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映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」


*ネタバレ、結末まで触れています。


映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」


リーはマンションのメンテナンス、便利屋としてトイレのつまりやちょっとした
水漏れを直したりゴミを捨てたり、そんな仕事をしている。酒を飲み、喧嘩する。
暗い部屋でテレビを見て。ただ暮らしている。
兄の死の知らせ。
甥っ子であるパトリックは16歳。その後見人に兄の遺言で指名されていたが、
リーはこの街で暮らす決意は出来なかった。

アカデミー賞にいっぱいノミネートされてて、ケイシー・アフレックが主演男優賞。
脚本賞もとった。それで、渋そうだなあと思って。

兄の死。どうすればいいのか戸惑いながら、葬儀の手配や、甥っ子とどうするか、
リーは彼なりになんとかしようとする。
少しずつ過去、回想が挟まれていて少しずつ、リーに何が起きていたのか、
何故彼は今こんなに孤独なのか、わかってくる。
リーは、妻と愛する子ども三人と、しあわせに暮らしていた。家族を愛してる、
特別立派でもなんでもない、ちょっとダメ人間よりでもあるリー。それでも
しあわせに暮らしていたのに。
自分が夜コンビニへ出かけていた間に火事で起きた。妻は助け出されたものの、
子どもたちを亡くした。その、哀しみを、克服できていない。

パトリックの母も問題ありだった。家を出て行っていた。

家族を亡くした時、それをどんな風に乗り越えていくのか。大事な人を亡くしても
自分は生きていて、なんとか、生き続けていく。
リーの身に起きた悲劇は街で結構有名になってて、リーは身の置き所がない。
それでも、親切にしてくれる人もいる。
それでも。

パトリックは友達がいて、彼女がいて、それも二人も。リーのいるボストンへ
引っ越すのは嫌だ、という。
父を亡くしたその日にも、友達を読んで楽しげに喋っていたり。
でも不意にパニックを起こしたり。

ただただじっくり見つめる映画だった。すごく劇的にかっこいい解決がある
わけじゃない。リーはやっぱりこの街にはいられない、って、ボストンへ戻る。
パトリックのことは兄の同僚?かな、その、街の人に頼むことになる。
妻と和解はできない。妻のほうは次の人生を歩み出しているのに。でも、彼女も
忘れてるわけでもないし。

時が過ぎれば変化はある。でも、誰もが前向きになれるわけじゃない。
多分解決するのは時間だけで、そして、そのためにかかる時間はこのくらい、と
決められるものじゃない。1年かもしれない。5年かもしれない。30年かかっても
立ち直れる保証はない。

リーは、パトリックが遊びにくるかもしれないしな。って、二部屋あるうちを
借りようとしている。家具なんかいい、って、無気力だった頃とは違う。
兄が、ちゃんと家具を買えよ、って、リーのこと心配してたんだよね。

ちょとしたこと、なんでもない当たり前にありそうな小さな事。日常って、
壊れる前に当たり前に過ごしていた日常って、壊れてしまって振り返ると、
それこそが奇跡的な幸せだったのだ。

過去がわかる前、リー、何なんだろう、もうちょっとちゃんとしようよ、なんで
できないんだろう、って思ってて、だんだんわかってくるにつれて、ああ……
言葉をなくす。
かっこいいヒーローはいない。この映画のリアリティ。つらい。

ケイシー・アフレック、時々横顔とかベン・アフレックに似てる、って思って
兄と弟、家族の物語だから、なんか、そういうのも思った。

見に行けてよかった。とてもよかった。

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