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映画 「ジャコメッティ 最後の肖像」

*ネタバレしています。


映画 「ジャコメッティ 最後の肖像」


ほんとは1月に公開になっていましたが、近くにくるのを待ってました。
監督のスタンリー・トゥッチって俳優さんで、これは監督初なのかな?
上映時間90分。結構淡淡としてて、凄く好き。とても好き。とてもよかった。

1964年。ジャコメッティに肖像画のモデルを頼まれたジェイムズ・ロード。
美術ライター。作家か? パリに滞在していて、帰国予定は3日後くらい。
モデルは半日で終わるから、と頼まれて快く引き受けたが。

終わらない。描きおわらない。ジェイムズを見つめ、描いて描いて、描けない
と苦悩するジャコメッティを無下にはできなくて、2,3日なら帰国を
伸ばしてもいい、と、飛行機の予定を変更。
だが、終わらない。
1週間なら。
そして、描き終わらない。描いて描いて、消して、描いて、完成はない。


ジャコメッティ~。
ジャコメッティ展を去年だっけ、見に行ったし、矢内原伊作の本にも
もえくるったので、映画が公開になると知った時にはすっごい嬉しくて、
しかもアーミー・ハマーがモデルのアメリカ人青年、ってことで、すごく
楽しみにしてました。
すっごくよかった! 大好き!

ジャコメッティのモデルを引き受けるってタイヘンだよねえって、そう、
犠牲者ね、って最初アトリエに行った時に妻に言われちゃうんだけど、
犠牲者だよねえ。美術ライターらしいのに知らなかったのかジェイムズよ。
描けない。もう少し。予定を変更してもらえると助かる。って、それ、
すっごい矢内原伊作も言われまくってたよね。
しかし伊作くんには「美しい」とか褒め言葉いっぱいだったみたいなのに、
ジェイムズくんには、凶悪犯の顔だなとか横顔は精神異常者、みたいな
こと言ってて、ジャコメッティーひどいじゃないの~~って思う。
アーミー・ハマーの顔だよ。アトリエにあるどの彫像よりも完成してる
彫像みたいな綺麗なかっこいい可愛いかわいいかわいい姿形を捕まえて、
ジャコメッティってば~~~。
まあ、本物のジェイムズ・ロードという人のことは知らないのだけども。
今度本を読んでみようと思う。

ともあれ、モデルとして振り回されちゃうジェイムズを演じるあみはまちゃん
素晴らしかった。とても上品、誠実だけどユーモアもある、あくまで
受け身な演技なんだね。美術ライターってよく知らないけどなんかそう
なのかも、って思える。素敵なハンサム、ほんのり高慢。すごいよかった。
ジャコメッティの描きおわらない肖像モデルに、最初は光栄ですって
いってたけど、もうヤダ無理、描いたの消さないでヤダもう無理、って
参ってくのがめちゃめちゃ可愛い。予定の変更続きでNYの恋人だろう相手
との電話で喧嘩になりそうだったり。飛行機キャンセル代もかさむって。
わかる。わかるぞ。
こういうの矢内原くんの本で読んだやつ。

そう、その、矢内原伊作もちょこっとだけ登場してた。遊びにきてた感じ? 
妻アネットの浮気相手っぽかった。ええええ~そうなのかなあ。
まあわかんないしどっちでもいいけど。伊作~っていってもジャコメッティ
がまったくそっけなくて、えええ~~~あれ~~???って思ったり。
ほんのちょこっとのシーンだったけど私の心では大騒ぎだった。

ジャコメッティも娼婦に入れあげてるしアネットにも浮気相手がいるぞって
感じってことかなあ。

自由奔放、芸術とかどうでもよさそうな娼婦カロリーヌにハラハラしたり
うんざりしたり。でも彼女が今ミューズなんだなあっていうのもすごく、
よかった。

ジャコメッティについて何を知ってるでもないけど、わかんないけど、
演じているジェフリー・ラッシュ、凄い。これ完全にジャコメッティだろ
ってそっくり、な、気がする。写真とかしか知らないわけだけれども。
そういう、ジャコメッティ、生きているうちに成功してる芸術家、
その人物ってほんとうにはわかんないんだけれども、でもなんか、こう
だったのかなあ。なんかつい人が引き込まれちゃってたらされちゃうのか。
風邪ひいたかなんかで弱った時のしょぼんとしたおじいちゃんっぷりとか、
絵に、芸術に、完成はないって苛立ってたり苦悩してたり、無茶苦茶で
いや~~実際もしも身近だったらタイヘンすぎると思うのに、でも、
魅せられちゃうのかなあって。つくづく映画に見惚れた。

