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映画 「BPM  ビート・パー・ミニット」

*ネタバレ、結末まで触れています。


映画 「BPM  ビート・パー・ミニット」


近くの映画館にくるのを待ってました。

1990年代始めのパリ。ACT UP パリ。エイズ活動家団体のミーティングが始まる。
大学の講義室かなあ。集まった様々な人達。ゲイ、レズビアン、いろいろ。HIV陽性、陰性に関わらず、この活動に参加するということは、世の中からは陽性とみなされる。
ミーティング、Mっていうそうだ。参加するルール、様々な活動の相談、報告。課題への行動は、反暴力、だけど血のりの袋を投げつけるなど、過激な抗議運動。
リーダーのチボー。ひときわ過激なショーン。ショーンと恋人になるナタン、あたり中心で進む。ドキュメンタリーというわけではないけれども、殊更な物語や説明はない。彼らは病気を抱え、死を目前に感じながら激しく声を上げる。生きたい!という願い。誰でも当たり前に願うであろうその、切実な叫び。

正直、活動、過激すぎなのではという気はする。製薬会社と敵対してもなあ、という気がしたけど。でも「ダラス・バイヤーズクラブ」も連想したりして。そこに薬があるなら、そこに治療の見込みがあるなら、よこせよ、情報教えろよ、って、なるよなあ。だって来年までなんて待てない。死が、あまりにも身近な彼らにとっては、今すぐに欲しいんだよねえ。
でも。
そんなやり方でいいのか?
でも、そんなやり方をしなくては声が届かないのではないか。

エイズはホモ(あえてこの言葉をここでは使う)がかかる汚らわしい病気だ、と言われてた。神の怒り。ソドム。本当はセクシャリティなんて関係なくかかる病気なのに。
偏見。無知。予防の方法があるんだからちゃんと教えて。ちゃんと知識を持って。命の危機はホモだけの問題じゃない。
血友病でかかってしまった人だけは、可哀想とか。被害者の連帯の中でも対立が煽られたりもする。
活動が過激になることに反対するものもいるし、もっと別の見方を示すものもいる。
Mのさくさくとした進行や、小さなことや時に楽しんだりもする活動を確実に積み重ねていくのも、すごい。
ビラを貼る、みたいなことから、セーヌ川を血の色に、とか。あれ、セーヌ川?だよね?あれマジ? パレードやデモは多少は知ってても、活動する人達の様子とか全然知らなかったので、映画とはいえ垣間見えたのは面白かった。

ショーンとナタンが、ちょっとしたきっかけでセックスする関係になり、段々関係が深まり恋をして。
ナタンは陰性なんだよねえ。ショーンはキラキラ過激に活動してたけど、病にむしばまれていく。どんどんやつれ、動けなくなり。あれ、俳優さん凄いなあ。げっそり痩せて、もともと印象的だった眼が、どんどん大きくなり。透き通る美しさ。儚くなっていく。
二人のセックスは結構リアル、というか、わかんないけど、演出なんかはあまりなさそうな、求めあう息遣いと暗闇での動きと。それで、またお喋りしたりして、あ~すごく覗き見てる気分!人を好きになって結ばれてって、いいよねえと溜息。
セックスするのも大事なんだよ。
生きてる。

そして、ショーンの死。痛み、苦しみをもう終わらせてくれと、ナタンに頼んだんだろう。どれほどの葛藤と話があったのかはわからない。けれど、ショーンの苦しみを終わらせたことを、ナタンは抱えていくんだなあと、とても、辛かった。

ショーンが亡くなった知らせで、仲間たちが集まって。そして遺灰を、ショーンの望みだったとはいえ、ほんとに保険会社? かなんか、きらきらしいパーティの場に乱入して遺灰投げてまき散らしていたの。ほんと、そこまでやるかなあ。でもこの映画はそうして、でも、だからって、どうこうってストーリーには導かないんだよなあ。
ただ、見せる。
見て、どう考えていくかは観客に委ねられているように思った。

ナタンはチボーとセックスする。ショーンを亡くしてすぐにか~と思うけど、そうでもしなきゃ、という気もしないでもない。うーん。
活動は終わってないし。仲間に死が迫っている事に変わりない。
一人の死。
かけがえのない大切な。
でも、通り過ぎてゆく一つの死。

パレードを楽しくお祭りにしよう!っていうのも、それやってらんないっていうのも、ほんと、どっちもどっちで。
レインボープライドだとか、この頃はすっかりゲイパレードの楽し気な感じがお馴染みって気がするけれど、こうなるまでにも、こんな、そんな、たくさんの人の活動が少しずつ積み重なって、こうなってきて、多分これからもいろんな変化はあって、多様性がもっと認められていくといい。

黙っていたら死ぬ。
という切実さは私には持てないし彼らをすぐさま見習いたいというわけにはいかないけれども、声をあげていくこと、声をあげている人のことを知る事を、おざなりにしないようにしようって思う。
映画、見に行けてよかった。


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