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『はだかの太陽』(新訳版/アイザック・アシモフ/ハヤカワ文庫)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『はだかの太陽』(新訳版/アイザック・アシモフ/ハヤカワ文庫)


2015年刊の新訳版だそうで、前に『鋼鉄都市』読んだ時よりは随分読みやすく感じた。本国で出たのは1957年。で、この続編が1983年『夜明けのロボット』として出ているらしい。その間26年? タイヘンだ。そしてさらに『ロボットと帝国』というのもあるらしい。ええ~と~。まあ、一応、シリーズとのことで、読む。読むよ順次。

 イライジャ・ベイリは司法次官に呼ばれて、飛行機に乗るという恐怖に耐えてワシントンへ出かけていった。そこで与えられた任務は、宇宙国家ソラリアでの殺人事件の捜査。別の星へ行けという指令に逆らう事は出来なかった。

 というわけで、ベイリは宇宙旅行へ。都市が丸ごとドームで覆われた世界に暮らしているこの作中での地球人はとにかく広い場所、囲いのない場所が苦手。そして宇宙国家からは地球人というのは宇宙の片隅の星の引き籠り、後進国で劣った存在とみなされている。
 ソラリアへ到着すると、そこにいたのはかつて一緒に捜査を担当した、オーロラのロボット、ダニール・オリヴォーだった。ダニールはロボットであることを隠し、人間として共に捜査にあたるという。
 慣れない環境、直接人が接近接触することのないソラリアの社会に悩まされながら、ライジはなんとか主導権をとって殺人事件の捜査を進める。

 ベイリはこの作中で43歳らしい。いい年した立派な大人なのに、ダニールにめちゃめちゃ過保護に守られてるのがすごい可愛い~。
 ロボットは人間を守らなくてはならない。
 ロボット三原則。
 ソラリアは、人口二万人、と、星ひとつに対してあまりに少ない人間しかいない。一人一人が広大な領地に棲み、そしてあらゆる仕事、実務はロボットがこなしている。人間同士は映像対面しかしない。夫婦は遺伝上問題ない組み合わせで割り当てで決まり、夫婦でなら直接会う機会も少しは持つ。子どもは妊娠一ヵ月でとりだされてファームで集中管理で育てられる。ケアする、責任者こそ人間だけれどもそこでもほぼ全てはロボットが仕事をする。
 とにかく人との接触は忌み嫌われ、親子関係ももたない。広大な星、広大な領地に人間は一人だけ、というのが当たり前の社会。ロボット産業の大国として地位を得ている星。
 そんな場所で起きた殺人事件。
 直接接近する機会があるとすれば妻だけ。ロボットは人間を傷つけることはできない。
 だが、本当に?

 そんなこんなで、ベイリが慣れない星で戸惑いながらも、自分のペースに持ち込んで推理していくのを見守るダニールがまたくそ真面目で可愛いな~。
 ソラリアの社会は他の星でも辿る未来なのではないか、とか、ロボットが本当に完全に人間に危害与えることはないのか、とか、いろいろと示唆に富んでいて面白い。うまく命令を使いわけてこなせば、ロボットにも殺人はできる、とか。
 
 結局、実際に手を下した犯人としては、妻、グレディアってことだよねえ。逆上し何も覚えていないの、っていってたけど。でもそうなるようにロボットの手、腕? が外れるようなタイプのものを送り込んでいてグレディアがその腕を使って殴るように仕向けたのは、デルマー博士と仕事をしていたロボット工学博士のリービック。恋愛とかの概念がなさそうなソラリアで、でも結局恋めいたものの嫉妬が動機の一つになりうる。
 ロボットを使っての他国への攻撃みたいな計画もあり。そういう、ロボットが人間を殺せるようになるのか、できるのか、というのはなかなか。その後には殺人ロボットつーかアンドロイドっつーか、SFでばんばん出てきてるよねえ。ターミネーターとか。アシモフの世界ではどうなってくの。

 ダニールがロボットであるといことをソラリアでは隠している。でもそのことがリービックの自殺まで引き起こしてしまう。ダニールの存在も難しいものだなあ。目の前で人間が死に、それを止められなかった、ということは、あのあとダニール大丈夫だったのか……。死体を抱くダニールのシーンとても美しかった。
 続編ではベイリはオーロラへ行くことになるようだから、その辺も描かれたりするんだろうか。ダニールが心配だよ。


 「ベイリは息を呑んだ。もしダニールが、リービックを殺したのは、人間そっくりの自分の姿形だと気づいたら、第一条に縛られた彼の頭脳は強烈なダメージを受けるかもしれない。
 だが、ダニールは、膝をつき、その繊細な指でリービックのあちこちに触れただけだった。そして、自分にとってとても大切なものだとでもいうように、リービックの頭をもちあげ、それをそっと抱きかかえ、やさしく愛撫した。
 彼の端正な顔がほかのひとたちを凝視し、彼は小声で言った。「人間が死にました!」」(p388)


 それとベイリが思いがけずダニールと再会したシーンもすっごくよくってもえころげた……。


 「「きみを忘れるなんてことがあるものか、ダニール」
「それはうれしいことです」ダニールは言って、重々しくうなずいた。「あなたもご承知のことですが、わたしは、正常に作動しているあいだは、あなたを忘れることはまったく不可能なのです。あなたにまたお会いできてよかった」
 ダニールはベイリの手をとり、それをひんやりした自分の手で握った。相手の指は、心地よい、決して痛くはない握力をくわえ、そしてはなした。
 この創造物の判読しがたい目が、ベイリの心を貫き、ベイリの全身がほとんど愛にも等しい熱烈な友情に浸りきったこの狂おしい瞬間、いまだ醒めやらぬその瞬間を見透かされないようにと、ベイリはひたすら祈った。
 けっきょく、ひとは、このダニール・オリヴォー友人として愛することはできないのだ。人間ではない、ロボットにすぎないものを。」(p51)


 ベイリってばさー。ダニールを友達として思いたいのにロボットだから嫌だみたいな葛藤抱えまくってるの可愛い。ダニールに過保護に守られるのに反抗したりするのも可愛いんだよ……。ほんといいキャラ。続き読むのが楽しみだ。


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