« 映画「デトロイト」 | Main | 映画 「スリー・ビルボード」 »

映画「きっと、いい日が待っている」


*ネタバレ、結末まで触れています。


映画「きっと、いい日が待っている」


近くの映画館に来てくれたので見にいってきました。2016年のデンマーク映画。
ラース・ミケルセンが出てるので見たかったの。待ってました。
実話がベースの映画。

兄、エリックと弟、エルマー。母子家庭の彼らは豊かとは言えない暮らしの
中で万引きをしたりと問題行動が多かった。エルマーは宇宙飛行士に憧れ、
月面着陸の夢を見ている。エルマーの足は少し不自由。喧嘩もするけど
仲のいい兄弟。
ある日母は癌に倒れ、叔父さんがいるものの定職のない彼は兄弟の面倒を
みることができない。

彼らが送られた施設は、表面上は素晴らしい所。だが、しつけとして暴力は
日常的。子どもたちの中のボスによるいじめは苛烈。威圧的独裁者のような
校長が支配する恐怖の場所だった。
初日に逃げ出す二人。だが、ヒッチハイクで止まったくれた車は施設へ
二人を届ける。施設の子どもに味方はいない。
ここで生き延びるには幽霊みたいになれ、と、他の子どもから教えられるが、
兄弟はなかなかなじめない。クリスマスにはきっと病気が治った母が迎えに
きてくれる。それまで、なんとか耐えようとする二人。


1967年に始まる。またその年代か。60年代の世界って、近代だし人権が、
とか、多分かなりよくなりつつはある、あった、の、かもしれないけれども、
実体としてやっぱり虐待も暴力も、性的虐待も、閉鎖性ゆえのその場の
おかしなルールとか、どうしようもなく劣悪なまま、って、ことが、
大いにあったのか。とてつもなく辛い。誰も、大人が、まともにとりあって
くれない。守ってくれない。よかれと思ってとかここではそれが当たり前だ
とか。みんなが目をそらす。逃げ出す。逃げ出す自由のない子どもを
置き去りにして。

60年代、というか、でもこういうのって、ほんとは今でも見えないだけで
あることなのだ、と、いう気がして、ほんと、ほんと辛い。

小さい子ばかり狙う教師の性的虐待もあって、ほんと。酷い。具体的描写は
なくて少しのシーンだけど、もーほんと、その、あの、じっとり嫌な空気は
映画だとわかってるのに、たまらなく辛い。

母が亡くなったという知らせ。食事時、泣き出す二人に校長は静かに食べろ!
と恫喝する。
話にきてくれた叔父さんに、夜逃げ出すから連れ出して、と頼むものの、
土壇場で叔父さんは約束を破ってしまう。

新任としてきていたハマーショイ先生が唯一、エルマーの味方になってくれ
そうだったのに、結局彼らを置きざりにして逃げてしまう。

エルマーは読み書きができる。エルマーはお話を作ることができる。
子どもたちにきた手紙がどんなにそっけなくても、その続きに、彼らの
希望が書かれているかのように即興でつくって「読む」ことができる。
宇宙飛行士の夢。人類が月に一歩を記す。
その年、エリックは15歳になり、この施設から出て別の場所へ行ける
許可書をもらえるはずだった。
それまで、と、我慢し続けてきたエリック。校長の機嫌のよさを見計らって
弟も一緒にいけるように頼んだのに。
これから隣に18歳まで暮らす施設を作るからお前はここに残る、と言われて
エリックが切れた。たった今磨き上げたばかりの校長の車に傷をつける。

誰にどうやられたのかはわからないけれど、エリックは痛めつけられて
意識不明のまま。それなのに病院へつれていこうとしない校長。
エルマーはこのままではエリックが死んでしまうと思って、ハマーショイ
先生と、新しい施設監察官になって一度施設を訪れてきた人へ訴えに行く。
でも、スムーズに動いてくれないお役所。

また、大人は、誰も助けてくれない。

エルマーは、その夜、手づくりの宇宙服を着て校長の車を目茶苦茶にした。
給水塔のてっぺんから飛び降りた。

その、月への夢のシーンが、この映画の中では唯一の夢らしい夢かなあ。。。

樹々の中を落ちたエルマーは結局は助かった。それでも、エルマーは、
自分の死体によってこの施設の中の現状を外部に知らせたかったのかなと。
そこまでしなくては、誰もこっちを見てくれない、と、いう追いつめられ方。
絶望。
役所の人とハマーショイ先生は夜だけどかけつけてきてくれていて、
ほんとうに、かろうじて兄弟は死なずにすんだ。間に合った。本当に、
間に合ってよかった。
でも本当に、こんなになるまで誰も動かなかったの、本当に酷い。

殊更に大仰な感動みたいな作りの映画ではないけれども、その、少しずつ
みんながじわじわと見ないふりを積み重ねてきて、やり過ごしてきて、
というリアルが、本当に怖かった。
「デトロイト」の時も同じだけど、自分は出来ればやっかい事に関わりたく
ない、自分が今何もしなくても、多分大丈夫、多分関係ない、たぶん、
たぶん、少しくらい目をそむけても、逃げ出しても、自分のせいじゃない。
そういう風に、私も思ってしまう。逃げ出すし見ないふりをきっと私も
してしまう。

そして犠牲になるのはそこから逃げられない弱い者なのだ。小さい者なの。

今、この施設があったところは改善されて? 支援センターみたいに
なってるらしい。鬱症状や依存症に苦しむ人達を助けるように、してる、
みたい。

デンマークって、福祉国家だし、幸せな国という感じだけれども、まあ、
そりゃまあ、完全にそんなわけないし。過去があって改善とかだろうし、
世界の変化は少しづつだし今でも世界は不完全で、デンマークといえども
国家全部か完璧な幸せの国なわけはないんだよね。当たり前に、犯罪も
貧困もあるよね。世界中。

それでも、月に人類が一歩記して、宇宙へ夢が届くならば。
少しずつ、世界はよりよくなると、変わると、信じたい。
少しでも、誰かの、何かの、救いがあると、行動できると、行動すると、
いうことを忘れないでいよう。


ラースお兄ちゃんはさすがのこわい校長で、ほんとよかった。
子役くんたちも素晴らしくて。
いやーもー。ラースこわい。でもほんとのラースは自分もお兄ちゃんで
兄弟仲良しで、とても優しいし、いい人そうだし。大丈夫。
辛くて甘いもの買って帰った。ラースとマッツの仲良し写真とか見直した。
とてもつらい。けど、見てよかった。


|

« 映画「デトロイト」 | Main | 映画 「スリー・ビルボード」 »

「映画・テレビ」カテゴリの記事