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『トム・ハザードの止まらない時間』(マット・ヘイグ/早川書房)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『トム・ハザードの止まらない時間』(マット・ヘイグ/早川書房)


ポケットブック判、SFシリーズ。これSFなのかあ。

 トム・ハザードが生まれたのは今から四百年以上前、1581年3月3日。フランス生まれ。エチエンヌという名前だった。故郷を離れ、イギリスで隠れ住むようになった。トムというのはその時つけた名前。
 遅老症(アナジェリア)という病気みたいなもの、が、体質で、トムのような人間はそこそこいる。不老不死なわけではない。トムは今、外見上は40歳くらい。8年ごとに引っ越しをし、別の暮らしを始める。組織、ヘンドリックというとてつもなく長命なリーダーが彼らを守る組織を作っていて、その保護を受ける代わりに時々組織のための仕事をする。自分たちのことをアルバトロス(長命と考えられているペリカンのこと)呼び、普通の人間のことをカゲロウと呼ぶ。
 トムはロンドンに戻って歴史教師になり、誰とも深い付き合いをしないよう慎重に暮らそうとしていた。頭痛に悩まされ、行方不明の自分と同じ症状を持っているはずの娘のことを思いながら。しかし、同じ学校のフランス語の教師、カミーユに心惹かれてしまう。


 そんなこんなで、超人的に、ただただ長生きしていて憂鬱を抱えた一人の男の物語という感じ。母が魔女扱いされて目の前で殺される、僕のせいで、とか、心から愛したローズと娘と、流れる時間が違うせいで別れなくてはならない、とか。勿論とてもドラマチックではあるものの、全体の印象としてはとても抑えた静かさの中で語られていて淡々と読んだ。もう四百年を超えて生きていて、感情を排するように生きていて、という感じかなと納得する。

 時系列は短く入れ替わる。現在、ロンドンの暮らしの中で、過去がさまざ差に思い出される、蘇る。最初の頃は誰? 何? と思うけど読み進めるうちにすっかりトムと同調する気がして、しみじみはるばるとした気分になりました。
 シェイクスピアも登場するよ。彼の劇団でしばらくリュート奏者として雇われ助けられる。
 別の時にはフィッツジェラルドに会ったり。クック船長に雇われたり? そんな有名人にちょいちょい会うわけ~? と笑っちゃうけど、まあ、楽しい。
 トムはリュートを奏で、ピアノを弾いて、と、音楽を友としている感じ、救いになっていいなあ。現代では、保護施設から犬をひきとって、エイブラハムと名づけて友としてるの、いい。
 
 普通の人間はトムよりはるかに早く死ぬから。恋をしてはいけない。けれど、数百年ぶりに恋をしてしまって、いけないと思いながらも秘密を話してしまって。危険を招きそうになる。守ってくれていると思っていた組織、ヘンドリックが、信じられるものではないとわかってしまう。サーフィンやってるオマイに会って、自然に触れて、ありのままに生きる、というような、こう、言ってしまえばシンプルで陳腐なことが、いい、ってなるの。
 探していた娘、マリオンとの再会。マリオンは組織に、トムが娘を殺そうとしていると嘘を吹きこまれてた。けど、これもわりとすんなり、話せばわかるってなって、ふむふむなるほど、長老たちの理性ってなんとなく納得した。大仰にならないのがよかったなあ。

 カミーユと無事仲直りして、カミーユは妊娠してる。その子は普通の人間になるのか、長命になってしまうのか、わからない。それでも、不安より希望を抱いているトムたちが、よかったなあ。トムたちを狙う敵対秘密組織みたいなのってヘンドリックの妄想なのかな? 今でももし、そういう人が公に発見されたら、人体実験される、ってことはないかなあ。魔女狩りの時代とは違うのだ、と。でもほんとかな。違うのだと信じていいのかなあ。わからない……。かつての魔女狩りとは違う意味で血祭りにされそうな気もするし、けど、ちゃんと理性理解あるはずだ、と、思いたいけど。どうなんだろうね。

 ベネディクト・カンバーバッチが映画化の可能性、みたいに謝辞で書いてあった。映画化、決まってるのか? どうなんだろう。確かにベネたんすごく似合いそうだし映画化なったらぜひ見たい。いつになるのかなあ。

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