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『その女アレックス』(ピエール・ルメートル/文春文庫)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『その女アレックス』(ピエール・ルメートル/文春文庫)


 アレックスは魅力的な女性だ。自分でもそのことをわかっている。レストランで食事を楽しみ、思わせぶりな男の視線を交わしてその夜、少し歩いて帰ろうとしていた。そこにあった一台の車。そして、男に誘拐された。

 カミーユ・ヴェルーヴェン警部、二作目。
 日本で翻訳されたのはこっちが先ってことらしい。2014年刊。んでも二作目です。前作で愛する妻イレーヌを失って、カミーユはどうなっちゃったの。と思ってましたが、前の事件から一年ほどは心も壊れたようになっていたようですが、この作品の時点は前の事件から4年くらいすぎたあたり。警察に復帰しているものの、第一級殺人の事件はもう扱えない、という感じになっている。ルイとも離れてるのねー。
 しかし、この誘拐事件の一報が入った時に、他に人がいないんだ、という部長のル・グエンの計らいで、カミーユが担当することになる。

 三部構成。誘拐事件としてアレックスの悲惨な状況があり、警察~~早く~見つけて~~なんとかして~~というハラハラドキドキの緊迫感。でもまあそれだけだったら、他にもありそうな話だけれども、被害者であるアレックスが、単にたまたま攫われたわけではなくて、単に可哀想な被害者ではなくて、実は彼女が恨みを買うような人間だったのかも。彼女もまた連続殺人犯なのかも。ということがわかってくる。
 何故。
 で、アレックスの生い立ちがわかってきて。彼女は兄に性的虐待を受けていた。母も黙認しいてた。そんなこんなの酷い出来事がわかってきて。
 そして、誘拐犯から逃れた彼女の復讐。それを知り、過去を知り、カミーユはアレックスの最後の計略、自分を殺したのは兄だ、という計略にのって、彼をアレックス殺害の罪で逮捕する。

 何が、正義なのか。犯罪の証拠って。葬られた虐待を訴える術を持たなかった子どもだった彼女の復讐をとげさせることは。単純な司法の在り方ではなく。何を、正義として行うか。
 難しい。辛い。もちろん兄は裁かれるべきだと思う。アレックスの、その苦しみ。やり方。どうすればいい?

 カミーユの、復帰になったのはよかったなーと思うし、ケチケチしみったれアルマンがカミーユの母の絵をプレゼントするなんて、というのもすごくよかった。ルイくんは相変わらず有能でハンサム。
 カミーユが怒りっぽくて無茶をしかける、こういう感じがカミーユなのかあと思う。イレーヌ亡き哀しみから、よく復帰したなあ。それでも、忘れたわけではなくて、随所に哀しみはある。
 猫を飼っててよかった。可愛い。ドゥドゥーシュだって。男やもめに猫ちゃん。お似合いです。可愛かった。

 今作でも、一部二部三部と、どんどん凄い展開になっていって、面白かった。辛かった。衝撃でいったらやっぱ一作目読んだのには及ばないまでも、やはりすごく翻弄された気分。面白い。
 んでもこれ先だと、イレーヌのことがそうなんだってなるし、その後、一作目読む時には結末知ってしまうわけで、うーん。まあ。仕方ないか。何はともあれ読んでよかった。

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