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『泥濘』(黒川博行/文藝春秋)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『泥濘』(黒川博行/文藝春秋)


疫病神シリーズ、第7弾、らしい。「ぬかるみ」ね。
たぶん全部読んできてる。けどまあこのシリーズは大体一応の決着はつくので大丈夫と思う。

 建築コンサルタントの二宮企画で、だがほとんど仕事もなくオカメインコのマキちゃんとぼんやりしている二宮の所へ、桑原がやってきた。以前、二宮がサバキを頼んだことがある伝手で、白姚会に案内を頼むという。
 歯医者の診療報酬詐欺、不正受給の新聞記事。老人ホーム。桑原がシノギのネタを嗅ぎつけた所に二宮はまた巻き込まれていく。関わりがあるのはヤクザだけじゃない、警察OBやオレオレ詐欺等、事態はどんどん泥沼に。

 てことで、最初はただ紹介する案内するだけだった白姚会と、桑原はいきなりガツンとやり合い始め二宮くんはとばっちりで怪我、ふらふら。それでも成り行き上、桑原のあがりの一割をもらう、と、とことん付き合う羽目に。
 ってもー、またもう、だから桑原と付き合うのはやめておけと、みんなに散々言われてるのにやっぱりついていっちゃう。桑原さんも、嶋田さんまで担ぎ出して手打ちにするはずが、どんどんイケイケでしつこい。こんとこのコンビの腐れ縁の突っ走りっぷり最高!
 二宮くんと桑原さんさあ、すごい嫌い嫌い言いながら大好きなんだろ、という、この、これ、この感じはどこまで作者の思惑なのかどうか、わかんない。すごいよなあ。キャラの魅力が完全に出来上がってて、この二人の掛け合いってもう作者もなんも考えなくても二人が勝手に喋り出す、みたいな所なんじゃないのかなあ。ほんと二人見てると飽きない。二人だけじゃなくてレギュラーキャラたちもね。中川とか嶋田さんとかユキとかももうそれぞれキャラが勝手に喋ってるんじゃないかって思う。
 あちこち美味しいもの食べに行くのも相変わらずで。これホントにあるお店たちなんだろうか。グルメ案内~。こんなにあちこちでガンガンぶつかって怪我もしまくりなのによく食べるしどんどん動く。すごい面白い。

 表紙ひらいた内側の所に、桑原が心肺停止、ってな文字があっていきなりびっくりしながら読んだ。もしかしてほんとに? シリーズ終りにしようとしてる?? とドキドキしながら読みました。実施桑原さんがどんどん行くので、これ、殺されるやろ……と思うには十分。終りのほうで跳ねっ帰りに勢いで撃たれてしまった。
 危ないところだったけれどもなんとか、一命はとりとめたようでよかった。二宮くんとはまたしばらく会わないみたいだけれども。シリーズは続くのか、どうなるんだろう。
 
 桑原に付き合って、金の収支損得勘定しまくってる二宮くん。なんだかんだボロボロになっちゃうのに呼ばれてついていっちゃう二宮くん。カタギだけれどもヤクザにどうにも惚れちゃってる二宮くん。この、自分はまともなつもりなのに破滅的な感じが桑原さんと相性ええんやろなあ。すごいそそる。二宮くんに最低最悪大嫌い疫病神扱いの、あとは行動と会話のみの、文字の中だけの人物なのに桑原さんにめっちゃめちゃ凄まじい色気感じる。

 この話どこまで広がるんや。桑原さんどこまでいくんやー。と思ってたけどさすがで、これも一応話は一段落ついた。広げた風呂敷強引にでも畳んで見せるのほんと上手い。さすがベテラン。面白かった。桑原さん元気になってね。また続き出るといいなあ。

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