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『特捜部Q ―自撮りする女たち―』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)


*ネタバレしています。


『特捜部Q ―自撮りする女たち―』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)


シリーズ7作目。

失業中で保護を受ける為、社会福祉事務所で知り合った女たち。デニス、
ジャズミン、ミッシェル。彼女たちはまともに働く気はない。彼女らの担当官
アネリはソーシャルワーカーとしてアドバイスをしているのに立ち直ろうと
しない彼女たちのような受給者にうんざりしていた。

後頭部を殴られて死亡、という事件が過去に女性教師殺害と共通点が多い、
と気づいた退官した刑事。古い事件を取り扱う特捜部のカールに話が
持ち込まれる。しかし現在進行中と思われる事件に特捜部は関わらないよう
煙たがられている。

そして、特捜部のメンバーであるローセは、かつてないほどに精神が参って
いた。限界を超えた彼女にカールたちが気づいたのはローセが姿を消して
悲鳴のような言葉がみっしり殴り書きされた壁やノートを見てからだった。


そんなこんなの、今回もいろんな要素、事件が盛り沢山。
デンマークは福祉国家として世界でもしあわせな国、って感じだけれども、
まあそりゃもちろんこういう不正受給でのらくらしようって人達もいるんだ
ろうねえ。ほんと、特捜部読むようになってから、まあ、そっかそうだよね、
どんな国も社会も理想郷ってわけじゃない、って思う。
それでもいろんな社会のしくみがあること、考え、みたいな所、あんまり
ちゃんとわかるわけじゃないけれども、いいなって所も感じたりする。

ハーディの介護士のモーデンは今作の中では恋人ミカと別れちゃって
泣いてるけど、終りの方ではちょっと断絶からは回復してるっぽい。
というか、ハーディが少しずつ体が回復するかもしれない、という希望が
出てきた、と、思っていいのかなあ。感覚がほんのちょっと戻ってきそう、
かも。てこともで、どーなんだろう。カールのトラウマ、ハーディが死に
かけた一番最初の所の、事件が描かれるかなあ。その前にアサドかな。
これシリーズ10作の予定だったはずだから、ん~、先にアサドかな。
そしてカールたちかなあ。
なんにせよ続きを早く読みたいすぐ読みたいとまた思わせてくれた。

デニス=ドリトたちみたいに、やっぱ女の子は若くて綺麗じゃなきゃいけない、
という強迫観念的なものは、まーそっかデンマークでもそういうのは
あるか~と思ったり。
福祉のために働く人が虚しくなっちゃったりやけになっての正義感に
かられたり、っていうのもあるかーと思ったり。
母と娘のなんか、呪いの連鎖みたいなのも思ったり。ちょっとナチス絡みな
要素もあったりして、ほんと、みっしりあれこれありながら、怒涛の終盤で
繋がり解決、というか、ともあれ決着つけるの相変わらず凄いわ。
ちょっとシリーズ、ダレたな~とか前思った気もするけど、今作はまた
面白く、読み出すとぐいぐいいけた。読みやすくなってきてるかなあ。
作者も翻訳も読者もこなれてきたって感じなのかもしれない。

で。
今作ではなんといってもローセの心の危機が、限界崩壊をしてしまって、
それをカールたちが救えるのか、というのがいっちばんハラハラドキドキ
した。自殺とか、たまたま巻き込まれての拘束監禁で、もしかしてほんとに
間に合わなくて死んじゃうかも、と、思ってしまった。Qの主要キャラだし
大丈夫でしょうと思いつつも、でもシリーズも終盤だしと思ったりして。
一度はカール達が近づくけど気づかなくて、あああああっも~~~っ、
カール!アサド!気づいてよっ早くローセを助けてよーーって焦らされる。
結局間に合って、多分ローセは回復するはず。
ローセが、子どもの頃から父親に虐待、モラハラ的な酷い虐待にあって
きながら、ローセ一人が盾になって妹たちを守ってきたこと。
父が工場の事故で巨大な鉄の塊に潰されて亡くなったのを目の当たりにした
こと。それが、本当にただの事故だったのかどうか、と。
みんなに嫌な奴だと思われ、煙たがられ、彼さえいなければ、と、工場の
トラブルでみんなが迷惑こうむりそうだったこと、で、計画された事故。
ローセもほんの僅かに、その計画の一端を知らされぬまま担ったこと。
ローセの心の負担を、真相と当時の工場にいた人達の苦しみと謝罪で、
少しでも減らせたんだと思う。ローセには回復してほしい。次作で、は、
無理かどうかわかんないけど、ローセにちゃんと戻ってきて欲しいよ。
始めは別にただの奇抜キャラかと思ってて、こんなにもシリアスに辛い
ことになるとは思ってなかったわ。ローセのこと、ほんと、私もすごく
好きになってるなあ。
ゴードンくん、若僧くんな、ローセと向き合えるのかなあ。わかんないけど
なんか、ゴードンくんもがんばれ。

カールとアサドもますます息ぴったりというか、すっかり相棒。
アサドの物語もきっと描かれるはずだと思ってるけど、どういうものに
なるかなあ。その時カールはどうするんだろう。早く読みたい。

モーナとは別れてたけどカールはまだまだ未練たっぷりで、モーナと、
またちょっと近づくかな、って感じ。
このシリーズの中ですっかりキャラが生き続けててそれぞれの人生
いろいろあるよね、生きるって大変って思う。早く次が読みたいよ~。

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