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映画 「シェイプ・オブ・ウォーター」

*ネタバレしています。


映画 「シェイプ・オブ・ウォーター」


昨日1日(木)に見に行きました。
パリ行きとブラックパンサーとどれにしようか迷ったけれども、まずこれを。

ギレルモ・デル・トロが監督・脚本・製作。
2017年・第74回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞してるし、アカデミー賞
でもノミネート沢山されてますね。どうなるかな。


1960年代のアメリカ。宇宙開発の極秘研究所みたいな所。そこで清掃員
として働いているイライザ。映画館の上の部屋に住み、夜勤に備えて毎日
規則正しく暮らしている。お隣に住んでいるジャイルズはイラストレーター。
映画好きでテレビでやっている映画をずっとつけてる。しかし会社を首になり
ゲイでありささやかな楽しみとして不味いパイの店員に恋をしている。
イライザは喋れない。聞こえるけれど声帯がダメ。手話でジャイルズや、
清掃員仲間のゼルダとは会話できる。

ある日、研究所に南米から奇妙な生物が送られてきた。半魚人のような怪物。
宇宙は過酷な環境。そこで活動するために、この奇妙な生物の特性を活かして
ソ連に差をつけることができるのではないか。

イライザは最初こそ驚いていたが、やがてこの生物にひかれていく。いくつか
の手話。サンドイッチと卵のお弁当を生物の水槽のそばで食べるイライザ。
彼女との時間を生物も楽しみにしているようだった。音楽を共に聞き、共に
卵を食べる。

だが、警備主任のストリックランドは成果を急ぎ、生物の解剖を進言する。
殺される彼をイライザは救い出すことを決意する。
実はソ連のスパイである研究所のホフステトラー博士はなりゆき的に彼女に
協力して、生物は脱出できた。

ってことで始まる前の監督の宣伝なんかを見てると「美女と野獣」、でも
野獣は野獣のままでいいじゃないか、という大人のおとぎ話なのだろうなあ
と思ってました。
ほんと、大人のおとぎ話。
欲望を、隠さない。ごまかさない。ファンタジーだけれどもグロテスクさも
残虐さもあり。「パンズ・ラビリンス」の系譜だなあという納得感あり。
でも結構ユーモアもあって笑っちゃったりもしたし、すごくよかった~!!

イライザは喋れない。ゼルダは黒人女性。ジャイルズは写真に仕事を奪われた
イラストレーターで、ゲイであることにも悩みは尽きない。生物は怪物扱い。
もともといた南米では神のようだったそうだけれども、どんな手段で軍は
彼を手に入れたのかと思うと、辛い。
そういう、マイノリティ側に虐げられている人達の愛の物語だった。

政府施設。軍人。警備主任として威張り生物を虐待するストリックランドは
白人男性。マジョリティの権力を持つ側の醜悪さ、空虚さが淡淡と描かれる。

ホフトステラー博士はソ連のスパイで白人男性だけれども、本当は学ぶため
ここへきた、みたいなこともあるみたいで、そして下っ端スパイとして
権力に振り回される側で、イライザに、生物に生きて逃げるよう協力する。

連れ出した生物をお風呂場でとりあえず水につけて一安心~したものの、
生物はまあやっぱそれなりに怪物で、うっかり一人歩きしちゃうとジャイルズ
の猫ちゃんをバリバリ喰ってしまったりするんだよー。わあああ;;
でも悪気はないの。
そのあとはちゃんと話通じたみたいで、子ネコちゃんと遊んだりしてた;;
ジャイルズの禿げ頭や怪我した腕を生物がなでなでしてくれると翌朝には
毛が生え、傷はすっかり治っている。
彼は、ほんとうに神なのか。

イライザが生物に惹かれ、愛してる、の想いには肉体的なのも含む、で、
お風呂場をプールみたいにしちゃっての抱き合い愛し合いはとても美しい。
しょっぱなから、イライザはお出かけ前のお風呂で自慰をするシーンが
あって、ああこういう、こういうのもあり、全部あり、っていうんだなあ
というのがとても、いやらしさとかではなく、すべてあり、な、包容力と
なって感じられる映画で、ほんとすごい。

ストリックランドは素敵な家族、新しい車って手に入れてる男だけれど、
妻とのセックスでは妻を喜ばせるとかではなく、だまってろ、って口を
塞いじゃって自分勝手なやり方って感じ。思いやりとか愛とかなさそう。
口のきけないイライザを、好みのタイプだ、ってセクハラしかけたり。

そう、この映画の中で、人種差別や女性差別、暴力、と、酷いことを
するのはストリックランドばかり。彼さえいなければ、イライザの暮らし
は静かに普通に、あった。

けれども、半魚人な彼と出会ってしまった。
運命の出会いなのー。怪物と冴えない女性。
でも、生物との関係は、口のきけない可哀想な女と化け物、ではなくて、
ただありのままの自分、何も欠けたりしてない互いに満たされる関係なの。

野獣がハンサムな王子様にならなくてもいい。声をなくした人魚姫が
悲しく消え去らなくてもいい。

逃げ出した生物を追って、ついに追いつめられ、撃たれる生物とイライザ。
しかし生物は蘇り、ストリックランドを殺し、イライザを連れて海へ帰る。
水の中で、イライザの首の傷痕が、エラになってひらく。彼女もまた、
水の中で生きるものになる。

最後は泣いてしまって、泣いて泣いて泣いて。マスクしていたけどマスク
濡れてだめになるくらい泣いて、とても、とてもとてもよかった。

生物は神だったのだと思う。イライザもまた神だったのだと思う。
見捨てられて置き去りにされたのは人間なんだ。

最初、イライザにエラができて、人じゃなくなった、と思って、でも
人と半魚人と異種間でも愛が成り立つ、という物語じゃないのか、と、
思ったんだけれども、でも、これは、虐げられていたかのような彼女たち
こそが神々だった、という、神話、おとぎ話ということかなのかなあ。

そもそもがね、これ、残されたジャイルズが、おとぎ話のように語り
伝える物語、という風なスタイルなのね。だから、本当は、あの水の中の
生物とイライザの姿がどうなのか、ほんとうのほんとうはわからない。
これ、パンズ・ラビリンス的に、イライザの望んだ夢だったのかもしれない
とも思えるし、いやあのまま二人でめでたしめでたしなのだ、とも思える。
ジャイルズは水の中を知らないもの。

でも確かなものは一つある。生物とイライザがただありのままに、
愛し合った物語ということ。

全体的にみどりの、水の色や服や、いろいろそういう色合い、湿った世界
の中に、恋をして愛を得て、赤い靴やドレスという色がきて。
赤と緑って補色関係だよね。
そういう、画面の色合い、隅々の小道具も、全部、すごく、とっても、
とてもとてもよかった。
いつも流れる古い映画。音楽。モノクロの中でも楽しそうなタップダンス。
愛の高まりの時にイライザが歌い出すモノクロなステージ。

デル・トロ監督が本当に映画大好き、っていうのが物凄く伝わってくるし、
マイノリティの側であることにもそのままで肯定する愛があるし、
心から見てよかったと思える映画。素晴らしい。
映画って素敵だよねえ。本当にそう思える。映画、私も大好きです。


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