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『悲しみのイレーヌ』(ピエール・ルメートル/文春文庫)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『悲しみのイレーヌ』(ピエール・ルメートル/文春文庫)


 なんだか評判よくて名前は見たことあるって思うルメートル。初読み。この作品がデビュー作で、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズって3作出てるみたい。でも翻訳では『その女アレックス』というのが先に出たみたい。んん? ともあれ、まずはこれを読んでみようかなと、手に取りました。


 カミーユ・ヴェルーヴァン警部。パリ警視庁にオフィス、自分のチームを持つ警部。40代なのかな。愛する妻、イレーヌは妊娠中。
 ある朝、ルイという部下から電話が入る。優秀な部下。だがその彼がこんなのは見たことがない、と、いう残酷な事件が起きる。若い女性二人が殺され、死体はバラバラ、血みどろの現場には不可解なことばかりだった。

 そんなこんなで、事件は連続猟奇殺人だとわかり、警察が捜査を進め。という王道なミステリ。
 カミーユは、母が画家、その母の妊娠中の煙草の不摂生の影響で、身長が145センチほどしかない、ちょっと特徴的な外見ながら、優秀な成果をあげてチームを指揮している。
 ルイは、由緒ある資産家の出で、ブロンドでエレガントでスリムでデリケート。自分の産まれに甘んじるよりは「つらい仕事」をするべきなのではとある時思い立って警官になった、というキャラ。驕らず、忍耐強く、優秀。カミーユの部下の中で一番に信頼されている。
 これは惚れる~。こんなハンサムキャラがいるとは。ってことで、ルイくんに注目~なんて甘い気分で読み始めたのだけれども。

 タイトルが『悲しみのイレーヌ』なわけで。カミーユ警部の妻が、愛する妻が、イレーヌで。妊娠している。と、くると、もう序盤からこれは、悲しいことになるってことは……と思いつつ読むことになるわけで。このタイトルでいいのかよ……。辛かった……。まあ、イレーヌとの結婚をいかに大事に思ってるかとか、イレーヌがどんなに美しく素晴らしい女性かとか、描写される旅に、でもでも彼女はどうなってしまうのか……と怯える。そして、終盤には怒涛の勢いで、イレーヌが犯人に攫われ、となって。ああああ……。

 そして、第一部、第二部という構成なんだけど、やたら第一部の方が長いんだなあと思ってると、実は、この第一部って、犯人が書いた手記というか小説で、過去のミステリ作になぞられて殺人事件を起こし、それはでも実は自分の小説として描き出す事件で、そして最後に自分の小説になぞらえてイレーヌを殺す、という、そういう仕掛けだったのかと、わかる。

 あんまりじゃないか。と、茫然とした。
 イレーヌがやっぱりそんな目に、という残酷さと、今まで私が読んできたものは何だったんだ、という手酷い裏切り。愚弄された気分。これまでのカミーユや、部下たちや、事件、人物描写、それって犯人の、ゲスい新聞記者の、小説を、今まで私は読んできたのかよ。
 じゃあ本当のカミーユは? 本当のルイは? いや、本当って。何が。何が。何が。
 そんなこんなのショックがたまんなかった。こんな風に騙されるなんて。めちゃめちゃ面白かった……。凄い。

 で、これ、シリーズってことで。この、こんな、事件のあとに、カミーユはどうなってんだよ。どう描かれていくんだろう、この次には??? ってすっごい気になる。読みたい。すぐ読みたい。
 でもこれ、本国では2006年刊、そして次作は2011年に出てるみたい。5年も間があいてたのかあ。まあでも、これここで終りってことでもいいというか、すごいこの、突き放された感が物凄くたまらないわけで、これ読んだあと5年後に、続きというか、シリーズとなって出た衝撃みたいなのも思って、いやあ。面白かっただろうなあ。今、その気になれば一気読み出来るっていうしあわせもあるけれど。

 この文庫は2015年刊行。二作目の方が先に翻訳出たんだね。そしてすごく面白いって賞というかベストにやたら選ばれてたのは知ってる。読むの楽しみ。どーなってるんだろうカミーユ警部……。


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