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『寒い国から帰ってきたスパイ』(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『寒い国から帰ってきたスパイ』(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)


 先日、『スパイたちの遺産』を読んで、寒い国かよーって思って再読してみました。気になるもん、やっぱり。
 「訳者あとがき」によると、1963年末にロンドン、1964年にアメリカで出版、たちまち世界規模でベストセラーのトップに躍り出た、ようです。この文庫翻訳は1978年だ。
 で、ちょうど昨日、「ジャコメッティ 最後の肖像」のブルーレイ見てたら、ディエゴが読んでる本としてタイトル出てたんだよね。そうだよ映画見に行った時にも、あっ、って思ってた。1964年の頃らしいので、まさにベストセラーになってる本ってことなんだな。
 本出した三作目のこの作品で作家一本になったらしいル・カレ。本人にとっても大事な作品だったのだね。そして、この、これ、に、ある決着をつける、『スパイたちの遺産』を今書いたのか、と、感慨深い。最初世に出てから50年あまり? そんで続編というか、その後、が、新作で出るって、物凄いよなあ。


 この中にもちろんスマイリーは出てくるし、ピーター・ギラムの名前も何度が出てくる。『スパイたちの遺産』と突きあわせてって思うと、なんかちょっと違う感じかなと思うんだけど。リズにギラムさんがあらかじめ会ってたとは思えないけど。まあ、別に突きあわせて考えなくてもいいか。。。スマイリーやギラム、管理官のシーンは本当にごくわずかで、アレックス・リーマスの物語。
 リズもただ巻き込まれてしまった女。
 二重スパイを取り込むために極秘任務を追って東ドイツへ潜入、というはずが、実は二重スパイ、ムントと守るために、リーマス本人も騙した上での二重の複雑な計画が描かれていた、と。
 再読なんだけれども、ほんとうに、終盤まで何がおこなわれているのか、もやもやと疑いと不安の中にずーっと引きずり回されて、ほんっと、毎度、ル・カレの作品を読むって何が何だかわからない。そして、あ、あ、あ、……終盤になって事の真相、というか、終りが来た所で、一気に盛り上がりの頂点、で、その頂点で放り出される。登ってきた梯子がぽいっと外されて消えて、なんかもう重力も半減して、ゆっくり理解というか、結末が自分の中に沁み込んできながら落ちていく感じ。辛い……。

 アレックスを、スマイリーたちは迎えに来ていたし、脱出させる計画はあった。あと一歩でできるはずだった。けれど、リーマスはリズを見殺しにはできず、壁をこえずに戻ってしまう。組織の、国家の、捨て駒に使われたことを自覚して、それでもそういうものだと呑みこもうとしていたスパイ。でもリズにそんなのおかしい、そんなの悪い、と、責められた後に、死んだ彼女から離れられなかったスパイ。
 寒い国から、帰ってこられるはずだった。けれど、帰れなかった。帰らなかった。あの壁の上で、自国の方へ飛び降りれば、逃げられたはず。けれど、生きられないって思ったのかな。もう、生きられない、のか。スパイの心って。
 
 再読してよかった。めちゃくちゃよかった。ル・カレを追い続けてきてよかった。本当によかった。時を経るということをこんな風に噛みしめることができるなんて凄い。
 生きてるって凄い。


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