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『天国でまた会おう』上下(ピエール・ルメートル/ハヤカワ文庫)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『天国でまた会おう』上下(ピエール・ルメートル/ハヤカワ文庫)


 1918年、11月。もうじき終戦になるという噂の駆け巡る最前線。兵士たちの戦意は落ちていたが、アンリ・ドルネー=プラデル中尉はもう少し昇進したかった。偵察に出した二人の兵士がドイツ軍に撃ち殺されたのをきっかけに、部隊は突撃した。
 アルベール・マイヤールは共に前進しながら、倒れている、最初に撃たれた偵察の兵士の死体を見つける。撃たれていたのは、後ろから。その意味に気づいてしまったことをプラデルに見つかる。その時、爆撃に吹きあがった土砂にアルベールは生き埋めにされてしまった。
 エドゥアール・ペリクールは金持ちの息子で絵の才能にもつきにも恵まれた男だった。突撃のさなか、不自然に立ち止まるプラデル中尉に気づき、その足元に注意を向けた。自分も足を怪我している。撤退するべきだったが、気になってその場所を掘り返してみた。そして、生き埋めのアルベールを見つけて助け出す。だがその時、砲弾の欠片が、エドゥアールの顔半分をえぐった。

 と、こんなどろどろの戦場の場面から始まる。これは、歴史小説? 冒険小説? 詐欺師小説、かなあ。戦場で酷い目にあって、虐げられ生き残った兵士が企む詐欺事件。わかりやすい悪役としてはプラデル。顔に穴があいて、モルヒネ中毒になってしまったエドゥアールと、彼に命を助けられ、プラデルから逃げたいアルベールとが織りなす物語。

 戦争記念碑詐欺はフィクションのようだけど、プラデルがやらかした、戦地で仮に埋葬された兵士を掘り出してきちんと葬る、という事業で差額を儲けようとする事件は史実で似た物があるらしい。第一次世界大戦直後の混乱や暮らしという歴史背景と、エドゥアールの苦悩、奇抜な思いつき、華麗な仮面、そして翻弄される生真面目なアルベールという人物たちの魅力、すごく面白かった。

 上巻の間は、かなり辛い。酷いグロテスクさとか悪臭とかが厳しく生々しく感じられて、うまいことやってるプラデルがますます憎らしくて。でも後半になって詐欺計画が動き出し、エドゥアールの父の改心とか、しょぼい役人メルランが思いがけない硬派でプラデルが追いつめられていったりするのとか、俄然面白くなる。
 終りのほうには、ああああ~~~このまま二人は逃げ切れるの? どうなの? 間にあう??? 逃げて~早く逃げて~~、と、ドキドキが高まっていったん本を閉じてしまう。緊張感がすごい。面白かった。

 エドゥアールの天才肌な感じ、もう生きてられない感じは、終わってみればもう、逃げるつもりはなくて、麻薬なしではいられなくて、アルベールに面倒をかけ続けるつもりもなくて、かなあと思う。死ぬ気で車の前に飛び出したのだろうし、それがたまたま父の車だったことは、ドラマチック。というかそうだこれ小説だし、と思う。
 戦争で死ぬのも悲惨。生き残るのも悲惨。まして酷い怪我を負い、それでも生きるって。
 それでも、二人で、まあポリーヌも参加してでもいいけど、三人で、逃げ延びて欲しかったしエドゥアールの幸せがあればよかったのに。泣いてしまった。
 エドゥアールがゲイであるのも、ね。そのことがどうこうって書かれてたわけじゃないのだけれども、その時代、生きづらさみたいなのことの重荷の一つではあったろうし。
 
 詐欺の企みとしての鮮やかさみたいな痛快さはある。けど、騙すのはやはり戦争で大事な人を失った人からなのか、という気持ちにもなる。エドゥアールは戦争を引き起こした国家を騙してやる、って感じなんだけど。税金も国民からだものなー。けどなー。

 映画化されて、日本公開も来年3月に決まってるみたい。映画の予告を見て、仮面姿の数々に惹かれて読んでみた。すっごくそそられる予告。読んでみて、あ~これ映像映えしそう~と納得。ルメートル、この前『その女アレックス』とかのカミーユ警部のシリーズ読んで面白かったし。
 今作も面白かった。本国では2013年刊行、私が読んだ文庫本は2015年刊行。これも三部作構想? 続編『炎の色』がもう出てる。と、読み終わってから認識した。三部目はまだらしい。
 今作はお話としては終わってる。エピローグでは父ペリクール氏もなくなり、メルランは引退後墓地の管理人になりました、という感じ。エドゥアールの姉、マドレーヌが次の話の主役になるらしい? プラデルとの子どもとかのことなのかなあ。読むか。
 三部作書くのが好きな作家さんなのでしょうか。時代が展開していくみたいなので、読むの楽しみだな。

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