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『ファルコナー』(ジョン・チーヴァー/講談社)

*ネタバレ、結末まで触れています。

『ファルコナー』(ジョン・チーヴァー/講談社)


ファルコナーは刑務所。ファラガットは兄を殺した罪でここへ入ることになった。
妻と子どもがいる。面会に来た妻はそっけない。離婚する話にはなっているが、面会の時にはごく普通に会話をする。
ファラガットは麻薬中毒者で、メタドンを支給してもらう権利を認められているが、次第にその薬を支給されることを忘れて、中毒からは回復した。
刑務所での暮らし。作業。看守や仲間とのやりとり。恋人が出来たりもする。ファラガットは乱暴な男ではない。教養もそれなりにある。家も名門、というか、悪くない育ちをしてきて。だが家族との関係は悪く、兄は嫌なやつで、物の弾みのように殺してしまった。
年寄りの囚人が亡くなるのを看取った時、チャンスだと思ったファラガット。死体袋に自分が入り、脱獄に成功する。

「ファラガットはバスの入口へ歩いていって、つぎの停留所で降りた。バスから通りへ降り立ったとき、彼は、倒れそうな恐怖や、そのほかのそれに類する恐怖がすべて消滅していることに気がついた。彼は、頭をぐっと上げ、背すじをしゃんとのばし、すいすいと歩いていった。愉快だ、彼は思った。愉快だ。」 (p225)

これが終りの一節。愉快だ、ねえ。
アメリカの作家ですね。賞をとったりもしている、らしい。私は知らなかった。この作品が初読み。アミハマちゃんがインスタで本を読んでいる写真をあげてて、その時読んでいる本がこれなのではないか、とのことで、どんななんだろうと思って読んでみました。

私、アメリカの文学とか知らないなあ。この本の巻末の宣伝にはサリンジャーとかあって、あ~なんかそういう感じか、と思う。なんか。うまくいえないけど。アメリカの文学っていうかまあ他の国の文学も知らないけど。一応日本の文学の流れは、多少は知ってる、程度だけれども。
ともあれ、この本、本国で1977年に出た作品。読んだこの本は1979年刊。時代かなあ、「ホモ」と作中に出てきて、うっ、と思う。まあ、仕方ないか。時代。。。

刑務所の中の話だけれども、わりとなんか自由というか、自由なわけじゃないけれども、苦役についてるという感じはしない。ファラガットは周りを観察しているような、達観しているような感じがある。自分の罪に苦しむ風でもない。全部さらっと他人事みたい。恋して、その相手が脱獄しちゃって、寂しい、みたいなのも、さらっとしてる。
というか司祭にまぎれて脱獄、そしてなんとなく司祭が助けてくれるとか、そういうの何だろう。そこんとこもっと詳しく、って思ってもさらっとエピソードは終わる。

翻訳の文体の感じもあるのか。そもそもの原文の味わいがこういう加減なのか。なんかこうほどほど豊かな傍観者みたいな時代の感覚があるのか。わからないけれども。読んでて、私は何を読んでるんだ。何でこの作品は書かれたんだ。わからない……って思う。でも読み終わり、最後に「愉快だ。」って終わると、ふーむ、なんだか愉快な気がする、と思った。
やっぱり刑務所というか、どうにもならない閉塞感みたいなのがあって、そして、脱して、「愉快だ」って、ぽんっと終わってしまう、それは「愉快だ」。ほんと、読んでる最中は何だこれ……と淡々と読み進めたのに、なんか読み終わるとふいっと愉快になれるって、すごいかも。ファラガット、でもしかしどうなるんだ、どうするんだ。わからない。けど、こう終わってよかったなって思う。
面白かったとは、言えない。わかんないし。でも読んでよかったなと思う。へんなのー。

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