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『傷だらけのカミーユ』(ピエール・ルメートル/文春文庫)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『傷だらけのカミーユ』(ピエール・ルメートル/文春文庫)


 カミーユ・ヴェルーヴェン警部、三部作の完結編、だそうで。そうか完結ってことなのか。この文庫、2016年刊行。

 カミーユに恋人が出来ている。アンヌ。イレーヌを失って5年。偶然の出会いから、かりそめの関係、として、アンヌと親しさを深めているカミーユ。そのアンヌが、宝石強盗犯に出くわし、巻き込まれて酷い怪我を負った。
 カミーユは、アンヌとの関係を知られてないままに、事件を自分で解決しようと奔走する。犯人は執拗にアンヌを狙っている。アンヌは単なる目撃者というだけではないのか。犯人の本当の狙いは。

 って、また、タイトルからしてカミーユが辛い目に合うんだなとしか思えないし辛い。アンヌがもしかしてまた殺される? そんなの酷過ぎるヤメテ、って思いながらドキドキと読み進めた。
 アンヌが襲われた時から、一日目、二日目、三日目という三部構成。
 これもまた、徐々に、単なる強盗ではなく。アンヌはただカミーユの恋人というだけではなく。「おれ」という犯人の一人称視点が混ざり。背後には一体何が?? と思って読んでいく。

 カミーユが余にも暴走してる。自分でなんとかしなくては、って、上司にも仲間にも嘘をついて自分の事件として抱え込む。イレーヌのことがあるから、と思って読むけど、それにしても。アンヌも狙われているというのに行動が無謀すぎるのでは。
 ってことで、実はアンヌとの関係は仕組まれたもので、事件の糸を引いていたのはマレヴァルだった。
 マレヴァル。一作目の時、新聞記者であり連続殺人犯である男に内部情報を売り渡し、それが犯人だと知らなかったとはいえ、許されることなく警察をクビになった男。
 
 この話の最初に、アルマンが癌で亡くなって葬儀に出る所だったりして、時が流れ、カミーユのチームで残るはルイばかり、という、切なさになっていたところに、黒幕がそいつなのかよーっと愕然としてしまう。
 
 三部作、とはこういうことか。カミーユの最愛の妻イレーヌ。彼女を亡くし、立ち直ろうとして、またしても裏切りにあい。カミーユは最後には辞表を書かねばな、という所で終わる。カミーユは警部として登場し、そして悲しみのまま警察官であることをやめてしまう……。アンヌも消えてしまった。
 最後にはイレーヌの事件のファイルを燃やしていたから。本当にこれで区切りをつけて、なんとか心の平安のある暮らしをしてくれるといいのに、と、願うけれども。救いではないんじゃないのか。マレヴァルという、イレーヌの事件の最後の関係者を逮捕しけりをつけたとはいえ。辛い……。ルイくんともっとよくお喋りとかして、心の友になればいいのに~。そういうわけにもいかないのか……。カミーユが警察を去ったあとのルイくんもとてつもなく辛いのではないか。ルイくんはスマートで何でもできるから大丈夫な風にちゃんと仕事はしていけるだろうけどさ。

 ルイがマレヴァル逮捕に現れた時の感じ、すごくよかった。マレヴァルもハンサムで女ったらしで、ルイにたかって、でも仲良くやってた、若き日のひと時というものがあったんだよなあ。しかしマレヴァルはどうしようもないクズになり果ててしまったんだよ。最低で、悲しい。ルイは、どんな心情だったのかね。ルイの内心というのは、全然描かれないんだよなあ……。いつもスマートで、いつも完璧に優秀で。切ない。

 シリーズとしてはやっぱり一作目読んだ衝撃が凄すぎたけれども、三部作、一気読みできて幸せだった。
 この前かな、まだ中編があって、それは翻訳が出ていないみたい。でも出る予定、かな?出るよね?? 待つ~。読みたい。


 「ルイだった。懐かしいルイが真っ先に入ってきた。相変わらず完璧な身だしなみ。いったいいつまでミサの侍者をやってんだ?
 「久しぶりだな、ルイ」
 おれは平気なふりをしたかった。堂々と芝居を続けたかった。だがこんなふうにルイが登場したりしたら……。すべての過去が、おれが台無しにしたすべてのものがよみがえり、おれの心を引き裂いた。
 「やあ、ジャン=クロード」そう言ってルイが近づいてきた。
 おれはもう一度ヴェルーヴェンのほうを振り向いたが、すでに立ち去ったあとだった」
 (p371-372)

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