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『夜明けのロボット』上下(アイザック・アシモフ/ハヤカワ文庫)

*ネタバレします。


『夜明けのロボット』上下(アイザック・アシモフ/ハヤカワ文庫)


 ベイリのシリーズ三作目。
 イライジャ・ベイリはシティの「外」へ出るという試みを息子や幾人かの仲間と行うようになっている。そこへ、突然の呼び出し。惑星オーロラでロボットが殺されるという事件が起きた。その捜査に、ベイリが呼ばれたのだ。

 てことで実際作品が書かれたのは前作から26年くらい経って1983年だそうですが、作中の時間は前作から二年後かな。ベイリは45歳ってなってたと思う。
 つくづく、スペーサーの世界には警察がいないのかいらないのか、なんでやねんとは思いつつ、ベイリがファストルフ博士と関わりがあり、オーロラでの事件が変化のきっかけとなり、ベイリも宇宙へ飛び出したい、人類は宇宙へゆくべきだ、という志があり、と、いろいろな要素がそれなりにちゃんとうまく働き合って話が成立してて、上手いなあというか面白いというか。シリーズとしてあるんだなあ。
 この前に、短編があるみたい。「ミラー・イメージ」か。最初の方で、ベイリとダニールが再会して、この前ちょっとした事件があったみたいなこといってたのはその短編かな。探してみよう。

 で、オーロラでのファストルフ博士の権力争いからのなんだかんだに係ることになるベイリくん。タイヘンね。そしてオーロラにはヴァジリアがいる。『はだかの太陽』の時、ソラリアから移住した彼女との出来事は、なんか、ハイパーウェブのドラマとやらで全宇宙が知ってるらしい。
 こういう、ハイパーウェブでのドラマみたいなのも、今読むと単純にテレビじゃなくてネット配信みたいなイメージがくるので、すごくなるほどね~という気がする。ネット配信は国があんまり関係なくなる感じ。

 ベイリくんはやはり全然未知の国で、文化の中で、屋外恐怖みたいなのとも戦って、何もかも不利な状況の中、関係者に話を聞く、そして推理、っていうアクティブな安楽椅子探偵みたいなことであぶなっかしくもなんとか事件の説明をつけ、ファストルフ博士に罪はないという結論をつける。

 最初読み始めた時には、ああ~またもう~ダニールとベイリの愛~~ってもえたけど、ちょっと途中で止まってしまった。でも下巻にとりかかると大きな展開もあって一気読み。ファストルフ博士に次ぐロボット工学博士、アマディロが、ヒューマンタイプのロボットが欲しくて、ベイリやダニールに害をなそうとするとか、おお~ほんとの事件っぽい、ってなった。
 大体スペーサーの世界って長命で高度な文明の中にあって、ロボット使役しまくってて、人間が会う事自体少ない、争うとかありえない、みたいな感じで、ベイリくんがちょっと尋問というか質問して回るだけでみんな動揺しちゃって、ベイリくんは結局特になんの証拠をつかむでもないのに、それぞれとの会話からほころびを見つけて、論破、みたいな感じなんだよね。コロンボ的、かなあ。
 証拠とかあんま問題にされないんだあ、って思う。科捜研みたいな世界じゃないのね。高度に文明発達してれば科学捜査とかすごいことになりそうなのに、警察そのものがないみたいな世界となると、もうそういうことはしないのか。古風な探偵ものっぽい。
 ミステリってわけじゃないのか。SFってことか。ん~。まあジャンルとかは気にしないかな。

 一旦、アマディロの強引なジャンダーへの干渉が彼の機能を壊す確率を高めたのだ、みたいなことで決着としたけれども、終りには、性能が劣るタイプのロボットと思われていたジスカルドが、本当の犯人ともいうべきロボットだった、と。
 読心術とか人間の心にちょっとした暗示を送ることができるとか、超能力持ったロボット、というの、不思議だし面白かった。ちょっと神に近い。ジャンダーを機能停止へ追い込んだのも、ベイリが呼ばれるように仕組んだのもジズカルド。ジャンダーを殺したのはアマディロがジャンダーを利用しようとしていたので止めなくては、ということけど、そこから計算して地球人というものを調べてみたかった、ってさー。

 そして、ファウンデーションシリーズというのに繋がるとかなんとか。そっち、知らないので、いつか、いずれ、読む、かなあ。んん~~。まあ。ぼちぼち。
 今作から作中時間で200年後とかいう、『ロボットと帝国』は読むつもり。壮大だなあ。

 今作ではダニールとベイリの愛がますます深い絆となっていてもえころげました……。美しい……。ヴァジリアとか妻とかの関係よりうつくしく描かれていると思うなあ。特に、ロボットであるところのダニールに、ベイリへの感情があるかのように、けれども、そうはいってもベイリの思い込みだろうが、みたいなことがあるんだけど、でもやっぱり、ダニールのベイリへの言葉には感情があるかのよう。いいねえ。好き。


 「 ベイリは顔があからむのを感じた。「きみは腹をたてないのか、ぼくのために命をなげださねばならないような情況におかれていることに?」
「そうプログラムされていますから、パートナー・イライジャ」声がやさしくなったように思われた、「しかしどういうわけか、たとえそうプログラムされていないとしても、あなたを救うためにわたしの存在の消滅をもたらすことは、はなはだ軽微なことのように思われます」
 ベイリは思わず手を伸ばし、ダニールの手をかたく握りしめた。「ありがとう、パートナー・ダニール、だがどうかそんなことにならないように頼むよ。きみを失いたくない。ぼくの命は、そうまでして守ってもらうには価しないような気がする」
 自分が本気でそう言っているのに気づいてベイリは愕然とした。ロボットのために自分の命を危険にさらすこともいとわない自分にかすかな恐怖を感じた。――いや、ロボットのためじゃない。ダニールのためなのだ。」 (p92)


 この言葉どおり、終盤、アマディロの追手からダニールを逃がそうと、ベイリは自分を残して逃げろとダニールたちに命令する。嵐の中に取り残されるというベイリにとっての恐怖以上に、ダニールを守らなくては、というの~いい~。
 次作ではベイリが死んだあと、で。ダニールがなんていってるのか楽しみだ。

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