ジャコメッティが描き出したかった、本物って、ジャコメッティが見てる
世界って、どんな風だったのかなあ。完成させられない作品。描けない
と繰り返す目の前のモデルの姿、どう、見ていたのか。
彼の残した作品ほんと好きだけれども、これじゃなかったのか、どう
なのか。不思議だし魅力的だ。大好き。

ジャコメッティが駄目だって、描き直したいって完成に近づいてる絵を
消す前に、塗りつぶすのを阻止しよう、ってジェイムズはがんばって、
なんとか絵を描くことを終わらせる。それがまたチャーミングだった。
塗りつぶしそう、って所で、すっと立ち上がってちょっと体を伸ばしたい、
って、ジャコメッティの方へいって、絵、いいですね~とか言うの。
弟(だっけ)ディエゴも巻き込んで、いいね、いいね、よく描けてる、
って言って、なんか、ジャコメッティもそうかな?ってなって。
可愛い。
なんだよ君たち、すっごい可愛い。いいなあ。すごくすごくよかった。

そうしてなんとか肖像画を描きおわり、ということにして絵はアメリカへ。
個展とかするんだっけ、よくわかんないけど。
ジェイムズもやっと帰国することができる。
また来てくれ、また描きたい、というジャコメッティの手紙?があり、
でも、ジェイムズはもう行かなかった。それが、ジャコメッティが描いた
最後の肖像画となった。


愛人に車買ってやったり、札束、というか金の塊あるのを見せつけたり、
まあ、見せつけるっていうつもりがあるのかないのか、ジャコメッティって。
なんかえげつない感じもあるような。でも天然なのかなあ?
ほんと、わからない。
自殺願望はありまくり~みたいな、でも冗談なのか本気なのかって感じだし。
弟ディエゴとか妻アネットとか、彼を支える人はいて、でもそういう人たちに
たいしてジャコメッティひどいんじゃないの、って感じだったり。
でも、絆があるんだろうなあ。

ジャコメッティの世界をたまたま訪れ関わり垣間見たアメリカ人青年、
という視点の映画で、観客である私も、なんか、なんだこの世界、という
感じを深く味わうことができた。
アトリエの再現とか、もう、ほんと、ジャコメッティって~こんな感じかあ、
って思ってしまう。
なんだか無茶苦茶な世界を、心酔するでもなく非難でもなく、見つめる
ジェイムズのクールさ、素敵。いい距離感だった。

アーミー・ハマーの、毛穴まで映すぞっていうドアップがいっぱいで、
すごい、かっこよくて、綺麗で可愛くて。アーミー・ハマーの魅力を堪能。
ジェイムズはゲイなんだねというのがさらっとわかるんだけれども、
きちんと丁寧にいつも身だしなみ整えてる感じとか、が、そうかなあって
ニュアンスがあるといえばあるかな。
そんなこんなもとにかく、ほんと、アーミー・ハマーとてもよかった。
モデルするのに疲れてちょっと逃げ出すのを見つかって手をひいて連れ
戻されるのとかすんごい可愛かった~。ジャコメッティとの身長差~~。
散歩してお喋りとか、いつものカフェでいつものメニュー、に、カフェの
人達が慣れ切ってる感じとか。リアル「ボナペティ」を聞いた^^素敵。
そういう街や景色の中の、ジャコメッティとジェイムズ。
最高です。

思い返しても隅々まで、なんだろうすごく、噛みしめたい良さに満ちて
いた。ジャコメッティというキャラクターの良さ。美術の良さ。演じる
俳優たちの良さ。大袈裟さのない映画全部の良さ。
見に行けてよかった。大好き。こんな風にいろいろと自分の興味が繋がるの
すごい楽しい。
あ、そうだ、ディエゴとジェイムズが雑談してる中で、今本読んでるんだ、って
ディエゴが読んでる本が『寒い国から帰ってきたスパイ』だってよー。きゃ~。
君はスパイかも、って言われて僕はスパイです、みたいに言ってた、ジェイムズ。
あみはまちゃん~~~コードネームアンクルもかけてる小ネタなのかなあ~
わかんないけど~~。なんかそういうちらっとしたシーンにも萌えた。素敵。
今この映画があって見に行けて、幸せです。

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