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『ライナスの毛布』(高田ほのか/書肆侃侃房)


『ライナスの毛布』(高田ほのか/書肆侃侃房)


2017年9月刊行。
第一歌集、ってことでいいのかな。違うかも? カルチャー教室の講師として
とてもご活躍されているようです。

最初に「メリーゴーゴーラウンド」という連作があり、登場人物というか、
ミカ。ユウ、シュウという三人の、三角関係、ってほどでもないけどまあ、
彼彼女らの恋物語ですという連作なんですね。ミカちゃんは新人ちゃんで
主任のシュウに恋してる。シュウはユウとつきあってるけどちょっとそろそろ
もう駄目かもみたいな所。で、ミカは主任をゲットしたらそれで満足して
次いってもいいかなーみたいな。みたいな? どうかな。歌なので殊更な
説明はなく、こういう風にそれぞれの恋があるのね、と、わかりやすくわかる
のは、上手いんだなと思う。

思う、んだけれども、私が個人的問題として、まーそのこういう、まあ特に
ミカのキャラ、いかにも女の子女の子してるような言葉遣いとかが、まあ勿論
歌物語でわかりやすくってことでシンプルにわかりやすくしてるんでしょうが、
こーゆーのにあまり心惹かれないので、ふーん、という感じで読んでおわり。
もちろんヘテロと思わずに全員男って妄想してもいいんだけど、いやそれに
してもあんまり心惹かれるキャラを想起できなかった。私の好みの問題として、
ちょっとなーという所でした。

少女漫画の短歌化というのも、なるほどと思って読みましたが。
あげられているタイトルの漫画を知らなくてもいいと思うし読めるけれども、
でもやっぱりそう明記がある以上はちょっと、敷居が高いと思う。
作品が読者を選ぶタイプの歌集なんだなあと思った。そして私はあんまりこの
歌集の読者にはなれないなあ。
作者はどうやら りぼん から、別マへ、というルートの少女漫画世界である
ようで、私は なかよし から、LaLa、そしてJUNE、オタク方面のルートなので、
やっぱりあんまり、向いてない読者なんだろうな。

Ⅱ部のほうは多分少女漫画というよりはもうちょっとリアル世界に近いかな。
でもこれ作者と思って読むものでもないのかなあと思ったり。少女漫画の世界の
少女、女の子が、少しずつ成長してある、という感じかなあと。

表紙からして、とてもとても可愛くて素敵な本です。黒ベースの背景、
大きな犬?狼?に包まれて眠っている三つ編みの女の子。この女の子の世界、
という一冊かと思いました。


いくつか、好きな歌。

  りぼんから別マに移る春のなか膨らまないよううつ伏せ寝する (p52)

この成長してしまう感じが少し嫌、でも少し期待、という感じがあるなあ、と。
膨らむのは自分の体、胸みたいなことと、期待とか不安とか心の問題と、たぶん
両方で、それを抑え込んでしまいたい感じ。春なのだ。


  深呼吸できる書店がなくなってチロルを添えるローソンのレジ (p54)

いつもわくわくとマンガや本を買っていた自分にとっての大事な場所である書店
がなくなって、ああコンビニになってしまったんだなとすんなりわかる。町の
個人経営の本屋さんだったのだろう。そういうの、ほんと潰れてしまって、という
社会詠な一面もあって。私も昔通っていた本屋さんとかなくなったよなあという
実感を持って受け取りました。


  いまだけはむつかしいこといわないでぜんぶひらがなではなしをしよう? (p68)

ぜんぶひらがなしかヤダ、という気分になる時ってとてもわかるー。


  衣替えごとにあかるい服を捨てイチゴのパフェをあきらめてゆく (p72)

あきらめていかなくちゃいけない気になる、そういう思春期すぎての若い頃の
感じもとても、よく伝わる。でもほんとは諦めなくていいのにね。なかなか
そう気づく、思う、諦めるのをやめるっていうのも、難しいんだよなあ。 


  ”ごっこ”ではいつも悪役 妹に倒され聞いたカナカナの声 (p78)

優しい、いい子なお姉さんです。ちゃんとお姉さんでいることを引き受けてる。
引き受けてるけど、あーなんだかなあと思うのであろうカナカナの声の中の
感じがとてもいい。


  突然にながくなりたる祖母の名に生きた証の一字をさがす (p93)

祖母が亡くなり戒名がつけられる。その、突然な変化に戸惑う感じが腑に落ちる。


  過去になる名字に朱色が染み渡る 戻れないことは幸せなこと (p100)

結婚する、してく、そういう中の一首。こんなに甘やかに結婚を歌うんだなあと
感動的でした。名字が変わる手続きの面倒さ。「戻れない」ことは上区の感触
としてはそうただ幸せなだけでもない感じがするんだけれども、結句では
「幸せなこと」と規定している。そういう決意なんだなと思って素敵でした。


  お揃いのショーツはいかがでしょうか? こちら、おリボン結びなんですよ (p113)

ブラを買いに行くシーンが歌の一連になってて可愛かった。「おリボン結び」
って店員さんが実際に言ったんだろうなあ、言ってて欲しい。「お」がついて
るの。可愛い。おもしろかわいい。

とても甘やかな世界、でも背後には少し切ないを秘めている、そういう歌の
世界を作り上げまとめ上げた歌集で、きれいにつくっていて凄かったです。

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