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『孤影』 (江田浩司/ながらみ書房)

『孤影』 (江田浩司/ながらみ書房)


2018年6月20日刊。

 2005年から2016年の期間の作品から329首を収めた、編年体を基本とした歌集。8番目の創作集、とのことで、第8歌集というわけではないってことかな? 詩とかいろいろもあったりするから? あまりわかりませんが。

 基本的に編年体、ということで、歌で、すんなり歌集として読み易くてとてもよかったです。歌を作ることを思っている歌がたくさんあるなという印象が残る。日々の中で、本当にすごくいつも歌の事、詩歌のことを考えてらっしゃるのだろうなあ。
 言葉というか、単語が硬いなあという印象も、なんとなく残る。死、という言葉も。
 『孤影』というタイトルが象徴する感触かなあ。重なるグレイの色の中に白く、かっちり、小さめの字で記されたタイトル。著者名。こういう気配を持つ歌集なんだなというの、なんとなく納得しました。私に読めてるかどうかわかんないしわかったとは言えないと思うけれど。


 いくつか、好きな歌。


  いくへにも死んだわたしが折りかさなり夕陽にそまる風を見てゐた (p19)

 死んだ私が死んで折り重なっている私を見ているような、万華鏡を覗き込むようなくらくらする感覚に陥った。風も死んだ私も見えないものだけれどその空虚を見ている寂寥感がうつくしい。


  月のおと聴く耳をもつ獣らがたづねてきたり夜明けの夢に (p43)(ルビ「獣:けもの」)

 月の音ってどんな音だろう。それがきこえる耳をもつ獣だけがきくことができる音なのか。とても幻想的で素敵なイメージで好き。「夢に」ってしちゃうのは私の好みとしてはなしだなーと思うけどまあ、な。


  君の傍にいつもしづかに踞る小さな影のやうにわたしは (p74)(ルビ「傍:そば」、「踞:うづくま」)

 この「君」は妻なわけですよね。ほんとうに仲良しご夫婦で素晴らしい。君のそばでうずくまるっている小さな影であるわたし、という控え目な、けれどいつもずっと、という愛ある思いでステキです。さらりとした静かなきれいな一首になっててすごくいいなと思った。


  日常に釣瓶をおろす営みのいやな感じはどこにでもある (p96)(ルビ「釣瓶:つるべ」)

 日常の中のいやな感じっていうのはあって、それを釣瓶をおろす と表現しているのが面白かった。


  わが内に潮のたまるところありことばの光りとどくときある (p130)(ルビ「潮:うしほ」)

 自分の中に満ちてくる潮があること、そこにことばの光りがとどくということ。それはいつもじゃなくて時々なんだなあという感じ。そんな風に歌が、詩が、この作者にはうまれてきているのかというのが伝わってきて、いいなと思った。そんな風にできた詩歌はとてもよいものなんだろうなあ。
 堪能させてもらいました。


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