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映画「LOGAN ローガン」

*ネタバレ、結末まで触れています。


映画「LOGAN ローガン」


X-MENシリーズの人気キャラクター、ウルヴァリン。
私はシリーズをきちんと見てきたわけではないけれども、ウルヴァリンはまあまあ
好き、シリーズの流れは一応なんとなくぼんやりとは知っているかな、という
程度の、とてもよいファンとは言えないタイプなのですが、これは楽しみに待って
ました。ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンの最後の作品であるということ、
ウルヴァリンとかXメンとかの名前より、「ローガン」という一人の男の物語で
あるような評判。泣かせるんだろうな~と思ってたものの、ほんと、見事に
泣かされました。かっこよかった。


2029年。
リムジンの運転手として働いているローガン。スマホで入るレンタル予約に応じて
客を乗せて街を走る。
メキシコの荒れた工場跡、巨大なタンクが転がる場所をねぐらとし、雑事をこなして
くれているキャリバン、タンクの中には老いたチャールズがいる。
チャールズの力の暴走を抑えるように定期的に薬を与え、介護する日々。
ミュータントはこの25年新たに生まれてはいない。ミュータントは絶滅しようと
している。自分たちの存在は神の過ちだったのか?

ある日、ウルヴァリンを探していたという女性に会う。少女を連れた彼女と
面倒事になりそうだと関わるのを避けようローガンだったが、報酬を払うと言われ
彼女たちを運ぶことを請け負う。
やってくる追手。
襲われるローガンたち。
女性は殺され、成り行き上ローラという女の子を連れて逃げることになる。
ローラは施設で実験兵器として生み出された、ミュータントたちの超能力を
持つ沢山の子どもたちの一人だった。ウルヴァリンと同じく、鉄の爪を持つ
ローラ。安全な隠れ場所があるという、国境を超える約束の地へ、ローラを
連れていくローガン。


アメコミヒーローなのに。しょっぱなからゴホゴホしょっちゅう咳き込む。
リムジンが車泥棒にされそうになって、チンピラをやっつけようとするものの、
かつてなら瞬殺したであろうチンピラ相手に、そこそこ苦戦するローガン。
傷の治りはめちゃくちゃ遅くなり、鉄の爪を出すのもタイヘンそうな感じ。
老いているのだ、というリアル。スーパーヒーローが老いて、体調崩して、
落ちぶれているんだなという荒涼たる景色が続く。
メキシコの工場跡は乾いて砂埃まみれ。錆た巨大タンクの中に、チャールズ。
ミュータントたちの学園を作り、戦ったチャールズがいる。
痴呆でこそないものの、混乱し薬で力の暴走をとめなくてはならず、車椅子なのは
昔からだけれども、ローガンに抱き上げられてベッドへ移される姿はまさに
介護を受ける老人。
とっても美しいのだけれども、とてつもなく寂しい、生き延びてしまったヒーロー
のその後、の姿。

私、シリーズきちんと把握してないんだけども、大きな戦いがあって沢山の
仲間が死んだということはわかる。多分もっときちんとファンだったら感慨の
深さが違うんだろうけれども、それでも、戦いの後のヒーローという姿だけで
物凄くぐっさりくるものがある。

そういう、彼らの最後の戦いの旅が、まだ子ども、11歳だというローラを守り、
逃げ延びさせることなんだなあ。
地球の存亡をかけてとか世界を救うとかではなく。

カーチェイスのリアル感も現実より。超人的にガンガン飛ばす!ってよりガツガツ
ぎこちなくぶつかるしかない。でも超人的アクションもあるわけで。凄いバランス。

チャールズは、徹頭徹尾、虐げられた子どもを守る、という思いを持ち続けて
戦い生きてきたんだよなあ。
旅の途中でちょっとした手助けをして出会った家族。そこのうちで夕食をご馳走に
なって、ローガンと親子、ローラはローガンの娘、という家族という名目にして
まるで普通の人間のように、他愛のないお喋りをして、暖かい団欒をして。
そんな小さなことが救いであったチャールズ。

追手をローガンと間違えて話したこと、あれはローガンには伝わらなかったのかと
思うととてつもなく寂しい。普通の暮らしを味わって、人生を楽しむような。
でも、この旅でローガンもまた、その想いを共にしたと思う。
ローラはローガンの娘、だったんだっけ。私名前がちゃんとわからなくて
わかんないんだけれども、それはともあれ、始めはうんざりしながらもローラを
助けて守って命をかけたローガンも、仲間のために、家族のために、という
思いを持って戦った。

チャールズを葬るところ、綺麗な森と湖のほとり。ここでいい。ここなら、水も
あるし、って、そのくらいしか言葉をあげられなかったローガン。
これも、ちょっと私あんまりはっきりわからないんだけども、水って、なんか
宗教的な感じ?罪を洗い流すとか洗礼とか、なんかそういう感じなのかなあ。
まあともかく、あの美しい森の中で、やっと安らかに眠るんだな、と。
泣いて泣いて泣いてしまって仕方なかった。

旅してる中で、気ままなローラに振り回されてく、おっさんと少女な組み合わせ。
「レオン」的でもあって、すごく素敵なんだよー。可愛い。
それでも、ローラは戦闘モードになるとめちゃくちゃ強くて獣のようになる。
恐ろしい獣、でもあり、哀しみの悲鳴でもある。
ミュータントを実験道具としかみなさない研究施設の博士とかその追手とか、
人間側のほうが酷いんだけど。
でもミュータントの暴走がこわい、というのも、うーん。それはそれで一理ある
というものでもあって。

それでもやっぱり、異端とされようともなんであろうとも、虐げられている子ども
は守らなくては。

やっかいなじーさんと、やっかいな女の子つれてくたびれたおっさんが車飛ばして
逃げる、クラシカルなロードムービーだったと思う。
そういう、この映画一本での見応え、完成度すごい。

もちろん、これまでのウルヴァリンというアメコミヒーロー人気キャラクターで
あるという重みがしっかりあってこそ、というのはそう。
ローラが持ってたコミックを読んで、事実に基づいてるけどフィクションだ、
お話だ、こんなのはないんだ、ってローガンは言う。
作中でメタ宣言かよって思うけど、それはそれで、この映画の中のリアル感が
すごくて、切なくなる。
ウルヴァリンの最後という映画が、こういうテイストの、激渋い男の物語として
作られて愛されているの、ほんと凄いと思う。
ヒュー・ジャックマンかっこいいよねえ。
老いたウルヴァリンが若き自分と対決するみたいなのもあったりして、本当に、
ウルヴァリンの、ヒュー・ジャックマンが17年かけて演じ続けてきた男の物語
として、終わったことが物凄く素晴らしいと思う。

最後にさあ、ローラが、葬った地面に立てた木の棒クロスしただけの十字架を、
斜めにしてXの形にして置くの。
だーーーっ、と涙腺決壊。今これ書きながら思い出しても涙出る。
ローガンという一人の男で、ローラを守った父で、やっぱりXメンのヒーロー
なんだよ。

そして子供たちには未来が続く。
ほんとうのほんとうに、ちゃんと描かれたクラシカルな名作たりうる映画です。
かっこよかった。

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