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映画 「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」

*ネタバレ、結末まで触れています。


映画 「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」


 11日(水)見に行きました。原題「Battle of the Sexes(性差を超えた戦い)」だそうで。セクシ~じゃないよ。性差の問題。

 1973年に、実際行われたテニスの試合なんですね。知らなかった。
 女子テニスのトップ、ビリー・ジーン・キング。彼女は男子に比べて女子の賞金が少なすぎることに抗議して、女子テニス協会を立ち上げる。なんとかスポンサーを見つけ、ツアーを行い、女子プロの地位向上を目指す。

 という、プロテニスのお話であり。ウーマンリブのお話であり恋のお話であり、それぞれみんな、ひとりひとりの人生。でも軽やかで面白かった~。
 
 ビリー・ジーンに勝負を挑むのは、かつての名プレーヤー、ボビー・リッグス。テニスの殿堂入りしてる、でも今はギャンブル依存でカウンセリングにかかり、妻に愛想をつかされそうな55歳の冴えないおっさん。
 ボビーは、お騒がせ男としてマスコミに登場しては人気者みたい。というか、ビリー・ジーンのこととかボビーのこととか、この試合のこととか、有名でみんなわかってることなのかな。あんまり説明するつくりではなかった。でもちゃんと、なんかこういう人、なんかこの、こういう人生なんだろうなあというのはすごく伝わってくる。
 ボビーは、女子テニスや女の権利とかをバカにした言説で煽りまくって、試合をしようとする。最初はそんな見世物みたいな試合に応じないビリー・ジーンだけれども、恋のことで調子崩しちゃって決戦に負けて。で、女子トップのマーガレットとボビーが試合をしたら、ボビーが圧勝。
 女子は女子の中でならいいけど、所詮男にはかなわない、という風に兆発されまくる。

 ボビーもヒドイやつなんだけど、憎み切れない感じはあるんだよねえ。ギャンブル依存から抜け出せない。注目されたいし勝ちたい。自分はたいしたやつだと思われたいし自分でも思いたい。そういうおっさんの悲哀みたいなのも感じるし。悪人ではないよな、という感じ。息子の父であるし。前妻との息子なのかな? ラリーと一緒にテニスやるぞ!とか、まだ小さい息子とは本気で遊ぶ。でも金持ちの妻に頭があがらず、冴えない毎日が辛い、という感じ。人気も実力もあるビリー・ジーンと男女テニス対決を思いついて、また注目を浴びたくて、ってことなんだろうなあと思う。

 ビリー・ジーンはボビーと対決することになるけど、本当に厄介なのはジャック。ジャック、は、テニス協会のお偉いさん。上品そうな紳士然としてて、でも女性の権利だとか首長に耳を貸す気は一切ない。32年間夫婦円満だよ、というけれど、寝室と台所にいる女が好きなだけ、という、ナチュラルに無自覚に当然のこととして女を同じ人間とは思いもしないで見下している権力者、なんだよねえ。そしてこういう男は今も当たり前のようにいる。
 もう40年?50年前の出来事の話なのに、今も解決にはいたっていない問題。

 ビリー・ジーンは、勝負を受ける時、どっちが上という問題じゃない、ただ同じように敬意を払ってほしいだけ、という。
 本当に、だって、男子の試合も女子の試合もチケットのセールスは変わりない、ならば受け取る賞金額も同じにしよう、って、その考えの何が悪いってゆーんだか。

 ビリー・ジーンは結婚してて、その夫がパッと見はただ見た目がその当時のマッチョイケメン風ってだけの男かと思ったら、実はちゃんと有能でしかも本当に優しさのある夫だった、という感じなのね。テニスにかけてる彼女を支えるいい人だった。
 ビリー・ジーンが美容師のマリリンと恋におちて、という時にも、彼女の本命はテニスだから、僕たちはライバルってわけじゃないといったりする。ちょっと悲しそうで。いい人だな……。

 マリリンと出会って、ああ好きになってしまった、という感じはとっても初々しくて可愛かった~。エマ・ストーンだもの。眼鏡を外したらなんて綺麗な目、と見とれるしかない。自由にふるまって人生切り開いていくような彼女でも、同性愛のタブーにはまだ抵抗できない、という時代も切なかった。

 プロなんだよねえ。テレビや写真に写る時にはしっかり笑顔を作るんだよ。プロスポーツの世界、というのも垣間見えて面白かった。
 女子テニス協会作る、っていうの時に啖呵切った時にはノープランだったけど、ちゃんとスポンサー見つけてきたりで成立させたあのー、お友達?仲間?の彼女すごいやり手なのでは。そしてそのスポンサーがフィリップモリスだっけ。みんな~うつる時には煙草吸って~吸って~って感じなのも、ああ時代が違う、という感じ。面白い。

 テニスウェアのデザインをして、テニスウェアに色をもたらした彼とか。アラン・カミングが実にチャーミングな味方だった。ゲイなのね~。テニスウェアが白だけ、という時代だったみたいなんだけども、この時から変わったってことみたい。今、ウィンブルドンだけはウェアは白ってまだ厳格に決まってるみたいだけど。オシャレカラフルなウェアでみんなが楽しめばいいじゃない、って感じ、いいじゃないの。

 多分世界は、少しずつ、良くなってきている。きていると、思う。願う。でも、まだまだ変わってないことも多い。まだまだ、絶望。でも、希望。ちゃんと立ち上がって戦った人がいること。
 
 最後の試合シーンはかっこよかったし感動した。最初、ろくに練習もせず、栄養剤だかなんだか飲みまくりで、ふざけた調子でスポンサーのご機嫌うかがいのボビーが、だんだんまともな試合をしようとしてきた。馬鹿にしようとしてた女子の実力が思っていたよりずっと凄いということ。そして互いに本気で試合したこと。
 それでもあんなぼさっとした感じでいた55歳のボビーが試合したというだけでもかなり凄いねえと思うけど。
 試合後、ボビーも、勝ったビリー・ジーンも、それぞれロッカールームでひとりになる。アスリートは孤独だ、という感じがした。プロで。有名人で。戦う人。とてもよかった。
 
 見終わってちょっとぐぐってみたりした。ビリー・ジーン・キング、ほんとに凄い成績残しているし、いろんな活動をしていて素晴らしい。
 それぞれみんな、それぞれの人生。抱えているものもみんな違う。ただ、お互いに敬意を払って。本当に必要なのはそれだけのことなんだよ。男と女どっちが上か、という戦いなんか必要ない。上でも下でもない。ひとりひとり、人間。同じように敬意を払って。
 面白かった。見に行ってよかった。
 


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