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『混沌の叫び1 心のナイフ』上下(パトリック・ネス/東京創元社)

*ネタバレ、結末まで触れています。

『混沌の叫び1 心のナイフ』上下(パトリック・ネス/東京創元社)


混沌の叫びは3部作だそうで、その1。
映画化されるようで、気になって読んでみることにした。

トッド・ヒューイット。プレンティスタウンに住む少年。もうすぐ大人になる。
大人になるのは13歳。ぼくはこの町の最後の子ども。あと30日で大人になれば
この町に子どもはいなくなる。


SFというか、異世界ものっていうか。ヤングアダルトにあたる小説ですね。
基本的にトッドの一人称。
ニューワールド新世界では一年は13カ月。新天地を求めて植民してきた人々。
でもこの星には先住民スパクルがいて、戦争が起きて、今はスパクルはいない。
この星独特の細菌があって、それに感染して、男たちは心の中、声がノイズと
して隠せなくなり、女たちはみんな死んでしまった。
男だけの世界。
心の声が全部きこえる。
なんか萩尾望都の「マージナル」みたいな感じ? と読む前は思ってたけど違う。

沼地で謎のノイズの穴を知ってしまった時からトッドの運命が変わる。
それまで育ててくれていたベンとキリアンが、今すぐこの町から逃げろ、と言う。
この日がくるのをわかって怖れていたようで、すぐに旅立つ荷物を渡されて、
でも何にも説明してくれないまま、町の人に追われてトッドは犬のマンチーと
一緒に逃げ出す。

謎のノイズの穴というのが、実は女の子だった。女の子の心の声は聞こえない。
見えない。ノイズだらけのこの世界で、無音であるのは女の子だけ。
成り行き上一緒に逃げ始める二人。
世界はプレンティスタウンだけ、女は全員死んだ、と聞かされて育ってきたのに、
別の町がある、プレンティスタウンの外では女が生きている。
出会った女の子はでも、別の入植者の偵察の一員だった、とか。
トッドが町を出ると次々にいろんなことがわかってくる。

人の心の声のノイズだらけの世界、ってことで、普通の本文のページの活字が
いろんな書体になってたり、がーーっとでっかい落書きみたいな文字いっぱいの
ページがあったりして、へーがんばって表現しているなあと感心する。
でもまあとにかく、トッドは何にもわからない中逃げる、女の子も最初は全然
喋ってくれなくて何にもわからなくて。
イライラしたりもどかしかったりで、最初はなかなか読みづらかった。
別の町に到着して、逃げる二人以外の人物が出てくるようになると、ちょっと
面白くなったかなあ。
犬のマンチーも心の声喋れるので、といってもわんちゃんなので単純で可愛くて
でも困ったちゃんだったりもして、あ~マンチーが癒しだわあ。って読んでると、
終盤、引き離された女の子、ヴァイオラを助けに行って、マンチーを見殺しに
せざるをえないことになって。あああああーーーっ、と、愕然。

これはかなり容赦ないんだな、って、ヤングアダルトだからって話じゃないと、
ぐっときた。
でもさあ。マンチー。マンチーにはなんとか助かって欲しかったよぉ。。。

最初は数人に追われてるだけだったのに、いつの間にかトッドたちを追ってくる
のは軍隊、って規模になり。
プレンティスタウンは何故隔絶されているのか。何故女がいないのか。
いろいろと謎がわかりかけると、深刻にキツイ感じになってくる。
プテンティスタウンの歴史。トッドが信じてきていた歴史は嘘なのか。

心の声が聞こえない女とノイズだだ漏れの男との対立。戦争。プレンティスタウン
の女は皆殺しにされた、のか。

トッドは学校教育とかなかったようで、文字が読めない。ベンたちが教えて
くれたこともあったみたいだけど、ちゃんと読めるようにはなるほど学んで
なかった。
トッドの母が残してくれた日記をベンに託されたけれども、自分じゃ読めなくて。
そういうのも切なくて、でも重要なポイントにもなってて。

ヘイヴンという大きな町へ行けば、助かるはずだ、と信じて、トッドとヴァイオラ
は逃げ続ける。ついに辿り着いたヘイヴン。撃たれて重傷を負っているヴァイオラ。
静かに敵に備えているかのように見えた希望の町で、でもトッドたちを迎えた
のは、必死で逃げてきたプレンティスタウンの首長だった。

ええーっ。どうなるのーっ。
って所でおしまい。2部へ続く、っと。

二人で逃げる。最初の最悪の出会いから互いにかけがえのない相手となる。
大人になる直前。ナイフを持っていても人を殺せない少年。偵察機の墜落で
両親を亡くしたけれど、生きる強さを持っている少女。
基本的にはボーイミーツガールで、成長物語であって、でも追い込まれる状況が
思ってたよりずっと過酷で大変だった。大人たちよ、もうちょっと説明して
やってから旅立たせてやってくれ。まあそうはいかなかったんだけれども。

別世界のお話とはいえ、植民地時代って感じで差別や偏見の物語なのは現実世界
を引き写してる所多々って感じですかっと楽しいわけじゃないねえ。

最初の読みづらさを乗り越えてからはかなり引き込まれて、すぐに第二部
読み始めました。

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