、経営者? 監督者? に、薬品泥棒がバレる。酒を売っていた中の一人が体調崩し、倒れた。恋人は兄と寝た。散々な目にあうエミールだけど、自分がしでかしたことのツケでもある。あ、寝とられたことだけはちょっと可哀想か。


 ずっとうるさい映画だった。機械の音。音楽というか効果音? それもうるさい。ずっと苛立ちをつのらされるような映画。寒そうだし。この不快感の中にどっぷりなのが、エミールたちということかと思う。
 けど、な、なんだよなんだよ。何故私はこんなにも不快に耐えながらこの映画を見ているんだ、と、あまりのうるささに眠くなりかけたりしながら、じっと見続けた。
 
 エミールたちは仕事場と家との往復だけの毎日。辺鄙な田舎みたい。何もない。気晴らしや楽しみにすることが何もなさそう。粗悪な密造酒、明らかに体に悪そうというか酒でもなさそうな気がするそれを、飲むしかないような。
 そんな中でも、エミールは恋人がいて、この先もずっとこんな風に暮らすんだろう、って受け入れていて、けどやり場のない鬱屈はあるようで、なんだか奇行に走ったりしているような。兄との関わりは淡々としているようでいて、けれども、二人だけ、という密室感もある。お兄ちゃんさあ、弟を困った奴と思ったりしててもやっぱ大事で可愛いんだろう、なあ。そりゃやっぱり。
 恋人とられた、ってキレた兄弟喧嘩のシーンは、兄は全裸、弟もパンツひとつで、いろいろもろ見えで、アクションシーンみたいなことじゃなくて、ほんとただ喧嘩してるって感じのリアルがすごかった。あげくに、あやうく弟が死んじゃうかも、ってなって焦る兄。必死に蘇生を試みる姿はやっぱり大事なんだなあとすごく伝わる。
 男の子兄弟ってあんなだったりするのかも、と、思ったり。わからないけれども。

 ライフルを持って、ビデオかなんかで射撃練習を重ねて、また全裸で部屋で銃を構えたり体勢練習したりするエミール、全裸で。
 あんなに寒そうなのに、きみたち平気なのか……。まあもちろん家の中は暖房してるだろう、けれども、隙間風だらけって感じのボロ家だったりするのに。そこで暮らして慣れているってことなのか。こわい。

 エミールのささやかな仕返しも。酒のせいかどうかはっきりしないまでも死んじゃったらしい仕事仲間も。なんだか何も決着はつかない感じ。
 エミールはクビになった。けど。恋人にマジック見せてちょっと仲直り、って感じとかで、終盤ではちょっと笑顔見られた。けど。けど。どうなの。そこに未来はあるの? なさそうなんですけど。
 終りは、また真っ暗な地下。掘ってるのはお兄ちゃんか。真っ暗。暗い。そして、終わった。
 ……え? 終わった?????
 と、どう受け止めていいのかわからないままに、終わった……。
 エミールの妄想だか幻覚だかも混じったりして、おお??? と、なんだか本当に、どう受け止めていいのかわからない。この、やるせないどうしようもない、ずっとうるさい、ずっと不快、ずっと闇の中てさぐりにすすむような、この感じ、っていうのを味わう映画だったのかなあ。

 ラース・ミケルセンはさすがの迫力。かっこいいし。いい声。一見物静か。クールに優し気にしていながら容赦ない感じ、すごい。出番はほんとちょっとだけど、あーこの上司に睨まれたらダメだ、という強い印象ありました。
 エミールのささやかな仕返し、で、窓ガラス割れてびっくり、のシーンはちょっと可愛げがあってほっこり。素敵だ。
 映画は、ぐったり疲れてしまったけれど、ともあれラースを見たかったので満足。
 ノーザンライツフェスティバルはほんと他で見られない映画があって、ステキです。そしてやっぱり、寒いよー。さすが北欧。映画の中と、見終わってからも、感じる北欧。ま、もちろん全然違う寒さなんだろうけど。
 久しぶりに渋谷で散歩したりもして、いい一日でした。

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